奥へ進んだ二人を追っていくと、開けた所へ出た。
台座の下には雷神と、エルオーネの後ろ手を掴んで拘束している風神。
そして、上にはサイファーがい居た。
裾の方が切れ切れになっているコートを翻し、サイファーは振り返った。
サイファーと目が合ったスコールは、「エルオーネを取り戻しに来た」と、だけ告げた。
それにサイファーは己のガンブレードをトントンと肩に当てつつ、口を開く。
「お客さんみたいだぜ。相手してやってくれ」
サイファーの指示通りに、雷神が前へ進む。
それに達が再度戦闘かと身構えたその時―――、
「雷神、止!」
凛とした声が響いた。
風神の突然の静止の声に、雷神も足を止める。
そして、「何だあ?」と言い、小首を傾げるサイファーを見上げる。
「もうやめるもんよ・・・」
雷神はそう呟いた。
それに風神も小さく頷き、エルオーネを拘束していた力を緩めた。
そのまま一歩離れたエルオーネが、風神を驚いた表情で振り返る。
小さく頷くと、優しげに紅の瞳を細めて風神は「向行」と言いエルオーネの背を押した。
そのままスコール達の下に戻ってきたエルオーネに、スコールが声をかける。
「部屋から出ていろ。ラグナが迎えに来てくれるはずだ」
その言葉に安堵の息を吐いて、エルオーネは駆けていった。
彼女の背を見送っていただったが、サイファーの声に、再度前を向いた。
「おいおいおい、頼むぜ風紀委員」
「サイファー、やめるもんよ。 何だか訳分かんないもんよ・・・」
「訳分かんねえのはこっちだぜ。仲間だと思ってたのによ」
サイファーはそう言って肩を竦める。
彼の一言に風神は顔を俯かせ、「仲間・・・」と呟いた。
彼女はゆっくりと顔を上げてサイファーを真っ直ぐに見詰めた。
そして、握り拳を横に薙いで、半ば叫ぶ様に言った。
「仲間だよ・・・。
いつでも仲間だよ!仲間だから、あんたの力になりたいよ!
それであんたの夢が叶うなら何だってしてやりたいよ!」
あたしも、雷神も。
そう言い、風神は片目を揺らしつつ続ける。
「でもね! サイファー、あんた、操られてるだけだ・・・。
もう、自分の夢も何もなくして変なものの言いなりになってるだけだ!」
魔女の騎士になりたくて、憧れていて。
やっと念願の魔女の騎士になれた、と、思い込んでいるだけ。
「だから、元に戻ってもらいたいんだよ!
それ、アタシ達じゃ出来ないからスコールに任せるしかないんだよ!」
そこまで言うと、風神は顔を俯かせて唇を噛んだ。
「悔しいよ・・・」と彼女は肩を震わせて言った。
そんな彼女の小さな肩を、達は見ている事しか出来なかった。
「スコールに頼るしかないなんて・・・!」
自分達じゃ、サイファーを救えないなんて。
こみ上げる悔しさを振り払うように、頭を振って風神が顔を上げる。
「サイファー! まだ続けるの!?」
顔を上げると同時に散った雫。
揺らいだ紅の瞳に真っ直ぐに見詰められ、サイファーはガンブレードを振るった。
――そして、
「今までありがとよ! 雷神、風神!」
そう言いサイファーは飛び降り、真っ直ぐにスコールに斬りかかった。
ガンブレードとガンブレードのぶつかり合いの音が響く中、彼らは頷いて去っていった。
今のサイファーの様子はもう先ほどの様子では無い。
正に、"いつものサイファー"だったからだ。
自分達に任せて去って行った二人を見送りつつ、も武器を構えた。
「騎士ごっこを続ける気か?」
「騎士は廃業した。今の俺は若き革命家ってとこだな」
サイファーの返答にスコールが溜め息交じりに「何やってんだよ」と言う。
押し返されて離れた位置に着地したサイファーは、ガンブレードを構えつつ言う。
「いつでもデカイ事やってたいんだよ!
