「随分と大所帯になったものだ」
一気に、と付け足して笑う。
そんな彼女の様子とその横に立っているロックを目に留めて、合流した一同はほっと息を吐く。
獣ヶ原でガウ達と再会を分かち合った後、達はレオの船を借りてサマサの村に来ていた。
以前怪我をしたシャドウを運んだ所でもあったし、取り合えずストラゴスの家をまた借りていたのだ。
ちなみに、レオ達はナルシェへ戻っていった。
また会いに来てくれ、と言うレオに礼を述べて彼とは別れた。
台所でとティナが皆の食事を準備している時に、ガウとウーマロと外に行っていたロックが戻ってきて告げたのだ。
「飛空挺が近くに停まった」と。
とティナはお互いに顔を見合わせ、食事の量を増やす事にしたのだ。
合流する際自分が居ないと、と思ったは食事をティナ。そして手伝うと申し出てくれたガウに任せて外に出た。
ロックとウーマロと共にサマサの村の入り口まで行くとセリス達の姿が目に入った。
此方に気付いたのか、セリスと、彼女の横に居たリルムが駆け出してきた。
「!」
「セリス! リルムも・・・!」
駆けて来た二人にそう声をかける。
はリルムを見た後、「ちゃんと会えたんだな」とセリスに言う。
「噂通り、アウザーの屋敷に居たわ。其処で絵画に取り付いた魔物と一騒動あったけどね・・・」
それよりも、とセリスは言っての横に居るロックに視線を移す。
そしてまたを見た後、「良かったじゃないの」と言う。
それには少しだけ笑み、「そうだな、」と呟く。
後から来たエドガーやマッシュ達はに一声かけた後にロックに近付く。
彼に会うのは本当に久しぶりだ、話したい事もあるだろう。
そう思ったは長くなるなら、と言い彼らをストラゴスの家に呼んだ。
その際、其処に居たリルムとストラゴスに謝罪する事も忘れずに。
「すまない、家を借りている」
「おお、構わんゾイ」
「そーそー。遠慮なく使っちゃって良いんだよ!」
笑顔でそう言ってくれる二人にも笑顔を返し、「ありがとう」と言った。
そして、食事を始めた時にが最初の言葉を呟いたのだ。
の言葉にカイエンが「確かに・・・」と言い辺りを見渡す。
見ると、最初は少なかった仲間がもう既に全員集まった状態になっている。
大所帯に見える訳だ。セッツァーはそう呟いて水を口に含んだ。
「そうね・・・私はシドと別れた後、ツェンでマッシュと会ったのよね」
あの時は、ケフカの裁きの光で家が燃えてて、崩れないように貴方が支えてたのよね。
頬杖を着いて其の時の事を思い出しながらセリスが言う。
それにマッシュが「そうだな」と言って頷く。
「中に子供が居たからな・・・。あの時はほんと、ヒヤヒヤしたぜ」
「其の後に二人はモブリズに来たのよね」
マッシュの後にティナが言う。
それにセリスが頷いて「私たちは一度其処を去ったのよね」と言う。
セリスの言葉に「何故?」と小首を傾げるロックやモグやらには説明をする。
「ティナはその時魔法の撃ち方を忘れてしまっていたんだ。
・・・で、その後お前等は私と会ったのか?」
簡単に説明をしたに、セリスとマッシュが頷く。
の隣に座っていたロックが「は最初から一人だったのか?」と食べ物を飲み込んでから問う。
彼の問いには「否、」と言い言葉を続ける。
「私はレオに助けられて、ナルシェに居たんだ。ついでに氷付けの幻獣について調べようと、炭坑に行ったら・・・、」
「ウー・・・おれ、と会った」
ウーマロが肉料理を頬張りながら言う。
は「そうだ、襲われたんだった」と呟いてスープを口に含む。
そんな彼女の呟きにセッツァーが「おいおい、」と声を上げる。
「こんな大男に襲われたって・・・大丈夫だったのか?」
「モグが来てくれたから、なんとか」
「ボクのお陰クポ! ・・・でも、ボクに一発撃ってきたクポ」
「あれはお前が行き成り割って入って来るからだ。危ないだろう」
「ボクのせいクポ!?」
酷いクポ!と言いつつ、よよよ。と斜めに傾ぐモグをウーマロが大きな手で支えた。
そして「ウー、親分・・・元気出せ」と彼を励ます。
そんな二人(二匹?)を和みながら見ていたらアイナの丁度向かいに座っているガウが「がうがう!」と声を上げた。
