必死こいて走って来た男も拾って再度列車は走り出す。
列車内で青の服を着た男と置いて行かれた男が前に立って此方を見てくる。


「あんた達がSeeDか」


青い服の男がそう言うとスコールが一歩前へ出て敬礼をした。


「俺が班長のスコール。右の男がゼル、女がセルフィ。左がだ」

「よろしくな。俺は森のフクロウのリーダーのゾーンだ」


そう言いゾーンが手を差し出すが当然の事ながらスコールは手を出さず。
オイ。は言いたくなったが依頼主の前、そう思い我慢をした。

ゾーンはスコールが握手をしてくれないと思い諦めたのか、セルフィの前に行き手を差し出す。
セルフィはゾーンの手を見て片手を差し出し、握手をする。
其の後にゾーンはの前へと移動した。セルフィの隣では自分にも来ると思ったゼルが片手を中途半端に差し出していたのだが・・・。
は横目でゼルを見て複雑な心境になりつつゾーンの手と己の手を重ねた。

此処では小首を傾げた。

ゾーンがの手を両手で包んできたからである。
其れには「え?」と思わず短く声を上げてしまいゾーンを見上げる。
すると、真っ直ぐに此方を見てくるゾーンと目が合い、思わず苦笑。
そんなゾーンを後ろからワッツが「また直ぐにそうやって!」と言い引っ張った。

何、何、何、これは何なのさ。

はそう思い苦笑を表情に張り付かせていた。


一応お互いが自己紹介を済ませた後、スコールが早速「俺達は何をすれば良い?」と問うた。
直球ですね、スッコー。とが思っているとゾーンと名乗った青の服を着た男は「まあそう焦るなって」と言い、続けた。


「俺達もメンバー紹介だ。ええと、ワッツにはもう会ったんだよな。それじゃ、後はウチの姫さまか」


ゾーンは横に立っている男(列車に置いて行かれた男)を見た後にそう言い少しだけ思案した後そう言った。
ワッツというらしい男は「お姫さまはお昼寝タイムッス」と言いゾーンをちらり、と見た。
ワッツの言葉にゾーンは「しょうがねぇな・・・」と言いを見た。


、悪いんだけどさ。ウチの姫さま、呼びに行ってくれ。
 其処の階段を上がって、一番奥にある部屋だ。途中の部屋には他のメンバーも居る。もし分からない場合は彼らに聞いてみると良い」


ゾーンにそう言われは最初こそ「ん?」という表情をしたが直ぐにその表情を戻した。
そんなの前に居たスコールが少々苛立った様子で口を開いた。


「俺達は雑用の為に雇われたのか? ん?」


低い声で最後に確認をする様に言ったスコールにゾーンは慌てて姿勢を正してスコールを見た。


「お、怒ったんですか!?」

怒ってる怒ってる、っていうか不機嫌スッコーですよー

「(
俺達は使いっパシリじゃない。SeeD・・・特殊部隊だ)こんな指示はこれで最後にしてくれよ」


スコールがそう言いに「俺も行く」と言い歩き出す。
はスコールの言葉を聞いた途端、サッと顔色を悪くして腹部を押さえてしゃがみ込んだゾーンが気になったが、此処は素直にスコールの後に着いて行く事にした。










列車の中を通っていくと、一番奥にピンクの色合いで綺麗に飾られた一室があった。
其処のベッドの上で横になっている人が居る。

あれがお姫さまかな?とは思い恐る恐る近付いた。
何故かすれ違った森のフクロウのメンバーはお姫さまを起こしに行くと言えば同情の目を向けてきて「頑張れよ」やら「度胸あるな」やら何やら不吉な事ばかり言って来たのだ。
どんなお姫さまですかい。は思いながら、そ、っとベッドに近付く。

すると丁度列車が止まったのか、ブレーキ音と振動が伝わってきた。

其れに反応したのか、お姫さまは背の中間位まで伸ばされた黒髪をサラリと揺らしながら起き上がった。
背に羽の模様のある青の服を身に纏い、短いズボンを履いている彼女。
彼女が振り返った途端、は瞳を丸くした。

