スッコー、貴方って人は・・・貴方って人はああああああ!!

「・・・・・・良いだろ、デザートなら何でも良い。アンタがそう言ったんだ」


スコールはそう言い一番値段の張る甘さ控えめのデザートを手に席に着いた。
は「ちょ、私の分のデザート予算が無くなりやがりましたんですけれども」と良く分からない言葉を言いつつテーブルに突っ伏した。
(ちなみにこのデザート、甘さ控えめ特大パフェである)

そんなには目もくれず、スコールはパフェを口に運びながら先程の一件を脳内で整理していた。


酷く矛盾した思いを持つ彼女。

自分も痛みを知っているだけに、此れ以降彼女を突き放す事は出来ないだろう。

そうスコールは思いはぁ、と彼女に気付かれない様に溜め息を吐いた。

別に、は深くまで入り込んで来ない、きっと其れなら、

スコールは少しそう考えた後、また「否、しかし」という考えに至る自分に自己嫌悪を感じた。

結局は、無限ループだ。

スコールはアイスの部分をスプーンでぶすりと刺して決心をした。


・・・深く、入り込んで来ようとしたら、容赦はしない


絶対に。 そう脳内にインプットしスコールはアイスを口に運んだ。

―――其の時に丁度に視線を向けると、羨ましそうに瞳をキラキラと輝かせて此方を見ている彼女と思いっきり目が合った。
スコールは何故か気まずさを感じ視線をフイ、と逸らすが気付いてしまった以上、彼女の視線が気になってしょうがない。

スコールは今度はあからさまに溜め息を吐いて、予定よりも早い行動に出る事にした。


「・・・食事の後だ。俺はもう良い。残りはお前が食え」

「えっ?」


溜め息を思い切り吐かれ「あ、呆れられたかも」と思っていたの目の前にパフェをずい、とスコールが押し出した。
其れには瞳を真ん丸にしてスコールを凝視した後に「え・・・スッコー?」と彼の名を呼んだ。


「・・・何だ」

「えっと、もう良いの?」

「・・・あぁ」

「後半分も残ってるよ?」

「あぁ。半分もな」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


暫くはパフェとスコールを見比べていたが、スコールに「溶けるぞ」と言われ慌ててスプーンを手にしてパフェに手を付けた。
そして口に運び、頬に片手を当てて「ん〜〜!美味しい!」と言いとても嬉しそうに笑った。

次にスコールにニッコリと笑顔を向けて「スッコー、ありがとうね!」と言い再度パフェを口に運んだ。
結構なスピードで其れを食べるに内心胸焼けを起こしつつもスコールは「アンタの金だろ?」と返した。


「そうだけどさ、スッコーって甘過ぎるのって苦手じゃん?なのにこんなでっかいの頼んだって事はさ、
 最初から私に半分くれるつもりだったんでしょ? だから、ありがとうね」


そう言いふわり、と自然な笑みを浮かべた彼女にスコールは片腕を動かし、頬杖を着いて口の端を意地悪く吊り上げた。


「別に、高いのを選んだだけだ」

「ふーんだ!どっちでもいいですよーだ!」


は唇を尖らせてそう言った後、再度パフェを食べ始めた。

































食事の後。「身体動かさないと太っちゃうよ!」と主張してきたに付き合ってスコールはと訓練施設に行った。

は内心付き合わせちゃってまずかったかな、と思っていたがさして気にした様子の無いスコールにほっと安堵の息を吐いた。

訓練施設で敵を探しつつ、前を歩くスコールの背を見つつは先程の事を思い出していた。


其れは唯の気休めだと彼は言った。

確かに、自分でも薄々・・・否、本当は気付いていた事だ。





には兄が居た―。





血は繋がっていないが、とても優しかった兄を今でも良く覚えている。

は捨て子だった。

生まれて間もない頃、もしくは生まれた其の日に捨てられていたのだ。

其れを兄が拾ってくれた。

兄はが5歳の時に「人を探してくる」と言い家を出て行ってしまった。

何処へ行ったのかなんて、全く知らなかった。ましてや、誰を探しに行ったのかさえも。

取り敢えずは幼かったので、近くに住んでいた老夫婦に預けられた。



誰もが、を捨てて行ったと兄を怨んだ。

誰もが、を捨てて行ったと兄を貶した。



だがは信じて居た。



兄からは近況報告の手紙だって来るし、兄は何より自分に優しかった。


だが、暫く経って兄からの手紙が来なくなった。

パタリと止まった其れに、皆は「やはり、」という顔をしていた。



だがは信じて居たかった。




兄に何かあったのだ、きっと。




の心は不安で一杯になっていた、





兄の身に何が起きたのだろう?(大丈夫だろうか、酷く心配)


兄は周囲の声の通り自分を捨てたのだろうか?(そんな訳ない、でも酷く気がかり)


兄は、誰を探しに行ったのだろうか?(恋人?だったら彼女を選んで返ってこなくなった?酷く心配)





自分は―、やはり如何してもイラナイ子供なのだろうか・・・?




自分の存在価値が分からなくなった、酷く、不安―。





其の頃からか、は今の様な性格になっていった。

捨てられる、裏切られる恐怖を恐れつつも、他人が傍に居ないと寂しさで押しつぶされそう、


酷く不安で酷く怖くて、酷く心配だった。



スッコーは、と思いは伏せていた顔を上げて目の前に居る彼の背を見詰める。


きっと、解っちゃったよね、私の酷く矛盾した思いに、


それでも彼は深く聞いてこないで、一緒にお昼を食べてくれた。

パフェについては、きっと彼のお礼。今回の筆記試験で、私も少しだけどスッコーに教えたりもしたから。


それと、きっと彼なりの、不器用な彼なりの優しい気遣い―。


・・・・・・いけないいけない・・・!


どんどん彼を知るにつれて彼に嵌って行きそうな自分に気付きギュ、と拳を強く握る。

彼は他人を拒絶している。其れは自分と同じ恐れを抱いているから、きっと。

だから、お互いに深くに入り込んではいけない、きっとさっき、暗黙のルールが完成した。


はほうっと息を吐いて近くに魔物の気配を感じて腰から双剣を抜いた。

スコールも当然気付き、の横に立ってガンブレードを構えた。


スッコーの優しさが、酷く嬉しくて、酷く、怖い、


そう思う自分に、自己嫌悪。


はそう思い目の前に出てきた草系の魔物、グラットに斬撃を繰り出した―。





グラット涙目