「本当にお前は出来た奴だな」


そう、ずっと言われ続けてきた。


出来た奴、出来たって、何が如何出来たという事なのだろう?


人を、上手く殺すか、否か?


そんな出来だったら・・・・・・俺は・・・、









































































あまりの激痛に悲鳴も無く倒れこむ身体。

何処か遠くで自分を呼んでいる声を聞きつつ、クロスは地に伏した時の衝撃に、顔を歪めた。


ッ、痛ェ・・・


最初こそ、迫り来るエスタ兵を斬り続けた。
だが、人間の身体には限界が来る。

何十人もの返り血を浴びたクロスは、今や己の血で地を赤に染めて、倒れている。

クロスが倒れた直後、最後の増援のエスタ兵が倒れる。

ラグナが応戦してくれて、最後の敵を倒したのだ。
ラグナも、既に限界なのか肩で息をしながら、足を引き摺りながら、クロスに近付いて来た。


「ッ・・・! クロス・・・!」


四人の中で一番重傷なクロスに、ラグナは近付いて声をかける。

酷く痛む背、腹。 だが、クロスは痛む身体に鞭打って肘を着いて震える身体を起こす。
そんなクロスをラグナが支え、ゆっくりとキロスとウォードが倒れている方へと連れて行く。


「・・・見ろよ、下を・・・海だぜ・・・助かったぜ!」


ラグナが少し掠れる声でそう言い崖の下にある景色を皆に伝える。
ラグナは肩に担いだクロスの喉がヒューヒューと音を立てている事に気付いていたが、敢えて何も言わず、クロスを見やった。


「ほら・・・なんてついてるんだ!俺達ガルバディアまで逃げられるぞ!」

「ッ・・・ケホ、普通、追い詰められたって言いますよ・・・」

「・・・そんな事言うと、ほんとになるぜ。お祖母ちゃんに言われなかったか?」


ラグナの言葉にクロスは「覚えてない」と返したが右に倒れているキロスが口を開いた。


「・・・悪い事、言葉にするとほんとになる・・・・・・あぁ、言われたな・・・」

「ぜ・・・・・・ひぃ・・・」


キロスの言葉の後にウォードが苦しげに何かを呻く様に言う。
それに反応したラグナは身を屈め、「なん・・・だって?」と問いかける。


「・・・喉・・・やられたみたい・・・だ・・・。 声・・・出ない、だ・・・ろう・・・」


キロスの言葉を聞き、ラグナはウォードの様子を見やる。
彼はうつ伏せに倒れている為によくは分からなかったが、喉が鮮血で染まっているのを見、ラグナは瞳を細めた。


「た・・・・・・かっ・・・」

「なんだって?」

「た・・・の・・・・・・しか・・・った・・・。
 ラグナと・・・・・・キロ、スと・・・クロス、と・・・・・楽し・・・かっ、た・・・」


ウォードの言葉を聞いたクロスは、ぎゅ、と瞳を瞑って己の激痛に耐えた。
同時に、心の痛みにも―。

それはラグナも同じだったようで、首を振ってウォードに手を伸ばした。


「ウォード君、減点。
 そういう事、言うのは減点・・・。 罰として、ピヨピヨグチの刑だ!!
 悔しいかあ?悔しかったならな・・・来い!!」


ラグナはウォードの口を指の間で挟んだ後、立ち上がって一人前へ進んで崖下を覗いた。

ウォードは握り拳を作り、少しだけ前へ進む。
だが、それっきりだった。

ラグナは少しだけ黙った後、「お!!」と声を上げる。


「見ろ・・・船だっ! アレ、乗るぞ!」

「・・・ボート、とも言うな・・・。 普通はそう、言う」

「ボートでも良いぜ〜。あれに乗ってガルバディアへ帰る!!」


ラグナはふら付きながら近付いて来たキロスにそう言い思い切り彼の背を叩いて押す。
其れと同時にキロスは真っ直ぐに崖下へと落ちて行き、海へ落ちた。

次にラグナはウォードを引っ張って崖の方まで連れて行き、「お・・・らぁ!」と掛け声つきで思い切りウォードを突き飛ばす。
二人は崖に当たる事無く、真っ直ぐに海へ落ちて行った。

