「SeeD筆記試験合格者は次のステップに移ってもらうわね」
担任のキスティス・トゥリープが筆記試験合格者に向けて言っている説明を聞きつつ、は瞳を嬉しさの色でいっぱいにしていた。
(うううううううう受かったーーー!!)
否、これで受かってなければどん底だったけど、馬路で。とは思いつつキスティスの説明を聞いていた。
説明を纏めると、SeeD選考の為に行われる実地試験は丁度来週に行われるらしい。
それまでに、炎の洞窟へ行く課題があるそうだ。其れを行わないと実地試験に参加は出来ないらしい。
課題内容は炎の洞窟の入り口で待機しているガーデン教師に発表されて行うらしい。
教師一人と必ず一緒に行き、生徒は最高二人まで、だそうだ。
取り敢えず三人位で炎の洞窟に行って課題クリアして来れば良いんだね。とは思い隣の席のスコールをちらりと見た。
視線に気付いたのか、此方をチラリと見てきたスコールには笑みを返したが素っ気無く顔を逸らされてしまった。
(・・・コノヤロー)
そう思いは学習用パネルを開いた。
キスティスは未だ何かを話していたが、其れは筆記試験に落ちてしまった人たちへのこれからの予定。
自分には関係の無い事なのでG.F.の確認をしておく事にしたのだ。
の手持ちはシヴァ。氷の属性を持つG.F.だ。
スッコーは、と思いはスコールの手持ちG.F.を思い出して「ねぇ、」とスコールに声をかけた。
「スッコーさ、一緒に課題受けに行かない?」
「・・・何で俺がアンタと行かなくちゃいけないんだ?」
「スッコーのG.F.ってケツァクウァトルでしょ?雷属性だと炎の洞窟って結構キツイんじゃないかなーって」
「・・・・・・」
「あ、別にスッコーが頼りないとかじゃなくってね、私氷属性は得意だから一緒に行ったら役に立てるんじゃないかって」
彼の機嫌が降下したのを感じ取ったは直ぐにそう言うが、スコールは視線を此方には向けなかった。
は「失敗したかな?」と思いつつもこれから行く予定の訓練の為にG.F.・シヴァを自分にジャンクションさせた。
キスティスが話を終えて教室を出て行ったのを見、他の生徒が席を立つ中も席を立った。
「・・・まぁね、嫌ならいいんだよスッコー。だったら一人で頑張るから」
「・・・・・・」
はそう言い制服のスカートをひらりと舞わせて教室を後にした。
―其れを何となく見送ったスコールに、声をかける者が居た。
「よォ。何勿体無ェ事してんだ?」
「・・・別に、アンタには関係無いだろ」
スコールはそう言い声をかけてきた人物、サイファーに視線を向けた。
隣の席のが居ない今、通り道を挟んでサイファーの姿が思い切り視界に入る事に、スコールは眉を寄せた。
サイファーは「アイツ連れて行くと楽なんじゃなねーの?」と言って来た。
「・・・戦力的にはな」
「・・・じゃあ下らねぇ意地張って無ぇでさっさと一緒に行けばいいじゃねーか」
「お前等見ててじれったいんだよ」とサイファーは言い残して席を立って教室を出て行った。
スコールは無言で学習用パネルを開くと、自分の手持ちのG.F.のケツァクウァトルをジャンクションした――。
(・・・・・・確かに戦力的にはアイツを連れて行った方が楽だし、課題の点数も良い点を取れるかもしれない、)
其の点は良かった。
だがスコールは額に手を当てて溜め息を一つ零した。
(・・・俺が、誘うのか?)
当然一度自分が彼女の誘いを蹴ってしまった事がいけないのだが(否、返答を考えていただけだ)
慣れない事をするという気分は、スコールを複雑な心境にさせた。
「ドロー! ・・・・・・よしっ、」
は一人で訓練施設に居た。
炎の洞窟での課題も、実地試験でもバトルが中心になるだろう。
その時の為に、G.F.との相性も上げておかなければいけないし、魔法のストックだって必要だ。
はグラッドからスリプルの魔法をドローして双剣で魔物に斬りかかった。
素早く接近して二回左右に切り刻むと、グラッドは耳を劈く様な悲鳴を上げて倒れ、消滅した。
辺りに他の魔物の気配が無い事を感じ取るとは「ふぅ、」と息を一つ吐いて構えを解き、腕をだらりと下ろした。
結構な時間此処でこうしていた。
どれ位ストックしたかな、と思いは意識を集中させた。
(スリプルもサイレスも・・・結構取れたかな。途中会ったアルケオダイノスからは逃げながらもちゃっかりサンダーとファイラも取れたし・・・・・・)
結構取れたし、ストックは今日は此れ位かな。とは思い双剣を鞘に収めてまた魔物を探そうとした――其の時、
ズン・・・・・・、
大きな足音。
この足音は訓練施設内でもかなりの強敵のアルケオダイノスだろう。
あの恐竜の魔物は正直桁外れに強い。
今の自分じゃ絶対敵わないだろう、とも思い逃げた魔物だ。
音からして、戦っている音が聞こえる。
