森のキツネの人に世話になった後、ティンバーの街を歩いていたら一人のガルバディア兵が近付いて来た。
其れにゼルが「やべ!」と声を上げると相手は慌てた様に「俺ッス!俺ッス!」と言い両手を振った。
其の声は、とは思い彼が森のフクロウの一員のワッツである事を理解した。
「情報があるッス。ティンバーの駅が一時閉鎖されるッス!」
ワッツのその言葉を聞いてスコール達の表情に焦りが走った。
ガーデン関係者心得第8条7項。
所属ガーデンに帰還不可能等の緊急時、ガーデン関係者は速やかに最寄ガーデンに連絡すべし。
それに従って今達は此処、ティンバーから最も近い位置にあるガルバディアガーデンを目指そうとしていたのだ。
ガルバディアガーデンへはティンバーの列車を使い、学園東という駅で下りて行くのがベストだ。
それなのに、ワッツは今駅が閉鎖されると言ったのだ。
「絶対絶命ピ〜ンチ!」
セルフィがそう言うとワッツは首を振り、「まだ大丈夫ッス!」と言った。
「まだ完全閉鎖じゃないッス!もう直ぐ学園東経由のドール行きが出て、閉鎖はそれからッス!」
「よっし、じゃあその列車に乗ればギリギリ間に合うね!」
がホッと一息吐いた後にニコリと笑って手を打ち、そう言った。
其の言葉にスコールは頷きを返した。
次にリノアに向き直ったワッツが「リノアも一緒に行くッスね!」と言った。
彼の問いにリノアは「うん、行く」と言った後「ワッツはどうするの?」と問うた。
其れにワッツはニコリと笑って口を開く。
「俺の事は心配いらないッス!沢山情報集めるッス!」
「戻ってくるからねっ、元気でね!!」
リノアがワッツに一歩近付いて彼を見上げてそう言う。
彼女の瞳が不安気に揺れているのに気付いたワッツは彼女を安心させる為に明るく笑い頷いた。
其の後に、スコールや達を見やる。
「スコールさん、リノアをよろしく頼むッスよ」
「ああ、心配するな。クライアントの命令だからな」
「ワッツさんはどうするの? ティンバーは危険なんじゃ・・・」
スコールの後にがそう言うとワッツはまた明るく笑い、「大丈夫ッスよ!」と言った。
「やる時はやるッスよ! SeeDにゃ負けないッスよ! 感激ッス!」
最後の感激ッス!には何が?如何いう?等と思っただが、あえて突っ込まずに「そっか」と言って笑みを浮かべた。
ずっとワッツと話している訳にもいかないので、達は駅を目指した。
駅の入り口まで来たところ、誰かに呼び止められて達の足は止まった。
「リノア、それとスコール班長に!」と言い声をかけてきたのは老人に変装したゾーンだった。
リノアは彼の姿を見ると「ゾーン!」と言い嬉々とした表情で近付いた。
そんなリノアにゾーンは笑みだけを返し、スコール達を見た。
「学園東経由ドール行きに乗るんだろ? でも、パスは手に入らないぞ」
「あらら・・・一足遅かったってやつ?」
「しっぱ〜い・・・だね」
ゾーンの言葉にとセルフィがそう呟く。
その後にスコールが「無理矢理にでも乗り込むさ」等と物騒な事を言った。
スコールの言葉にが引きつった笑みを浮かべ、彼の前に回りこんで両手を前に出して振った。
「スッコー君?そんな事してみんしゃいなー騒ぎが起きたらガルバディア兵がわんさか来ちゃってリノアを守れないだしょーがー」
冷静になって、と瞳で訴えながらはスコールを見上げた。
そんなの意が伝わったらしいスコールは眉を寄せ、「なら如何しろと言うんだ」と言った。
其れに答えたのはではなく、ゾーンだった。
「へへん!」と言い彼が自慢げに掲げた物は――、六枚の列車のパスだった。
「ゲットしといたぞ、皆のパス! ほら、これだ!」
ゾーンはそう言いスコールの前へ行き「SeeDは四枚だな」と言い四枚のパスを彼に手渡す。
そして次にリノアに一枚渡した後、「最後の一枚は俺の・・・、」と言いかけてキスティスの姿を視界に留めて言葉を止めた。
3秒くらい間が空いた後、ゾーンはキスティスへ近付き彼女の手にパスを握らせた。
「最後の一枚はアンタの分」
「受け取れないわ。貴方のパスでしょ?」
キスティスが眉を下げ、ゾーンの手にパスを押し戻そうとした瞬間、「イテテテ!」とゾーンは言い腹を押さえて道の端へ行き、しゃがみ込んだ。
そんなゾーンにキスティスは慌てて駆け寄ろうとしたが、彼の声を聞いて足を止めた。
「イテテテ・・・早く行けよ!列車が出るぞ!」
ゾーンは背を向けたままそう言った。
キスティスは少しの間彼の背を見詰めていたが、「ありがとう」と礼の言葉を述べた。
其の後にリノアがゾーンの傍へ駆け寄って、膝を折って彼に声をかける。
「ゾーン・・・。 また会うんだからね・・・、ちゃんと生きてなきゃ駄目だからね・・・。
一緒にティンバー独立させるんだからね・・・!」
「・・・分かってるって。便所にでも隠れてるさ」
ゾーンはそう言った後、「早く行けよ」と言い俯いた。
その言葉に頷いたリノアはキスティスと共に先に駅へと走り出す。
其れにスコールとゼル、セルフィが続いて走っていくが、だけは歩を止めてゾーンを見た。