止まりたくねぇ。俺は走り続けてみせる!ここまで来たんだからよ、俺はゴールって奴を見てやるぜ!」
お前らには見せてやらねえけどな!
そう言い、サイファーは斬りかかって来た。
またそれを防ぎながら、スコールは今度は反撃をする。
二人の戦いを見ている中、騒ぎのせいか、集まりだした魔物をゼルとセルフィが応戦する。
は、
「・・・スコール、サイファー・・・」
戦う二人に向かい、駆け出した。
「ストップ!!」
ガキィン!!
ガンブレード同士が振り下ろされたその隙間に素早く滑り込み、
双剣を交差させて双方のガンブレードを受け止めた。
腕に走る痺れに表情を歪めながら、力の抜けた二人を押し返す。
後ろに跳んだサイファーが「!邪魔すんじゃねぇ!」と言うがは気にした素振りを見せず。
両手に双剣を持ったまま、スコールを背にした。
「・・・あの頃の訓練とは比較できないくらいだよね」
「・・・分かってるじゃねぇか。 退け」
二人がお揃いの傷を作るきっかけとなった訓練。
あの時も、こうして私が止めたっけ。
そんな事を思いながら、は首をゆっくりと振ってサイファーに一歩近付く。
「退かない。
・・・ね、サイファー。さっきの風神の言葉、届いたんでしょ?」
「・・・・・・」
「風神も、雷神も、いつも馬鹿やってるサイファーが大好きなんだよ。
今のサイファー、目がキラキラしてる。前みたいに」
そのまま近付いて、サイファーの目の前に立つ。
以前彼が夢を語っていた時と同じように、今のサイファーの瞳は澄んでいた。
だから、
はそんな気持ちを込めて双剣を腰の鞘に収める。
そして、片手を差し出した。
「戻っておいでよ、サイファー!」
そんな彼女の様子を、スコール達は見守っていた。
もしかしたら、という淡い期待を抱いて。
そんな時、入り口の方からキスティス達やラグナ達が入ってきた。
ラグナの隣には、エルオーネも一緒に居る。
「サイファー!」と、キスティス達が反応した瞬間、彼は動いた。
「まだだ!!」
そう言い、上げかけていた腕をそのまま動かし、を捕らえた。
を抱えたまま走り出すサイファーを、スコールが慌てて追う。
「待て!サイファー!」
「まだ、終わりじゃないぜ、スコール!!」
サイファーはそう言うと、ある扉に入っていった。
それは一度ロックしたら開かない設定になっているのか、閉まった後は開かなかった。
「!!」と叫ぶ様にスコールは彼女の名を呼ぶと、そのまま走り出した。
慌ててセルフィ達も続いて彼を追う。
(追い詰められたあいつがを連れて行く場所なんて、ひとつしかない・・・!)
間に合ってくれ・・・!
そう思いながら、スコールは駆けた。
「ね、サイファー。 もう止そうよ」
さっき、手を取ろうとしてくれてたじゃん。
そう言いながらは今は後ろに居るサイファーを振り返る。
後ろ手を彼に拘束されているので、身動きは取れない。
そんな彼女らの目の前には、魔女・アデルが封印されている装置があった。
封印がもう解けかかっている。
それに気付きながらも、はサイファーを気遣った。
「ほんとは意外と優しいんだよね、サイファー。
クサイファーって呼んでも、なんだかんだで許してくれたし」
「今はふざけてる場合じゃねぇ! 俺はもう戻れねえんだよ!
何処にも行けねえんだよ!魔女は一つに!アルティミシア様のお望みだ!」
「・・・・・・可哀相なサイファー」
はそう呟くと、首を動かして真っ直ぐに彼を見詰めた。
「サイファーの目、凄い迷子の目。
・・・ねぇ、サイファーは一人じゃないよ?
風神も雷神も居るし、良いライバルのスコールだって、他の皆だって居るでしょ?
