「ワタクシ、今気付いた事があるんですけど言って言いモンですかねい班長さん?」

「・・・何だ」


また始まったの変な言語会話。
スコールは頭の隅でそう思いつつ声をかけてきた少女を見やる。

ちなみに今いるのはガルバディアガーデンを出て直ぐ目の前にある駅。
其処でチケットを購入して列車に乗ったわけだが、其処でが口を開いたのだ。

は自分達も入ってきた列車の入り口を真っ直ぐに見ながら続きを口にした。


班分けた意味って、正直無かったんじゃないの?


がそう言った丁度其の時、アーヴァイン達が列車に入ってきた。
それを見てスコールは「確かに・・・」と呟き額に手を当てて項垂れる。


何で気付かなかったんだ・・・


アーヴァインに気を取られすぎたか、とスコールが考えている横に居るリノアがクスクスと笑みを零しつつ「そうだよねー」と言う。


「デリングシティ行くのって、この列車乗るしか無いもんね」

「運命共同体ってやつか?」


アーヴァインは笑みを浮かべつつそう言い、チラリと列車内に続くドアの前に居るセルフィを見やる。
セルフィはドアのロックが解除されているのに気付き、スコールを見てにっこりと笑う。
「えへへ〜分かってるぅ〜」と言うと元気良く奥の部屋へと入っていった。

また景色でも見てるんだろうなーとが思っているとアーヴァインが歩を進め、先程セルフィが入っていったドアから奥へ進んだ。
皆其れに暫し唖然としていたが、直ぐにキスティスとリノアがスコールを見やる。


「ねぇ、様子見なくて良いの?セルフィ、大丈夫?」

「・・・アーヴァイン、黙って行ったけど良いの?」

「なーんか二人の目からだとアービンって微妙な感じで見えてるっぽいね」


が「自業自得だけどね!」と言いニッコリと笑う。
そんなを見たスコールが一度溜め息を吐き、彼もまたドアへと向かう。
はそんなスコールの後ろへと続き、奥の様子を見やる。


「君と僕とは運命共同体!」


奥に入った瞬間、変な台詞が聞こえてきた。
およ、新しい口説き文句かもしれない。とは思いスコールの背から奥の二人の様子を覗く。

外の景色を見ていたらしいセルフィは突然のアーヴァインの台詞に少したじろいで「な、なにさー!」と言う。
そんなセルフィを見てアーヴァインは甘い声で「恋の溜め息?」と問う。
其れにセルフィは少しだけ頬を朱に染めて「ち、違っ・・・!!」と言う。
恐らく口説かれ慣れていないのだろう。慣れない事に戸惑いを感じている様子のセルフィにアーヴァインは何処か嬉しそうに笑うと歩を進めてスコールの横を通る。
そして「お先ー」と言いの肩をドサクサに紛れて抱いてドアを開けた。


「ちょちょちょちょーいアービーン。何で私をこっちの部屋に戻したのー?」

「久しぶりに会ったんだ。一緒に居たいって思うのは自然なんじゃないかな?」


わざとらしい甘い声でそう言ってくるアーヴァインの前には片手を突き出して「ストーップ」と言う。


「私には効かないんだからね!アービンの変な口説き!」

「変なって失礼だな・・・」

ハイハイオテヲフレナイデクダサイ


どさくさに紛れて更に抱き寄せてきたアーヴァインの肩に置かれた手をバシリと叩くとは一歩下がった。
大体アンタ小さい頃の初恋の相手を今も忘れられないとか言ってなかったっけ!?と思いつつはアーヴァインを少しだけ冷めた目で見やる。
そんなに「怒らないでくれよー」と言いまた一歩に近付いたアーヴァイン。
それに対して先程から彼の様子に苛立っていたキスティスが口を開く。


「アーヴァイン・キニアス! 貴方は今回の作戦の主役なのよ、もっとしっかりしてちょうだい!」


キスティスがそう言うと周りに居るリノアとゼルも同意の気配を流す。
何時の間にか戻ってきたスコールはチラリ、とアーヴァインを一瞥するだけだったが。


「・・・誰も分かってくれない」


そんな中、ポツリとアーヴァインが呟いた。


「狙撃手は独りぼっちなんだ・・・。独りぼっちの世界で神経を研ぎ澄まして、一発の弾丸に自分の存在を賭けるんだ。
 その瞬間のプレッシャー。その瞬間の緊張感。僕はこれから・・・其れに耐えなくちゃならない」


アーヴァインはそう言い悲しげに瞳を細めた。
突然の彼の変わりように戸惑う皆の中、だけは彼の孤独の色に揺れる瞳を見逃さなかった。


アービン・・・?

