デリングシティに戻ってすぐさまカーウェイ邸に行き名も無き王の墓の入り口に落ちていた身分証明の出席番号を警備兵に言うとやっとカーウェイ邸の中へ入れた。
でっかい屋敷だなぁ。と思いつつは大佐邸の廊下を歩きながら視線だけを動かして辺りを見た。



バラム、ガルバディア両ガーデンとガルバディア軍の大佐が手を組むのか?
 ・・・何故だ? ・・・俺が考えても仕方ないな。『SeeDは何故と問うなかれ』だ



の横を歩いているスコールはそう思いつつ案内された部屋へ足を踏み入れた。
室内は豪華な飾りが施してある場所だった。
豪華な室内には仕事用と思われるデスクやら本棚があったりとする様子からカーウェイ大佐の部屋の一つなのかもしれなかった。
それとも他の軍事用客人の為の部屋か、兎に角豪華な作りだった。

椅子とテーブルが部屋の真ん中にある他、壁の棚にはワイングラスが綺麗に並んでいる。
壁には絵画があり、天井からはキラキラと輝きを放つ美しいシャンデリアが吊るされていた。


少しの間は全員が立って待っていたが中々来ないカーウェイ大佐に皆焦れてきた。
キスティスとリノアは椅子に腰を下ろし、アーヴァインはデスクの前の椅子に腰を下ろす。
ゼルは落ち着き無く苛々した様子で室内をウロウロし、セルフィは窓からデリングシティの夜景を見始めた。
は並べられているワイングラスを少しの間見詰めていたが、壁にある絵画を今は見ていた。
スコールは唯黙って腕を組み、壁に寄り掛かっていた。

静かな空間の中、キスティスの「随分待たせるわね」という声が響いた。
その次にリノアの溜め息が響く。


「もう・・・人を待たせても何とも思わないんだから・・・。ちょっと文句言ってくる」


そう言い椅子から立ち上がり、ドアへと向かい歩くリノアにが声をかける。


「それなら私が行くよ?」

「あ、だいじょぶなの。此処、私ん家だから」

「え?」


リノアの口からアッサリと出された驚きの事実に全員が瞳を丸くする。
此処、カーウェイ邸がリノアの家という事はリノアは此処の家の持ち主の娘という事になる。
え、と再度が思い小首を傾げた時、リノアがを見た後、スコール達を見やる。


「ね、私をおいてきぼりにしないでね?」

「何かが起こるのか?」


そう問うスコールにリノアは少し考える素振りをした後「うーん、分かんない」と言った。
何かあんまり良い予感はしないんだよなぁ・・・。とリノアは付け足して言った後に「ま、いっか」と言い言葉を続ける。


「これはクライアントの命令って事でヨロシク!」

「りょーかーい」


リノアの言葉にはそう言い腕を挙げてSeeDの敬礼を取って了承の合図を送る。
スコールは口にこそ出さなかったがと同じく敬礼をして了承の合図を送った。
それを確認した後、リノアはにこりと嬉しそうに笑ってから部屋から出て行った。


面倒な事にならないだろうな・・・

「どうなってんだ!?」


スコールがそう思い溜め息をこっそりと吐いた後、ゼルがそう言う。
恐らくその言葉はリノアの事を指しているのだろう。
誰かがゼルの言葉に反応するより早く、ドアが再度開いた。

そして、カーウェイ大佐と思われる軍服を着込んだ男が入ってきた。

それに反応して全員立ち上がり、大佐の前に行く。


「リノアは?」

「アレは君達のように鍛えられていない。足手纏いにならないとも限らん。
 彼女が作戦に参加しない事は、此処に居る全員の為でもある」

「・・・もしかして、リノアのお父さん?」


スコールの問いかけにそう淡々とした様子で返した大佐を見ていたセルフィが、少しだけ考えた後にそう問う。
大佐は少しだけ渋面をし、「そう呼んで貰えなくなって、随分になる」と、肯定の言葉を返した。


