底に沈んだ意識がフッと浮上したと思ったら、何時しか体験した不思議な感覚が身体を支配していた。
とたとた、という軽い足音が響く。
階段を上がって来るその音を耳にし、ラグナは其方を見やる。
「ラグナおじちゃん、お客さんだよ」
階段を上がりきった青いワンピースを着た少女がニコニコと笑いながらそう言う。
それに大してガルバディアの軍服とは違い、シャツに青いジャケットを羽織った私服姿のラグナは頭をかきつつ「あー?」と言う。
「俺に客? どんな奴だった?」
「変な服のおじさん。今、レインと話してるの」
「ん? 店にいるのか?」
「そうだよ、だからエルがラグナおじちゃんを呼びに来たの。偉い?」
褒めて、とでも言いたげな純粋な瞳でラグナを見上げて少女は言う。
だがラグナは「偉くない!」と言い少女に近付いて、目線を合わせる為に身を屈ませる。
「一人で危ないじゃないか。魔物に襲われたらどうするんだ?」
「隣だもん、大丈夫だよ!」
「隣でも危ないの! エルなんか小さくて可愛いから魔物に狙われてるんだぞ!
捕まって、ちゅーちゅー血を吸われちゃうんだぞ!そんな事になったらおじちゃんは泣いちゃうぞ〜」
ラグナは少々ふざけつつも真剣にエルと呼ばれる少女に言う。
だが少女は「大丈夫だもん!」と言って笑う。
「ラグナおじちゃんとクロスおにいちゃん呼ぶもん。すぐ来てくれるんだよね?」
少女は嬉しそうにそう言って笑うと駆けて階段を下りて行った。
そんな少女にラグナは「あ、待てよ、エルオーネ!」と少女、エルオーネを呼び止める。
それが下に行ってしまった彼女に聞こえるはずも無く、ラグナは「まったくー」と言い頭をかき、小さな部屋から出る。
階段を下りると、下のダイニングでエルオーネがラグナを待っていた。
ラグナが下りてきた事を確認すると、エルオーネは「待ってたよ、偉い?」と聞いて来た。
それにラグナは微笑み、「うん、偉い偉い!」と言いエルオーネの頭を優しく撫でた。
そうしたラグナは歩を進め、棚の上にある写真の前に立つ。
「エルオーネのお父さん、お母さん。エルオーネは今日も良い子です」
そう言った後にエルオーネを見、「な?」と言うラグナ。
そんなラグナにエルオーネはにこにこと笑いながら「はーい!」と言った。
そうした後、ラグナが「じゃ、そろそろ行くか」と言い家のドアを開ける。
ラグナが先に外に出て、隣の家の前に行く。
そして辺りをキョロキョロと見渡して危険が無いかを確認した後、「エルオーネ! 今がチャーンス!」と言い彼女を呼ぶ。
エルオーネも「チャーンス!」とラグナの真似をしてそう言い駆けて来た。
エルオーネが先に隣の家の中に入った事を確認し、ラグナは再度辺りを見渡す。
そしてモンスターが居ない事を確認すると、パブと書かれた看板がある家の中へと入っていった。
中に入るとエルオーネが女性、レインの前に居た。
レインは腰に手を当てて「分かったわね、エルオーネ」と言う。
「大人しくお部屋の中で遊んでちょうだい」
どうやら勝手に外に出た事に怒っている様子だった。
エルオーネはラグナを振り向き、てへっと舌を出して彼を見上げる。
そして小声でこそこそと話す。
「怒られちった」
「エルオーネが約束守んなかったからだぞ。そりゃ、しゃーねえなー」
小声で話していたのだが、レインには聞こえていたらしく今度は「ラグナ!」と言い眉を吊り上げて彼を見やる。
「エルオーネにはきちんとした言葉で話し掛けてちょうだい!」
まったく、もう。と言いレインはカウンターの方へと歩いて行く。
その間にラグナは先程エルオーネがしたように舌をぺろりと出して小声で言う。
「怒られちった」
「しゃ〜ね〜な〜」
そう言った後、二人はクスクスと笑い合う。
そんな時、溜め息と共に冷たい言葉がラグナに投げられた。
「アンタがやっても可愛さの欠片も無いんですから止めてくださいよ」
