電波塔に着いた途端、中からガルバディア兵が出て来た。
達は彼らに見つからない様に、身を低くして隠れつつ、彼らの様子を盗み見た。


「発電装置動作確認完了!」

「ブースター異常無し!」

「・・・何やってるんだ、あいつら」


下級のガルバディア兵がお互いに確認をしながら報告をしているのを見て、サイファーが呟く。
サイファーの横で身を低くしていたは「さぁねー」と小声で返しつつ様子を盗み見た。


「ケーブル脱線箇所確認!交換作業入ります!」

「了解!」


そう言い中に入って行ってしまったガルバディア兵。
彼らが中に入り、辺りに他のガルバディア兵が居ないかを確認してからは立ち上がった。


「修理・・・・・・か?」

「見るからに。 でもこんなオンボロ電波塔を修理してどうすんのかねー?」


服に着いた砂を払いながら言うスコールにも同じ動作をして返す。
そんな二人を横目で見、サイファーは「ま、俺達には関係無ぇか」と言い、真っ直ぐにスコールを見た。


「お前、本物の戦場は初めてだろ? 怖いか?」


余裕たっぷりの笑みを浮かべてスコールにそう問うサイファー。
プレッシャーでもかける気なのか、それとも自分の余裕を見せたいのか。

取り敢えずそれこそ私には関係無いか、とは思いつつスコールを見やった。

スコールは少しだけ考えた後「分からない、」と呟く様に言った。


「でも、考えると怖くなりそうだ」


真っ直ぐにサイファーを見返しながら、そう答えるスコール。
言葉と台詞が正反対だね、スッコー。 とは思いながらもスコールの考えに内心同調していた。



魔物とのバトルとは訳が違うのだ。

戦争でのバトル、其のバトルは、人と人の戦いを意味する。

怖くないはずなんて、無かった。



でも、身体の内から湧き上がってくる歓喜も、否定出来ない物だった。



がぼんやりとそう考えていると、サイファーが口を開いた。



「俺は戦闘が大好きだ。怖い事なんて何も無い。戦闘が終わっても生きてるって事は確実に夢の実現に近付いてるって事だ」


そう胸を張って言うサイファーにスコールは瞳を一度大きく開いて「は!?」と短く声を上げた。

驚きすぎじゃないかい? 君。 とは思ったがサイファーが夢だなんて言葉を発する事が意外で、彼女も瞳を大きく開いていた。


「・・・夢?」


小首を傾げてがそう問うとサイファーは何処か嬉しそうに「あぁ」と言い頷いた。
そして、「お前等にもあるだろ?」と問うて来た。

其れに対してスコールは腕を組み、顔をふい、と逸らして言う。
ちなみに表情はもう何時もと変わらなかった。


「・・・悪いな。そういう話ならパスだ」

「・・・つまらねぇ男だぜ」

「なんだよ!俺にも聞かせろよ!」


今まで黙っていたゼルがそう言い入ってくるが、サイファーは鼻で笑い、「その他大勢は引っ込んでろ」と言った。
其れに対して怒ったゼルが「許せねぇ・・・!」と言いサイファーに拳を繰り出すが、全て難なく避けられてしまった。


「どうした、ゼル?ハエでも飛んでたのか?」

「くっ・・・・・・!」


サイファーはまた鼻で笑った後、悔しそうにしているゼルから視線を外し、を見た。


、お前はどうなんだ?」

「私?」


はきょとん、とした表情をし自分を指した。
私はその他大勢じゃないのか。と思いつつは「夢ねー・・・」と呟く。



自分に夢だなんて、無い。

唯すべき事はSeeDになって力をつけ、兄を探す事。

世界は広い、SeeDとして世界を回るのなら、兄の情報だって入ってくるかもしれないから。



でも、それって・・・、 はポツリと呟いた。



「夢じゃ、無いよね・・・」

「あ?」

「・・・何でも無い。未来の話なら私はパス2ね」


がそう言い、人差し指と中指を立ててサイファーに突き出す。
サイファーはそんなにつまらなそうな顔をした。

ゼルがに「なあ、」と声をかける。


「パス2って何だ?」

「スッコーがもう一回パスしたじゃん? だからパス2」

「ああ・・・成る程・・・」


ゼルがそう言い手をポン、と打った時、

明るい声が辺りに響いた―。


「みぃーつけた!」

「ん?」


達が、思わず声のした方へ視線をやる。

すると小高い丘の上に、昨日バラムガーデンに編入して来たばかりの女の子が居た。
が「あ、」と短く声をあげ、彼女を見やる。

確か、名前はセルフィ。

そう思った途端――、


「うわっ、キャ!」

え゛


ズッシャアアアァァァ!という砂利の音を大きく立てながら、セルフィは転がって落下して来た。

正直、驚いた(そりゃもう凄く!もの凄く!)

