「やっほ〜!お迎えに来てあげたよ〜!」


こちらに向かいながら両手を振って言う彼女に、スコールとから思わず笑みが零れた。
茶色い髪が彼女が跳ねる度に同じような動きをする。
黄色いショートパンツからは健康的な太腿が伸びていた。


〜異常は無かった?」


だいじょ〜ぶ〜?
と、気の抜けるような声色だったが、緑の瞳には心配の色が含まれていた。
はそれを理解し、頷いた。


「うん。問題無しだってさ」

「よかった」


すぐに嬉しそうにぱっと笑うセルフィ。
そんな彼女にスコールが「一人か?」と声をかける。


「うん。あたし一人だよ」


珍しい。
大抵仲間内の誰かと迎えに来るのに。

そう思いながらスコールとが瞳を丸くすると、セルフィは靴の先で地面を突付きながら「だって〜」と零す。


「キスティスはなんか忙しそうだったし〜ゼルはバラムに今は戻っちゃってるし〜」


一緒に行く人居なかったの。
そう言い約一名の事はすっぱりと切り捨てているセルフィには苦笑を零した。


アービン、ドンマイ


思わず心中でそう言ってしまうほどに、は遠いバラムの地に居るであろうアーヴァインを思った。
そんな事を考えていると、「、」と後ろから呼ばれた。
振り返るに、橙色の髪を揺らし、クロスが近付く。


「またな」


そう言い頭を撫でる彼に、は「うん」と返事をして微笑んだ。
もう少しで二十歳になるというのに、と頭の隅で思いながらもは嬉しさを噛み締めた。


「スコールも元気でな。見送りは俺だけですまない」

「否、充分だ。ラグナは仕事があるんだろう?」


サボっていた分のものも。
スコールがそう付け足すとクロスはわざとらしく肩を竦めてみせた。
やれやれだよね。と言うクロスにスコールとが苦笑を返す。


「お兄ちゃんも頑張ってね」

「ああ。お前たちもがんばれよ」


そう言って笑い合い、血の繋がらない"きょうだい"は別れた。


ガーデン所有の小型飛行機の操縦席に座るセイフィの後ろに二人は腰を下ろし、彼女からの話を聞いていた。
委員長であるスコールの留守の間の出来事など、ガーデンの事が大半だったが別の事も出てきた。


「リノアがメールくれたんだよね」


セルフィは前を見ながらそう言い、嬉しそうに笑った。


「相変わらずティンバー独立〜とか言ってるけどレジスタンスや市民の声も最近は受け入れられてるみたい」


って、メールに書いてあった。
と言うセルフィにも頷く。


「じゃ、私のところにも来てるかもね」

「だと思うよ〜」


とリノア、だって親友だし。
そう言うセルフィにスコールも頷いた。
ちなみに、スコールにもリノアからメールはくるのだが、如何せん内容が「とは今日どうだったの」やら「ちゃんと大事にしてる?」やら。
やたらと絡みの事ばかりだった。
最初の頃は思わず額に手を当て、苦渋の表情を浮かべていた彼だが、最近ではきちんとしたメールをどこか嬉しそうに返していた。
以前、二人の間に立ち、二人を想ったリノアだからこそ教えられる事であるが。

