二階の廊下前へ行くと、既に他のSeeD候補生が集まっていた。
でも、全員という訳では無いらしい。セルフィやら他の生徒の姿が見当たらなかった。

皆落ち着き無く、何処かソワソワしている。

それは当然か、とは思い辺りを見渡した。

ゼルがスコールに話しかけている。
如何やら合格者は一人ずつ名前を呼ばれていくらしい。


うわ、何か嫌だな


がそう思っていると、ガーデン教員が何かのリストを持ってきた。
恐らくは、合格者のリスト。

しん、と静まり返った中、ガーデン教員が声を発した。


「ディン・・・・・・ゼル・ディン」

やったぜ――――!! 皆ッ!お先にっ!!」


ゼルは嬉しそうに飛び跳ねた後、ガッツポーズを決めて走っていった。
空気読めよゼル!とは思ったが別に、良かったね、と参賞する自分も居たのであえて言わずにしておいた。


「スコール・・・。B班スコール。それと同じくB班の。こっちに来なさい」


スコールが歩き出したのを見て、も慌ててスコールの背を追った。
アッサリとしている様だが、心中は嬉しくて仕方が無かった。


合格・・・し、た!!合格した!! これでお兄ちゃんを探しに行ける!!


やった。と心の中で叫びながらは緩む顔を抑えきれず、破顔一笑した。









合格者が集まったのは、学園長室。
シドの前に合格した五名が並んだ。

シドの横に行ったガーデン教員が「今回のSeeD認定試験合格者はこの五名です」と言う。
シドは頷きを返し、一人一人の顔を見やった後、口を開いた。


「まずは、おめでとう。しかしながら・・・これから君達はSeeDとして、世界中に派遣される事になります。
 SeeDはバラムガーデンが世界に誇る傭兵のコード・ネーム。
 SeeDは戦闘のスペシャリスト。でも、其れはSeeDの一面を表しているだけです。時が来れば!」


ぐ、と拳を握り何かを言おうとしたシドの言葉をまた遮ってガーデン教員が「学園長、」と声をかける。


「会議の時間が迫っています。手短に行きましょう。
 SeeDはガーデンの重要な商品だ。其の価値を高めるのも、貶めるのも君達一人一人にかかっている。
 心して任務に取り組んでもらいたい。これが学園長の仰りたかった事ですよね?
 認定証及びSeeDランク通知書授与!」


有無を言わさない様子でそう言い、ガーデン教員はそう言う。
認定証とSeeDランク通知書が渡された後、シドが近付いてきて一人一人にこそりと声をかける。
は一番右端に居るので、一番最後だろうと思い自分の番が来るのを待った。

横に居るスコールにシドが何かを言った後、に囁く。


「ひそひそ・・・(
彼を支えてあげて下さいね。貴女自身も頑張って下さい)」


シドの言葉には、え、と思いきょとんとした。
そんなに微笑みを一つ送り、シドは放れて行った。


「これでSeeD認定式を修了する。解散!」


ガーデン教員がそう言うとゼル、セルフィ、それと後一人の合格者は出て行った。
出て行った三人を見て、は良かった、合格して。と思い自分も出ようとしたが、何やらシドがスコールと話をしている為、足を止めた。


「今後、より多くのG.F.を使用する事になるだろうが・・・。他ガーデン及び各国軍事関係者の批判は無視するように!」


残っていたとスコールにガーデン教員はそう言い去って行った。
其の言葉には「そういえば、」と思う。

他ガーデンではG.F.は批判されていた。
何でもG.F.を使用した者は記憶が無くなっていくだとかいう噂を聞いた。
だがはそんな症状は全然見られないので気にしていなかったのだが・・・。


教員がそう言うって事は、何かがあるって事だよね?


実際ガルバディアガーデンでは結構な批判だったし。

がそう思っていると話を終えたスコールが来たので、歩を進めることにした。



二階のエレベーター前に行くと、セルフィが「SeeD!シード!しーーーーどおぉーーー!」と言い喜んで飛び跳ねていた。
端っこの方で一人燃えて喜んでいる男はニーダというらしかった。
それと、ゼルは相変わらずガッツポーズをしていたがとスコールが戻ったのに気付き「お!」と言い近付いて来た。


「早く教室戻ろうぜ!」

「? 何で?」

「何でって・・・。あ、は知らないのか。毎回恒例なんだよ、SeeDになった奴が挨拶するんだ。
 そんでもって其の後は就任パーティだぜ! うおおおSeeDばんざーーい!」


はゼルに「へえ、」と返しスコールを見上げた。
「行こうか、」と言うとスコールは何処か面倒そうに、否。照れ臭そうに頷いた。












































教室を後にして達は寮へ戻っていた。

は同室のセルフィと与えられた新品のSeeD服を着た。
この後行くSeeD就任パーティではこの正装を着ていかなければいけないからだ。

正装に着替えたセルフィを見て、は「似合うじゃん!」と声を上げた。
セルフィは嬉しそうに微笑んだ。


「えへへーそう?も似合ってるよ!」

「ありがと!」


そう言い二人でパーティ会場へ向かおうとしたのだが、途中セルフィが「あ!!」と声を上げる。
は驚いて「な、何?」と聞くとセルフィは「スコールと行きなよ、!」と言った。
はそれに小首を傾げた。