べしゃん、と尻餅をついたセルフィには慌てて近付く。


「ちょ!大丈夫!?何か無茶苦茶綺麗に転がってたけど!?

「アイタタ・・・。 うん、 しょっと」


セルフィは腰を少しだけ摩っていたが、直ぐに立ち上がって自分に着いた砂を手でパッパと払った。

思いの他、大丈夫そうで・・・。とが思っているとセルフィがを視界に留めて「〜昨日ぶり〜!」と言いニッコリと笑った。
本当に大丈夫そうだ。とは思い笑みを返して「セルフィ、何かあったの?」と問うた。

他の班の人が来るくらいだ。恐らくは伝令だろう。

とスコールはそう思いながらセルフィを見やる。
するとセルフィは頷き、「あたし、A班の伝令」と言った。
そう言った後、きょろきょろと辺りを見渡す。


「班長はサイファーだよね? 何処?」

「サイファーなら・・・・・・、」


此処に。 と言おうとした途端は固まった。
先程まで彼が居た位置に誰も居なかったからである。


「居ない。 サイファーが消えた」


がそう呟いた途端、辺りに今度は低い声が響き渡った。


「何時か聞かせてやるよ!
 
俺のロ〜〜〜マンティックな夢をな!」


恐る恐る声のした方を見ると、小高い崖の下の電波塔の入り口にサイファーが居て、何やら叫んでいる。
何だよ、ロ〜〜〜マンティックって。 等とが思っていたら横に居たスコールが手で頭を押さえた。


・・・口に出てるぞ

あ。 ・・・そう? 思っただけのつもりだったんだけどね・・・」


はははは。と乾いた笑い声を上げつつは頭をかく。
そんなにゼルは「でも気持ちは分かるぜ・・・」と呟く。

そんなゼルの横でセルフィが「伝令って辛いね」と言い助走をつけて「はんちょ〜待てぇ〜!」と言いながら崖を飛び降りた。
今回は先程の様に転がり落ちる事は無く、綺麗に着地した。

そんなセルフィを見て、ゼルが「ウゲッ」と短く声を上げる。

セルフィは崖下から此方を見上げてきて手を振る。


「何してんの?行こうよ!」


ブンブン手を振りつつそう言ってくるセルフィ。

は馬鹿正直に崖から飛び降りようとしたスコールの上着の裾を掴んで止め、脇にある坂道へと引っ張った。
ゼルは何処かホッとした様な表情で後ろから付いて来る。
セルフィの所に行った途端、彼女に「遅かったねー」と言われる。
そして両手を広げて一度軽く飛びつつ、口を開く。


「ぴょーんと飛び降りれば直ぐなのにぃ〜?」

「直ぐなのにぃ〜・・・・・・、・・・って、普通こんな所飛び降りねぇよ! なぁ、スコール?」


セルフィの動作と声真似をしてそう言った後に手をブン、と振り下ろしてそう言うゼル。
ノリ突っ込みなの?ノリ突っ込みなんだね!?と思ったが噴出する横でスコールは「そうか?」と言った。


「チキン野郎以外なら誰でも出来るんじゃないのか?」

「あ・ん・だ・とぉー?」


スコールのチキン野郎呼ばわりが勘に触ったのか(触って当然だ)ゼルは怒りを露にしてスコールを睨み付けた。
其れにセルフィが反応して小首を傾げる。


「ん?怒ってるって事は、この人チキン野郎なの?」

「なっ・・・! どいつもこいつも・・・!! 俺はッ!チキンじゃねぇ!!」

「チキンが嫌なら大サービスでポークかな〜?
 あ、でもブタ野郎ってのも何か嫌だよねー」

「チキンの次はポークだと・・・? もう良い!勝手にしろ!!」


ゼルの迫力に動じず、セルフィは笑顔のまま思った言葉をつらつらと述べていく。
其れのせいで完全に怒ってしまったゼルにスコールが彼に声をかける。


「いちいち気にするなよ、ゼル」

イヤイヤイヤイヤ!ちょっとスッコー!其れ可笑しくない!?


ずっと笑っていたがスコールの一言に大いに反応する。

誰が言い出しっぺだよ、誰が!!

心の中でそう強く思いながらはスコールを見上げる。
が、相変わらずの涼しい表情だけが帰って来た。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・まぁ、いっか・・・。取り敢えずサイファー追いかけようよサイファーを」


溜め息を一つ落として言うにセルフィが元気良く返事をした。




つい「そうか?」を選ぶ所。
減点?そんなの気にしない!(というか言い出しっぺの癖して気にするなよ発言、スコール、あんたって子は・・・!)