学園東駅で降りた後、スコール達はの言っていた西の森へ入っていた。
此処さえ抜ければガルバディアガーデンは目の前。とが言っていたので気持ち足早に森の中を歩く。
そんな中。途中、休憩を取る事になった。
の「もう直ぐだけど、魔物も・・・少ないけど居るから少し休まない?」という言葉からだ。
各々が休んでいる中、セルフィが「そういえば、今更だけどさ〜」と口を開く。
「ガルバディア政府から良くない連絡入ってるかもよ。行き成り捕まっちゃって世界に放送されちゃったりして・・・」
「そん時ゃそん時で良いだろ!!」
セルフィの言葉に反応していたのは、自分の発言のせいで深刻な事態に陥ってしまったガーデンについて、街の人々についてと、ずっと悩んでいたゼルだった。
ゼルは眉を寄せ、苦々しげに言葉を続けた。
「俺、バラム・ガーデンの様子が知りたいんだ! ・・・ガーデンに何かあったら・・・俺のせいだ。
皆がガーデンから来た事を言っちまったのは俺だから・・・・・・」
ゼルはそこまで言うと悔しげに瞳を細めた。
少しだけ間が空いた後、彼は再度口を開いて「なぁ、」と言った。
「あの大統領・・・ガーデンに報復するかなぁ・・・?」
「かもな」
ゼルの問いかけに、スコールは淡々とした様子でそう言った。
その返答にゼルは「だよなぁ・・・」と言い、ガクリと項垂れる。
が、直ぐに顔を上げて無理矢理笑みを作ってスコールの両腕を掴んで揺らしながら言う。
「で、でもよ!バラム・ガーデンにはSeeDも大勢居るもんな!ガルバディア軍に負けたりしないよな!?」
「ガルバディア軍の戦力にもよるだろ?」
スコールは少々鬱陶しそうに瞳を細めてそう言うとゼルの手を振り払った。
ゼルは「そ、そうだけどよ・・・」と言ったきり、黙ってしまった。
少しの間、また沈黙が下りたがサクサク、という草を踏む音が静かに響いた。
それと同時に、
「素晴らしいリーダーね」
というリノアの冷めた声も響いた。
リノアはスコールの前まで来ると彼を冷たい目で見上げた。
「何時でも冷酷な判断で仲間の希望を否定して楽しい?」
(また絡むつもりか・・・)
「リノア・・・」
腕を組んで違う方向を向いたスコールにムッとしたリノアの腕を、が掴んで諌める。
が、リノアは「離して」と素っ気無く言うと再度スコールを見上げた。
どうやら相当気に障ったらしい。
「ゼルは貴方の言葉が欲しいのよ」
(・・・そんな所だろうな・・・)
無言のスコールに更にムッとした表情をリノアはしたが、それを押さえて続ける。
腰に手を当てて顔を下に向け、言葉を紡ぐ。
「大丈夫だ、とか、頑張れ、とか。そういうのがあればゼルだって・・・」
「・・・リノア、」
(そんなのは気休めだろ? そう思うのは俺だけか? 否、と、サイファーだって・・・・・・)
「そういう言葉が仲間の元気や勇気になるんだから」
「リノア、待って、」
(他人に何とかして貰おうってのが間違いなんじゃないのか?)
「それくらい解らない!?」
「リノア!!」
リノアが張った声よりも、張り上げられた声が森に響いた。
ずっと控えめにリノアを諌めようとしていたが、大声を出したのだ。
行き成りの事に、その場に居た全員の視線がリノアの腕を掴んで俯いているに向かう。
は俯いたまま、か細い声でポツリと呟いた。
「・・・冷酷冷静で、寂しい判断と残酷な優しさ・・・・・・。どっちが良いのかな・・・?」
「え?」
あまりに小さな声だったので、誰も聞き取れず小首を傾げる。
リノアが短く声を上げての顔を覗き見る。
「・・・・・・?」
「私には、ちっとも見当がつかないや・・・」
はそう言いリノアからゆるりと手を離した。
顔は依然として、俯いたままだ。
「・・・は、またスコール派の考えなの?」
「別にスコールを擁護してる訳じゃない。ティンバーで言った通りなだけ・・・」
「・・・どうして? 期待をする事はいけない事じゃないんだよ?」
「うん、そうだね」
は顔を上げてニコリ、と微笑んだ。
その後に「でも、」と続けて更に笑みを深くしてこう言った。
「私は期待出来ないんだよ」
綺麗に笑ってそう言うに、今度はリノアが俯いた。
なんて綺麗で、なんて寂しい微笑みなんだろう。
その笑みを浮かべるに、今、何も言えない自分に歯痒さを感じリノアは唇を噛んだ。
の笑みをみていたスコールは、彼女の笑みを、じ、と見詰めたまま思い耽っていた。
(冷酷冷静で、寂しい判断・・・か。確かにアンタの言う通りかもしれないが、其れはアンタだって同じだろ?)
