「誕生日、だったのか・・・・・・!?」
ダン!という音を立ててテーブルに両手を付いたをロックは瞳を丸くして見た。
飛空挺の中の一室でとロックは話をしていた。
話の内容はありふれたもので「モーグリの頭に付いているのは何だ」やら「ティナは何時もモグを抱っこしているがそんなに気持ちの良いものか」やら「最近マッシュとカイエンがよく鍛錬をしているな」だとかだった。
そんな中で話が色々と飛んで今まで何をしていたか、好きな食べ物は何か、血液型は何か、そして、誕生日は何時か。という話題になったのだ。
誕生日の話題が出た途端ロックが「あ、そういや今日だ」と言ったのだ。
が「何が」と聞き返すと何でも無い話の様に普通に「俺の誕生日」とロックが返して来て、冒頭に至る。
「・・・・・・」
取り敢えず勢い良く立ってしまったはゆっくりと椅子に腰を下ろした。
腕を組んでロックをじろりと見る。
「何で言わなかったんだ・・・。知っていれば祝い事くらいしたぞ」
「否、忘れててさ。何か最近ドタバタしてたしなー・・・」
頬杖付いて苦笑しながらロックは言った。
―確かに、色々とドタバタしていた。
しかしそれはケフカを敵として集まっている者たちにとっては仕方の無い事だった。
は溜め息を吐いてちらりと窓の外を見やる。
すると崩壊した大地が目に入る。
荒れた大地の様に、の心も今荒れていた。
(・・・今日は未だあるんだ・・・。如何にかしてプレゼントを渡さないといけないな・・・)
確か予定ではアイテムの調達の為に街へ行くとエドガーが言っていた。
等と思いつつはロックを一瞥してから彼に贈る物に何が相応しいかを考え始めた―。
―が。
結局中々上手い案は浮かばなかった・・・。
如何したものか、と悩んでいたは皆に聞いてみる事にした。
「え?ロックは今日誕生日なの?」
瞳を丸くして言うティナには苦い顔で頷いた。
ティナの抱っこしていたモグが「知らなかったクポ、」と呟く。
近くでソファに腰を下ろしているセリスが「ねぇ、」と口を開く。
「は何か贈るの?」
「そのつもりなんだが・・・考えが纏まらなくて困っている」
「ロックに贈る物・・・・・・でしょ?」
ティナがポツリと呟いて瞳を伏せて考える。
モグとセリスもうーんと唸り彼に相応しいプレゼントを考えてくれているが、結果は・・・、
「・・・ごめんなさい、・・・。 宝石しか浮かばないわ・・・」
「宝の地図とか喜びそうクポ」
「何かしら・・・、・・・私も宝石しか浮かばないわ・・・」
「・・・そう、だよな・・・。 ふふ・・・・・・私もだ」
ティナ、モグ、セリスの順で言った後項垂れつつが力無く言う。
・・・重い沈黙が下りた。
そんな中ティナが「そうだわ、」と言い微笑んでを見る。
「男の人が欲しがりそうな物は男の人に聞いたらいいんじゃないかしら?」
ティナの言葉にモグがはしゃぐ。
「名案だクポ! 、セッツァーとかエドガーとかに聞くと良いクポ!」
「男の意見も・・・か・・・・・・。 分かった。そうしてみる・・・!」
は「ありがとう」と礼を言うとマントを翻して広間を後にした。
向かった先は、地下。
梯子を降りて行くとガウとカイエンの姿を目に留めた。
下りてきたにいち早く気付いたガウは「!」と名前を呼んで走って来た。
カイエンも気付き近付いてくる。
「おお殿。誰かをお探しでござるか?」
「ああ・・・。エドガーとかセッツァーとかを探しているんだが」
「とか・・・でござるか・・・」
とか。を気にしつつもカイエンは「奥の部屋にエドガー殿なら居たでござるよ」と教えてくれた。
其れには「ありがとう」と言い近くに来たガウの頭を撫でた。
「何か用事でござるか?」
「ああ・・・用って程では無いがな」
は其処まで言ってはた、とカイエンをじっと見た。
男に聞くなら別にカイエンでも良いのでは・・・?と思ったからだ。
だがは以前カイエンが宝箱に仕舞っていたとある本を思い出して首を振った。
見詰められていたカイエンは何故かどぎまきして「な、何でござるか・・・?」と挙動不審にしていたがは「否・・・」とだけ言い梯子を上った。
梯子を上るとシャドウの姿が視界に入った。
壁に寄りかかってインターセプターの頭を撫でている。
は迷う事無く直ぐに彼の傍へ寄った。
「シャドウ、つかぬ事を聞いていいか?」
が立った儘シャドウを見下ろしながら言うとシャドウはちらりと此方を見た。
は其れが良いの合図だと知っていたので直ぐに「シャドウは記念日とかだったら何を貰うと嬉しい?」と尋ねた。
其れに帰ってきたのは、溜め息。
「・・・何だ・・・?」
「否、お前は相変わらず分かり易いな」
「・・・良いから、質問に答えて頂きたいのだが・・・・・・」
が少し呆れの目で自分を見てくるシャドウを睨みつつ言う。
シャドウは少し考えた後ポツリと呟いた。
「別に何も要らん」
「じゃあ今の間は何なんだ」
「何も浮かばなかった」
「・・・・・・そうか・・・」