「親父は軍のお偉いさんで、娘は反政府グループのメンバー!? まずいんじゃないっすか!?」

「そうだ・・・非常にまずい。 ・・・が、私の家庭の問題だ。君達には関係ない」

そーもいかないと思うけどなー


ゼルの言葉の後にキッパリとそう言い捨てる大佐を見ながらは肩を竦めてそう思った。
リノアは今自分達のクライアントだ。共に行動している今、関係ない訳が無かった。


「何より、これから我々がやろうとしている事に比べると、余りにも小さい問題だ」

「私たちにとってはガーデンの指令もリノアの命令も同等の価値なんですけどねー。
 アッサリと小さい事とか言わないで欲しいよね」


そう冷めた様子で言った後に壁に寄り掛かったにスコールは少しだけ驚く。
否、スコールだけではなく其処に居た者がそうだった。

珍しく何処か苛立った様子を露にしている
カーウェイ大佐を見る瞳は何時もと違い、冷たい物でもある。

腕を組み、大佐を見るの様子を不審に思いながらもスコールは口を開く。


「俺達は今回の任務が終わったら、契約通りリノアの傭兵に戻ります。
 事情は分かりませんが、其の時は邪魔しないで下さい」

「邪魔したら?」

「(
そんな事聞くなよ)俺達はSeeDです。SeeDのやり方で行動します」


そう言ったスコールに大佐は瞳を細めるだけだった。

少々険悪な空気になって来た時、パンパンと手を叩き音を出しながらアーヴァインが口を開く。


「おいおいおい、おたくらよ・・・。
 僕達魔女を暗殺しに来たんだろ?先に其の話をしないか?」

「・・・一時停戦だ。計画の説明をしよう」


そう言った後に大佐が部屋を出たので全員が其れに続く。
外に出るまでの廊下を通っている時、スコールの横を歩いていたは後ろからくん、と襟を引っ張られて少しだけ身体を後ろに傾かせる。
後ろを歩いているのはアーヴァインで、彼は身を屈めるとの耳元で囁く。


「らしく無いんじゃないの?」

「・・・こーゆー時、普通ほっとかない?」


少しだけ頬を膨らましてそう言うとアーヴァインは首を振って少しだけ笑う。
そしてチラリ、とスコールに視線を送って口を開く。


「班長さんも心配してるからね」

「・・・お喋りをしている場合じゃ無い」


アービンが話しかけてきたんですけど。とは思いつつ頬に入っていた空気を溜め息で外に吐き出した。
そしてスコールをゆるゆると見上げた。

その瞳には、濃い悲しみの色が宿っていた。

それにスコールが小首を傾げているとは「ごめんね」と言いスコールを見詰める。


「任務に支障は出しません。邪念も打ち消すから、」


足手纏いには、ならないから。

の瞳はそう強く訴えてきていた。
スコールは軽く息を吐いた後、「分かっている」と言いを見下ろした。


「アンタとこの街の繋がりは俺は知らない。だから、アンタがそんな不安がる理由も分からない」

「うん」

「(
・・・なんて言えっていうんだ、こういう場合)・・・兎に角、頑張れ」

「・・・うん。了解ですハンチョー」


少しの間があった後、そう言ったスコールにはくすり、と笑みを零して答えた。
きっと言葉を捜してたんだけど見つからなかったんだよ、スッコー。とは思い仄かに頬を朱に染めた。


不器用な優しさを持った彼が、自分を励まそうとしてくれた、今。

慣れない事だから、全然上手く行かない。けど、その不器用さに酷く心が救われる。

彼に心配して貰う事が、酷く心地良い。


心配といえば、とはある事を思い出す。

SeeD就任パーティの後、伝言を預かりスコールを待っていた時の事。
あの時も、醜い心に自己嫌悪に陥っていた自分に彼は優しくしてくれた。


諦めなきゃ、って思ったよ


でも直ぐにティンバー行きの列車内で挫けそうになったっけ。
ていうか今も挫けそうなんだよね。とは思いほう、っと大きく息を吐く。


・・・認めなきゃ良いだけ。分かってるんだ、逃げてるだけだって


人と居る温かさを知った自分が認めてしまえと甘美の誘惑をしてくる。
反対に失う辛さを知った自分が過去の映像を流しながら拒絶の意を強く押してくる。

結局、今は答えを出す事は出来ないんだ。


はそう思い屋敷から外へ出た。
































































「我々ガルバディア政府と魔女イデアが手を結んだのは知っているな?」

魔女の名はイデア

「その協定を記念してセレモニーが開かれる」

イデア・・・・・・


大佐の説明を聞きながらスコールは何処か突っかかりを覚える魔女の名を脳内で繰り返していた。

大佐は歩きながら任務の説明をする。


「セレモニー会場は大統領官邸だ。セレモニーの最中に君達は三チームに別れて其々指定位置に移動する。
 凱旋門チームは素早く凱旋門に潜入して待機だ。場所は後で説明する。
 狙撃チームは大統領官邸の正門前で待機。つまり今正に私が立っているこの位置だ。狙撃チームは此処で待機だ」