「・・・なんで?」

「だって、スコール呼びに行かないと中々来ないタイプでしょ〜?
 呼んできてよ!」

「・・・だから、何で私・・・」

「私ゼル呼ぶから! じゃ、後でねー!」


セルフィはそう軽く言うと走って行ってしまった。
はそれに慌てて「あ、ちょっと!セルフィ!!」と声をかけるが彼女の姿は見えなくなってしまった。

「はぁ」と溜め息を一つ落としては「仕方ないなぁー!」と言いスコールの部屋を目指した。









スコールの部屋へ行ってノックをすると、直ぐにドアは開かれた。
中から出てきたスコールがSeeD服の正装なのには少しだけ驚きつつも「よっ!スッコー!」と言い片手を上げた。


「セルフィに言われて迎えに来たんだけど・・・普通に着替え終えてるしね・・・!
 でも行こうとはしてなかったっしょスッコー?」

「・・・別に」

「そうですかい。 ・・・ってかスッコー似合うね、正装」


はスコールの正装姿を改めてまじまじと見、言う。
そして少しだけ戸惑うスコールの周りをぐるりと回ってまた正面に立って頷く。


「うん、やっぱ似合う。制服より! 様になってるよスッコー!」

「・・・・・・会場、行くぞ」

「はーい」


スコールに言われ、は片手を上げてそう返事をし、歩を進めた。









































パーティ会場は華やかな所だった。

金のシャンデリア、周りにある綺麗な装飾、傷一つ無い壁。

おーすげー。とは思い辺りを見渡した。

二人で壁に寄りかかっていると女性が二人分の飲み物をくれた。
は「何が入ってるんだろ、」と言いグラスを揺らしていたがスコールは其れを普通に飲んだ。
横目でがそれを見ていたら、「おっ!」という声と共にゼルが近付いて来た。


「よぉ、スコール、。 へへっ、これからはお互いSeeDだな。
 ま、これからもよろしく頼むわ!」


ゼルがそう言いスコールに手を差し出すがスコールはそれを一瞥しただけでまたグラスを傾けた。
そんなスコールの様子にゼルはガックリと項垂れた。


「・・・はっ、SeeDになっても相変わらずってわけだ。 ま、お前らしいわ。
 、これからもよろしくな!」


はゼルに差し出された手を取ってニコリと笑った。
それにゼルは気を良くしたのか先程とは打って変わって笑顔になり「じゃ、またな!」と言い去って行った、

ゼルの去って行った方から何やらセルフィとの話し合いが聞こえたがは小首を傾げるだけだった。
そんなにスコールが、「恐らく学園祭の実行委員の誘いだろう」と短く言った。

そういえば、セルフィは学園祭実行委員だったっけ。

はそう思いちょびっとだけグラスを傾け、液体を口に含んだ。
そうしていたらセルフィが「あースコール!!」と言い近付いて来た。

次に胸の前で手を組んでお願いのポーズを取る。


「ね、学園祭実行委員やらない?時々手伝ってくれるだけでOK。 ・・・ね?」


最後に可愛らしく小首を傾げるセルフィ。

こんな風にお願いされたならどんな男でも「うん」と言ってしまうね!