救助されているのが見える。とクロスは思いながら白い目でラグナを見た。


「・・・お前ら、スゲェ勇気だぜ・・・。こんな所からよく飛ぶよな〜」

「誰がっ・・・落とし、たんですか、誰が・・・」


クロスはそう言いつつ痛む身体に鞭打って崖へと近付く。
腹部から血が滴り落ちているクロスに、流石にラグナは不安そうな表情で問いかける。


「・・・海だぜ、下。大丈夫か?」

「大丈夫ですよ・・・・・・ケホッ。 ・・・まぁ、駄目だったとしても、貴方達が助けてくれるんでしょう?」


クロスは少しだけ振り返って、微笑んでそう言った。
それにラグナも微笑み、「おうよ!」と返した直後―、クロスは倒れる様に崖下へと姿を消した―。

明らかによろけて落ちた様子のクロスにラグナは慌てて崖ギリギリへと移動した。
―ら、案外大丈夫そうに海へと落ちたクロスを見て、ほっと安堵の息を吐いた。


「・・・でも、アイツ明らかに倒れたよな、あれ・・・。
 ま、いっか。 俺は・・・慎重に・・・・・・慎重に・・・・・・」


崖に手を着いて、ゆっくりもたもた下りていくラグナだが、

足元の岩が崩れ落ち、彼の身体も落下する―。



スコールは意識が暗転して行く中、ラグナの「マジかよ!!」という声を聞いた気がした―――。

































































起き上がるスコール、キスティス、セルフィに気付いたゼルが、声をかける。


「・・・またラグナか?」

「ラグナ様、ピンチなんだよ〜!どうなったのかな〜!!」


ゼルの問いかけには答えず、勢い良く立ち上がったセルフィが焦った様子でそう言う。
そんなセルフィに視線を向けているキスティスは「皆初めてじゃ無いのね」と言い顎に手を当てる。


「これって何なの?」

「(
俺だけならふざけた夢って事で終わりに出来るが・・・)此処で考えてもきっと何も分からない。先を急ごう」


スコールの言葉を聞いたゼルが「お、行こうぜ!」と言いキスティスとセルフィと共に進んでいく。
スコールも其れに続こうとするが、「スコール、」と名を呼ばれて振り返る。
其処にはリノアが立っていた。