大佐はそう言い大統領官邸の正門を見上げる。
オイ待て。こんな場所でこんな作戦の説明してインデスカイ?とは思ったが辺りに不審人物も盗聴器も何も見当たらないので、良いの・・・か?と思い小首を傾げるだけで終わった。
がそんな事を考えている間、スコールは(
狙撃チームと凱旋門チーム。六人を三チームに分けるんだな?)と脳内で整理をしていた。
残りの一つは何だ、とスコールが思っていると大佐は大統領官邸に視線を移し、「あれが大統領官邸だ」と言った。


「セレモニー終了と同時に魔女のパレードが始まる。そうしたらあの正門が開く。
 それまでは大人しくしていてくれ。騒ぎになればパレードは中止される。それだけは避けなくてはならない。
 開門と同時に狙撃チームは行動開始だ。群集も警備もパレードに注目している筈だ。比較的行動し易いと予想されるな。
 狙撃チームは速やかに移動する。目標は大統領官邸の屋上。魔女の部屋の手前の通路の床に時計部屋への扉があるはずだ。
 其処には悪趣味なギミック時計がある。狙撃用ライフルも其処に隠してある。その内部に侵入して定時20時まで待機。
 魔女はパレードカーに乗ってこの門からスタートする。パレードカーは門を出た後左の方へ向けて動いていく」


そう説明した後、大佐は「こんな風に」と言って行き成りダッシュし始めた。
年甲斐も無く頑張るな。と思いつつ走る大佐を見ていたはそう思いつつも作戦を頭に叩き込む。
走り終えた大佐は「こっちの方へ移動する」と言い此方を見やる。
走らなくても良かったんじゃ?と思ったが口に出したら色々と五月蝿そうなのでは黙っている事にした。


「パレードはデリングシティ外周を回る環状道路をぐるりと一周して再びこの広場に戻ってくる。
 つまりこっちから再びパレードの隊列が現れる。そしてパレードは右に曲がって・・・・・・こっちへ行く訳だ」


こっちこっち言いながら広場を走り回る大佐。

傍から見たら、何してるんですか大佐。だね。とは思いつつ大佐が走っているのを見ていた。


「さて、此処からが凱旋門チームの行動だ・・・。 定刻20時。魔女のパレードは凱旋門の中に入る。
 この瞬間、凱旋門チームは制御盤を操作、鉄格子を降ろす。魔女を凱旋門に閉じ込めるのだ」


凱旋門の下に行き説明をする大佐。
は上を見上げ、凱旋門の両側の出入口にある今は上がっている鉄格子を見やる。
本番ではこれが落っこちるんだね。と脳内でシュミレーションしつつ大佐の説明を聞く。


「20時には狙撃チームが待機するギミック時計全体が迫り上がる。狙撃チームと魔女の間には障害物は何もなくなる。
 そのチャンスを狙って・・・・・・・・・・・・、」


BANG!と狙撃する訳ね。

はそう理解し、これで説明が終わった事も理解して脳内で作戦を整理する。
その途中で、あ、と短く声を漏らし大佐を見やる。


「残りの一チームは?」


そう問いかけると大佐は頷きを一つ返し、口を開く。


「残りの一チームは凱旋門チーム、狙撃チームとは全く別だ。
 作戦開始時刻になったらこのチームは裏口から大統領官邸に潜入して貰う。
 潜入した後、官邸内に居る見張りを迅速に片付け、狙撃チームの時計部屋への進入を手伝う。
 合流した後、狙撃チームと共に行動して貰いたい。
 尚、これはチームというより一人行動の方が良いかもしれない。
 六人の中で一番素早い者、これが適任だろうな。
 行動はパレードが始まってからだ。それより早く見張りに攻撃をしかけると魔女に感づかれるかもしれないからな」


大佐はそう説明をした後、大佐は全員を見渡してこう言う。


「これが計画の全容だ。後は作戦開始の時間を 待つだけだ。それまでは街を見て回るのもいいだろう。
 勿論、此処に居ても構わん。但し、外に出ても問題は起こさないでくれよ。」

「(
俺達を何だと思ってるんだ?・・・あんたの娘とは違うんだ)俺達はSeeDです」

「・・・成る程、そうだったな」


スコールの言葉に大佐は少しだけ笑みを浮かべ、そう言った後「暫くは自由行動だ」と言い歩を進めた。


「街を見て回るのも良いだろう。準備が出来次第私の官邸に来てくれたまえ。
其処で最終打ち合わせをしてから計画開始だ」


カーウェイはそう言い、立ち去って行った。




わざわざダッシュする大佐。正直笑えるワンシーン(コラ)
ゲーム中おっかけまわして遊びません?あ、私だけですか←