ははぁ、と溜め息を吐いてこれ以上此処に居ても何の情報も得られないと思いその場を後にした。
カイエンの言っていた部屋へ行くと、其処にはフィガロ兄弟とストラゴス、リルムが居た。
大人数で何をしているのかと思えば、リルムはマッシュと遊んでおり、ストラゴスとエドガーは紅茶を飲んでいた。
部屋に入ってきたに気付いたエドガーがにこりと微笑んで席を勧める。
「やぁ、何か用かな?」
「王様にちょっと尋ねたい事があって」
「私に?」
席に着きつつはエドガーを見た。
何故エドガーだけかと言うとマッシュに聞いても見当違いな答えが返ってくると分かっているからだ。
はストラゴスが差し出してくれた紅茶を「ありがとう」と受け取り一口飲んだ。
「・・・男性が貰って喜ぶ物は何だ?」
「・・・ん?」
「違う、間違えた。 エドガーは何か欲しい物とかあるか?」
がポツリと呟いた直後にエドガーが瞳を細めて自分を探る様な目で見てきたのでは直ぐにそう言い直した。
それでもエドガーはをじっと見詰めた。
―暫くそうしていたが、エドガーがくすりと笑って「なるほどね」と呟いた後手に顎を乗せてから優雅な動作で紅茶を口に含んだ。
「今日だったかな?確か」
「其れは、良いから・・・。 で、エドガーは何か欲しい物とかは無いのか?」
ほのかに頬を朱に染めつつ、何処かぶっきら棒に言うにエドガーは笑みを深くして「そうだな・・・」と物思いに耽った。
「私ならさえ傍に居てくれれば其れで十分なのだがね」
「・・・一緒って・・・」
「何だね?私とデートでもしてくれるのかい?」
「何時からそんな話になった。 ・・・何か、物とかは無いのか?」
目つきを鋭くして言うにエドガーはマッシュを見る。
「だ、そうだぞマッシュ。お前の意見も参考に聞かせたらどうだ?」
「今日ってロックの誕生日だったか?其れで悩んでるのかは」
「ち、違! 唯、聞いてるだけだろうが!お前達の欲しい物を!」
「リルムさっき見てたよー?ティナとかには普通に話してたじゃん」
「・・・・・・何時の間に・・・」
はにっこりと笑って言うリルムに少し恨めしげな視線を送った。
そして「もう・・・」と呟いた後紅茶を口に含んだ。
マッシュがの傍に近付いてきて「料理とかどうだ?」と言った。
其れにはマッシュを見上げて小首を傾げる。
「料理?」
「そう。美味い物食わせれば喜ぶんじゃないか?」
「・・・でも野宿の時は大抵私が作っているのだが・・・・・・」
「似顔絵でも描いてあげれば?」
「う"・・・・・・」
リルムの一言で固まったをストラゴスは「はて?」と見ていたが直ぐに何故固まったかを理解し笑った。
「一緒に冒険にでも行くのはどうじゃ?」
「・・・また一緒にか・・・」
は似顔絵の話題から逸れたのにほっと安堵の息を吐いた。
そしてストラゴスの案を少し考えたが「駄目だ」と言い首を振った。
「トレジャーハンティングの出来る様な場所もこの近くに無いし何より行き成り過ぎる・・・。
何か良い案は無いものか・・・」
はそう言い溜め息を吐いた後紅茶をまた口に含んだ―。
は最後にセッツァーに聞いてみる事にした。
向かった先は、甲板。
当然、彼が其処に居るのを知っていたからである。
梯子を上って行くとびゅう、と強い風が正面から吹いてきた。
は髪を押さえつつ上り終えると前に居るセッツァーに近付いた。
「セッツァー、」
「ん? あぁ、か。如何した?」
セッツァーは振り返ってに気付き笑ってそう言った。
は直ぐに本題に入り「セッツァーは今何か欲しい物はあるか?貰って嬉しい物とか・・・」と尋ねた。
最初セッツァーは瞳を丸くしていたが直ぐに何時もの表情になり「そうだな・・・」と言った。
「、俺とお前が始めて会った時を覚えてるか?」
「・・・否、あれは忘れたくても忘れられないだろうが。タコが」
「タコはいいんだよタコは。 ・・・純白のドレスを着て、綺麗に着飾って、美声を響かせてた」
は頭の隅からタコを消去ってオペラ劇場での事を思い出していた。
―――思い出した途端、の頬がカァーっと真っ赤になった。
(控え室で・・・・・・そういえば・・・)
は今はこの場面は関係無い、と思い雑念を払う様に首を振った。
セッツァーは前を向いている為に其れには気付かず続けた。
「あの時みたいにお前が歌ってくれたら嬉しいかもな」
「歌・・・」
は顎に手を当てて考えた。
歌、といえば結構前にロックにも聞かせた事があった。
確かフィガロ城だったか、とが考えていると横に居るセッツァーは苦笑した。
「難しい顔してるぜ」
「・・・そうか?」
「あぁ。あんたは何時も見たいに凛としてる姿が綺麗だ、そうしていろよ」
「・・・・・・」
はセッツァーの言葉に少しだけ頬を朱に染めたが直ぐに俯いた。
そして元来た道を戻りだす―。
「もう戻っちまうのか?」
「あぁ・・・買出しの準備だってあるから・・・」
歌、か。
はセッツァーにそう答えながらも頭の中では如何しようかと考えていた。