それと、残酷な優しさ。とは言った。
何て合っている言葉なんだろう、とスコールは思い自嘲気味に笑みを浮かべた。
―その時、
キィン、という耳鳴りがしたと思った直後、スコールは酷い頭痛を覚え頭を押さえた。
(・・・何だ!? ・・・この感覚は・・・)
最初こそ驚き、焦りを感じたスコールだが、似た様な感覚を以前した事を思い出して其の事を脳裏に浮かべる。
スコールは頭痛に顔を歪めながら地に膝を着く。
そんなスコールを見て何かを察知したがハッとし、スコールの前へ行き、膝を折ってスコールの背に腕を回す。
そして彼が地に倒れ伏す前に地面へとゆっくり横にした。
その直後、「うっ、」という呻き声を上げてキスティスがよろける。
キスティスはゼルが慌てて駆け寄り支えたが、セルフィはふらりと草むらに倒れこんでしまった。
幸い、草むらの上だったので怪我等は無い様子だったが、は念のためセルフィに近付いて彼女の様子を見る。
冷静に対応している二人に、初めての事に焦りと不安の色を瞳に滲ませたリノアが「どうしたの!?」と言い倒れているスコール、キスティス、セルフィを見回す。
そんなリノアにゼルは「多分、あっちの世界に行ったんだと思う」と言った。
「そんな説明じゃ分からないっしょーが・・・。もちっと詳しく説明してあげなよ」
「そ、そうだな・・・えっと・・・、」
に呆れの目を向けられ、ゼルは頭の中でティンバー行きの列車内での事を思い出しつつ、言葉を捜して口を開いた。
「キロス、此処で良いのか?」
「間違いない」
ぼやけた視界から、クリアな視界に切り替わった時に声が響いた。
最初は篭った様な声だったが、次の声は鮮明な声色に変わっていた。
「こないだみたいに全然違う場所偵察すんのはかなわねぇぜ」
大男、ウォードがそう言いつつ頭をかく。
彼の言葉を聞いた先頭に居た男、ラグナは「う゛ーーん・・・」と少しだけ唸り声を上げた後振り返って頭をかく。
「悪ぃ、間違った。現場は此処じゃねぇ」
「いいえ、此処ですから」
ラグナの横に歩いてきて彼の持っていた地図を取ってそれを見て苦い顔をしながら赤茶の髪の男、クロスはそう言った。
クロスの言葉にラグナはきょとんとした表情をしたが、クロスから返された地図を見て「あ」と短く声を上げて苦笑した。
「・・・地図、間違っちまった」
ラグナの言葉にキロスとウォードは呆れの様子を露にし、溜め息を零した。
クロスも溜め息を一つ零し、ラグナの横に立って眼前に広がる景色を見た。
何やら大きな岩の塊がある場所に彼らは調査に来ていた。
セントラにあるこの発掘現場を調査してこいとの上からの命令だったのだが、クロスは何時にも増してやる気が起きなかった。
取り敢えず、とクロスは思いラグナを見やる。
「違う地図で本来の目的地に着けるっていうありえない事を実現させてしまう素敵な才能なんだな」
「クロス君、褒めるならもっと違う言葉で褒めてくれたまえ」
「否、褒めて無いんで」
クロスはスッパリとそう言い捨てるとショックを受けているラグナを放置して「取り敢えず進みません?」と言った。
其の言葉を聞いたラグナはガバリと顔を上げ、「何か、」と呟く。
「・・・ぬぁ〜にっか、イヤ〜な予感がするな・・・・・・。やっぱ、イヤ〜な予感がする!こいつは・・・絶対何かある!」
何が?と思い聞いていたクロスだが、彼の勘は結構当たる事を思い出し、クロスはセントラの発掘現場を見渡し、様子を伺った。
「何も無い所に香りは立たねぇって昔の人は良い事言ったもんだ」
「・・・けむり、だろ・・・?」
「最後の一文字だけ合ってるな・・・」
「残念です、0点」