リノアはスコールを呼んだ後、へと縋る様な目を向ける。
はそんなリノアを安心させるかの様に、ニコリ、と微笑み「大丈夫、ほら、言ってみ?」と言った。


「・・・さっき、言い過ぎた。ごめんね、スコール」

「・・・いいよ、もう」


頭を下げるリノアにスコールはそう言い彼女達を見た。


「意見の食い違いなんて、誰との付き合いでもある事だ」

「うん・・・そうだね。私、何か熱くなっちゃって・・・・・・」


スコールとリノアのそんな様子を見ていたは「仲直り、完了?」と言い小首を傾げる。
そんなにスコールは視線を向けて瞳だけで返事を訴えた。

はスコールの肯定の返事を読み取り、「じゃ、ガルバディア・ガーデンに行こっか」と言い歩を進めた。

そんなの背を追いつつ、リノアはまたスコールに視線を向け、声をかける。


「・・・ねぇ、スコール。って凄く優しい人だね」

なんだ、行き成り


黙っているスコールを気にせず、リノアは言葉を続ける。


「さっき、皆が倒れちゃった時。がスコールを支えたんだよ?お礼言ったら?」


リノアの言葉を聞いてスコールは自分が意識を飛ばす直前の事を思い出す。

確かに、温もりに包まれた様な感覚があった。


あれは、だったのか


スコールはそう思い、ティンバー行きの列車内でも同じ温もりを感じた事を思い出す。
あれも、彼女なのだろうか。そう思いつつ、の背を見詰める。

そんなスコールを見て、クスリ、と笑みを零したリノアはまた口を開く。


「行動面でもだけど、精神面でもって凄く優しいよね。
 さっき、スコールは寝てたから知らないと思うけど、は私を好きだって言ってくれたの」


其の時の事を思い出しているのか、リノアは微笑みつつ言葉を続ける。


「私、にとっても結構酷い事言っちゃったのに、は好きだって言ってくれたの」

「好き?」

「うん。 、そう言ってくれた」


リノアは嬉しそうに微笑んでそう言った後、前を歩くの背を見ながら先程の事を思い出していた。












スコール達が倒れた後、混乱した頭は上手く働かず、一人で何も出来なかった時にがリノアへ近付いた。
リノアは『、私のこういう考え・・・やっぱり、駄目なのかな?』とへ問うた。
以前サイファーにも注意された事があった。時と場合にもよると彼は言っていたが、リノア自身は良く分からないのだ。

自分の考えをスコールに否定され、にも複雑な顔をされた。

リノアは、『仲間を想うって、いけない事なの?』と問いかけた。

は少し考えた後、リノアの横に座って、真っ直ぐに見詰めてきた。


 『考え方は人それぞれ。私はリノアの考えは今は理解出来ないけど、何時かはきっと理解出来るかもしれない。
  リノアの考え、思い、ビシバシ伝わってくるよ。すっごく、真っ直ぐな想いが。

  そういうの、私は結構好きだな。 っていうか、リノアが好きだよ、私。

  私は、人と一緒に居る事が凄く羨ましくて、怖い。
  でも、好きな人と、一緒に居たいよね。 私、スッコーと、リノアと一緒に、居たいな。
  これは理解出来るよ。 だから、別にいけない事じゃ無いと思うよ、私は。

  ・・・凄く、矛盾してるよね、私・・・。自分が中々そう考えられない癖に・・・。ゴメンネ? 良く、分からないね』


困ったように笑いながら言うに、リノアは何だか胸がいっぱいになって、顔を歪めた。
はそんなリノアの頭に手を伸ばし、綺麗な黒髪に手を通し、「よしよし」と言って頭を撫でる。


少しの間、お互い黙ってそうしていたが、が口を開いた。


『リノア、不安なら何時でも私に言って?
 契約期間はティンバー独立まで、って事はまだまだ一緒に居るって事でしょ?
 ・・・大丈夫、私はクライアント必ず守ります。何が起きても、リノアを守るよ』


ニッコリと微笑んで言うに、リノアは更に胸いっぱいになって、溢れる想いを何とかに伝えたくて、両手を広げてへと飛びついた。
突然のリノアの行動には『わわ!?』と声を上げ、慌てたが直ぐにリノアの背に手を回して、ぎゅ、と抱きついた。
そして、もう片方の手で頭を撫でた。


リノアの胸は、の優しさと温かさでいっぱいになった―。












は、少しずつだけど私を信じようとしてくれている。

リノアはそう思いながらの背を真っ直ぐに見詰めた。


スコールは、もう既にの一番近くに居るのかもしれない。

でも、自惚れかもしれないけれども、二番目は自分だとリノアは思う。


やはり、キスティスやゼル、セルフィには表には出さないけれど、何となく感じる余所余所しさがある。

きっとそれは、去ってしまう温もりを恐れているから。



私は・・・、



リノアはぎゅ、と胸の前で手を組み、瞳を伏せた。



の傍に居る、ずっと、を支えていきたい―。



それは、祈りにも似た決意だった。




この話の相手は誰だ!これじゃリノアだ!!(スコール頑張れ←)