スコールは横のを横目で見る。
紅紫の瞳は真っ直ぐに前を見据えていて、とても綺麗に澄んでいた。

大方リノアのメールについてを考えているのだろう、友を想う彼女の横顔を見ているスコールの目が、優しげに細められた。


「そういえばリノアから『SeeDを除隊したら森のフクロウに来ない?』とかもきてたな〜」

「え、森のフクロウにまさかの就職?」

「レジスタンスなのにか」


セルフィの言葉にが瞳を丸くして問う。
それにスコールが小さく息を吐いて突っ込みを入れた。
「そうですよねーい・・・」と呟いては苦笑をして頭をかく。


といいんちょはやっぱりエスタ?」

「まだ、色々考え中」


そういうセルフィは?
がそう返すとセルフィは表情を曇らせた。
どうしたのか、と思い二人で彼女を見やる。


「ガーデンの方から教員として〜とかガラにも無いお誘いが来ちゃってたり」

「あ、それスコールもだよ!教員になったキスティやシュウ先輩に誘われてたもん」

「委員長をそのまま続けろ、みたいな事を言われただけだ」

「シドさんも賛成って感じだったけどねー」


くすくすと笑って言うにセルフィは「そっかー」と零す。


「ニーダはそのままガーデンを動かし続けるみたい。なんかそのままガーデンに就職?・・・なのりみたい」


へぇ、と返すはセルフィを見やった。
操縦桿を握る彼女は、どこか遠くを見詰めている様子だった。


「ガーデンもいいんだけどさ〜なんか引っかかるんだよね〜」

「引っかかる?」

「う〜ん、色々〜。あたしも自分でよくわかんない」


そう言ってセルフィは困ったように笑った。
色々彼女なりに悩んでいるところがあるのだろう。
そんな事を思いながら、は手前に見えてきたバラムガーデンを見据えた。










「おかえり、、スコール」


ホールで出迎えてくれたのはキスティスだった。
彼女は綺麗な笑みを浮かべると、の体を肩からぺたぺたと触る。


「どこも変な所は無かったの?大丈夫だった?」

「キスティも心配性ですねーバッチリだよ!」


の言葉にキスティスは安堵の息を吐いた。
「心配もするわよ」と言ってキスティスは腰に手をあてた。


「ちょっとした魔力の乱れとかが、一大事に繋がるかもしれないのよ?」

「んー・・・大丈夫だよ!もう前みたいな事は起こさないように頑張るから!」

「 あ ・ の ・ ね 」


両手を腰に添えて胸を張って答えるに、キスティスが半眼になり彼女に詰め寄る。
それに思わずたじろぐだが、そんな彼女を助ける人は居なかった。


「私は貴女の心配をしているのよ!?」

「キ、キスティ、」

「私だけじゃないわ、セルフィもスコールも、貴女が心配なのよ!」


物凄い剣幕で迫るキスティスには思わず「はい・・・」と返事をする。
本当に分かってるのかしら。
キスティスはそう言いつつ、疑いの眼差しをに向ける。


「貴女は自分を卑下したり犠牲にしたりする精神があるから心配だわ」

「たはは・・・」


苦笑しか返せないに、スコールが近付く。
彼は小さく息を吐いて、「キスティス、」と彼女を呼んだ。


「一応これでも検査の帰りだ。を休ませてやってくれ」

「・・・そうだったわね」


ごめんなさいね、と言いキスティスは苦笑した。
そんな彼女にはほっと胸をなでおろした。


美人が怒ると怖いんだよー・・・

ドンマイ〜


ちらりとアイコンタクトを交わすとセルフィ。
あまり懲りてない様子のにスコールは溜め息を零した。


「アンタもアンタだ。俺たちが心配するのは当たり前だろ」

「分かったでございまするよーだ」


唇を突き出して言うに思わず笑みが零れる。
スコールはそんな彼女の頭をひと撫ですると、セルフィに視線を向けた。


「セルフィ、を頼んだ」

「りょうか〜い。 さ、部屋で一緒に休も!」

「はいよー!」


じゃーねースコールー!
と言い手を振って二人は歩いていった。
スコールは彼女たちを見送ると、キスティスに向き直った。


「・・・・・・で、出迎えだけで出てきた訳じゃないだろ?」

「そうなのよねぇ・・・。ちょっと貴方と話がしたくて」


キスティスはそう言い、困ったように肩を竦めた。










「あ、」


隣を歩くセルフィが短く声をあげた。
なんだろう、と思いがセルフィの視線を追うと、ある人物が視界に入った。


「・・・あ、」


それを見て、も思わず短く声を上げる。
バラムガーデンの廊下にあるベンチに腰を下ろしていたのは、アーヴァインだった。
しかし彼は一人ではなく、周りには女子生徒たちが座っていた。
楽しげに談笑している様子に、は内心で溜め息を零す。

なにもこんなところで、

そんな事を思いつつ、おそるおそると視線を隣に向ける。
向け、て、はその瞳を大きく見開いた。

最近よく見る光景だったので、セルフィも毎回同じような反応をしていた。
いつもは眉を挙げ、頬を膨らまして拗ねたような怒ったような表情をするセルフィが、

今、悲しげに瞳を細めたのだ。

最初こそは紅紫の瞳を丸くしていたが、次第にアーヴァインへの怒りがこみ上げてきた。
セルフィにこのような悲しげな表情をさせたのだ。怒らないはずがない。

思わず彼に一言文句でも言おうと歩き出そうとしたの腕を、セルフィが掴んで止めた。
どこか焦りを含んだ声色で「待って、」なんて言われてしまったら止まるしかない。
は振り返り、セルフィを見た。

彼女の瞳にはいつもの明るさは無く、ただただ困惑と悲しみの色だけが浮かんでいた。


「いい、いいんよ、あたしは、」

「セフィ、」

、部屋、行こ?」


ね?

そう言ってくるセルフィに、は頷く事しかできなかった。




ガーデンにただいま!
そんでもってまたひと波乱、