「・・・ゾーンさん、リノアの事は任せて下さい」
がそう言うとゾーンは「当たり前だ」と言い、言葉を続けた。
「っつうか、リノアに何かあったら許さないからな・・・!」
「・・・了解!任せて下さいよ!」
は敬礼をした後、スコール達を追う為に駅へと走り出した。
駅まで行くと、スコールがを待っていたのか列車の入り口に立っていた。
が小走りで近付くと彼は仏頂面で「遅い」と言った。
其れにはエヘヘと笑い「ゴメンゴメンゴ」と言いスコールと共に列車に乗った。
乗った途端、アナウンスが流れる。
『ティンバー発、学園東経由、ドール行き。間も無く発車致します』
その放送が掛かった直後、ガタン、と床が揺れて列車が動き出した。
其れにスコールとがほぼ同時に、ほうっ、と安堵の息を吐く。
「なんとか・・・「あけてーあけてーあけてー」・・・なる・・・「あっけろぉ〜!!」
嗚呼、スッコーの言葉がセルフィの声で聞こえない。
とが思い笑みを零していると客室へと続くドアの前でぴょこぴょこ跳ねていたセルフィがくるりと振り返って「あけて?」と可愛らしく小首を傾げてお願いしてきた。
さっき「あけろ」って言ってたよね。とは思いながらスコールを見る。
スコールは溜め息を吐いた後、(逆らわない方が良さそうだな)と思いドアへ向かいロックを解除した。
それにセルフィは満足そうに笑みを浮かべ「えへへ〜お先!」と言い奥へ進んで行った。
「直ぐに着くはずだから、私たちは此処で良いわね」
「そーですねー」
キスティスの言葉には伸びをしながらそう返し、壁へと寄り掛かった。
そして「で?」と言いスコールを見た。
「なんとか?何?」
「あ、それ私も思ってた。 何を言いかけたの?」
の後にリノアがそう言いスコールを見やる。
スコールは「大した事じゃないんだが・・・」と言ったが少女二人の視線を感じ、は先程言えなかった言葉を口に出した。
「・・・なんとかなったな」
「ゾーンさんのお陰だわ。ちゃんとお礼をしなくちゃ」
キスティスがそう言うとリノアが悪戯っぽい笑みを浮かべてキスティスを見て口を開いた。
「ゾーンはね、えっちぃ写真が大好きよ」
「・・・おぼえとく」
苦笑してそう返したキスティスにリノアは笑みを浮かべた。
そんな二人の様子をは笑いながら見ていたが、ふとゼルを気にしているスコールに気付く。
ゼルが落ち込んでいる事はも分かっていたが、安易に励ましの言葉をかけるべきではないと思い黙っていた。
(スッコーも、きっと何も言わないよね)
はそう確信していた。
暫く様子を見るしか無いのだ、今は。
下手に期待を抱かせると、裏切られた時に痛いから。
はそう思い大きく息を吐いて瞳を伏せた。
「そういえば」
が瞳を伏せたとほぼ同時にキスティスが口を開く。
何だと思いが瞳をあけて彼女の方を見ると彼女は自分を見ていた。
其れに更に小首を傾げるとキスティスが再度口を開いた。
「ガルバディアガーデンは貴女の元居た学校だったわよね?」
「あ、はい。そうですよ」
「へー、そうなんだ」
がキスティスにそう返すとリノアが話に入ってきた。
頷くにリノアは「じゃあ久しぶりに友達と会えるの?」と問うて来た。
リノアの言葉には「うーん、」と言って少し思案した後、少しだけ寂しそうに笑った。
「・・・どうだろうね?」
「・・・?」
「まぁ、取り敢えず。 そろそろ学園東駅に着くよーキスティス先生はセルフィ呼んで来てあげたらどうですかね?」
話題転換したにリノアと話を聞いていたスコールは小首を傾げる。
キスティスも同じだったが、にそう言われ「そうね」と言いドアに向かう。
ドアの前に立った時に「あ、そうそう」と言い振り返って彼女は口を開いた。
「私はもう教師じゃないわよ。貴方達と同じSeeDだから先生呼びじゃなくて結構よ?」
「・・・同僚・・・せんせ・・・いやいや、えっと、んー・・・」
キスティスの言葉の後になんて呼ぼうか、と考え始めたにキスティスは笑みを浮かべ、「キスティスでもスコールみたいにあだ名呼びでもなんでも良いわよ」と言ってドアの向こうへ消えた。
そんなキスティスの入っていったドアを見ながらは「うーん」と唸り考えた。
「キスティス・・・っていうのもなー・・・あだ名呼びが良いみたいなのでキスティっていうのはどうでしょうかねー?」
「あ、良いと思うよ!」
「じゃ、決定!」
顎に手を当てつつそう言うにリノアが賛同する。
そんな二人を見ていたスコールはがもう直ぐで学園東駅に着くと言ったので周辺のチェックをしていた。
・・・と、言っても大した時間もかかっていないので其れは直ぐに終わるものだったが。
チェックをしているスコールには「そーだそーだ」と言い口を開く。
「学園東駅で下りた後、西にある森を抜けたらガルバディアガーデンだよ。まぁ直ぐだから時間もかからないと思うけど」
の言葉にスコールは「分かった」と返し窓の外の景色に視線を移した。
窓の外の景色は次第に流れがゆっくりとなっていき、やがて止まった。
此処のゾーンはほんっと男前!!
次回はまた衝突か・・・それとラグナ編です、