それは彼女も同じだった様だった。


「あなた・・・あの時の!」

「パーティで、会ったね」


が微笑んで言い、近付くと少女はみるみる内に笑顔になり「じゃあ、もしかして貴方がSeeDなの!?」と問うて来た。
其れにの後ろに居たスコールが頷いて口を開く。


「俺が班長のスコールだ。そして彼女が。後二人来ている」


スコールを見て少女はまた瞳を丸くしたが、直ぐにまた嬉々とした表情に戻り、「やった、」と小声で呟いた。
其れが聞き取れなかったが小首を傾げていると少女は嬉しそうに笑い、「やったー!」と言い両手を伸ばしてに飛び付いて来た。

突然の事であり、行き成りの衝撃に耐えられなかったが後ろに倒れそうになると、スコールがを支えた。
離れた少女が嬉しそうに微笑み、「SeeDが来てくれた!!」と言いにまた抱きついた。

其れを見ているスコールが「大袈裟だな」と言うと少女はから離れて改めて二人を見た。


「だって嬉しいんだもん!ずーっとガーデンに依頼してたけど、全然来てくれなかったんだから。
 やっぱ直接シドさんに話して良かった〜!」


微笑んで言う少女に攣られる様に笑い、は「そっか」と言い彼女の横に立った。


「じゃあ、パーティで探してたのは学園長?」


がそう問うと少女は首を振り、「サイファー、知ってる?」と問うた。
サイファーの名前が出た途端、スコールの周りの空気温度が降下した事に気付いただが、取り敢えず「うん」と頷き一つ返した。


「私、アイツと知り合いなのね。で、シドさんを紹介してもらったの。
 シドさん、良い人だよね。ウチらみたいな貧乏グループの所にSeeDはきてくれないって思ってたんだ。でも、シドさんに事情話したら、す〜ぐOKだったよ。
 SeeDが来てくれたんだから今まで出来なかったあんな作戦こんな作戦選り取りミドリっ!」


少女はそう言い嬉しそうにはしゃいだ。
そんな少女を見ていたスコールは片手を挙げ、「俺は皆の所に戻るぞ」と言う。
其れに少女が反応し、「よし、行こっか!」と言い歩を進める。
が、部屋を出る直前で足を止めて少女は振り返った。


「ね、スコール、。アイツは来てないの?」

「アイツ?」

「サイファー」

「ああ・・・。奴はSeeDじゃない」


スコールが簡単にそう答えると少女は「そっかぁ・・・」と言い少し気落ちした様子を見せたが、直ぐに気を取り直したのか笑い、此方を見てくる。


「あ、私の名前はリノア。よろしくね、スコール、。 ね、SeeDはダンスも上手なんだね」

「ダンスパーティに紛れ込んでターゲットに近付く・・・・・・そんな任務もあるかもしれない。任務に役立つ技術なら、何でも身に付けるのがSeeDだ」


確かに授業でダンスレッスンもあったなー・・・。とが思ってスコールを見ていると、リノアが少し落胆した様子で「なんだぁ」と呟いた。


「お仕事用ですかぁ。かなり良い感じだと思ったんだけどなぁ・・・」

良い感じ?


リノアの呟きの意味が分かっていないのか、スコールは小首を傾げるだけだった。

は確かに、と思いあの時の事を思い出していた。


ダンスの輪に二人で溶け込んで踊っている光景。

美男美女が踏む軽快なステップは、見ていて感嘆の息が漏れる様な感じであった。


良い感じ・・・だったよね・・・


はそう思いながら無意識の内に溜め息を吐いていた。
そんなを見ていたリノアが何処か悪戯っぽく笑い、「でも」と言った。


「スコールとのダンスの方が凄く良い感じだったよ?」


笑って言うリノアには思わず「え?」と短い声を上げる。
リノアは笑ったまま言葉を続けた。


「スコールからのお誘いだったみたいだし?あれはお仕事用じゃあ無いっぽいし?
 兎に角凄く良い感じだったよ!!」


何処か楽しんでいる様子でリノアが言う。
お、女の子って恋バナが好きです事!自分も好きだけどね!とは思いながらリノアに苦笑を返した。


「あーあれは違うのー!スッコーにダンス教えてた・・・と、いうか競い合ってただけだしね。 ね?スッコー?」


がスコールを振り返り、そう言う。
其れにスコールは少しだけ何かを考える素振りをした後、「あぁ」とだけ呟いた。
返事が遅かったスコールにリノアは笑みを浮かべ、思う。


なるほど、この二人は良い感じなのね


これから行動を一緒にするんだし、何だか面白いかも!