「クロスおにいちゃん!」
溜め息交じりにそう言ったクロスに反応したのはラグナでは無くエルオーネだった。
エルオーネはクロスに駆け寄って彼に飛びつく。
クロスも先に屈んで、彼女を受け止めてやった。
そんなクロスとエルオーネをラグナは微笑ましく見ていたのだが、クロスの後ろに立っていた人物に気付いて「お!」と声を上げる。
クロスの後ろに居た客は、ガルバディアの軍服を身に着けておらず、赤茶の私服を着たキロスだった。
キロスはラグナに笑みをかけ、「ラグナ君、久しぶり」と言った。
「キロス!」と歓喜の声を上げてラグナは彼に近付く。
クロスの腕の中でキロスをじ、と見上げているエルオーネにラグナは気付き、彼女に近付いて身を屈めて言う。
「おじちゃんの友達だよ。変な服だけど悪い人じゃないぞ」
「変な服だけどいい人なんだよね〜!」
ラグナの言葉を聞いたエルオーネはキロスを見上げて笑顔でそう言う。
さり気にぐさりと来る事を言う、子供って。とクロスは思いつつエルオーネの頭に手を乗せ、腰を上げる。
「エル、ちょっとレウァールさんは変な服のお友達とお話がしたんだ」
「クロスおにいちゃんも?」
「あぁ。 ・・・どうする?長くなりそうだが、上で遊んでるか?」
クロスがそう問いかけるとエルオーネは首を振って「ううん」と言う。
そしてパブの椅子に腰を下ろして「此処に居る」と言って笑った。
キロスは少し先程から変な服と強調されている事が気になっていたが敢えて触れず、「元気そうだな」とラグナに言うとラグナも笑い、「お前もな」と言う。
ラグナは顎に手を当て、考える動作をして「な、あれからどれくらいだっけ?」と言う。
「俺達のセントラ大脱出からよ」
「あれは・・・・・・惨めな敗走と言うな、普通は」
「この人に普通を求めちゃいけませんよ、キロスさん」
クロスはそう言いエルオーネ用の飲み物をレインに許可を取って準備する。
キロスの言葉を聞いたレインは「やーっぱり」と言いセントラ大脱出では無く惨めな敗走という事を理解した。
セントラの敗走を思い出しつつ、キロスは口を開く。
「ま、とにかく、あれから一年近くだ」
「俺はその半分以上はベッドの上だったぜ」
「俺は其処まではかかりませんでしたがね。・・・四ヶ月くらい・・・?」
クロスが首を傾げて言うとレインは「そうよ」と言う。
其の後にラグナが「もう、身体中の骨がばらっぱら」と言い両手を広げる。
ラグナにもレインが言葉を返す。
「私が看病しました〜」
「ありがとう。私からも礼を言う。私の怪我は一ヶ月くらいで治ってその後は・・・あんたとクロスを捜していた」
「何で?」
「軍を辞めて・・・まあ、退屈凌ぎだな。あんたという娯楽がないと人生は退屈だ」
キロスの言葉にラグナは「ひっでぇ事言うなー」と言いつつも笑みを浮かべていた。
「俺は日々真面目に生きてるんだぜ?」
「でも、分かるわ」
「同感ですね」
レインの言葉にクロスはそう言いエルオーネにジュースを渡す。
そんなクロスを見ながらキロスが「君の事も探していたんだぞ」と言う。
「デリングシティでは結構な噂になっている。
リーディ家のご子息がお亡くなりになった。ってね」
「それはご近所の老夫婦さんが俺の事知ってて、来た兵士に言った嘘からの話ですよ」
ラグナはレインに看病されたが、クロスは元々この村、ウィンヒル出身だ。
ガルバディア軍に入る前に、親が死ぬ前から結構親しい関係だった老夫婦。
この人らが最初クロスを引き取ると申してくれた事もあるが、血縁関係等の理由や、迷惑をかけたくなかったのでクロスはガルバディア軍の親戚、リーディ家に引き取られたのだ。
それからもクロスの身をずっと案じていた老夫婦の下に、大怪我をしたクロスが発見されたと聞かされたので看病を申し出てもらえたのだ。
クロスがガルバディア軍に居る事を望んでいない事を察し、老夫婦はクロスを探しに来たガルバディア兵に誤報を与えたのだ。
