アーヴァインは変わった、というのはどこか可笑しいかもしれない。
けれど、以前はずっとセルフィの傍に居たのに急に他の女の子たちと一緒に居るようになった。

おかしい、けれども、

はどこか腑に落ちない気持ちになった。



































「アービンは、好きな娘でもできたんよ」


きっと。
そう言ってセルフィはドリンクをに差し出した。
部屋に戻る途中で寄った食堂で買ったものだ。

それを受け取るの手にあるバンクルを見て、セルフィは少しだけ瞳を細めた。


も大変なのに、ごめんな」


あたしがこんなんで。
そう言って困ったように笑うセルフィに、はゆっくりと首を振った。


「ううん、セフィは不安なんだよね」

「不安・・・」


ベッドに並んで腰を下ろす二人を沈黙が包んだ。

きっとセルフィはアーヴァインが好きだ。
だから離れて他の女の子と一緒に居るアーヴァインに不安になっているんだ。

はそう思い、いつもとは違い悲しげに微笑むセルフィを見る。


「・・・セフィは、アービンが好き?」

「・・・よく、わからないんよ」


緑の瞳を揺らして、セルフィは続ける。


は気付いてたん?」

「アービンの気持ちだったら知ってたよ」

「いつから?」

「二年前から」


笑って言うにセルフィは複雑そうな表情をする。


「だって、アービンったらずっとセフィセフィって言ってたもん」

「あたしから見たらおんなじガーデンだったし言ってたと思うんだけどな〜」

「そうかな?」

「・・・途中からいいんちょが〜ってなったけどね」


意地悪く笑うセルフィには「もぅ」と声を漏らす。
確かにアーヴァインはの事にも気を配ってくれていた。
けれども、ただ一人の女の子として純粋に心配して想っていたのはセルフィに対してだ。
孤児院に居た頃の初恋の相手だとも言っていたこともある。

は自然と二人は恋人同士になるものだと思っていたが、今の二人を見ていると簡単にいかなくなってしまったようだった。


「ね、もう一回聞いていい?」


そう問うと、セルフィがを見た。


「アービンのこと、好き?」


紅紫の瞳に真っ直ぐに見詰められ、セルフィは瞳を揺らした。
何かを言おうと口を開いたが、それは空気を吐くだけで言葉にはならなかった。

それを数度繰り返した後、セルフィは力なく笑った。


「・・・うん、きっと、ううん、好きなんよ、アービンのこと」


大好きなんよ、

そう言って、セルフィはぎゅ、と膝の上で両手を握った。
は優しく微笑みを浮かべそっとセルフィを抱き締めた。


「・・・うん、そうだね」


大好きだから、辛いんだよね。


そう言うに、セルフィは縋るように抱きついた。















「アーヴァイン・キニアス」


スコールに呼ばれ、アーヴァインは其方に顔を向けた。
片手を軽くあげ、「やぁスコール」と挨拶をする。


は一緒じゃないのかい〜?」

「検査の帰りだ。今は休んでいる」


一緒じゃないのかと尋ねるアーヴァインに「キスティスと話していた」と言う。
スコールはそのまま、アーヴァインとその周りに居る女子生徒をちらりと見る。


「で、アンタは此処で何してるんだ」

「見て分からないかい〜?彼女たちとおしゃべりタイムさ」


そう言うアーヴァインに思わずスコールは額を手で押さえた。
小さく息を吐くと、横目でアーヴァインを見る。


「馬鹿か、アンタ」

「失礼だな」

「いや、馬鹿だろ」


ふっと笑って言うスコールにアーヴァインは瞳を丸くする。

のお陰か、スコールの笑顔の回数が増えた気がする。
二年経っても、それは見せる人にしか見せないものだっただ。


「あんまりいじめるな」

「・・・何のことかな〜?」


とぼけるのか。
と言うスコールにアーヴァインは肩を竦めて見せるだけだった。
彼の様子に息を吐いてスコールは歩き出す。


に怒られても、俺に泣きついてくるなよ」

「・・・それは困るかもしれない」

「女子の結束力は凄いからな。あまり刺激するなよ」

「もう僕がに怒られるのは決定事項なのに?」

「まあ、仕方ないな」


そう言いスコールは歩き出した。
向かう先は、勿論彼女のところだ。


それにしても、


先ほどキスティスに呼び止められた時に聞いた話。

魔女を討伐する為のレジスタンスが作られているなんて。
それも結構大規模に。

ガーデンが元々魔女と戦う為に結成されていた組織だったが、今はそれは目的に入れていない。
魔女イデアは魔女としての力を失い脅威とはならなくなった。
宇宙に封印されていた魔女アデルも、SeeDが倒した。

残りは、


・・・


が魔女という事は今は世間には知られていない。
いつ情報が漏れるか分からない以上、彼女への気配りを徹底的にするべきだろう。

その話をした時に、キスティスは憂いを帯びた瞳を揺らしていた。





『・・・もし、ガーデン内だけでもなくて、身近な人に危険が及んだ場合、
 は間違いなく自分の力を使うでしょうね』





それはスコールも気にしていた事だった。
ジャンクションした能力として、誤魔化して使ってもいるが明らかに桁違いな魔法も彼女は使える。
ガーデン内での事を知っている人物も居る。
外では森のフクロウなどとも関わりがある。

彼らに危機が迫った場合、優しい彼女は迷い無く自分の力を使うだろう。

たとえ誰かを救う為に使われたものでも、世間は彼女を魔女と呼び畏怖し、排除しようとする。


そんな事は、絶対に俺がさせない


俺がの騎士だから。

そう思いスコールは拳を握り締めた。




久々ですみません・・・!