リノアはそう思い、とスコールを見た。











































リノアを連れてゾーン達の所に戻り、リノアにゼルとセルフィの紹介をした後、作戦会議に入った。
ゾーンに案内された先にあった部屋には、電車の模型があった。

これを使って説明するのかな、っていうかそうだよね。とは思い模型を見ていた。


「ま、適当な場所に立ってくれ」


ゾーンにそう言われ、各々が各位置に立つ。
座ってくれじゃなくて立ってくれか。とは考えながらスコールの隣で説明を聞くことにした。


「はっきり言って今回の俺達の計画はかなり本格派だ。
 俺達"森のフクロウ"の名はティンバーの独立闘争の最終ページに記される事になる! ワクワクすんだろ?」


ゾーンがそう言うが、SeeD組は全くの興味無し。
別に自分達は森のフクロウのメンバーではなく、唯雇われただけのものなのだから仕方が無いが。


「ガルバディアの極秘情報を手に入れたのが始まりだった」

「俺が手に入れたッス!」

「ガルバディアの超VIPがこのティンバーにやって来るって話だ」

「ちょ〜ぶいあいぴ〜!!」

「そいつの名はガルバディア大統領にして、稀代の極悪人ビンザー・デリング!!」

「ビンザー・デリング極悪人!!ガルバディア国民にも評判悪いッス。大統領なんて名ばかりの独裁者ッス!」


ゾーン、ワッツ、ゾーン、ワッツゾーン、ワッツと交互に言葉を発しながら彼らは言う。
そんな二人の後にリノアが口を開く。


「そのデリング大統領はガルバディア首都から特別列車に乗ってティンバーへ来るの」

「俺達の作戦はその列車を・・・・・・」

「ロケットランチャーで粉々に爆破するのね」


ゾーンがそう言いかけた時、セルフィが手をポンと打ってそう言う。
其れにゾーン、ワッツ、リノアが目を丸くし、一気に両手をブンブンと振った。
そして三人して「其処まではちょっと・・・!」と言う。

は腕を組んで「いやー・・・過激だね、セルフィー」と言って笑った。

其の後に長たらしい説明に焦れたゼルが少々苛立った様子で口を開く。


「もう、何なんだよ!もっと具体的に話せよ!」

「じゃ、始めよっか」


ゼルの言葉に頷いたリノアが説明をする。

其処でやっと模型の出番らしく、全員模型の前に集まってリノアの言葉を聞く。
模型は短い列車のものが二つと長い列車が一つあった。


「まず列車の説明からするね。上の線路にあるこの黄色いのが"アジト列車"。私達の列車ね。
 それでこれが大統領車に似せて作った"ダミー列車"。
 下の線路にあるのが大統領の乗っている列車。左から"先頭車両"、"護衛車両1"、"大統領車両"、最後のが"護衛車両2"。
 此処に飛び移ったら作戦開始よ。 この作戦の最終目的は・・・"ダミー列車"と"大統領車両"を摩り替えて"アジト列車"で抜き去り列車ごとデリング大統領を拉致する事!」


次は作戦の流れを説明するようだ。
リノアが再度口を開いて模型を動かす。


「まずは"ダミー列車"の屋根から"護衛2"に飛び移るの。其の後"大統領車両"の上を普通に移動して、"護衛1"の連結部分で切り離し作業を行います。
 此処で時間掛かっちゃって一つ目の切り離しポイントまでに切り離し作業が成功しないと・・・・・・、」