ウォード、キロス、クロスの順でそう言われグサリと彼らの言葉が心に突き刺さったラグナは「うるせえな!」と言い握り拳を掲げて全員を見渡した。
「ガタガタ言ってねぇで、ちゃんと装備確認だ!終わったら行くぞ!!」
「まぁ、大丈夫ですよ」
「そっか!じゃあ行くぞ!」
っていうか、さっきも装備確認してたじゃないですかい。とクロスは思いながら前に進むラグナを白い目で見ながら彼を追った。
何でか前屈み走りをしているラグナ。これは突っ込んだら負けだ。とクロスは思い双剣の柄に手をかけながら走った。
其の侭奥へ走っていくと、ラグナがピタリと足を止めて普通に立って「でもよ・・・」と呟く。
「なーんか変な所だよな・・・。このでっかい岩の塊は一体何だ?」
目の前にある巨大な岩を見上げつつ、ラグナはそう言う。
ウォードとキロスも彼に習って岩を見上げる中、クロスだけは下の方に注目していた。
下の方が見えないほどの大きさだ。この岩は。
本当に何なんだろう、と思いながらクロスは岩を見詰めた。
「唯の自然の岩じゃねぇのか?岩彫って墓石でも作んのか?」
「・・・さあ、な」
ラグナの問いかけにキロスは首を振ってそう言うだけだった。
そんな彼らの後に、ウォードが「変と言えば・・・、」と言い少しだけ迷った後に再度口を開く。
「さっきから、何で・・・そんな奇妙な走り方をしているんだ?」
「変とは何だ・・・変とは。警戒しながら進むのが基・・・、・・・お?」
腕を組んでウォードに向き直ってそう言っていたラグナだが、物音を感じ、短く声を上げて振り向く。
クロスも構えの体制を素早く取り、其方を伺う。
奥からやって来たのは青と白が基準色の軍服を身に纏い、刃の付いている銃を構えたエスタ兵だった。
「エスタ兵発見だぜ。相変わらずシャレた軍服だねえ」
ラグナは口の端を吊り上げてそう言いながら、己の武器である銃を構える。
キロスとウォードも武器を構える中、クロスは「あ」と短く声を発してラグナの背に己の背を預けた。
そんなクロスにラグナは「なんだなんだ?」と言いクロスの様子を伺う。
キロスとウォードも彼の行動に瞳を丸くしたが、彼の視線を追った先、つまりは自分達の後ろにもエスタ兵が居るのに気付き「あ!」と声を上げた。
ウォードが「ラグナ・・・!」と声を発し挟み撃ちにあった事を知らせようとする。
「ビビるなって! ・・・うお!?」
ウォードにそう言い振り向いたラグナも、挟み撃ち状態に気付いたらしく驚きの声をあげる。
ビビるなと言った自分が一番ビビってないか?とクロスは思いながらも身体を前屈みにした状態で走り、後ろに居るエスタ兵へと駆けて行った。
走っている間に双剣を鞘から抜き、腕を交差させて一気に敵の懐に入り込んで切り裂いた。
「キロスさん!レウァールさんと前の方お願いします!」
「了解した」
キロスは直ぐにラグナの方へ走り、ナイフを構える。
其れを見たウォードは銛を構えつつ、クロスの横に並んだ。
「俺達はコッチだな」
「そーなりますね」
クロスはそう言いつつ、やはり今回の任務は気乗りしないな・・・、と思い溜め息を零した。
(それと・・・、)
走ってエスタ兵の急所を狙って双剣で切り刻む。
倒れ掛かってきた敵を蹴り飛ばした後、バックステップを踏んだクロスは瞳を細めて視界の端に入る巨大な岩の塊を見た。
(何だろう・・・やはり嫌な予感がする・・・)
そう思いつつ、クロスは双剣を振るった。
二回目のジャンクション。クロス再登場。
やっぱり衝突が多いなぁ・・・!
両方とも正しいってかある意味悪いと文月は思うんですがね、リノアの気持ちはスコールより分かる自身があるじぇ(だからリノアさんを僕に下さry)