「怖いんだ、だから・・・・・・、ちょっとくらい、ちょっとくらいハメを外しても・・・、
 
良いじゃねっかよー! なんて言ってみたりしてみた」


先程のシリアス顔は何処へやら。
突然何時もの調子に戻っておちゃらけた後ににへらっと笑ってそう言ったアーヴァインに苛立ったゼルがその苛立ちを拳にして床にぶつけた。
その衝撃のせいか、列車が思い切り揺れた。―直後、


『た、ただいまの振動による列車の被害はございません。
 く、繰り返します。た、ただいまの振動による列車の被害はございません』



ピンポン、という音の後に流れるアナウンス。
どんだけ力強いんだ、ゼル。とは思ったが今はそれを口に出さず。アーヴァインを見上げた。
他の皆はもう既にアーヴァインに呆れ、彼から注意をそらしていたがだけは彼の先程の悲しげな瞳が気になっていた。


「アービン・・・?」

「何かな?」

「やっぱ、寂しい?」


此方を見上げつつ、小首を傾げてそう問いかけてくるにアーヴァインは苦笑した。
彼の苦笑はほんとの合図。はそれを知っていた。
だからこそ、彼の手を持ち上げ、握った。


「大丈夫!私たちがついてるからね!例え失敗しても私が何とかしてあげるからねー!!」


ニコリと微笑んで言うに、アーヴァインも笑みを浮かべ、彼女の手を優しく握り返した。
「ありがとう、」そう呟いて空いてる手での頭を撫でた。


「知り合いが居ないから孤独感?」

「・・・半々、かな?」

「? まぁいいや。取り合えずお互い知ってる私が一緒に居てあげましょー」


そう言いはアーヴァインを見上げて笑った。



















































其の後、列車はデリングシティに着いた。
先にスコールが下りて、それにとアーヴァインが続く。
其の後も皆が続いて下りてくる中、スコールは前にあるエスカレーターに乗る。


エスカレーターで上がった先にあった景色は、美しい夜景。
目の前にある大きな道路、立派な門。何処を如何見ても首都の町そのものだった。
隣で黙って辺りを見渡しているスコールには「スッコー?どうかした?」と問いかける。
スコールはそれに「否、」と言い再度口を開く。


「これからカーウェイ邸へ向かう。場所は通称『役人地区』。
 俺達はガルバディアガーデンから警備の応援に来た事になっている、其れを忘れるな」


スコールの言葉にSeeD全員が「了解」と言い彼の言葉を頭に刻む。
歩を進めつつ、スコールは以前見た不思議な夢を思い出していた。


ラグナは今此処に居るのか・・・?


そう思ったが、直ぐに今は任務中だと自分に言い聞かせて雑念を払うように首を振った。

役人地区へ向かい、カーウェイ邸まで着いた事は良かった。
だが、入り口で護衛をしているガルバディア兵は中へは入れてくれなかった。
どうやらカーウェイ大佐は実力を自分の目で確かめたいらしく、ちょっとしたテストを投げてきた。
それは街を出て北東にある名も無き王の墓へ行って痕跡を見つけてくれば良いらしかった。
痕跡とは、ほぼ毎日大佐の所に訪問してくるガルバディアガーデンの生徒の痕跡らしかった。
昨日も一人来たらしいが、名も無き王の墓へ試練に行ったまま戻らないと言う。
其処でその生徒の身分証明、つまりは出席番号を入手してくれば良い話だった。

これはスコール達には簡単すぎる試練だった。
スコールは「班を分ける。残りはデリングシティに残っていろ」と言いメンバーを決める為に皆を見渡す。


「・・・、それとキニアス。着いてきてくれ」

「りょーかーい」

「OKOK」


二人はそう返事をしてスコールの後につく。
はリノアに片手を振って「直ぐ戻るからねー」と言って笑った。
リノアも頷き「うん、いってらっしゃい。気をつけてね」と言い笑った。


取り合えずレンタカーを使用して行く事にした。
名も無き王の墓はそれ程遠くは無いのだが、出来るだけ早く済ませたい。
そんなスコールの提案に二人は頷き、街の入り口でレンタカーを借りて街を出た。

運転はがやりたいと言ったので彼女に任せる事になった。
後部座席にはスコールとアーヴァインの二人が座る。


「ちょっとだけ飛ばすよーあんま遅いとカーウェイさんに舐められちゃうからね」

「あぁ。頼む」


スコールの返事を聞いた後、はギアを動かしアクセルを踏んだ。
動き出す車の中、アーヴァインはスコールをついついと突っつき声をかける。


「班長さん、アンタって分かりやすいのな」

「・・・何がだ?」


突然のアーヴァインの言葉に少し苛立ちながらスコールはそう言う。
そんなスコールにアーヴァインは笑みを浮かべ、「恋の溜め息ってやつ、多すぎだよアンタ」と言い窓の外に視線を移した。
そしてガラス越しにスコールと目を合わせ、呟く。