「、獣ヶ原きた!」
「そうだな、ガウが居るかと思ってレオの船に乗せて貰ったんだったな」
「ん・・・?そういえば、俺らと会った時ははシャドウとモグと一緒じゃなかったか?」
船上での再会を思い出しつつ、マッシュが言う。
はそれに「あぁ、」と言いスープをまた一口含んでから口を開く。
「ガウ達は獣ヶ原で修行コースだ」
「へ?」
「シャドウとは獣ヶ原の洞窟で会った。
ガウ達は強くなるって言って獣ヶ原に残ったから、私はシャドウとモグと一緒に行ったんだ」
モブリズでティナと会った後、ニケアへ行った。
そう言うにモグがこくこくと頷く。
ニケア、という単語が出てきた時にエドガーが反応を示した。
彼は優雅な動作で口元をナプキンで拭い、口を開いた。
「其処では勇敢にも盗賊団に突っ込んでいったのだったね」
「人聞きの悪い・・・、何を言ってるんだか・・・。
フィガロ城が地中に埋まったままだというので私たちは何とか出来ないかと行動をしていただけだ」
仲間の城でもあるしな。
そう言うにエドガーは「ほう?」と言い口の端を上げた。
の言葉を聞いていたセリスは「だからフィガロ城から逃げて来た盗賊達から話を聞いていたのね」と言う。
「そうだったんだが・・・其処で世界崩壊のショックのせいで髪を白くしてしまった一国の王に会ったんだったな・・・」
「君こそ何を言っているんだ。 あれは変装なのだよ、へ・ん・そ・う!」
「一発で分かる変装だったがな、ジェフ」
隠す気が無いのかと思うくらいだったぞ。
そう思ったがあえてそうは言わず、は次は肉料理に手を伸ばした。
食べやすいサイズに切って、それを口に運ぶを見ながらエドガーが口を開く。
「・・・それで、次はコーリンゲンに行ったのだったね」
コーリンゲン。
其の単語に反応したとロック。
並んでいる二人がピタリと一瞬、同じタイミングで固まった事にエドガーはくすりと笑みを零す。
そんな彼を見ながら「趣味悪いぜ」と呟くのはセッツァー。
「コーリンゲンでは、俺と会ったんだよな?」
「・・・あぁ、そうだったな」
「そうだったな、って・・・。あの衝撃的な再会を忘れちまったのか?」
「・・・水、ぶっかけたっけ」
「あれは、見ていて清々しかったわね・・・」
思い出しながら呟くに、セリスが苦笑交じりに言う。
セリスにつられた様にセッツァーも笑みを浮かべ、優しげな視線をに向ける。
「夢は無限・・・か。あの時のアンタには本当に救われたよ」
「セッツァー・・・、」
「そしてあの時の感覚。たまらなかったね」
「セッツァー」
一気に顔の表情を変えたセッツァーにが低めの声を出す。
そんな彼女の様子に楽しんでいるセッツァーは「って柔らかいんだな」と言う。
セッツァーがそう言った瞬間、が鋭い目つきでセッツァーを睨み、ロックが勢い良く顔を上げた。
「貴方・・・!あの時そんないやらしい事思いながらに引っ付いてたの!?」
セリスは眉を吊り上げて横に座るセッツァーを見やる。
最低、と視線で訴えられてセッツァーは両手を前に出す。
「男なんだ、しょうがないだろ? 惚れた女にあんなに密着されちゃあな」
「ほっ・・・!?」
ガタン!!と音を立ててが思わず立ち上がる。
その場に居た全員が笑みを浮かべ、または渋面を浮かべて彼女に注目した。
視線を一気に浴びたは頬を赤く染めながらも、テーブルについた両手に力を込めて身を乗り出す。
そして悠々とグラスを傾けている元凶の男に「セッツァー!」と言う。
咎めるようなの視線を気にせずセッツァーは笑みを浮かべて彼女を真っ直ぐに見詰める。
「俺だって、ずっとあんたを見てきたんだ。冗談で口説いたりはしないさ」
「・・・冗談じゃ、無く・・・?」
がそう問うとセッツァーは肩を竦めて「冗談じゃ済まなくなっちまったんだって」と言う。
彼はそう言った後横に座っているマッシュを見やる。
「勝負はまだついてないんだろ?」
「当たり前さ。俺がを好きって事は変わってないんだからな」
セッツァーがそう言うとマッシュは「そうか」と言って笑う。
何だ何だお前たち分かり合った顔して!
