魔女というものが居る。

ガルバディアを一時支配した魔女イデア。

恐怖に包まれ、ガルバディアとガーデンの戦いが起きた事は世界的な話題にもなった頃があった。

古来から途絶えることなく存在する、特別な力を継承した女性、魔女。

始祖は世界を創世した神ハインと伝えられているが、確証はない。

強大な力を備えることから、世界を支配する野望に駆られる魔女も居た。

そうした者の存在が人々に「魔女は恐怖の存在」という認識を植えつけた。

しかし一方で、社会の目を避けて静かな生活を送った魔女も多い。

その為に一体魔女は何人居て、どのように力を継承してきたかなどは一切明らかになっていない。

魔女になりうるかどうかの適正は、力を宿す為のキャパシティと相性によって決定される。

身体から切り離された純粋な力のみが、次の魔女へと継承される。

力の授受を行う者同士が血縁関係にあたる必要は無く、寿命も人間は同程度。

だが、力の継承を行うまでは魔女は死ぬ事ができない。
































以前ガルバディアを支配していた魔女イデアから力の継承を受けた魔女

今年で19歳になる彼女は、腕に着けたバングルを軽く弄り、きちんと付け直すと椅子から立ち上がった。
他の魔女の様に隠れ住む事も、世界を支配する事もせず、彼女はSeeDを続ける事にした。
本来、魔女を倒す為に作られたSeeDに魔女である自分が身を置くなんて。
そんな事も少し考え、は軽く自嘲的な笑みを零した。

腰のベルトに双剣をフックで繋げ、バラムガーデンにある自室のドアをあけた。


以前、ガルバディア対ガーデンの戦いがあった。
その際、相手はガルバディア領にあったガルバディアガーデンを本拠地とした。
バラムガーデン対ガルバディアの戦いの際、は魔女イデアから魔女の力を継承した。


あの時は、急に目の前が真っ暗になって、意識がなかった気がする


別の誰かが頭の中に入ってきて、体も勝手に動いて、どうにも出来なかった。
そのまま、宇宙で世界を恐怖で包んだ魔女アデルの封印を解いてしまった。
未来の魔女、アルティミシアからジャンクションを受けていた為、自分の意思とは裏腹に。
だが、自分がしてしまった事は事実。
このままでは、また未来からの介入を受けて、また別の事をしてしまうかもしれない。
そんな事などを考えたは、自分から魔女記念館で封印される事を望んだが、





目の前のドアが開いた。
表情から疲労の色が伺えて、は苦笑を思わず零した。
バラムガーデンの委員長に抜擢された彼は、仕事に追われているらしい。


「スコール、お疲れ様」


魔女記念館で封印をされる直前に、今、の目の前に居る彼が救出に来たのだ。
彼は魔女であるを嫌悪する事なく抱きとめ、彼女を受け止めた。
それからエスタの大統領であるラグナ達の助力も得て、未来の魔女、アルティミシアを打ち倒す事が出来た。

今の世界は、あちらこちらで諍いや魔物の被害もあるが、以前の様な脅威は無くなった。

魔物退治やら、兵の派遣。
ガーデンはそれぞれの仕事を、以前のようにこなしていた。


、調子はどうだ」


「ん?」と返すと、心配そうに細められた青の瞳がそこにはあった。
は彼を安心させる様に微笑んで、「大丈夫だよ」と答えた。
少しだけ安心した様子のスコールに、は少しだけ小首を傾げる。

スコールは過保護になった。

あの戦いの中から、彼は変わったと思う。
最初は無口で無愛想で、他人から距離を置いて、壁を作っていた。
それが今は、相変わらずあまり饒舌では無いが、結構話す。
そして、距離をあまり置かなくなった。
色々な表情も見せて、歳相応にも見えるようになった。
そんな彼が、今はにはとても過保護になっている。
魔女の騎士であり、恋人でもある彼は、純粋に彼女が大切なのだ。
それは周囲から見て取れる事だったが、どこか度が過ぎている様にも感じる事がある。

例えば、が段差に躓いてよろけたり転んだ時。
真っ先にスコールが駆けつけてきて、酷く心配をする。
何があった、体調でも悪いのか、等、仕舞いにはそのまま彼女を抱えて行くほどだ。
会えば先ほどの様に調子はどうかとも聞いてくる。
これは最近の出来事ではなく、当然自身に関する体調に関してだ。

今日ははエスタに行く予定がある。
月に数回、魔女の力についての検診があるので、ラグナやオダインの下へ赴いている。
本当はエスタの施設に居る事が一番良いらしいのだが、本人とスコールがそれを拒否した。
バラムガーデンで仕事をしたいから。
はそう言ったが、スコールは恐らく傍にを置いておきたかった事が大きな理由になっていると思われる。

スコールに仕事がある時などはゼル、キスティスなど以前から馴染みのあるSeeDの仲間がエスタに行くのに同行をしていたが、
手が開き次第、スコール同伴という形になっている。
が大事なのよ」と、キスティスは言って微笑んでいたが、ゼルは「過保護過ぎるんじゃねぇの?」と零していた。
は彼らの言葉に苦笑しか返せなかったのを、思い出す。

それにしても、と、は考える。


エスタ、かぁ・・・


ずっと探していた兄、クロス・が今現在居る場所である。
幼少の頃に、ずっと捨てられた自分を拾って育ててくれた彼が音信不通になった。
それからずっとずっと彼を探していて、SeeDになったのも実力を身につけて世界中を歩く為だった。

目的を達成した自分が今SeeDをしているのは世話になったシドやガーデンへの恩返しのようなもの。
他に、スコール達と離れたくない気持ちがあるからだ。
それも自身は理解しているが、SeeDは二十歳で強制除隊制だ。
それまでに自分の今後についてをどうするのかを決めなければいけない。
クロスはがSeeDを続ける事に反対はせずに、寧ろ「がんばれ」と応援をしてくれるほどだ。
SeeDを除隊した後については、「エスタに来るのもウィンヒルに戻るのも、他の手を選ぶのも、お前の自由だ」と言ってくれた。
はぼんやりとだが、エスタに行く事を考えていた。


魔女の力の事もあるしね、


そんな事を考えていたに、またスコールが「?」と彼女の名を呼び、声をかける。
彼の声に反応し、顔を上げると、そこには心配そうなスコールの顔。
やっちゃったかな?と思いながらもは誤魔化す様に笑った。


「ごめんね、スコール!ちょっと考え事してただけだからさ!」

「体調は・・・
「大丈夫!」・・・なら良いんだが」


彼の言葉を遮っては小さく頷いた。
本当に、二年前の戦いからスコールは心配性というよりも、過保護になった。
は少々申し訳なさも感じつつも、彼の優しさに感謝と喜びを持っている。
戦いの中でも、そういえば彼は優しくしてくれる時があった。
そんな事を思い出しながら、えへへと笑みを零すを、スコールが少し笑って見下ろした。


「なんだ、急に笑い出して」

「ううん、スコールと一緒が嬉しくって」


そう言って笑ってスコールを見上げる。
その際に前とは変わり、肩まで伸びた銀の髪がさらりと揺れた。
スコールは愛しそうに瞳を細めて、彼女の肩を抱いた。
とん、と脇にぶつかる彼女の腕から伝わる体温が心地良い。
嬉しそうな様子のスコールに、も微笑んだ。




大変遅くなりましたがED後始動開始です!!!
お待たせ致しました!!

今回は説明編みたいな感じで^^