は思いスコールを見上げた。 が。

スコールは無言でまたグラスを傾けるだけだった。
は思わずシカトかよ!!と言いそうになったが此処はパーティ会場。祝いの場所。何とか耐えた。

セルフィはそんなスコールに「また今度誘うからね!」と言いを見た。


「ねぇ、お願い!時々で良いから〜」

「・・・・・・仕方ないなー」

「ほんとっ!!? ありがと〜! ついでにスコールも誘っておいてね!」


セルフィはニコニコと嬉しそうに笑って言った後に去って行った。
「SeeDで忙しくなるかもだけど学園祭の準備も頑張ろうね!」と最後に付け足して。

は去っていくセルフィに笑顔で手を振り、スコールを見やった。


「何で断ったの? 良いじゃん学園祭」

「・・・・・・別に」

「特に理由が無いなら良いじゃん! ね?私もやるからさ?」


セルフィに誘っておいて、って言われたし。と思いはスコールにそう言う。
スコールは、はぁ、と溜め息を一つ落として空を仰いだ。
そして一言、「勝手にしろ」と言った。


「・・・じゃ、時々一緒に手伝おっか。 スッコー、ありがとね?」

「・・・・・・別に、礼を言われる事じゃないだろう」

「今日は"別に"が多いね。 ・・・あ」


スコールと同じように空を仰いだが短く声を発した。

キラリ、と光って星が流れていったのを見たからだ。

「綺麗だったね」とが言い視線を会場に戻す―と、




一人の少女と目が合った。




真っ黒で艶のある黒髪が、背まであり、その髪の色とは対象的に純白のドレスを身に纏った少女。

綺麗な顔立ちの少女と目が合い、は少々慌てた。

そんなに気付いたスコールが小首を傾げ、視線を追う。
スコールとも目が合った少女は微笑み、人差し指を立てて空を指した。

それに大してスコールとが小首を傾げていると少女は近付いて来た。


少女はスコールを見て「うん、」と頷いた後ニコリと笑って言葉を発した。


「君が一番カッコイイね」


綺麗なソプラノボイスだった。

は前に居る二人を見、「うわー、美男美女だ」と思いこっそりと後ろへ下がった。
自分はこの場に不釣合いな気がしたからだ。

少女は黙っているスコールに「ね、踊ってくれない?」と言った。
それでも無言なスコールに「もしかして、」と言い言葉を続ける。


「好きな子としか踊らないってやつ?」

「エッ?スッコーまさかそんな一途な人だったなんて!」


意外! がそう思い思わずそう言葉を発するとスコールにジト目で見られた。

が「う・・・、ゴメンナサイ」とたじろぎながら言うと少女はスコールからに視線を移した。
そして何かを考える様な動作をした後、「ね、お願い」とスコールに再度言った。


「知り合いを探しているの。一人じゃダンスの輪に入れないから・・・」

「そうなんだ・・・スッコー、行ってあげなよ」

・・・・・・

「そんな嫌そうな顔されるとちょっと傷付くぞー」


の言葉に渋面を浮かべたスコールに少女が言う。
は「全く、」と言いスコールと少女の背を押して輪の中へ入れた。


「・・・踊れないんだ・・・」

「いーから!行ってきなさいってば!!」


思い切り突き飛ばして二人をダンスの輪の中に入れ、は再び壁に戻った。
ちなみにちゃっかりスコールの持っていたグラスも受け取って。

ちょびり、とまた少しだけ口に含み、は美男美女のダンスを見た。


最初こそスコールの足が覚束なかったり隣のペアとぶつかったりしてスコールが輪から出ようとした。
が、と目が合い彼女に手をしっしと振られ(酷い)スコールは渋々少女とのダンスに集中し始めた。

最初こそ本当に踊れないんじゃあ、とは思ったが直ぐにその考えを取り消した。
最後の山の所で綺麗に相手をリードしてターンさせた。


最初からやれば良いのに・・・


はそう思いグラスを傾けた。

そうしていると、少女は知り合いを発見したのか、スコールになにやら会釈をしてダンスの輪から一人出て行ってしまった。
ど真ん中で一人ポツンとしているスコールが何だか少し可哀想ではグラスをテーブルに置き、呆けているスコールに近付いた。


「ほらスッコー。お疲れ様。ダンス終わったなら戻らなくっちゃ」


そう言い彼の手を引こうとしたのだが、逆に彼に手を引かれてしまった。
それに瞳を丸くし、「スッコー?」と彼を呼んで小首を傾げる。

そしては気付いた。 コイツ、地味に怒ってる。

スコールが怒っているのに気付いたは「え、あ、え?」と等と分けの分からない言葉を上げ、スコールを見上げる。
途端、彼の手が自分の腰に回されては戸惑った。

スコールはの手を自分の肩の上に乗せ、空いている方の手を自分の手を絡めた。


それには、ドキリとした。


大きな手が優しく自分の手に絡まってきたのだ。


指と指の擦れる感覚が、何だかくすぐったかった。



・・・じゃなくて。



はスコールを思い切り見上げ、「スッコー!」と抗議の声を上げた。
何してんのアンタは!と言いたかったがスコールに真っ直ぐ見詰め返されて声が出なかった。


「・・・アンタ、前ダンスは得意だと言っていたな」

「(
何時の話よ・・・!)・・・覚えてたんだー・・・?」

「俺は得意じゃない」

「嘘おっしゃい。さっき最初は戸惑ってただけでしょ?本当は上手いじゃん!」

「試してみるか?」


挑戦的に口の端を吊り上げて言うスコールにはムッとし、きゅ、とスコールの手を握り返した。
そして真っ直ぐにスコールを見詰め返して口を開く。


「・・・絶対私の方が上手いんだから・・・スッコーに教えてあげる・・・!」

「お手柔らかに」


珍しく、フ、と笑みを浮かべたスコールに、は鼓動が早くなるのを感じた。

珍しく?否、もしかしたら彼に笑みを向けられたのは初めてかもしれない。

それには嬉しさを感じ、彼女もまた、心からの笑みをスコールに向けた―。




スコールは感情の整理がつかないので取り敢えず一緒に居て様子を見ることにしたようです。
しかしおま、これ、ちょ・・・!(…)