ぐすり、と鼻を啜って未だに潤んだ瞳でロックを見上げる。
そんなにロックは優しく微笑み、「、」と彼女の名を呼ぶ。
は唇を真一文字に引き結び、ぎゅ、とロックの手の甲を抓った。
それに「イテッ」と声を上げるロックには震える声で言った。
「・・・おかえり、」
少し俯きがちでそう言う彼女に、ロックは嬉しそうに笑んで「あぁ、ただいま!」と言って彼女の金色の髪を撫ぜた。
「やっとくっ付いたのね」
戻って早々、腰に手を当てて瞳を細めるティナにそう言われた。
少しだけ不機嫌そうにしながらも、親友がようやく温めていた恋を実らせたのだ、彼女は自分の事のように喜んだ。
「良かったわね、」と、ティナは言って元帝国空軍機の中に入っていった。
そんなティナの後姿を見ながらロックは「俺には祝言は無しか・・・!」と呟いて打ちひしがれていたが、はあえてそれには触れずにティナの後に続いた。
待ってくれよ、と後ろから声がかかった事には思わずくすりと笑みを零した。
中に入ると、ロックが「見てくれ!」と言って元会議室として使っていた机の上に袋を置く。
それに室内に居たとティナ、そしてレオが瞳を丸くしてその袋を見る。
何処か誇らしげに胸を張っているロックにティナが「・・・これは?」と取り合えず問うてみる。
それにロックは嬉々とした様子で口を開く。
「フェニックスの洞窟のお宝だ!」
「待て。お前そんな余裕あったのか」
そういえば行く先々でトレージャーハントした跡があった。
それを頼りに彼が居る事に気付けたのだが・・・、
は思わず半眼になってじとり、とロックを見る。
それに彼は怯んだ様子も無くあっけらかんとした様子で言う。
「其処にほら、魔石があったかもしれないだろ?」
「・・・まぁ、そういう事にしておくか」
嘘臭いけど。
そう思いながら腕を組んで言う。
そんな彼女を相変わらずだ、と思いながらロックは色々入っている袋を開ける。
「色々使えそうな物も沢山あったからな、追々役に立つかもしれないぜ?」
「かも、でしょ?」
「うっ・・・ティナも言うようになったよな・・・!」
のが移ったんじゃないか?と、ロックが言うがティナはクスリと微笑み「それは光栄ね」と言った。
そんなこんなで話をしていると、レオが外の様子を横目で見て「そろそろ獣ヶ原だ」と言う。
レオの言葉には「分かった」と言い立てかけていた銃を背負う。
特に使う必要は無いだろうが、一応だ。
獣ヶ原?と、小首を傾げるロックにはティナがガウ達を迎えに来た事を説明する。
「あ、なるほど」とロックは返してに視線を移す。
「もうこれに気付いてこっちに駆けてきてるんじゃないか?」
「大いにあり得る事だな。 ・・・そういえば、お前ガウに嫌われてなかったか?」
「う゛っ。 ・・・そんな事、無いと思いたい・・・」
「もう大丈夫だと思うわよ」
声を詰まらせたロックに、ティナが言う。
とロックが彼女を見ると、ティナは「だって、」と言い、言葉を続ける。
「ガウは元々ロックの事が嫌いだった訳ではないもの。
唯、を悩ませるから怒ってただけよ。今はもう平気でしょ?」
「・・・そう、だな」
もティナに釣られた様に笑みを浮かべてそう言う。
其の後、獣ヶ原に着陸した元定刻空軍機のハッチから降りながらが「それにしても・・・」と呟く。
その声を耳ざとく聞き取ったロックが「ん?」と問いかけてくる。
は「否、大した事じゃないんだが・・・」と言いティナとロックを見た。
「・・・これは、初めの三人じゃないか?」
「そういえば、そうね」
ティナが今気付いた、という様子を見せる。
ロックも「そういえば!」と言い互いの顔を見る。
思い返せば、一番最初、ナルシェで出会った事が始まりだった。
帝国に操りの輪を付けられたティナが、ナルシェへと魔導アーマーを操り侵入した。
そして、倒れている所をジュンという男に助けられ、が其処へと依頼を受けてやって来た。
ティナは今でも覚えている。
瞳を開けた瞬間、入ってきた金色の輝きを―。
あの輝きは、何だか凄く眩しく感じたのよね。と、思いながらティナは回想を続ける。