は誰かが襲われているのかも、と思いその音のする方へと足を進めた。
―アルケオダイノスと対峙していた人物に、は見覚えがあった。
実際に直接話した相手ではないが、食堂やら廊下やらで結構すれ違う元気な彼だった。
今の彼の顔色は何時もの元気一杯の色は無く、焦りの色がくっきりと出ていた。
は彼の危機を感じ取り、少し離れた位置で意識を集中させた。
彼を助ける事も大事だが、G.F.の訓練にも丁度良い。
それに、アルケオダイノスの弱点属性は氷だった筈。
はそう思い双剣をクロスさせて一気に前に突き出した。
「行っけー!! シヴァ!!」
パァっと広がった光と共に、冷気が肌に触れた。
の目の前に行き成り地から生えて来る様にして現れた氷柱からシヴァが姿を現し、ゆっくりと両の手をアルケオダイノスへと向けた。
その白く美しい指先から冷気の塊を力にして一気にアルケオダイノスへ放出した。
苦手な属性に不意打ちを食らわされたアルケオダイノスは苦しそうに悶え始めた。
瞳を丸くしている青年の手を掴み、は引っ張って走った。
「え?」
「何ぼさっとしてるの!早く!!」
二人掛かりでも倒せるか危うい。
そんな相手の様子を確認しつつも、は彼にそう言い足を速めた―。
―――――訓練施設の入り口に来た所で、やっとは彼の手を放し辺りを見渡した。
「・・・もうさすがに追って来ないみたいね」
「・・・・・・あーマジ焦った・・・!!」
青年はそう言うとどっかりと地へと腰を下ろした。
―改めては青年の顔をまじまじと見た。
ペイントか、刺青か良く分からないが左頬の広い部分に模様が描かれている。
金の髪は前髪は上に上げられているが、後ろの方は後ろへと靡かせている。
不思議な頭。と思いは彼が怪我をしているのを目に留め、治療の為に彼の横に膝を着いた。
「怪我治すね、」
「あ? あぁ・・・悪ィな」
が彼の怪我にケアルをかけていると、彼は「なぁ」と言い此方を見てきた。
「さっきはありがとうな! 運悪くアルケオダイノスなんかに会っちまってよー、ヤバかったんだ」
「ううん、別に良いよー困った時はお互い様だしね!」
はそう言った後に「終わり!」と付け足して彼の傷を完全に癒した。
彼は「サンキュな!」と再度礼を言った後「あ、そうだ!」と言い片手を差し出して来た。
やっぱ元気で良く喋る人だなぁ、と思っていたは小首を傾げた。が、直ぐに次の彼の言葉で理解をした。
「俺、ゼルっていうんだ。 ゼル・ディン!」
「私は・。SeeD試験を受ける為に編入して来たんだー」
「お、って事はお前が噂の一匹狼に懐いてる編入生かー・・・」
「・・・は?」
ゼルと名乗った彼の言葉を聞き、は再度小首を傾げた。
そんなにゼルは「ガンブレード使いのアイツの事だよ」と言った。
「(ガンブレード・・・サイファーも使ってるけど、アイツ一匹狼なんかじゃないし・・・・・・まさか・・・、)・・・スッコーの事? スコール・レオンハート」
「そう!ソイツ! ・・・・・・って、えぇ!?スッコー!? なんだそりゃ!!」
「いいあだ名でしょ!私が付けたんだー」
「いやいや・・・。 あいつが自分で、「スッコーって呼んでね」・・・なんて言う筈無いから分かってるよ・・・・・・」
ゼルの言葉に不覚にも思い切り噴出してしまっただが、何とか直ぐに押さえてゼルを見た。
思い切りあの無表情でそう言うのを想像してしまい本当だったらもっと笑いたかったが、は気になっている事もあった。
「ねぇ、一匹狼って?」
「あん? あーだってアイツ何時も一人だったからさ。まぁ、よくサイファーと喧嘩してたけど」
「スッコーは訓練って言ってたよ?」
「ありゃ何処から如何見ても喧嘩だって!お互い怪我しまくってんだぞ!?」
「・・・・・・私は、知らないけど・・・」
があれ?と思い考えているとゼルは「そらそーだ」と言って来た。
「が編入して来てからアイツ等喧嘩して無いんだよなー」
「SeeD試験前だから控えてるんじゃない?」
「かもな。サイファーの野郎も風紀委員と筆記試験の両立で忙しかっただろうしなそれに・・・、」
「スッコーには、私がずっと付きまとってたから・・・・・・って?」
「あぁ。 ・・・・・・あ、否! 付きまとってるっていうか、何だ・・・、その、」
思わず普通に頷いてしまったゼルがの言った言葉の皮肉的な意味に気付き慌てて手をブンブン振り回して弁解に回ろうとした。
が、は直ぐに「いいの、周りからそう見られてるって、気付いてたから」と言い訓練施設を出ようとした。
「あ、オイ!」
「でもね!スッコーは傍に居る事を拒否らなかったの。だから一緒に居るの。 オッケー?」
「俺はそんなつもりで言ったんじゃあ・・・・・・!」
――はゼルの言う言葉を聞かずに其の侭走って訓練施設を出て行ってしまった―。
ゼル登場