『バラムガーデンから来たSeeD部隊はゲート前に集合して下さい』
ピンポン、という音と共に流れた音声。
其れを聞いたは「やっぱ放送だった」と言いスコールの手を引っ張った。
それに最初は瞳を丸くしたスコールだが、直ぐに何時もの仏頂面に戻り「おい」とに声をかける。
はパッと手を離し、彼の隣に並んだ。
案外アッサリと離された手。
それに少し呆気に取られつつ、スコールは隣を歩くを見下ろした。
ゲート前、もとい正門に二人が着くと既に他の皆は来ていた。
全員揃っても中々来ないガルバディアガーデンマスターに焦れたゼルが「苛々させるぜ」と呟く。
セルフィも「遅いね、伝令」と言い暇なのかウロウロしている。
脇の手摺りに腰をかけ、足をブラブラさせていたリノアが「あ、来たみたいよ!」と言い地に足をつける。
近付いてくる車を視界に留めると、全員が並ぶ。
の横に並んだリノアが「私もSeeDだって事にしてね」と言ってきた。
其れにが小首を傾げると「色々説明、面倒だから」と言いリノアは宜しくね、という意味を込めたウィンクをしてきた。
そんなリノアには笑みを浮かべ、ウィンクを返した。
車から軍隊の軍服の様なものを身に纏った男が現れ、前に立つ。
彼がガルバディアガーデンのマスター・ドドンナだ。
達は彼が前に立った時、SeeDの敬礼をする。
当然其れを知らないリノアはチラチラと隣に立つを見ながら、たじたじだったが少し遅れて敬礼をした。
敬礼を解く時も同じ様子のリノアに、はドドンナに気付かれない様にクスリと笑みを零した。
「ごくろう」
ドドンナはそう言い左へ右へとウロウロしながら言葉を紡ぎ始めた。
「君たちにバラムガーデンのシド学園長から命令書が届いている。
我々は規定に従い、命令書を確認した。検討の結果、我々は全面的にシド学園長に協力するという結論に至った。
実は我々も以前から同じ目的の為に、作戦の準備を進めていたのだ。
この任務の重要さを理解して貰う為に、現在の情勢を説明しておく」
ドドンナは其処で言葉を切り、「楽にしたまえ」と言う。
許可が下りたので、各々が楽な体制を取る中、は考えていた。
マスター・ドドンナやガルバディアガーデンの教員を知る限り、このように好意的なのは可笑しい。
何か裏があるのではないか、と思いドドンナを観察するように盗み見た。
「魔女がガルバディア政府の平和使節に任命された事は知っているな?
しかし、平和使節とは名ばかり。行われるのは会談では無く脅迫だ。魔女は人々に恐怖を与える存在だ。
よって公平な話し合いなど不可能だ。ガルバディアは魔女が振り撒く恐怖を使って、自分達に有利な条件を他の国に認めさせるつもりなのだ。
最終的にはガルバディアによる世界支配が目的なのは明白である。事実、既に魔女はこのガーデンを本拠地にすると通達して来ている。
・・・我々に残された選択肢はそれほど多くない。我々は君達に世界とガーデンの平和、そして未来を託す」
彼が言葉を切ったタイミングを見計らい、了承の合図の敬礼をする。
其の後にドドンナが命令書をスコールに渡しながら言う。
「具体的な任務内容は命令書で確認したまえ、質問は?」
スコールはざっと命令書に目を通し、顔を上げてドドンナを見て口を開く。
「命令書には『狙撃』とあります。しかし、我々の中には確実に狙撃できる技術を持つ者が居ません」
「其の点は心配しなくても良い。ガルバディアガーデンから優秀な狙撃主を出そう。
キニアス! アーヴァイン・キニアス!!」
ドドンナが辺りを見渡しながら声を張り上げる。
其れにはビクリと肩を揺らして反応した。そんなの様子に隣に居るスコールは気付くが今はドドンナの手前、何も言えなかった。
聞き覚えのある名に反応したは自分の鼓動がどんどん速くなっていっている事に気付く。
