ドルメンを倒した後、カトブレパスも倒し、ほとんどの力を取り戻した。

アーヴァイン達と合流した後、扉に手をかける。
がスコールに一歩歩み寄り、彼を見上げる。


「きっと、この先にアルティミシアが居るよ。覚悟はOK?」

「当たり前だ」


スコールはそう言うと、周りの仲間達に視線をやる。

大きく頷くキスティス、ウインクを決めてみせるアーヴァイン。

グッと拳を握るゼルに、軽くジャンプをするセルフィ。

両手を振って微笑むリノア、そして、


微笑んで頷いてくれる、


皆の覚悟を受け取り、「行くぞ」と言いスコールは扉を押した―――。










中に入ると、広い大広間の真ん中にある玉座に、アルティミシアが座っていた。

彼女は銀色の髪を揺らし、ゆっくりと紅紫の瞳を開いた。

其々の者の姿を目に留めると、ギリ、と奥歯を噛み締め、呟いた。


「・・・eeD・・・」


ポツリと呟かれたその言葉。

彼女は玉座の肘かけに拳を振り下ろし、顔を上げて紅紫の瞳を憎悪の色で揺らしながら此方を睨み付けた。


「SeeD・・・SeeD・・・SeeD、SeeD、SeeD!!!気に入らない!!!


アルティミシアはそのままの勢いで手を横に薙いだ。


「気に入らない!何故魔女の邪魔をする! 何故私の自由にさせない!?」


そう言うと、彼女の背にある漆黒の翼がざわりとざわめいた。
大きく開いた胸元に己の手を置き、「もう少しで、」と言う。


「もう少しで完全なる時間圧縮の世界が完成するというのに・・・」



「邪魔は許さんぞ」と言いアルティミシアは真っ直ぐに此方を見てくる。
放たれる敵意から、スコール達が其々に武器を構える。


「お前らの存在など時間圧縮のアルゴリズムに溶け込んでしまうがいい!!
 激しい痛みと共に思考が分断され、記憶も思い出も極限にまで薄められるのだ。
 何も出来ず、考えられず、思いすら何もない! そんな世界に、お前達を送ってやろう!」


時間圧縮の世界。
アルティミシアの言う通りの世界が、もう目前まで迫ってきている。


「お前達に出来る事は何も・・・」


そこまで言い、彼女は言葉を止めた。
そして、「否・・・」と呟くと足を組み替え、頬杖をついて妖艶に笑んだ。


「お前達に出来る事は唯一で永遠の存在である私を崇める事!!
 さあ、最初に来るのは誰だ!? 誰が私と戦うのだ!?」


アルティミシアはそう言い立ち上がった。
そしてスコール達を見下しつつ、笑んでみせた。


「ふ・・・誰であろうと結果は同じ事! 私が選んでやろう!」


話し合いの余地も無し。

自分を狙ってくる存在、SeeDを倒すべく、アルティミシアは大きく手を振り下ろした。
直後、聖なる魔法・ホーリーが放たれた。


「きゃっ!」

 セフィ!


最初に狙われたのはセルフィだった。
セルフィの周りで魔法が弾け、吹き飛んだ彼女にアーヴァインが駆け寄る。

「この野郎!」と言いゼルが駈ける。
拳を振り下ろす直前に、魔法の障壁で防がれてしまった。
受身を取ったゼルの真横を駈けたのは、スコールだ。

アルティミシアに思い切りガンブレードを振り下ろすが、やはり障壁が阻む。

が、スコールはトリガーを引き、爆発的な斬撃を繰り出した。
バチリと散る火花。

それにより障壁が薄れ、今度は真下から斬り上げた。

一撃がアルティミシアに届き、魔女がふらつく。

そこへ、リノアの放ったブラスターエッジが見事に命中する。
アルティミシアは其れを手で払い、魔法を放つ。


「させない!リフレク!」


キスティスが張った防御魔法のお陰で、放たれた其れは壁へと軌跡を変えて、爆発した。
二撃を放とうとするアルティミシアに、が「させないんだからね!」と言い魔法を放つ。


「「ホーリー!」」


同時に放たれた其れは、中央でぶつかり合い、激しい音を立てて爆発をした。


互角の威力。


吹き起こった煙を吸わない様にしつつ、スコールが瞳を細めていると、アルティミシアがふわりと浮かび上がった。
アルティミシアは、スコールを真っ直ぐと見下ろし、「ふふ、」と笑った。


「お前の思う、最も強い者を召喚してやろう。
 お前が強く思えば思うほど、それは、お前を苦しめるだろう。 ふふっ」


そう言い、手を天に翳した途端、光が舞う。

アルティミシアがその光の塊を、スコール達の前へと投げ落とした途端、

その光の中から、黒い身体と、真っ赤な角。
白銀の鬣を持つその獣の姿は―――、


「嘘・・・これ、グリーヴァ!?


