ガーデンから車でバラムへ移動した後、船で戦地・ドールに向かうらしい。
達は船に乗り込み、席に着いた。
車の時とは違い、奥からサイファー、、スコールが座り向かいにゼルとキスティスが座った。
全員座った所で一人のSeeDが来た。
女性のSeeDはニコリと微笑むとキスティスに「やぁ、キスティス」と声をかけて敬礼をした。
キスティスは笑顔で敬礼を返し、口を開く。
「これが今回のB班のメンバーよ。よろしくね、シュウ」
シュウと呼ばれた女性のSeeDはB班のメンバーを見渡す。
其れとほぼ同時に、スコール、ゼルが立って敬礼をする。
「よろしくお願いします」
「・・・よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!」
三人がそう言うとシュウも敬礼を返し、一人の生徒に視線を送った。
その瞳には呆れの色が浮かんでいる―。
「サイファー、何度目?」
シュウの言葉には(え、サイファーって試験何回も受けてるの?)と思ったが今は聞かない事にした。
後でスコールとかに教えて貰おう、そう思いは隣で座っているサイファーをチラリと盗み見た。
「俺は試験が好きなんだ」
何て良い訳よ、其れ。
は横目でサイファーをジト目で見ながら誰にも気付かれない様に溜め息を吐いた。
シュウは諦めているのか、立って敬礼もしないサイファーに余り構わず「状況及び任務の説明をする」と言い奥のパネルの前に行った。
シュウが「着席!」と言うと達三人は腰を下ろした。
「本日のクライアントはドール公国議会。SeeD派遣の要請があったのは18時間前だ」
シュウはそう説明しながらパネルを操作し、画面にドール周辺の地図を出す。
そして次にドールの街中の簡潔な地図を画面に出した。
ドール軍の動きやガルバディア軍の動きを地図上のランプで表しながらシュウは説明を続ける。
「ドール公国は72時間程前からガ軍の攻撃を受けている。
開戦から49時間後、ドール公国は市街区域を放棄。現在は周辺の山間部に退避し、舞台の再編を急いでいる。
以上が現在の状況だ。 次に具体的な任務と作戦の説明に入る」
シュウはそう言い更に地図を拡大させ、指で地図上を指す。
「報告によるとガ軍は、周辺山間部のドール軍排除作戦を展開中。
我々はルブタン・ビーチから上陸。市街地に残るガ軍を排除しつつ、速やかに市街地を解放する。
その後、我々SeeDが山間部から戻るであろうガ軍を市街地周辺部にて迎撃をする」
「俺達は何をするんだ?」
サイファーが視線だけをシュウに向けながら問う。
態度悪いな・・・とは思ったが今更な事なので考えるのを止めた。
「君達SeeD候補生には市街地に入り込んだガ軍を駆除してもらう」
「責任重大だ!」
ゼルが緊張した様子でそう声を上げた次に、サイファーが「楽しくないな」と言った。
ゼルが訝しげな視線を向けるが、サイファーは気にする事なく言葉を続けた。
「要するに、SeeDの連中のおこぼれちょうだいだろ?」
「・・・・・・・・・・・・」
つまらなそうに言うサイファーに、シュウは眉を潜める。
が、あえて何も言わずにいた。
「・・・あぁ、言うまでも無い事だが・・・撤退の命令は絶対だ。これは忘れるな。
間も無く上陸だ。下船直後から戦闘が予想される。準備怠り無く、だな。
以上だ。何か質問がある者はキスティスに聞くように」
シュウは最後にそう言うと歩を進め、船室から出て行った。
彼女が出て行ったのを確認したサイファーが達を見渡して「良いか、良く聞けよ」と口を開く。
「今回の作戦の目的はドールの街に進入したガルバディアのクソヤロー共を片っ端からブチのめす事だ。
お前達は班長である俺の命令にだけ従っておけば良いんだ」
(居る居るーこういう奴、絶対にクラスに一人は居るー)
はそう思いながら溜め息を一つ零した。
それにしても、とは思う。
(ガルバディア軍・・・お兄ちゃんが前所属してた所・・・か、)
でも、自分が今此処に居るのも、兄の為でもある。
大丈夫。
多少やりにくさを感じても、兄の為なら、
はそう思い膝の上にある手をギュ、と握った。
そんなを見、緊張していると勘違いしたらしいゼルが声を発した。
「初の実戦か・・・、も緊張するよな?」
「え?」
突然話しかけられては少し戸惑ったが直ぐに微笑みを浮かべ、「そうだね」とだけ返した。
思っていたよりも緊張した様子が見れないにゼルは小首を傾げる。
そんな彼に向かってサイファーは「ビビってチビるなよ」と鼻で笑いながら言った。
「あん?誰に言ってるんだ?」
「ククク・・・」
「・・・ムカつく野郎だぜ」
「お喋りはその辺でお終い」
険悪な雰囲気になりかけた所で、キスティスのよく通る声が入る。
サイファーは直ぐにゼルから視線を逸らしたが、ゼルはサイファーを睨んだままだった。
キスティスは其れに大して触れず(多分無駄だと理解しているから)再度口を開く。
「間も無く到着よ。其々準備して」
「「「了解」」」
「りょーかい」
サイファーだけやる気無さ気に返事をしたのを聞きながら、は瞳を伏せて自分の魔法ストックとジャンクション状態をチェックした。
は今シヴァとイフリートをジャンクションしている。
魔法のストックも色々と下準備もしたので大丈夫だった。
確認を終えたは瞳を開いた。
皆はどうかな? と思ったは辺りを見渡し―――後悔した。
バッチリとサイファーと目が合ったからだ。
直ぐにバッと首を結構な速さで動かし反対方向を向いただったが、時、既に遅し。
ニヤリと笑ったサイファーが「」と名を呼んできた。
「お前、外の様子見て来い」
瞬時には脳内で自分で行けよ。と思ったが口には出さず、唯無言で拒否の態度を取った。
するとサイファーは「班長命令だ」と付け足して言って来た。
「・・・あのね、そういうのって職務乱用って言うんだよ?」
「良いから行け。 おい、スコール。お前も行け」
「・・・・・・了解」
渋々ながら立ち上がるスコールを見、も渋々、それはもうわざとらしい位に渋々とした様子で立ち上がった。
甲板に上がると、橙の光に包まれた。
狭い甲板に、先ずが上がり彼女の後ろにスコールが着いた。
「ドール・・・って、あっちの方角だよね」
「・・・あぁ」
そう言いは辺りを見渡す。スコールは手に持った地図を、じ、と見、ドールと地図を合わせた。
其れを横目で見ながらは「スッコー、」と彼の名を呼んだ。
「傷、サイファーとお揃いになっちゃってるね」
「・・・・・・」
「あんま無茶しないでね? したとしても私が治してあげるからね!ご安心!」
ニコリ、と笑って言ってくるにスコールは如何答えようか迷ったが、
頷きを一つ返して再度前を向いた。
は案外素直なスコールにキョトンとしていたが直ぐにニコリ、と微笑み彼の持つ地図を覗き込んだ。
―地図をずらすと、戦火に包まれたドールが視界に入る。
二人は其れを真っ直ぐに見た後、顔を見合わせる。
「アンタも・・・、」
「ん?」
「・・・・・・無理はするなよ」
「・・・了解・・・!」
はスコールにそう言い、敬礼をした。
戦地はもう目の前―。