「班長さんなら出来るかもね」

「だから、何がだ」

「いやいや、其処は自分で考えようよ〜」


アーヴァインはそう言うと悪戯っぽく笑い、運転席に座るをちらりと一瞥した。
スコールも彼に習いを見やる。
バックミラーで二人の視線に気付いたは少々複雑な表情で「・・・二人して何?」と言う。
そんなにアーヴァインは「いやいや別に?」と言い誤魔化す。
は納得のいかない表情をしていたが前方に目的地が見えたので「あ」と声を上げて其方に意識を移した。


「着いたよ、名も無き王の墓ー」


さすが王様の墓、でっかいねー。と言いつつは器用に王墓の真横に車を止める。
三人は車から降りて、王墓の入り口から中へ入った。

生徒の痕跡は入って直ぐに見つかった。
一本の剣が落ちていたのだ。は其れを拾い上げ、読み上げる。


「『男子・出席番号178』・・・こんだけ?」

「あぁ。 試練終了だ、戻るぞ」


馬鹿馬鹿しい。とでも言いたげに瞳を細めてそう言うスコールにが「まぁまぁ」と言い彼の肩をポンポン叩く。


「ちょっぱやで戻ってビックリさせちゃえば良いじゃん!
 ほら、『こんなショボイ試練受けさせやがってー』とか言うよりは効果覿面でしょ」


悪戯っぽく笑いながら言うにスコールは微かに口元に笑みを浮かべ、「そうだな」と言った。
そんなスコールを見た途端、から笑みが消えて唖然とした表情で固まる。
アーヴァインは瞳を少し大きくしただけだったが、は固まってしまっていた。


「・・・スッコー、今、笑った・・・?」

「(
何だよ)・・・俺が笑っちゃいけないのか?」

「ううん!!ぜぜん!! うはぁ〜珍し良い物見たな〜」


にへっと気の抜けるような笑顔を向けられスコールはにしては珍しい笑顔だ、と思いつつ彼女を見下ろす。
よし、これは三人の秘密にしよう。と訳の分からない事を言うにアーヴァインが近付いて彼女の頭を撫でた。
それに瞳を丸くするにアーヴァインは笑みを浮かべ、口を開いた。


は相変わらず可愛いよな〜!」

「な、何言ってるんだか! アービンの口説きには乗らないって言ってるだしょーが!!」

「口説いて無いよ、ああ、妹みたいで可愛いなって思ってただけさ」

「妹・・・」


はその単語に反応して少しだけ遠くを見詰める様に瞳を彷徨わせた。
そんなの様子にスコールは小首を傾げたが、アーヴァインは違った。
の頭を撫でながら「まだ見つからないの?」と優しく問いかけるとはがばりと顔を上げて口を開く。


「まだって、アービン。私SeeDなりたてで今回初任務の途中でこういうお仕事を請けたんですけどー?」


見つかるわけ無いじゃんかい!と言うの言葉に反応したスコールが「何か探しているのか?」と問う。
其れにはスコールを見上げ、「あ」と言った後に「そっか・・・スッコー達には未だ言ってなかったっけね」と言いスコールを真っ直ぐに見上げた。


「私ね、お兄ちゃんを探す為にSeeDになったの」

「行方不明なのか?」

「うん・・・ちょっと出た後に連絡途絶えちゃって・・・。
 どっかに居るのかもしれないじゃん?よくドラマでありそうなのが記憶喪失とかね!」

「・・・・・・」

「取り合えず探してるの。あ、バラムには居なかったんだー、何かデリングシティとかは居なさそうだし」

「何で?」


スコールがそう問いかけるとは少しだけ複雑そうに笑った後、「お兄ちゃん、此処好きだけど好きじゃないって言ってたから」と言った。
其の後少しだけ沈黙が落ちたが、が「あー!!」と言い手をパンパンと叩いた。


「ヤメヤメ!何か暗いね!! ほら、さっさとデリングシティ戻ってカーウェイさん見返してやろうぜーい!!」


安全運転だけどスピード出すから!と言いは一人で進んで行った。
アーヴァインとスコールも歩を進め、前を歩くの背を見詰めた。


、強がってるけどほんとは寂しいんだ、アレ」


スコールの隣を歩いているアーヴァインがそう言い、スコールを見る。
それに対してスコールは「知っている」とだけ返しての背を見た。


何時だって何処か無理している様子が見える。

でも、それを皆に悟られない様に何時も強がって、寂しさを押し殺している。

人の温もりを失う事を恐れつつ、人の温もりを求めてしまう。

これは、兄がやはり関係しているのか。と、スコールは思っていた。


の背を真っ直ぐに見詰めているスコールを見、アーヴァインはデンガンハットを深く被り、誰にも気付かれない様にコッソリ笑みを浮かべた。




スッコーお兄ちゃん情報その1をゲット。
さて、魔女暗殺任務ですよー・・・!