「・・・」
アデルが消滅する瞬間、取り戻した。
しっかりと腕に抱きつつ、スコールは彼女の名を呼んだ。
それに反応するように、ゆっくりと瞬きを繰り返しては彼の姿を目に留めた。
「・・・うん、大丈夫、スコール・・・」
「・・・ああ、俺が助ける、何度でも」
それに少し微笑んだ後、は唐突に身体を震わせた。
次に、表情を消して何処か見詰めている。
空を見詰める彼女の様子に、ラグナがハッとして声を上げる。
「エルオーネ、今がチャーンス!」
それにエルオーネは頷き、先ほどラグナから話を聞いていた通りに行動をする。
の中に今、入り込もうとしている未来の魔女・アルティミシア。
彼女ごと、の意識を過去の魔女へ移すのだ。
ジャンクションしたのか、の身体ががっくりと重くなる。
五秒くらい経って、ラグナが「エル、」と彼女を呼ぶ。
「もういい。ちゃんだけ、取り戻すんだ」
エルオーネが再度頷いた後、がゆっくりと瞳を開いた。
パチパチと瞬きを繰り返した後、「おはよ、スコール」と言うにラグナが安心する。
そして、「よくやったぞ〜」と言いエルオーネの頭を優しく撫でて褒めた。
「・・・アデルの中に入った、んだと思う、うん。若くて、綺麗なアデルだった」
の言葉に、スコールが「そうか」と言って彼女の頬を撫でる。
「アルティミシアはアデルの中だ。お望み通りの結末だぜ。
さ〜て、こっからが大勝負だ。時間圧縮、始まるぜ。『愛と友情、勇気の大作戦』だ!頼むぜ、若者達よ!」
ラグナはそう言い、エルオーネ達と共に走り出す。
サイファーは風神、雷神と共に。
残ったスコール達は、歪み始めた世界を見詰めていた。
直後、床に穴が開いた感覚がし、そのまま真下へと全員が落下した。
空中を落下している感覚の中、は手を伸ばしてスコールと繋ぐ。
そしてもう片方の手を、空中で戸惑っているリノアに伸ばした。
「リノア!」
名を呼ぶと、リノアも手を伸ばしてきた。
しっかりと手と手を繋いだ瞬間、次は海の中へと放り込まれた。
だが不思議と、息苦しさは感じない。
「何処へ行けばいいの!?」と、戸惑いの声を上げるキスティス。
スコールは「イデアの家へ!!」と声を張り上げた。
私と、スコールの約束の場所・・・、
はそう思いながら、スコールの横顔を見詰めていた。
その時、もう片方の手がきゅ、と強く握られた。
「私・・・きっと消えちゃう・・・」
不安がるリノアに、も彼女の手を強く握る。
「大丈夫、リノア。私がリノアを消させない!!」
そう言うと、彼女は安心したように微笑んだ。
直後、海の底から海面まで弾き飛ばされた。
天へ向かって落ちる、という不思議な感覚の中、何処かに強い力で引き込まれた。
ようやく足を着いた先は、見覚えのある部屋だった。
「此処、って、デリング・・・シティ、の?」
「あ・・・私とが、魔女イデアに捕まった時の・・・?」
とリノアが零す。
直後、
『此処は始まりの部屋――、』
そんな声が頭に響いた。
何だと思う間もなく、目の前に椅子が現れ、向こうを向いて座る魔女・イデアが現れた。
「この光景・・・」と、が呟いた瞬間、イデアは立ち上がって此方を見る。
その姿は四重にもぶれて見え―――――、
「危ないっ!」
がリノアを突き飛ばした。
直後、彼女達の居た位置に雷が落ちた。
―魔法だ。
直ぐに立ち上がったが振り返った時、其処にイデアの姿は無く、別の魔女の姿があった。
時間圧縮により時空の彼方から現れた代々の魔女だろう。
周りの景色が歪み、変わっていく中、続々と魔女は現れた。
歴代の魔女。
今までの歴史の中、生きてきた魔女が続々と現れて襲い掛かってきた。
一人目を倒した直後、周辺の景色がデリングシティの部屋からティンバーへと映り変わった。
「此処・・・ティンバー!?」
「どういう事なの?」
うろたえるリノアとキスティスの脇を通り、は双剣を振るって魔女に切りかかる。
魔女を倒した途端、今度は辺りの景色が海に。
次々と現れる魔女を倒す度に景色は変わった。
炎の洞窟、訓練施設、エスタ、海辺、雪原、バラムガーデン、D地区収容所、ウィンヒル。
そして最後に、暗闇の中での戦闘になった。
醜い姿へとその姿を変えたのであろう、胴体の長い、禍々しい四肢を持った魔女が現れた。
は小さく頷き、自身の昂ぶりに精神を集中させた。
スコール達が前に出て、魔女の攻撃を受けている間、はふわりと浮かび上がった。
イデアから力の伝承を受け、更にアデルからも受けたのだ。
の魔力は、高まっていた。
両手を広げ、光の翼を見に纏い、地に降り立つ。
そして、両手を広げ、
「さようなら」
魔法・アルテマを放った。
真っ白になった世界の中、
気付けば、イデアの孤児院に居た。
現代の寂れた孤児院の扉を開くと、道が続いていた。
スコール達が戸惑っている中、だけが「こっち」と言い進んでいく。
辺りを見渡しつつ、アーヴァインが「ねぇ、此処ってどこなのかな?」と問いかける。
そう言った途端、辺りの景色が歪んだ。
庭へ出た途端、今まで居た孤児院は一気に姿を変えた。
禍々しい物に包まれる、唯の繭の様な物と化していた。
そして、あちあこちらに倒れている白い服を着た人たち。
スコールが彼らを見、「この時代のSeeD達か・・・?」と呟いた。
彼らは既に事切れていて、ピクリとも動かなかった。
イデアの孤児院の庭、幾多の鎖が食い込んでいた。
それに繋がっているのは、眼前で浮上し、闇夜の光を受けて怪しく輝く城―――、
アルティミシア城だった。
鎖を渡り、城の門まで進んだところで全員が立ち止まった。
「ここが・・・悪の城か」
ゼルが呟いて、アルティミシア城を見上げる。
彼の隣に居たセルフィも頷き、「とうとう来ちゃったね」と言う。
「ここ、気味悪いね。本当に住んでるの?」
「居るよ。きっとここに。 私達が倒す相手が」
「未来の魔女・・・」
アーヴァイン、リノア、キスティスが言う。
それにも頷き、「そうだね」と返す。
「感じる・・・、この中から大きな力を・・・、きっと敵はアルティミシアだけじゃないよ」
「・・・相手が何人居ようとも、俺らには関係無いさ」
スコールはそう言い、一歩前へ出る。
そして、振り返って全員の姿を確認する。
「みんながここにいるって事は、まだ時間が俺達の存在を許してくれてるって事だ」
「どうする? スコール」
「班を二つに分ける」
そう言い、スコールは直ぐにの腕を引いた。
表情は変わらないものの、行動に出たのだろう、
無意識の行動に、は少しだけ笑み、彼の隣にきちんと立った。
「俺と、ゼル、セルフィで行く。
そっちはキスティスを中心に行動してくれ」
「了解」
スコールの言葉にキスティスはSeeDの敬礼をして頷いた。
彼が前を向くと、自然と皆の目も前へと向く。
彼が歩を進めると、自然と皆も歩を進める。
「行くぞ」
その声と共に、大きな扉は開かれた。
ついにDisc4のアルティミシア城・・・!