「それでも、君の立場はとても上位にあるべきものだった。盛大な葬式が行われたそうだぞ。
私はそれを信じては居なかったがな。ウォードもだぞ」
「それは、どうも・・・。 ・・・所で、ウォードさんは?」
「ウォードも軍を辞めた。幸運にも就職が決まって元気に働いているぞ」
何の仕事を?とクロスと話を聞いていたラグナに視線で訴えられキロスは含み笑いをしつつ、口を開く。
「D地区収容所でクリーンアップサービス」
「ひゅ〜!ち〜っと似合わねえけど元気ならいっか」
「ウォードさんが・・・クリーンアップサービス・・・」
ちょっと似合わないどころか結構な違和感なんですけど。とクロスは思ったがあえて言わない事にした。
「結局、声は戻らなかった。まあ、顔を見れば何が言いたいのかはわかるけどな」
「(元気でなによりだぜ〜)・・・ジュリアはどうしてるのかな?」
ラグナがポツリとそう呟く。
それにキロスは「さぁ・・・」と言いゆっくりと首を振った。
話を聞いていたレインが「ジュリアって、」と言い二人を見やる。
「歌手の?」とレインが問いかけるとキロスが「そうだ」と答える。
「レウァールさんはジュリアさんに憧れてて非番の夜は必ずクラブへ行ってましたよね」
「やめろよ! いいじゃねっかよ〜!」
「ジュリアってクラブで歌ってたの?」
クロスが其の時の事を思い出しながら言うとラグナが照れているのか話を遮ろうとした。
だがレインはそんなラグナを無視し、クロスに問いかける。
それにクロスは「いいえ」と言い首を振る。
「ピアノを弾いてただけですよ。 ちっぽけなバーのステージで、ね」
「じゃあ、初めて歌った曲が『アイズ・オン・ミー』なの?」
「そうらしいですね」
「ど、どんなんだったんだ?」
頷くクロスの横で、何故か少し慌てた様子でラグナが言う。
そんなラグナをクロスとレインが目を丸くして見やる。
レインが「知らないの?」と言うとラグナは「聞かせてくれなかったろ〜?」と彼女に言う。
「あなたが音楽聞くなんて思わなかったもの。
曲はね、ああ、恋してるんだって感じがして・・・私は好きよ」
「そうですね・・・」
レインの言葉にクロスもそう言って頷き、気付かれないようにラグナを見やる。
(あの曲は、自分の予想さえ間違ってなかったら・・・)
其処まで考え、クロスは首を振って雑念を飛ばした。
今はもう如何でもいい事だ。
クロスがそう考えてぼうっとしていたら、キロスが口を開いた。
「最近結婚したらしいな」
「そうそう! 軍の少佐と結婚したのよね。カーウェイ少佐だっけ?」
「よく知らないな」
「ええと、雑誌に載ってたんだけど好きな人が戦地に行って行方不明。
それで落ち込んでるところを少佐が励ましてくれてそれが結婚のキッカケなんだって」
「・・・・・・戦地に行った男の帰りを待ったりはしないものなのか?」
「いいじゃねえかよ、そんな事は!ジュリアは結婚して幸せなんだろ? それでいいじゃねえか!
なあ、エル、そうだよな〜?」
キロスの言葉に半ばクロスは同意しつつも話を聞いていた。
ラグナは彼の言葉をそう言って切り捨てると椅子に座っているエルオーネに近付き、身を屈めて言う。
そんなラグナにエルオーネはにこりと笑って言う。
「そうだよな〜。ラグナおじちゃんはレインと「あーーーーーーーーーーーッ!」
ラグナは咄嗟に大声を出してエルオーネの言葉を遮ると勢い良く立ち上がり、バッとクロス達を振り返る。
そして「この話はお終いだ!!」と言い腕を組んだ。
それを見ていたクロスは笑みを零して「そうだすね」と言いラグナを見やる。
(此処は何処だ・・・?)
「ん?」
ラグナは頭の中が何やらノイズがかった様な感覚に見舞われて小首を傾げる。
(俺はは魔女と戦った後、気を失ったはずだ・・・。またこのラグナの夢なのか・・・?
