達は戦地を走っていた。
B班の持ち場は"中央広場"。其処に向けて四人で走っているのだが、市街を占領しているガルバディア軍が次々と襲い掛かってくるので中々持ち場に着けずにいた。
走っていると、また前方に二名のガルバディア兵の姿が見えた。
は姿勢を低くして一気に走り、先頭を走ってたサイファーを抜き、素早くガルバディア兵に接近し、双剣を振るった。
素早く、しかし、奥深く斬り込みは怯んだガルバディア兵を見やる。
止めは既にスコールとサイファーが刺していた。
は双剣を腰の鞘に収めると、再度足を進めた―。
本当だったら、自分達は今中央広場に居る筈。
はそう思いながら「うう、」と声を上げた。
前を走っていたスコールとゼルが、その声に反応して振り返る。
は「最悪、最低で最悪だっ!!」と言い両手をブンブンと振りながら走った。
中央広場はとっくに通り過ぎている。
本来なら敵を一掃し、其処で待機の筈だったのだが・・・、
偶然、山頂の何かの施設に向かって行くガルバディア軍の兵士達を見てしまった。
―それがいけなかったのだ。
「あそこへ行くぞ」
サイファーのその言葉のせいで今の行動が始まったのだ。
ゼルは「命令違反だ!」と言い拒んだがサイファーの班長命令もどきで同行している。
も拒否の体制を取ったが、サイファーに引っ張られて着いて行かされてしまった・・・。
最悪、最低、とはブツブツと呟きながら前を走るサイファーの背中を睨み付けた。
―其の時、道の脇から一人の男が四つん這いで出てきた。
何処から出てきたんだ、と思い周辺を良く見ると、其処にある穴の様だった。
酷く憔悴しきった様子の男に、が駆け寄る。
すると敵だと思ったのか、四つん這いになったまま男が声を上げる。
「うわっ! あんた達は!?」
「私たちはガーデンから派遣されて来たSeeD候補生です」
そう言うと男は明らかにホッとした様子だった。
安堵の息を吐く男に、は手を翳し、男の傷を癒しにかかった。
サイファーが其の様子を見ながら男に「山頂の様子は?」と尋ねた。
「ガルバディア軍の兵士達が電波塔に入り込んでる」
男の返答を聞きながらは先程山頂にあるのを確認した施設は電波塔だった事を理解した。
荒い呼吸を繰り返しながら男が「それから・・・・・・」と続ける。
「・・・そもそもあそこは魔物の巣窟なんだ・・・あんた達も行くなら気をつけ・・・・・・うわっ!」
「!!」
男の言葉の途中で魔物の鳴き声が響いたかと思ったら、男が穴に引きずり込まれた。
目の前に居たは咄嗟に男の腕を掴み、引き上げようとするが元々あまり力の無い彼女は逆に一緒に引きずり込まれそうになる。
やばい! とが思った瞬間、空いている腕が強く引っ張られた。
視線だけを其方に向けると、真剣な瞳をしたスコールと目が合った。
スコールに続き、ゼルとサイファーも来て一気に引き上げる。
すると男の足に噛み付いていた魔物までもが一緒に穴から出てきた。
「ウゲッ!ちょ、ちょっと!これヘッジヴァイパーじゃない!?」
蛇の様な身体や顔つきだが、所々が明らかに他の動物が混ざっている様な魔物だった。
ヘッジヴァイパーは尾を振り回して襲い掛かってきた。尾は避けたが、尾に付いている鋭い棘が掠りは「うわっ!」と声を上げた。
ゼルはドール兵の男を安全な場所へ逃がすと、「何だよコイツ!」と声を上げた。
「見たとおりだって!ヘッジヴァイパーは毒持ってるから気をつけて!」
はそう言い後ろへと下がり意識を集中させる。
そんなの様子を見、スコールは彼女が何をしようとしているのかを理解し、サイファーとゼルに声をかける。
「がG.F.を呼び出すまで時間稼ぎだ」
「お? おぉ!任せとけ!」
「チッ。 おい!ミスったら承知し無ェぞ!」
「アンタにだけは言われたくないんですけどー!!」
はサイファーにそう返すと意識を深く、集中させた。
詠唱に入ったを見、スコールはガンブレードを構えながら眼前に迫るヘッジヴァイパーに斬りかかった。
スコールに続き、サイファーもガンブレードを構えて斬りかかる。
―次の瞬間、
「! 鼻と口を覆え!」
サイファーの言葉に従い、ゼルとスコールは手で鼻と口を覆った。
直後、ヘッジヴァイパーが毒霧を撒き散らした。
幾ら塞いでいても、吸い込まないという事は無理な事で、
スコールは少しだけ霞んだ視界をハッキリさせようと軽く頭を振った。
しかし、頭を振ると軽い頭痛がした。
其れにスコールは眉を潜めながら、ヘッジヴァイパーを見やる。
―その時、ひやりとした空気が肌に触れた。
スコールが後ろを見ると、が双剣をクロスさせて前へ突き出した瞬間だった。
がそうしたら、彼女の眼前に氷柱が現れ、砕けた。
其の中からシヴァが姿を現した。
シヴァはゆっくりとした動作で両の手をヘッジヴァイパーへと向ける。
直後、その白く美しい指先から冷気の塊を力にして一気に放出した。
「ヘッジヴァイパーの弱点は氷! これで大人しくしてなさい!!」
一気に冷気がヘッジヴァイパーを包み凍らせ、ヘッジヴァイパーごと砕け散った。
は双剣を腰の鞘に仕舞い、「一丁上がりね」と呟いた―。
辺りから魔物の気配が消えたのを感じた後、スコールがガンブレードを仕舞いながら言う。
「魔物も居るのか・・・」
「こりゃあ面倒だぜ・・・」
スコールの言葉の後に、ゼルが苦い顔でそう言うがサイファーは「そうか?」と言い口の端を吊り上げた。
「お楽しみが増えただけじゃねぇか」
「・・・言っとくけど、お楽しみなのはアンタだけだからね?」
「そうかな?」
嫌な笑みを浮かべて言って来るサイファーに怯まずには「そうなの!」と言いサイファーより前に出た。
「行くなら行ってさっさと済まして持ち場に戻る!」とは口早に言ってズカズカと進む。
―が、直ぐに「あ」と言って立ち止まりクルリと回って振り返る。
「スッコー、さっきはありがとうね」
「・・・・・・あぁ」
はスコールにそう言い満足したのか、再び坂道を登り始めた。
電波塔は、もう目の前だった―。
進まない・・・(汗)