ツ、と嫌な汗も背を流れている気がした。
(アー、ヴァイン・・・・・・、)
先程ドドンナが呼んだ名前。
ガルバディアガーデンには一人しか居ない、彼だ。
そう思っていたら、ざ、という草の音が聞こえた。
近くの芝生の上で、身体を起こしている人物が一人。
テンガンハットを頭に被り直し、長い黄色のコートについた芝生を手で払い、傍らにあった銃を手に取り、立ち上がる。
長い茶の髪を風に靡かせて立ち上がった彼は、肩に銃を担ぎ、此方を見て口の端を吊り上げた。
その人はの記憶に今も残る、彼だった。
近付いてくるアーヴァインを見ながら、ドドンナが「アーヴァイン・キニアスだ。狙撃は彼が完璧にやり遂げるだろう」と言う。
アーヴァインは一人一人の顔をじっくりと見た後、口の端を吊り上げた。
「では、準備が出来次第出発したまえ」
ドドンナはそう言いガーデン内へと歩を進める。
そして最後に「失敗は許されないぞ」と念を押してから去って行った。
去るドドンナの背に、アーヴァインは人差し指と親指を立て、手で銃の形を作ると「BANG!」と言い撃った真似をした。
其の直後、車がドドンナを追う様に音を立てて去って行った。
其処でようやくスコール達は足を動かし、アーヴァイン以外で輪を作り今後について話す。
だけはアーヴァインを気にして視線を送っていたが、キスティスがスコールに「どんな仕事?」と任務内容を問うたので其方に耳を傾ける事にした。
スコールは「次の仕事は・・・、」とまで言ったが「否」と言い改めて言葉を口にした。
「これは仕事ではない。バラムとガルバディア、両ガーデンからの命令だ。 俺達は・・・・・・魔女を暗殺する」
スコールの言葉にその場に居た全員が驚きの反応をした―、とアーヴァイン以外。
スコールは各々の反応を気にせず、淡々と説明を続ける。
「手段は遠距離からの狙撃だ。このキニアスが狙撃を勤める。俺達はキニアスを全面的にサポートする。
狙撃作戦が失敗した場合は直接バトルで正面攻撃だ」
「僕は失敗しない。ドント・ウォーリーだよ」
スコールの命令内容説明にアーヴァインがそう言い片手をひらひらと動かす。
そんなアーヴァインの反応には少しだけ小首を傾げる。
(? 何時もとちょっと様子が違う気が・・・?)
彼はこんな人だっただろうか?とは思ったがあえて口に出さない事にした。
ガルバディアガーデンを離れて、一月近く経った。其の間に何かがあった可能性だってあるからだ。
そう思っていると、スコールが説明を再開する。
「確実に魔女を倒しすべし。これが新しい命令だ。 これからガルバディア首都のデリングシティへ向かう。
そこでカーウェイ大佐と会って具体的な作戦の打ち合わせをする。 さあ、出発だ」
スコールがそう言うと全員が頷く。
其の後にアーヴァインが「さーて」と言い近付いてくる。
「デリングシティまでのパーティを決めるって事で」
アーヴァインはそう言い俯き加減の銀髪の少女に視線を送り、少しだけ微笑みを浮かべると手を彼女の肩に回し、抱き寄せた。
突然のアーヴァインの行動にされたは当然、他の皆も瞳を丸くした。
「僕はと一緒が良いな〜」
「・・・っ・・・! アー・・・!!」
其処まで言ってハッとした様子で口を噤み、再度俯いてしまったの肩を優しく抱き、アーヴァインは微笑んだ。
「」と優しく彼女の名を呼ぶとはゆっくりとアーヴァインを見上げた。
紅紫の丸い瞳には不安の色が濃く浮かんでおり、アーヴァインは其れを取り除かせる為に再度微笑み、こう言った。
「前と同じで良いよ。僕は別にがSeeDになった事を妬んだり僻んだりなんかしてないから」
アーヴァインのその言葉を聞いた途端、はふるり、と身体を震わせた。
