"ガーデン"という機関がある。

私設の兵士養成学校で、世界3箇所に点在していた。

ガーデンの卒業生の多くは各国の要職に就く事で知られ、

一流のエリート養成期間として世界に其の名を馳せている。


一方で、ガーデンはもう一つの顔を持っていた。

"SeeD"の養成である。

Seedとは、ガーデンの中でも特に過酷な訓練と実践を兼ね、

極めて優秀な成績を残した者のみに与えられる称号を指している。


SeeDの任務は広い。

各国・各種組織等からの要請により各地へ派遣され、

紛争地での傭兵、要人護衛やテロ弾圧、諜報活動も主任務とする。

暗殺に代表される、いわば「影」の仕事も重要な任務だ。


こうした影の仕事をも請け負うSeeDの構成員は、

早ければ15歳で抜擢され、戦火に、血風に身を投じる。

幼少時よりガーデンの教えを体に刻み込まれている彼等は、

その内容如何には興味を持たない。

持つ事も許されない。

誰かが言った。

「SeeDは"なぜ"と問うなかれ」 と、


















は、今年で17になるSeeD候補生である、


彼女は今在籍しているバラムガーデンの図書室でSeeD試験に向けての資料を探していた。

教室には学習用パネルがあり、それでも様々な事を学べるのだが、彼女は其れを既に熟知してしまっている為に図書室へと足を運んでいた。
は目当ての本を見つけると大きい瞳をパチパチと瞬かせて次に辺りを見渡した。
目当ての本は結構な高さの位置にあった。彼女は特別背が低い訳ではないが、届きそうも無かったので無理をするよりも、と思い脚立を探した。
きょろきょろと辺りを見渡していて目に留まったのは脚立では無く、目が合って少々嫌そうに眉を潜めた青年。

はわざとらしく「おっ!」と声を出すとニコリと笑って彼を手招きした。


「こんにちはースッコー!」


スッコーと呼ばれた青年の名は正しくはスコール・レオンハート。
に手招きされた彼は眉を潜めわざとらしく溜め息を吐いた後、くるりと身体を反転させて今入ったばかりの図書室を出ようとした。

当然、は其れを許すはずが無い。


「ちょっと・・・何で呼んでるのに帰ろうとしてるの?」

「・・・・・・」


スコールはチラリとを一瞥した後、仕方無さそうに「何だ」とだけ言った。

傍から見れば表情一つ変えずに短くそう言う彼は無愛想極まりないがは既に慣れているので気にせずに本棚の少し上の方にある本を指した。


「筆記試験が近いじゃん?其れで勉強しようと思ったんだけど・・・届かなくって。 スッコー、取ってくれない?」


がそうスコールの頼むと彼は明らかに「何で俺が、」という思いを顔に貼り付けていたが無言で、の横に行き本を取ってくれた。
取った本をに「ほら、」と言い手渡す。
はニコリと笑みを浮かべ「ありがとう!」と言い本を抱え、彼を真っ直ぐに見上げた。


「スッコーも勉強しに来たの?」

「・・・あぁ」

「そっか、じゃあ一緒にやらない?」

「・・・断「向こうが空いてるみたい」


断る。と言おうとしたスコールの言葉を遮っては空いている席を指す。

眉を顰めたスコールには苦笑し、「お願いー私どうしても分からない所あってさー」と言う。
お願い! と言い懇願するにスコールはハァ、と息を吐いた後言葉を発する為に口を開いた。


「・・・後で何か奢れよ」

「さっすがスッコー!! じゃ、始めようか!」


はそうニコリと笑顔を返して席に教材を置いた。
先に席に着いたに習ってスコールも腰を下ろすが、途中で何かを思い出した様に「あ」という表情をした。
普通なら気付かないだろうが、スコールと共に居る時間が長いは気付き「どしたの?」と声をかけた。
スコールは「否、」と言ったががじっと見てくるので少々鬱陶しそうに息を吐いた後答えた。


「訓練施設も行かなければ、と思っただけだ」

「そうだね、私も後で付き合うよ。G.F.だって今まで以上にもっと使い慣れなきゃいけないからねー・・・」


何せ筆記試験が受かった後は実技試験だ。
噂では何処かの戦地に送り出されるそうだから、気は抜いていられない。
G.F.だって、魔法だって上手く出来なければいけない。