「もうBANG所じゃないねー。もうどっかんだね、どっかん!!」


のんびりしてられないわーこりゃー。とが言うとリノアは頷く。


「一回目の切り離しに成功すると、"ダミー列車"と"アジト列車"が切り離された車両の間に入り込んでくるのよ。
 この後は少しの間全ての車両が一列に並んで走る事になるわね。其の後、"護衛2"の部分で二回目の切り離し。
 成功したら"アジト列車"と"大統領車両"は脱出。 ・・・・・・って事。
 この後はアジト列車に戻って体制を整えてから大統領と対面するつもりよ。
 以上の手順を五分で実行してもらう事になるわ。全ての作業が時間通りに終わらなければ"アジト列車"もろとも切り替えポイントで衝突して終わり。これだけは忘れないで」

「五分・・・!?・・・短くないか?」

「俺達のシミュレーションでは三分で作戦完了は出来た筈だ。SeeDなら簡単だろ?」


リノアの説明を聞いたゼルが時間について驚きの声を上げるが、ゾーンにそう言われ黙った。
其れにセルフィは「うん、楽勝楽勝〜!」と言って笑う。

其の後、ワッツから護衛車両に居る護衛が使うセンサー回避方法を教えてもらった。
青色の護衛が持っている物は音声センサーで音に反応するので止まっていれば良いとの事。
赤色の護衛が持っている物は温度センサーで温度に反応をするが、動いていると反応しないらしいので動けば良いとの事。

其の後はまたリノアが口を開く。
次は列車の切り離しについての説明のようだった。

それにセルフィが手を上げて「しつも〜ん!」と言う。


「列車は走ってるのに〜どうやって切り離すんですか〜?」


確かに。と思いはリノアを見る。
走っている列車は切り離しが不可能な筈だ。だが、何か方法があるのだろう。

答えたのはリノアではなくゾーンだった。


「管理システムの隙間を利用すれば可能だ。連結部の回路だけ、一時的に解除する。
 そうすれば自然に離れるって訳さ。ただ、解除する為には幾つかパスコードを入力しなきゃいけないんだけど・・・」

「パスコードの情報も、手に入れてあるッス!リノアに渡してあるッス!」


ゾーンの後にワッツがそう言うとリノアが頷き、口を開く。


「現地では私がパスコードの指示を出します。ワイヤーで列車側面へ下りて、入力するのは・・・リーダーのスコールにやって貰おっか!
 入力する時は素早さも必要よ。一つのパスコード受付終了までは約五秒。それまでに四つの数字を入力しないと直ぐにパスコードが変更になって今までの段階が無駄になるから気をつけてね?」


リノアが可愛らしく小首を傾げてそう言う。が、スコールは普段と変わらない様子で「了解した」とだけ言った。

それを見ていたは、む、として顎に手を宛てて考える。


セルフィの時もだけど・・・スッコーって折角女の子が可愛らしく小首傾げて見てくるのに無反応かー・・・


まあ、行き成りスッコーが顔真っ赤にしたりとかしたら驚くけど。

はそう思いクスリ、と笑い改めて模型を見て作戦を頭に叩き込む。
そうしている内に、はある事に気付いた。


「(
あれ?)・・・何かさ、大統領列車の模型だけグダグダじゃない?」


他の列車は綺麗なのに、とが言うとリノアが固まった。
それに小首を傾げているとワッツが「ああ、」と言い口を開く。


「他の模型は街のお土産屋さんで買ったッス!でも、大統領列車だけはリノアが作ったッス!」

「それでかぁ・・・。なーんか塗り方が"へたれ"だと思ったんだよな」

・・・・・・? 言われてみれば、そうだな・・・


ワッツの言葉に納得した様子で言うゼルの言葉を聞き、スコールが改めて大統領列車の模型を見て内心でそう思う。
ゼルの"へたれ"発言にリノアは「失礼ね!!」と言い腰に手を当てた。


「それはわざとよ!わ・ざ・と!!
 デリング大統領に対する憎しみが・・・・・・そう・・・させたのよ」

「リノアさんリノアさん、良い訳臭いですぜ、すんごっく」

「・・・・・・」


手を軽く振って笑って言うと無言で模型を凝視しているスコールにリノアは「んもう!」と言い少し恥ずかしそうに、口早に「模型の事はもういいでしょ!」と言った。


つまりは、不器用なんだね、リノアさんは。


はそう思い最後にまた一度、グダグダの大統領列車の模型を見た。




リノア再登場!