はそう思いながら熱を持っている自分の両頬を包む。
言いたい事は沢山あるはずなのに「あ、」やら「う、」やら短い音しか口からは出なかった。
そんなにロックはくすりと笑みを零して彼女の背をぽんと軽く叩く。
「取り合えず、座れよ。な?」
「・・・あぁ・・・」
ロックに言われてゆっくりと椅子に座りなおす。
何だかすっかり考え始めてしまったを見ているロック。
そんな彼の様子にセッツァーが「へぇ、」と漏らす。
「もっと嫉妬心丸出しにするかと思ったぜ」
「・・・いいから飯食えよ」
ロックはセッツァーに簡単な言葉を返すとスープを飲んだ。
その時、くん、と引かれる感覚を覚えたが瞳を丸くして自分の手を見る。
誰にも気付かれない様な、テーブルの影の位置でロックがの手を握っていたのだ。
きゅ、と強く握られては瞳を更に丸くしたが、黙々とスープを飲む彼の頬が仄かに朱に染まっている事に気付き、笑みを零した。
「・・・思いっきり妬いてるじゃん」
「ん?どうしたんだい、レディ」
「なんでもなーい」
ロックの隣に座っているエドガー越しに其れを見ていたリルムがぽつりと呟く。
それにエドガーに嫌味なくらい爽やかな笑みでそう言われ、彼女はそっぽを向いてそう答えた。
「・・・取り合えず、その後はゾゾでカイエンと会ったのよね?」
セリスがナプキンで口元を拭いた後に言う。
それにカイエンが「そうでござるな」と返してグラスを傾ける。
彼女達の話を耳にしていたは「あぁ、」と言って何かを思い出す動作をする。
「あの手紙と造花・・・「どわわわわわ!!!!」・・・・・・何だカイエン」
造花の事を褒めようとしたのに、と言いは少しだけムッとした表情をする。
言葉を遮ったカイエンは顔を真っ赤にした後、咳払いを一つ零す。
「・・・其の後、拙者達とは別れて殿は一人でモブリズへ向かったのでござるな?」
「そうだ。 ・・・モブリズでは、またフンババが攻めて来たんだったな」
「ええ。 ・・・あの時は力が戻って本当に良かったわ・・・、を助ける事が出来て・・・」
「ティナ・・・」
話を逸らす事に成功したカイエンはこっそりと安堵の息を吐く。
とティナの話を聞いていたリルムが「じゃあ、」と声を上げる。
「そっちはそっちで仲間を集めてたんだね。リルムは色男達が来てくれたから」
リルムの「色男」という言葉を聞いて達は直ぐにエドガーを見る。
的を得ている呼び名だ、さすがリルム。
と、が思っているとリルムが「そんでね、」と言って少々不機嫌そうな顔をする。
「ジジーったら狂信者の塔なんかでケフカに祈り捧げてたんだよ?」
「こ、これ、リルム・・・!」
「しかもリルムが死んだと思ってたとか・・・こんな老いぼれより先に逝けないっていうのに!」
頬を膨らまして言うリルムにストラゴスが困った声を上げる。
そんな祖父と孫のやり取りを見ながら達は思わず笑みを零した。
そんな中、ふとセリスとの視線が交わる。
セリスはロックを一瞥した後、に「ロックは何処に居たの?」と問う。
「フェニックスの洞窟に居た」
「フェニックスの・・・・・・、それじゃあ、魔石とかで、」
「レイチェルは蘇ったさ」
言い辛そうに言葉を濁すセリス。
彼女の言葉の途中でロックがハッキリとした声でそう言った。
ぎゅ、と手を強く握られ、はロックを見た。
「・・・これを託して、直ぐ逝ってしまったがな」
ロックはそう言ってふっと笑った。
そして罅一つ入っていないフェニックスの魔石を取り出す。
ロックは自分の隣に座るエドガーが何か言いたげに自分を見ている事に気付いたが、言葉を続けた。
「・・・レイチェルは、俺の心に光をくれた。
俺がレイチェルに与えてきた幸せに対する感謝の気持ちで俺の心を縛っていると、彼女は言った・・・。
その鎖を断ち切って、心の中の、その人を愛してくれって」
ロックはそう言い、今度は優しく手を握ってを見詰める。
澄んだ空色の瞳に見詰められ、思わず吸い込まれそうな感覚に陥る―。
は頬を朱に染め、小さく頷いた。
蟠りは無くなったのだろう。
エドガーやセリス、他の仲間達もそれを理解して安堵の息を漏らした―。
纏め的な一話でした。
次はまたサブイベもりもり入れていきますとも!