・・・魔女・・・、そうだ、は、近くに来ていた、はどうなったんだ、)
スコールはそう思いながら辺りに気を配る。
そんな事を知る由も無く、ラグナは「んー」と言い頭をかく。
「・・・・・・妖精さん、来てるみたいだ」
「・・・妖精さん? あぁ、そういえばそうだな」
「じゃあ、今日の仕事は楽そうだな」
「バトルが楽しみだ」
ラグナとキロスはそう言い、クロスを見やる。
「お前は?」とラグナが問うとクロスは少しだけ「うーん」と言い首を捻った後、「分かりません」と言った。
「そもそもその妖精さんっての、俺に来た事無いんで」
「だよなー。何でなのかね?」
「さぁ? まぁ、其の内来るんじゃないですか」
クロスはそう言い立ち上がる。
そして脇に置いてあった双剣を腰のベルトに着ける。
「今日はレウァールさんはキロスさんと話していればどうですか?
貴方の言うお仕事は俺がやっときますから」
「いやいや、クロス君。俺も行くぜ!」
ラグナはクロスにそう言った後、キロスを見やる。
「んで、どうすんだ? しばらくここに居られんだろ?」
「いいだろうか?」
「働かざる者食うべからず。それで良ければどうぞ」
ラグナにそう言われたキロスが、レインを見やってそう言う。
それにレインは笑みを浮かべてそう答えた。
キロスは「ありがたい」と言い外に出る前にエルオーネと話しているクロスの方へとラグナと共に行く。
「クロスおにいちゃん、ラグナおじちゃん、キロスおじちゃん、行ってらっしゃい!」
「さ〜て、お仕事、行ってらっしゃい。食事の用意しておくからね」
エルオーネとレインにそう言って見送られ、三人はパブを出た。
そうした所でラグナが「よっし、じゃあこっちな!」と言い広場を通り橋に向かう。
そんな彼の背を追いながらキロスはクロスを見やる。
「・・・・・・非常に素朴な疑問があるのだが。君達は此処で一体何をしているのだ?」
「俺はこの村出身ですから、普通に暮らしています。
ですが、ちょっと俺らにしか出来ない特殊な仕事、してたりしますよ」
クロスがくすり、と笑みを浮かべてキロスにそう言うと前を歩いていたラグナが首を捻らせ、此方を見やる。
話を聞いていたらしく、彼も口を開く。
「この村はよ、働き盛りの男達をみ〜んな戦争に取られちまったんだ。
残ってるのは、じいさんばあさん、男の子女の子チョコボに犬猫。
んで、気付いただろうけど魔物が村に入り込んでいる」
ラグナの言葉にキロスも頷く。
彼が此処に来る途中、村の中だというのに魔物と遭遇したのだ。
その事を思い出しつつ、キロスはラグナの話を聞く。
「で、そんな村に俺はと〜っても世話になった。だから、恩返しって奴だな、これは。
この俺は、このウィンヒルのモンスター・ハンターよ!と言う訳でキロス君。君は今日から僕の助手その2だ。
村の入口までパトロール! 途中、困っている人を見かけたら親切にするのが基本任務だ!」
そう言い終えるとラグナは「行っくぞー!!」と言いまた前を向いて進み始めた。
そんな彼の背を見た後、キロスが隣を歩くクロスを見やる。
「・・・君も、手伝わされているのか?」
「・・・まぁ、そんな感じです。俺はまぁ、他の仕事もしてますがね」
チョコボの世話とか、色々。と、クロスは言いラグナの背を見る。
色々、とは?とキロスが問おうとしたが、クロスは何処か悲しげに、瞳を伏せて笑うだけだった。
そんなクロスを見ては、深く追求が出来ない。
キロスはそう思い口を噤んだ。
「ゴールイン! パトロール一回目終了!」
村の入り口まで来たところで、ラグナがそう言う。
魔物と数回戦闘をして此処まで来た三人。キロスとクロスは「さて」と言うラグナを見やる。
「隊長と副隊長に報告に戻る」
「隊長・・・あのパブの女か?」
「レインだレイン。俺の命の恩人だ、覚えとけ」
「人の良さそうな女だな。悪い奴に騙されるタイプだ。」
「・・・悪い奴?」
キロスの言葉に反応しラグナは少し悩んだが、直ぐに「まぁ、・・・よし、」と言うと言葉を続ける。