が声を上げる。
スコールは思わずを見、彼女の首から下げられている指輪を見やる。

其処に刻まれている空想上の動物"ライオン"。
スコールが憧れていて、最も強いと思うもの、グリーヴァ。

それがアルティミシアの強大な魔力により、彼女のG.F.となり襲い掛かってきた。

直ぐにペインの魔法を放ってきたそれに、キスティス、ゼル、アーヴァインが倒れる。
爪の猛攻を防ぎながら、スコールが「リノア!三人を頼む!」と声を上げる。
「OK」と返事をして走っていくリノアに、グリーヴァの腕が振り下ろされそうになるが、


「させないよっ! ブリザガ!」


セルフィの放ったダブル効果のブリザガ二連発でリノアに攻撃が届くことは無かった。
は一歩下がり、精神を集中させる。


「目には目を!G.F.にはG.F.で!って事でっ!」


くるりと一回転をし、もまた、G.F.を呼び出した。
一番最初から、ずっと一緒に戦闘を潜り抜けてきたG.F.シヴァを。

辺りに冷気が吹き荒れ、氷の柱の中からシヴァが姿を現す。
もシヴァに魔力を注ぎ込み、その場に留まらせた。


「確かに、グリーヴァは強いよ。
 だってスコールが憧れている存在だもの」


でもね、と言いは宙に浮かんでいるシヴァを見上げる。


「うちのシヴァ姉さんだって、充分強いんですからねっ!」


そう言い、が手を薙ぐ。
それを合図にするかのように、シヴァが両手を振り上げ、その先に冷気の塊が生み出される。
シヴァの放つブリザガを喰らい、よろけるグリーヴァに、今度は最強の技を見舞う。

一気に辺り一面が冷気に包まれ、宙に浮かんでいくグリーヴァの所まで氷が張る。

シヴァがくるりと一回転した後、パチンと指を鳴らす。


直後、


バリィン!!という大きな高い音を立てて氷が砕け散った。
その氷に包まれていたグリーヴァにも、相当なダメージがいったようだ。

苦しみつつもまだ襲い掛かってくるグリーヴァ。

激しい攻防戦の中、アルティミシアの声が響く。


「ふふっ、記憶がなくなる?
 本当のG.F.の恐ろしさはそんなものではない。
 G.F.の恐ろしさ、貴様らに教えてやろう。その力、見せてやれ! グリーヴァ!」


アルティミシアの声が響いた途端、グリーヴァがまた魔法を放つ。
スコール、、セルフィの身体が光の膜に包まれ、上空へと上がっていく。


「な、何!?」


真っ白い世界へ辿り着いた途端、目の前にある角膜が膨張を始めた。


―そして、










閃光が走った。










そのまま上空から一気に振り下ろされた三人は地面へ叩き付けられた。
痛みの悲鳴を上げる暇も無く、崩れ落ちた三人に、リノアが息を呑む。


ッ!!!


彼女の名を呼び、駈けるリノア。
背後からまだ傷のせいで動けないキスティスが「リノア!」と彼女を呼ぶがリノアは止まらない。

そのまま崩れ落ちたに駆け寄ると、彼女を抱き起こした。


っ、! 待ってて、待っててね! 今、回復するから!」


そう言いに回復呪文を唱えるリノアの真上に、グリーヴァが現れる。
そのグリーヴァの肩に腰を下ろしたアルティミシアが、「解らない」と呟いた。


「何故お前はそれを救おうとする?
 お前はSeeDではない。それなのに何故危険を冒してまでそれに着いてくる?」

「決まってるじゃない!!」


アルティミシアの問いかけに、其方を見ずにリノアは声を張り上げる。
身体全身に大火傷を負っているを癒しつつ、リノアは肩を震わせて答えた。


は私の友達だからよ!!
 何時も何時も私を支えてくれた、何時も私に勇気をくれた!
 助けてくれた! だから今度は私がを助ける番なの!!」


そう言うリノアにアルティミシアは何も言わず、瞳を細めた。

直後、グリーヴァの腕が振り下ろされる。





もう駄目かと思ったリノアは、身を硬くしてをぎゅっと抱き締めた。


!!


が、何時まで経っても痛みは来ず、間近で金属音が鳴っただけだった。
怖々と瞳を開いてみると、直ぐ其処にもう一人の仲間がグリーヴァの爪を剣で受け止めていた。


スコール!