私だって、サイファーの仲間で・・・友達じゃないの?」
「・・・」
瞳を細めるサイファーに、は微笑む。
「ね? だからこんな事止めて、皆と仲直りしよう?」
ね?
と優しく言ってくる彼女の肩口に、思わず顔を埋める。
肩を震わせるサイファーだったが、それも長くは続かなかった。
アデルが動き出したからだ。
唐突に放たれた魔法は二人に命中し、サイファーは後方に吹き飛ばされた。
逆に前方に吹き飛ばされたは、床に手を着いて立ち上がろうとするがダメージのせいで上手く身体が動かない。
しゃがみこんだまま、顔を上げると、其処には不適に笑むアデルの姿があった。
パキン、パキン、と、封印の装置の管が壊れる音が響く。
近付いてくる其れに思わず「あ、」と短い声が漏れる。
それとほぼ同時に「!」という自分を呼ぶ愛しい人の声が。
スコール達が来たのだろう。
アデルの目の前で、床にへたりこんだままのと、なんとか起き上がった駆けるサイファー。
「くそっ!ッ!!」
サイファーが名を呼びながら手を伸ばしてくる。
が、それよりも早く封印装置の中から伸ばされてきた巨大な手がを捕らえた。
「ッ―――!!」
声にならない悲鳴。
再度吹き飛ばされたサイファー。
部屋を覆う不気味な輝き。
「ーーー!!」
スコールの叫び声に反応するように、光の中から「スコール!」という声が聞こえてきた。
が、直後、
「いっ・・・! いやああああああああああああ!!!!!!!」
「!?」
耳を劈く様な悲鳴が響き渡った。
光が収まった時、其処にはアデルの巨体が現れた。
胸部には、ぐったりとした様子で瞳を伏せているが今まさに取り込まれようとしていた。
「う、」と苦しげに声を漏らす様子からして、意識は未だかろうじてあるようだ。
「を助けなきゃ〜!」
「ああ、アデルだけを狙うんだ!」
セルフィの声に頷き、スコールがガンブレードを構える。
今度はアーヴァインがゼルと交代で前へ出て、銃を構えてアデルだけに狙いを定める。
ガゥン!という音と共にアデルに数発弾丸が打ち込まれて彼女はよろけた。
次の瞬間、
「ああっ・・・!」
から光が舞い出て、アデルの中へと吸収されていった。
直後、みるみる内にアデルの傷は塞がり始めたのだ――。
その様子に後ろのほうでラグナを守るように立っていたクロスが舌打ちを一つする。
「からエネルギーを奪い取っているのか・・・!」
「おいおいおい!それじゃあ早いとこアデルを倒しちまわないとちゃんがやばいんじゃねぇのか!?」
後ろのクロスとラグナの会話を耳にしていたスコールは真っ直ぐに彼女だけを見詰めた。
(・・・!)