は取り敢えず、と思いスコールに分からない所を聞く為にノートを広げた。























―ガルバディアガーデンからSeeD試験の為に編入して来たは、持ち前の明るさで着々と友達を増やしていった。

はSeeD試験を受ける為の試験は、あちらで済ますよりもバラムガーデンで済ましたい。という本人の希望も有り早期で編入して来た。
噂ではもう少ししたらトラビアガーデンからも編入生が来るそうだ。あちらはSeeD試験資格をあちらのガーデンで受けるので来るのは遅いが・・・。

は友達が増えていく中、一人静かに過ごしている青年に目が留まった。

教室でも隣の席だった理由もあっただろう。
取り敢えず、仲良くなりたいな。と思い最初教室に行った時に挨拶をかけたら彼が小さくだが返してくれた。
其れに喜びを感じたは、もっともっと、彼と仲良くなりたい。そう思うようになりその彼、スコールをスッコーとあだ名で呼び、彼の姿を見つけては声をかけた。
大抵鬱陶しがられるが、結構嫌われてはいないのではそれで良かった。




















図書室で勉強に区切りを付けた後、頭を使ったので腹が減った二人は食堂へ足を運んだ。

約束通り、がスコールの分の料金を出してご飯を食べる事に。
はスコールの後を着いて行き、彼が腰を下ろした席の前に腰を下ろした。

その時、食堂に入ってきた青年とはバチリと目が合った。
面白い物を見つけた様な顔で近付いてくるのは、教室で真ん中の通り道を挟んで隣の席になる風紀委員長のサイファー・アルマシーだった。
彼ははスコールを毛嫌いしているのか逆に気になるのか、良く分からないがちょっかいを出してくる。
今回も自分の前に居るスコールにちょっかい出しに来たのだろう。はそう思いつつもパンを口に運んだ。


「女と食事か、お前も漸く女に興味を持ったか?」


そう言ってくるサイファーを、スコールは無視を決め込んでいたが、はサイファーを見上げて首を振った。


「そういうのじゃないよ、私がスッコーに勉強見て貰ったからお礼にご飯奢ってあげたの」


がそう答えるとサイファーは何処かつまらなそうに「色気が無ぇ奴等だな」と言い足早に去って行ってしまった。

今はそう返したが、自分とスコールが一緒に居るのを周りはそう見えるのか。
はそう思いムン、と少し悩んだ後「ねぇ、」と言いスコールを見た。
彼はパンを食べつつも、此方に視線を向けて「何だ」と目で言って来た。


「噂とか立っちゃうのかな? 編入生と無口マンの恋模様みたいな、」

「・・・さぁな」

「スッコー、もしも嫌だったら言ってね?」


興味無さそうに返すスコールにはパンを千切りつつ言う。
の言葉にスコールが小首を傾げると彼女は千切ったパンを口に運び、食べた。
其れを飲み込んだ後に今度は彼女が小首を傾げた。


「? 何?」

「・・・別に」


スコールはそう言いパンを口に入れた。


・・・俺が嫌だって言ったら、アンタは如何するつもりなんだ?


スコールはそう考えつつに気付かれない様に彼女を見つつ、コップを手繰り寄せて口元へ運んだ。


離れて行くのか?自分から勝手に近付いてきておいて、他の誰かに勉強を教えてもらったり、ソイツと訓練したり、こうして、


食事をしたり。

スコールはそう思い少々乱暴にコップを置いた。
其れにが反応してスコールを見やる。


「・・・・・・」

「・・・スッコー?どしたの?」

「・・・・・・別に」

「・・・あのさ、食べたら訓練施設行くんでしょ?だったらコレ食べたら教室行ってG.F.ジャンクションしに行こうよ」


ぶっきら棒にそう答えたスコールには気分を害した様子は無く、話題をころりと転換させた。
此の儘気まずい空気なんてゴメンだ、とは思いニコリと笑ってスコールに言葉をかけた。
スコールは軽く頷いた後またパンを齧った。

頷いた彼を見てはほっと小さく安堵の息を吐いた。


彼が頷いたのは、未だ自分が傍に居て良い証拠だから―。





スコールのあだ名はスッコー(おまw)