「お兄ちゃんは・・・えーっと?何か結構あんな感じでしたよ?
スコールがさっき言われてるの見て思ったけど、しつけ、しっかりしてますよね・・・」
私もあんな風にされてたのかな?
はそう言いながらラグナに笑んだ。
「俺には敬語でしかも苗字呼びで、あーんなツンツンな癖にな」
「拗ねてるんですか?」
がくすくす笑って言うのに対し、ラグナは「いいじゃねっかよー!」と返す。
「・・・でもよ、ちゃん、ほんっとごめんな?
大事なお兄ちゃんを俺たちのせいでずーっとあんなにしちまってさ」
ラグナはそう言い頭を下げた。
「ごめんな、」と言う彼には「頭を上げて下さい」と慌てて言う。
「私は大丈夫でしたから!
アービンに会って、セフィ、ゼル、キスティ、リノア・・・それに、スコールにも会えたから・・・」
「ちゃん・・・!」
「お兄ちゃんがラグナさんの事、すっごく大事に思ってるの分かります。
だって、村を出て行く時もお兄ちゃん、ずっとラグナさんの事言ってましたから!
・・・確かに寂しかったけど、お兄ちゃんらしい理由でしたし、私には皆も居ましたし・・・。
・・・だから、平気でした!
これからもっとお兄ちゃんと、ラグナさん達との事も聞いて行きたいですから!」
えへへ、とはにかんで言うにラグナはぶるりと肩を震わせ、「うおおおお・・・!」とうめき声を上げる。
「良い子だ・・・なんて良い子なんだ・・・!
ちゃんっ!将来俺の娘にしてやりたいぜぇ〜〜〜!!」
そう言いながらの頭をぐりぐりと撫でる。
それを嬉しそうに受けるを、クロスは頬杖を着いて見ていた。
次に、隣に居るスコールの様子に気付いて笑む。
「・・・スコール、大丈夫だ。お前からを取ったりしないから」
「・・・なら、良い・・・」
少し拗ねた様子のスコールに口の端を上げつつ、クロスは窓の外に見えてきたルナティック・パンドラを見た。
目前まで迫ったティアーズ・ポイント上空に止まっているルナティック・パンドラ。
操縦室に集まり、操縦桿を握るセルフィにスコールが指示を送る。
「このまま真っ直ぐに突っ込む」
「りょ〜か〜い!」
セルフィがスコールにそう返した後、ゼル達が口を開く。
「いよいよだ! 突っ込もうぜ!」
「素直に行かせてもらえるかしら?」
心配するキスティスにリノアが「大丈夫、大丈夫」と言う。
アーヴァインはそれに頷きながら、「セフィ」と彼女の名を呼び操縦席に手をかけて覗き込む。
「機関砲、主砲の準備は整ってる?」
「準備オッケィ〜!ズカ〜んと撃って、ドカ〜んと大穴開けてやる!」
えいっ、という軽い声と共にセルフィは機関砲を撃ち出す。
が、強力なバリアがルナティック・パンドラ周辺に張り巡らされているようでそれは弾かれた。
「バリアだ!」と誰かが叫んだ。
しかしセルフィはそのまま直進し、「突き破っちゃえー!」と声を上げ、操縦桿を思い切り操作した。
機関砲を撃ったまま、バリアに体当たりする。
そのままゆっくりと進み、バリアを突き破る。
次に主砲を思い切り撃って目の前の壁に穴を開け、ラグナロクのアームを操作する。
前の部分を思い切り壁に突っ込み、アームでちゃんと固定をして、やっと揺れが収まった。
「さっさと乗り込もうぜ!」
ゼルの言葉に皆が頷いた。
取り合えず先に進む組と後からラグナ達と共に来る組に分かれる事にした。
最初の突撃組は、スコール、セルフィ、ゼルとなったが、がそれに非を唱えた。
「異議あーり!