「リノア・・・! ッ、早く、を・・・!」


自身も深い傷を負っているのに、彼女の身を案じるスコール。
リノアは大きく頷き、に回復魔法をかける。

グリーヴァの腕を受け止める事で精一杯のスコールに、アルティミシアが動く。
目の前にふわりと降り立った倒すべき相手に、スコールは瞳を細める。


「可哀相に・・・痛いだろう?辛いだろう?楽になってしまいたいだろう?」


そう言い酷い火傷の部分をつ、と撫ぜる。
それに瞳を細めながら、スコールは彼女を睨み返した。

アルティミシアは嘲る様な笑みを浮かべ、紅紫の瞳でスコールを見詰めた。


「伝説のSeeD。お前は立派だね、立派過ぎて本当に目障りだ」

!!


そう言った途端、グリーヴァの力が増した。
「押しつぶされてしまえ」と言うアルティミシアに、スコールは何も出来ないでいた。


「未来永劫の苦しみ、貴様も味わうといい!!」


アルティミシアがそう言った途端、グリーヴァの目が光る。
これで終わりか、と思わず思ったスコールだったが、


「させないっ!」




物凄い雷が舞い、グリーヴァとアルティミシアに襲い掛かる。
グリーヴァには命中したが、アルティミシアは防御壁を張って防いでいたが。

スコールが思わず振り返ると、まだ身体に傷は目立ったが、膝を着いているが居た。


「スコール、もう大丈夫だよ」


がそう言うと、セルフィが奥で立ち上がり、頷いた。


「おっけ〜!回復するよ〜! スロット・フルケア!」


優しい光が舞い、スコールとの身体を包む。
大半の深い傷が癒えて、立ち上がった二人にセルフィが笑んでみせる。


「なんかあんま力残ってなくって・・・あたし達のはもうちょっと時間かかるかも〜・・・」

「充分だ。ありがとう、セルフィ」


スコールが言うと、セルフィは「えへへ」と微笑み、その場に崩れ落ちた。
彼女をリノアに任せて、スコールはグリーヴァとアルティミシアを見上げる。

アルティミシアはふんと鼻で笑うと、口を開いた。


「前置きは終わりだ!今度は私がグリーヴァにジャンクションしよう!」


そう言った直後、アルティミシアがそのままグリーヴァに入り込んだ。
一瞬にして光が舞い、グリーヴァの力とアルティミシアの魔力が融合される。


異形の身体となったアルティミシア。


グリーヴァの腹部に微かに残るアルティミシアの残骸。
しかし意識はアルティミシアの物であった。

周りの景色も様変わりし、微かにある地面の上に、スコール達は立っていた。


は双剣を構え、真っ直ぐにアルティミシアを見る。


「もう、これ以上皆を傷つけさせないんだから・・・!」


そう言うに、スコールが口の端を上げる。


「アンタは俺が守るんだ。 も、傷つけさせない」


スコールがそう言った直後、「勝手に一人で騎士気取るんじゃねぇぞ!」と声が響いた。
彼らの頭上を飛び越えてアルティミシアの真上から蹴りを放ったのは、ゼルだった。

踵落としを喰らわせた後、今度はアーヴァインがショットを放つ。


「僕達だって、着いてるんだからね〜!」


波動弾を放ち、ハイパーショットを繰り出す。
狙いに狂いが無いアーヴァインのショットは、急所ばかりを狙い撃っていく。

次に、スコール達の身体を光が包んだ。

キスティスの青魔法、マイティガードだ。
膝を着いたままの彼女は、笑んでみせると「これで、頑張って・・・!」と言った。
ゼルとアーヴァインもまだかなりの深手を負っている中で、こうして来てくれた。

その気持ちを受け止めて、は「スコール」と彼を呼ぶ。


「飛ぶ。手伝って!」


がそう言うと、スコールは「ああ、勿論だ」と言い、ガンブレードを真横に薙いだ。

そのまま二人でアルティミシアに斬りかかり、がついでに蹴りを入れ、その反動で飛び、空中で回転をする。
そして、スコールのガンブレードに綺麗に着地をし、一瞬の時の中でお互いに視線を合わせた。

スコールがガンブレードをそのまま薙いだ瞬間、が跳んだ。

空中で特殊技である"ヴァリー"を引き起こした彼女の背には、純白の翼が一瞬現れた。

魔力を極限に高め、そのままの勢いでは魔法を放った。


「喰らえっ! アルテマ!!


彼女の放った究極級の魔法は、アルティミシアとグリーヴァを包み込み、大規模な爆発を引き起こした。




文月の理解した範囲でのストーリーで進めています。
ので、以降もこっそりどこかに文中しかけがあるかもしれません。