アーヴァインの攻撃だけでは先ほどの繰り返しだ。
だがアデルの魔法からラグナ達を守らなければいけない為にあまり攻撃人数を増やす事も出来ない。
そう思っていると、
魔法が放たれ、アデルの顔に命中した。
よろけたアデルに、思い切った斬撃が繰り出された。
得意技の"雑魚散らし"を繰り出した相手を、スコールは横目で見る。
「・・・あんた、結局どうしたいんだ」
「勘違いしてんじゃねぇよ」
そう言いサイファーはガンブレードを再度構えた。
「俺は、を助けるだけだ」
手を貸す訳じゃねぇ。
サイファーはそう言い、再度走り出した。
ほぼ同時にスコールも走り出し、二人で斬撃をアデルに食らわす。
跳んだ拍子に、スコールは手を伸ばす。
アデルの胸部に取り込まれかけているに。
うっすらと瞳を開いたは、スコールの姿を目に留める。
「・・・ス、コール・・・」
「!」
後少しで手が届く―――と、いう所で。
「いいんちょ!危ない!」
アデルが振った手がスコールに命中した。
力のある腕により、吹き飛んだスコールをウォードとキロスが受け止めた。
「大丈夫か!?」
「くっ・・・」
前方ではスコールの代わりにセルフィがサイファーと共に前線に出て攻撃をしている。
二人の攻撃の合間に、アーヴァインがショットを放ってアデルだけを狙う。
が、アデルはからエネルギーを奪い、傷を癒しにかかっている。
一気に片をつけなくては、が。
そう思い、スコールは痛む身体を叱咤し、立ち上がる。
「・・・・・・」
すっかり色を失ってしまった頬。
ぐったりと項垂れている彼女の様子に、眠ったままだった彼女の姿がぶれて見える。
このままだと、は。
二度と目覚めない。
魔女が融合して、アルティミシアが未来からやってきてアデルと組む、なんていう考えは今のスコールの頭にはなかった。
唯、がこのままだと二度と目覚めない。
その危惧しか考えていなかった。
セルフィ、と彼女を呼んで下がらせて自分が前へ出る。
スロットを使って一気に畳むしかない。
アデルを倒したら、直ぐにを救い出す。
スコールはそう思い、ガンブレードを再度構えた。
「・・・、待ってろ。 今俺が助けてやるから・・・!」
「・・・お前ら・・・、」
呟いたスコールに、隣に居たサイファーが何か言いたげに呟いたが、彼はそれ以上は何も言わずに前を向いた。
アデルの振るった腕を避けつつ、何か近付く方法は無いかと探す。
跳んだ勢いでアデルの腕を切りつけても、大したダメージには至っていないようだった。
次の瞬間、スコールとサイファーを炎が襲った。
アデルの魔法、フレアだ。
二人が吹き飛んだ所に、アデルが追い討ちをかけようと腕を振るう。
その瞬間、
アデルの顔面を刃が襲った。
どこからか飛んできた其れは彼女の頬に傷を残し、持ち主の手元に戻っていく。
次の瞬間、
「秘儀ッ!雷神飛竜昇!!」
雷神が現れてアデルに一撃を喰らわせた。
よろけるアデルにアーヴァインがショットを連発する。
その隙に駆けて来た風神がサイファーに掌を翳す。
「治療、」
そう呟き、ケアルガをかけてくれる風神をサイファーは見上げた。
「・・・よぉ、戻ってきたのか?」
「・・・アタシ達は、いつもサイファーと一緒だから・・・」
だから、と、風神は呟く。
サイファーは少し笑って、手を伸ばす。
彼女の銀の髪に触れ、起き上がった。
「そうだな、これからも、俺に着いて来いよ?」
「・・・勿論! 雷神、共」
「ああ、アイツも一緒だ」
サイファーはそう言うと立ち上がった。
ガブレードを再度構え直して、「おい、スコール」と彼を呼ぶ。
自力で回復魔法を放った彼も起き上がり、ガンブレードを構える。
「一気に次で決めるぞ」
「言われなくても、分かってるさ」
スコールはそう言い、横目でセルフィに合図をした。
スロットの回転は、当たり目で止めてある様で、彼女は笑んで頷いた。
「行くぞ!」
スコールの声と共に、セルフィが魔法を放つ。
サンダガ×3だ。
強力な雷を喰らい、よろめいたアデルにアーヴァインのショットが容赦なく連射される。
苦しむアデルに、とどめが振り下ろされた。
「「うおおおおおおおおおっ!!」」
サイファーとスコールの剣筋が交差すると同時に、トリガーが引かれる。
爆発的な斬撃を喰らったアデルは、悶え苦しみ、その身を光らせた。
今だ!
スコールはそう思い、真っ直ぐに彼女に両手を伸ばした。
「ーーーーーッ!!!」
アデルはトラウマ←
今回風神雷神、サイファーにも出てもらいました。
いやだって、ね!この三人も大好きなんで・・・!
ちなみに風神のサイファー説得イベント、 大 好 き だ←