スコール、私きっと役立てる!一緒に連れてって!」
「・・・お前は狙われているんだぞ」
「分かってる! でも、きっと役立てる!」
じ、っとスコールを見詰める。
そんな彼女に賛成の意を上げたのはアーヴァインだった。
「いいじゃんか、スコール。連れてってやんなよ〜」
「・・・だが、」
「その四人の方がバランスも取れるし、何より精神的にも落ち着くだろ〜?」
一々はどうしてるかって考えないでさ。
アーヴァインに言われたスコールはぐっと言葉に詰まり、少し考え込んだ。
を見下ろし、「仕方ないな・・・」と言いつつスコールは彼女に注意をするのも忘れない。
「いいか、俺の傍から絶対に離れるんじゃないぞ」
「うん、分かった。約束する」
それが危険な場所に連れて行く条件。
はそれを了承し、頷いた。
結局を連れて行く事になったスコール達は先にラグナロクを降りた。
他の面々は残ったラグナロクの固定作業や、色々な準備の為に後から来る。
降りて少し歩いた先で、何やら聞き覚えのある声が響いてきた。
「凄い音したの、こっちだもんよ! きっと奴らだもんよ!」
「否、奴等、到達不可能」
(あの声・・・)
聞き覚えのある声にスコール達の足が止まる。
そのままでいると、前のほうにある階段から、例の二人が現れた。
此方の姿を目に留めた瞬間、「あーーーっ!!」と声を上げる。
「ほら、スコールだもんよ!!」
「驚」
雷神と風神だった。
風神は赤い瞳を丸くした後、直ぐにその瞳を細めてゆっくりと首を振った。
「然、都合、良」
「そうだもんよ!もよこすもんよ!」
「ふざけるな!は渡さない!」
スコールは吼える様に言い、彼女の前に立って腕を横に薙いだ。
「エルオーネも返してもらう!! アデルも復活させない!!」
スコールの背を見詰めつつ、は思わず頬を染める。
彼の様子で、いかに自分が想われているのかを再確認したからだ。
「よ、欲張りだもんよ! 狡いもんよ!」
「説得、効果無。 無理矢理、奪」
「そうだもんよ、行くもんよ!!」
雷神と風神がそう言い、其々の武器を構える。
それに此方も習って各々が武器を構えた。
「ほ〜ら、俺が言った通りになったもんよ」
「・・・・・・」
雷神が言うが、風神は無言だった。
そのまま、風神は手に持っている刃の付いた円形の武器を構え、撃った。
それはゼルの腕に傷を作り、彼女の手の内へと戻っていく。
「・・・我、決意。倒、全敵。助、サイファー」
ゼルは「このっ」と言い風神へ向かって駆けるが、彼女の前に雷神が立ち塞がった。
「風神には近付けさせないもんよ!」
「邪魔だ!」
雷神とゼルが交戦を始めた所で、スコールが援護に入る。
その隙にセルフィが風神に近付いて彼女の集中を妨害する。
「魔法は撃たせないよ!」
ヌンチャクを振るうが風神が後方へ跳んでそれを避ける。
追撃に身体を反転させてまた振るうが、今度は武器で防がれた。
「風神!」
追い詰められていく風神に気を取られた雷神。
其処にゼルが「余所見とは余裕じゃねぇか!」と言いつつ拳を繰り出す。
それをまともに喰らった雷神に今度は風神が視線を寄こす。
風神の隙を見逃さず、後方から跳んだが「ごめんね」と呟いて勢いで身体を回して、蹴りを入れた。
見事に風神の腹部に入ったそれのせいで、彼女は地から一瞬離れて吹き飛んだ。
受身を何とか取りつつも、転がった彼女に雷神がすぐさま駆け寄る。
その際に殴り飛ばされたゼルは、スコールが支えた。
咳き込む彼女を抱き起こしながら、雷神は一歩後退する。
「無情、」と呟いた後に、風神が続ける。
「一先、撤退」
「お、おう!まだ、負けた訳じゃないもんよ!」
「あっ!待ちやがれ!」
雷神は風神を抱きかかえたまま走り去っていった。
そのまま追おうとしたゼルを、スコールが止める。
「良い、俺たちも体勢を立て直してから行こう」
「取り合えず、ゼルを治すね」
スコールの言葉に頷きつつ、がゼルに掌を翳す。
ケアルラをかけて、彼の傷を癒していく――。
全快したゼルは「ありがとうな!」とに礼を言い拳を振るった。
「よぉーっし!次こそは一発入れてやる!」