その後、に連れられてティナはジュンの家の裏口から脱出した。
が、炭坑の中でナルシェのガードに追い詰められてしまった。
その時に、地盤が緩んでいたのか、床に穴が開いて地下へと落下してしまったのだ。
落ちた衝撃でティナは気を失ってしまい、も怪我をした。
ティナの傷を癒した後に、自分の傷を癒そうと少し離れた所に落ちていた道具袋に手を伸ばした時、目の前にロックが下りてきたのだ。
は直ぐに銃をロックに向けて警戒心を露にした。
直ぐにロックは敵じゃ無い事を彼女に分からせてそれを解いて彼女の傷の手当てをした。
そして追ってきたナルシェのガードを手伝ってくれたモーグリ達と共にロックが撃退させたのだ。
それから、フィガロ城に行くまで三人で進んでいたのだ―。
懐かしいな、と、は思い歩を進める。
もうあれから結構な月日が流れている。
それを考えると、心のうちが温かくなった―。
「何か、こういうのって良いわね」
「どういう?」
ティナの言葉にロックが問うと、彼女は微笑んだまま言った。
「仲間との思い出を、懐かしむ事よ」
ティナの言葉にとロックが頷いた時、足音が聞こえてきた。
は直ぐにそれに反応し、近くの草むらを見やる。
丁度その時―、
「!!」
「わっ!?」
ガウが出てきた。
と、思ったらウーマロが出てきた。
ガウより後に出てきたのに何故か彼より早くに駆け寄って大きな身体でに飛びついた。
それに驚きの声を上げてはよろめいたが、彼女が倒れるより早くウーマロがの脇下に大きな手を差し入れて抱え上げた。
子供がよくやられているような、高い高いの格好になってしまったは「な・・・!」と短く声を上げて頬を羞恥の色に染める。
「ウ、ウーマロ!下ろしてくれ!」
「ウー! おれ、強くなった!力持ち!!」
「わ、分かった!というかこんな事元から出来ただろお前なら!」
視線が高い、足が浮いてる。
はそれに落ち着かない様子でウーマロに下ろしてもらうように懇願する。
そんなにガウがウーマロの足をぺしぺしと叩く。
「がうがう!こわがってる!おろす!」
「怖がってはいないが・・・」
ガウに言われてウーマロがをそっと地面に下ろす。
すると次に待ってましたといわんばかりにガウが飛び付いて来た。
「ガウ、元気にしていたか?」
「がう!」
元気良く笑って言うガウには笑みを浮かべ、彼の頭を撫でてやる。
それを見ていたウーマロが「ウー・・・」と寂しげな唸り声を上げる。
はそんなウーマロに苦笑し、彼の腕を撫でてやる(頭は届かない)
「お前も、久しぶりだな」
「ウー・・・親分、元気か?」
「他の皆と待ってるよ」
撫でられて気持ち良さそうに目を細めるウーマロの言葉にが微笑んで言う。
それにウーマロも嬉しそうな笑みを浮かべて、何だか可愛いと思えてしまう。。
そんな事をが思っているとくいくい、とマントの裾を引かれる。
何だと思いガウを見下ろすと、真っ直ぐに自分を見上げてくる視線とぶつかった。
「、ロックとあったな」
「あぁ、再会出来た」
が微笑んでそう言うとガウは少しだけ何かを確かめるようにを凝視した後、ニッコリと明るい笑みを浮かべた。
そして「がうがう!よかった!!」と言って駆け出した。
何処へ行くのか、と思っていたらティナと何やら話をしているロックに向かって行った。。
ガウに気付いたロックが自分に向かって駆けてくる少年に気付き、其方を見たが、時既に遅し。
ガウの熱烈なタックルを受けて、彼は尻餅をついた―。
「わ!! び、びっくりした・・・!」
「がうがう!こんなんでたおれるな、ひんじゃく」
「貧弱ってお前・・・、コノヤロッ!」
ロックが冗談半分な様子でガウの頭を手でぐりぐりと押し付ける。
それにガウは構って貰える事が嬉しいのか「がうー!」と笑って言いながら反撃をする。
じゃれ合い始めた二人を見、はほっと安堵の息を吐く。
それにウーマロが小首を傾げて見てくるのに対し、は微笑んで言う。
「やっぱり、仲良しなんだな」
あの二人は。
そう言ってはまたウーマロの毛を撫でた。
ガウ達と合流。さて次は色々としますよ。
12./27*修正しました(モグごめんww)