「パトロールを強化する。キロス助手、本部へ戻って報告の後、計画を練ろう」
これは良く分かっていないな。と話を聞いていたクロスは思い溜め息を零す。
ラグナはそんなクロスに「何だね、クロス君?」と言うがクロスは「別に、」とだけ言い歩を進める。
「ほら、戻るんでしょう?さっさと戻りますよ」
クロスが言うとラグナも「そうだな!」と言い歩を進めていく。
先頭を歩くラグナの後にまたクロスとキロスが続く。
クロスは前を歩くラグナの背を見ながら、複雑な思いを吐き出す様に重い溜め息を吐いた。
(しあわせとは何だろう・・・、)
傍から見ればラグナとレインが凄く良い感じなのは明らかだ。
だからこそ、ラグナはこの村の住人から嫌われている。
この村の人がガルバディア軍を良く思っていない事は明らかだ。
だが、止むを得なく入隊させられたクロスには皆心を開いている。元々クロスはこの村の住人でもあった理由もあるだろう。
だが、ラグナは違った。否、最初は良かった。
レインが傷付いたラグナを見つけ、看病した後、彼は恩返しがしたいとレインの世話をするようになった。
元々閉鎖的な村だったので余所者を嫌う傾向はある。
だが、一番酷い様な嫌い方だった、ラグナに対しては。
(それは、レインさんが―――、)
「何だ何だ何だ〜!」
其処まで呆、と考えて歩いていたクロスは突然のラグナの声でハッとし、意識を浮上させる。
前を見ると、別れ道でラグナが何やら首を捻っていた。
「最初のパトロールの帰り道はこっちと決めてるんだよな、俺は」
「・・・妖精さんの仕業か?」
「・・・かもしれない。 兎に角、俺は何時も通りこっちから帰る!!」
ラグナはそう言い歩を進めた。
そんなラグナの後を追いながら、キロスが口を開く。
「おい、ラグナ。 あんた、毎日こんなパトロールごっこをしてるのか?」
「ごっこ、って何だよ!」
キロスの言葉に思わず足を止めてラグナが言う。
確かに、見えなくも無いな。とクロスは考えながら二人の会話を聞く。
「世界を旅するジャーナリストになるんじゃなかったのか?『ティンバー・マニアックス』を知ってるだろ?
そこの編集長と話してきた。世界の様子を紹介する記事ならいつでも欲しいそうだ」
「そりゃすげえ!」
キロスの言葉にラグナが嬉々とした様子で言う。
自分の記事が、雑誌に載るチャンスが舞い降りてきたのだ、自分の、夢が。
喜ぶラグナを見、微笑みながらキロスが「一度挨拶に行かないとな」と言う。
だが、ラグナは先程とは変わり、「お、おう・・・」と言葉を濁す。
「・・・あのな、もちっと此処に居てもいいよな?」
「取材が必要って訳か? 此処は良い村みたいだからな・・・。手始めにこの村を紹介するんだろ?」
「此処は駄目だ、有名にしちゃ駄目なんだ。・・・あんまり目立って人が集まると良くないだろ?」
キロスの言葉を聞いてクロスは一瞬困った様に眉を下げたが、ラグナが首を振ってそう言った事を確認し、安堵の息を吐く。
キロスはラグナの言葉を聞いて少しだけ考えた後、「成る程な」と言い言葉を続ける。
「・・・悪い奴が来てレインを取られる、か? ラグナ・・・あんた、変わったな」
「あ、魔物だーーーっ!」
キロスの言葉を最後まで聞かずにラグナはそう大声で言うと一気に走っていってしまった。
魔物なんて居ないけどね。とクロスは思いながらキロスを見上げる。
「・・・彼は変わったな」
「・・・そう、ですね」
「君も、少し変わった様に見える」
彼とは違った方向に。
キロスはそう言いラグナを追う為、歩を進める。
少し遅れてから、クロスも足を進めた。
(・・・隠し事、ばれてる)
やっぱ、貴方たちには隠し事出来ないみたいですね。
クロスはそう思いながら、二人を追った。
ちょっとオリジ的な設定含みます、はい。
自分的には、ある考えからこういうのに繋がったんです、ネタバレになるので言いませんが(笑)
質問頂きましたら連載注意書きに付け足します、