「うんうん〜!その意気だよ〜!」
セルフィと共にはしゃいで歩き出す二人の背を見つつ、はスコールに声をかける。
「スコール、やっぱり手加減してた?」
「・・・アンタは、微妙だったな」
風神の腹に一発。
そう言うスコールには苦笑する。
「剣だと危ないかなーって思って・・・。
ほら、風神って綺麗な顔してるじゃん!傷つけたくないなって!」
「痣になるぞ、あれは」
スコールの的確な突っ込みには「う゛」と言葉を詰まらせる。
がっくしと項垂れた彼女に、スコールは少しだけ笑んで頭を撫でてやる。
「きっと魔法で治してるさ」
「雷神は使えないんだぜよ」
「・・・自分で治してるさ」
「そーだといいなー・・・!」
風神、女の子なんだし。
と、呟くは顔を上げてスコールを見上げた。
銀の髪がサラリと舞って、この場に似合わない良い香りが漂う。
銀の髪に眩しさを覚えてスコールが目を細めていると、が小首を傾げた。
「どーしましたかーい?スコールさーん?」
「・・・別に」
スコールはそう言い再び前を向く。
そのまま歩いていると、機械的な道のりから結晶の様な道に出た。
ゼルとセルフィが「ルナティック・パンドラの中だ」と言う。
「でも前入った所とは違うねぇ〜」
「そうだな。
・・・あっ、そうそう。俺らお前達が宇宙に上がってる間にエスタの真上をこれが通ってよ。
中に入って阻止しようとしたんだぜ」
失敗しちまったけど。
と、に説明をする。
へぇ、と零しつつ辺りを見渡すだが、少し進んだ先に見知った気配を感じて立ち止まる。
通路の先には、また雷神と風神が立っていた。
「また会ったもんよ!お相手するもんよ!」
「相手、今回、自分達、否」
「そうだもんよ!すんごいメカがあるんだもんよ!」
雷神に支えられるように立っている風神が合図をすると、真上から巨大な機械が降りて来た。
緑色の混じった機体は、縦長く、ふわりと宙に浮いている。
それを見た途端、ゼルとセルフィが「あーっ!」と声を上げる。
「これだ!前これに会って・・・!」
「今度こそぎったぎったに壊してやるんだから〜!」
ゼルとセルフィが構えたのを見て、スコールとも構える。
そうした途端、機械は両肩からツイン・ホーミングレーザーを撃ってきた。
それは真っ直ぐに此方へ向かってきて、四散して避ける。
避けた先、上手く着地しながらはストックしてあったライブラを放つ。
「・・・機動兵器8型BIS・・・? ・・・やっぱ機械だからか雷に弱いみたいだねー!」
ビーム攻撃には注意だよ!
と、言うにスコールは了承し、バックステップを踏む。
「G.F.を召喚して一気に片をつける。援護を頼む」
「あたしもスロットで手伝うよ〜!」
セルフィも下がってヌンチャクを両手で持って集中の体勢に入る。
それにゼルとが前に出て構える。
「その間は私達で!」
「おうよ!、気をつけろよ!」
そう言い駆けていくゼルに、「ゼルこそ!」と言いも駆ける。
双剣をクロスさせ、思い切り振るう。
―が、硬い装甲の前ではガキンという金属音を立てるだけだった。
なら、と思いは軽く跳んでその機体を足蹴にして真上に飛ぶ。
そのまま拳を繰り出すゼルと共に、ピンポイントに踵を落とす。 が、
「ひえええぇぇぇ・・・! い、痛い・・・!」
「硬いっつーんだよー!」
結局、二人で気を引いて逃げる事にした。
じんじんと痛む足を気にしつつ、はシェルを自分達にかけて逃げ回る。
ビームも跳んで避けて、スコール達を見る。
すると、スコールはやっと召喚に成功したのか、片手を振り上げた。
それと同時に、次元の狭間から雷を纏ったケツァクウァトルが現れる。
あわせるように、セルフィも「いっけ!」と言いヌンチャクをくるりと回した。
「サンダガ×3っ!」
ケツァクウァトルの攻撃と共に、セルフィがスロットで出した魔法を放つ。
雷の魔法を連続で喰らった機動兵器8型BISは、黒い煙を立てながら、そのままガションと音を立てて落下した。
そして、粉々に粉砕された―――。
「よし、奥へ行った二人を追うぞ」
ガンブレードを仕舞いながら言うスコールに、達は頷いた。
すっかり騎士である、スコール。