そして瞳にじわり、と涙を滲ませて震える唇を何とか動かし、彼の名を紡いだ―。
「アー・・・、ビン・・・!」
それでもまだ不安げにそう言う彼女の頭を優しく撫でてやり、アーヴァインは「そうそう」と言い頷く。
は酷く安堵した表情をし、とても嬉しそうに綺麗に微笑み「アービン・・・!!」と言い両手を広げてアーヴァインに抱き着いた。
そんなの行動にスコール達は再度驚くが、此処に着いてから初めて安心し切った顔で微笑み、嬉しそうにしているに何も言えないのであえて黙って様子を伺う事にした。
はアーヴァインから身体を離し、微笑んで「ありがとう」と言った。
「そんな事、当たり前だろ? 僕は他の奴等より深くと付き合ってたじゃないか」
「・・・でも、不安だった。アービンも他の皆と同じで私をうざがるかもしれないって、思った」
「僕がが転校する前日に言った事覚えてる?」
「・・・・・・頑張れって、笑って言ってくれた」
がそう言うとアーヴァインは笑みを浮かべ、「そう」と言いの頭を撫でた。
彼女の銀の髪に指を通しつつ、アーヴァインは口を開く。
「其の言葉に全部込めたつもりだったんだけどなー」
「・・・ごめんね・・・、信じれなくって・・・」
「否、しょうがないさ」
アーヴァインはテンガンハットを取り、の頭にボスンと深く被せた。
突然の事には「わっ!?」と声を上げるが彼にこうされる事を久しく感じ、笑みを浮かべた。
そんな二人のやり取りを見ていたリノアが「の彼氏?」と声を上げた。
リノアの問いかけにとアーヴァインは同時に首を振り、「無い無い」と言った。
「・・・その割には随分とくっ付いていたな」
「何か、アービンが前と変わらないで接してくれた事が嬉しくってつい・・・ね?」
被せられた帽子を上へとずらして照れ気味に言うにスコールは少しだけ息を吐いた。
其れを呆れの溜め息だと感じたは「ごめんねスッコー、行き成り」と謝る。
スコールは首を振り、「否、」とだけ答えた。
(別に・・・そんなに気にする事では無いのにな・・・)
何時の間にか、彼女は自分の隣というポジションに居るものだと思っていた。
だが、今はアーヴァインという親しかったであろう友の横に居る。
其処で、笑っている。
そう思うと、何だか酷く悔しいような、苛立ちのような、取り合えず良く分からない感情に見舞われた。
スコールは雑念を払うように首を振り、とアーヴァインを見やる。
「パーティの組み分けだが・・・」
「あ、そうそう。アービンの言ってる事無しで戦力の事もあるっしょ?どうする?」
そう言い自分を見上げるに、スコールは何処か落ち着く気持ちを抱いた。
スコールは少し考えた後、「俺と、リノアにゼルだ」と言いアーヴァインを見た。
「キニアスはキスティス、セルフィのパーティだ」
「意地悪、意地悪班長。何で感動の再会を果たした僕とを別のパーティに入れるんだいっ!?」
「戦力、だ」
腕を組んで、視線を外して言うスコール。
そんなスコールを横目で見たは正直ホントかよ。と思った。
だが、ゼルとアーヴァインを一緒のパーティに入れたらいざこざが起きる事も入っている気がする。
それと戦闘に未だ不慣れなリノアは元々クライアントだ。戦力的にも彼女の護衛の為にも、班長の居るパーティに入れた方が良い。
リノアを入れるから、自分を入れたのかな?とは思い取り合えず自分の中で自己完結をした。
スコールが目をそらして言った事だけが気になったが。
は「アービン」と声をかけ彼に近付く。
そしてニコリと微笑み、改めて「ありがとう」と言った。
やっと来たよこのやる時はやるカッコイイヘタオが!(愛しい!)
スッコーモヤモヤ。
アーヴァインとなんとか離したくて自分のチームにいかにもっぽい理由つけて入れるという←