沈んだ意識の中、頭をぽふぽふと叩かれている感覚がした。
(・・・頭を・・・叩くな。・・・・・・足に・・・触るな。・・・眠らせろ・・・)
「ラグナ!?」
(五月蝿い・・・)
「ラグナ!」
(・・・・・・らぐな?)
「ラグナ!!」
(・・・ラグナ!?)
ハッキリと耳にそう聞こえ、スコールは目を開けた。
一気に眩しい光が舞い込んできて、目を刺激する。
スコールは瞬きを繰り返し、目を慣らさせると床に降ろされている自分に気付いた。
どうやら周りに居るムンバ達が助けてくれたようだ。
一匹のムンバが、スコールの服の裾を引っ張る。
「何だ? 分からない」
「ラグナ! ラグナ!」
「ラグナ」
「ラグナ! ラグナ!」
「・・・ラグナ?」
何でラグナ? スコールはそう思いムンバ達の言葉を唯聞いている事しか出来なかった。
暫くスコールは身体を休ませる為に其処に居たら、ゼル達が来たのだ。
ゼルは「スコール!! 大丈夫か?」と言い近付いて来た。
スコールの身体を見るとあちらこちらに火傷やら焦げがあったりと、拷問を受けた後がハッキリと見て取れた。
「酷い目に遭った」
「スコール大丈夫〜? ちょっと待ってね」
セルフィはそう言うと彼に近付いてケアルを放った。
幾分か楽になった身体に、スコールは息を吐く。
そんなスコールを見、「とにかく脱出しようぜ! ほら!」と言いゼルはスコールの武器、ガンブレードを渡した。
其れを受け取ったスコールは立ち上がり、辺りを見渡す。
心配気に自分を見てくる人物の中に、ある人物の姿が無い事に気付き、眉を潜める。
「・・・は何処だ?」
「・・・一緒じゃなかったの?」
キスティスの問いかけにスコールは「途中までは、」と言い視界の端で何か輝く物を見つけ、其れに近付く。
身を屈めて、拾い上げたそれは、の蝶の髪飾りだった。
拾い上げたそれを見ているスコールにゼル達が近付く。
スコールの手の内にある物を覗き込んだセルフィが、口を開く。
「・・・それって、の髪飾り?」
「・・・あぁ、そうみたいだ。 ・・・は此処に少しだが居たからな、其の時に落ちたんだろう」
スコールはそう言いながらチラリと水が零れている箇所を見やる。
まだ大きな容器には水が沢山入っているが、零れている水の量も半端無い状態だった。
スコールは其処に近付き、何も痕跡が無い事を見ると溜め息を吐いた。
「兎に角、行こう」
此処に留まってても仕方が無い。
スコールがそう苦々しげに言い、取り合えずは部屋を出る。
そうした所でゼルが「なあ、」と声をかける。
「お前、あっちの世界でラグナってここへ来てないのか?」
「・・・来てない」
「じゃあ、スコールもここの脱出方法は知らない訳ね」
キスティスが溜め息交じりにそう言うと、ゼルが「う〜ん」と唸る。
「・・・どっちにしろ、俺達上へ上へって、来たじゃねぇか。やっぱ、下に戻らねぇと駄目だよな」
「一階づつ、戻るのはキツイわね。脱走者警報のおかげで警備員だけじゃなくて魔物もうようよだし」
「そう言えばスコール、お前どうやって、このフロアまで運ばれたんだ?」
ゼルがスコールにそう問うと、スコールは無言でゼルの後ろを指した。
三人が其方を見る中、ゼルが驚きの声を上げる。
「ぬぉっ!! 何だこりゃ!?」
其処にあったものはぽっかりと空いた一番上から一番下まで繋がっている大きな穴。
其れに近付いて下を覗き込んでみるセルフィやキスティス、ゼルにスコールは説明をする。
「下のフロアにある独房を取り外して運ぶクレーンみたいな物らしい」
「へぇー・・・・・・。 じゃあ、この穴ってば下まで繋がってんだぁ。
じゃあ!じゃあ! この穴をぴゅ〜〜っと、飛び降りれば直ぐに、下まで着くんじゃないかなぁ?」
「やってもいいけど『しっぱ〜い』じゃ済まないわよ」
可愛らしく小首を傾げて言うセルフィにキスティスが溜め息交じりに言う。
そんなキスティスと、額を押さえたスコールにセルフィは「だから冗談だってば!」と言う。
そんなセルフィの言葉の後、「うおっ!! 思い出したぜ!!」とゼルが言う。
「このアーム、上のパネルと中の制御室で自由に動かせるはずだぜ。
ウォードがやらされてたのを思い出したぜ。・・・でも、二つ同時に動かす必要があったはずだから誰かが残って上でパネルを操作しねぇと・・・・・・、」
其処まで言うゼルの肩を、キスティスとセルフィがポンと叩く。
両肩を叩かれたゼルは慌てた様子で「お、俺・・・?」と言い二人を見やると、にこりと可愛らしい笑みと綺麗な笑みを返された。
困った表情でスコールを見るゼルだが、彼には頷かれてしまった。
がっくりと項垂れて、ゼルは「わ、分かったよ・・・」と言う。
「俺は上の制御パネルで指示を出すから、乗り込んでてくれ」
ゼルの言葉にスコールは頷き、セルフィとキスティスを連れてアームの制御室へと向かう。
制御室へ入ると、床にはコードが沢山あり、壁には機械だらけだった。
キスティスが辺りを見渡しつつ、「へぇ、ここがアームの制御室ね」と言う。
暫く三人で中を見渡していると、通信がかかる。
『お〜い、聞こえるか?』
「ゼル〜、聞こえるよ〜」
「で、どうすればいいんだ?」
『正面パネルの赤いボタンを押してくれ』
ゼルの言葉通りにスコールは操作をする。
そうするとゼルの方も何やら弄っているようだった。
『後は、こっちで・・・・・・、よっと!』
ゼルの声と共に、ガクン、と床が揺れる。
下に下りていく中、スコールは外を覗ける隙間から外を見、辺りを見渡していた。
「・・・を探してるの?」
キスティスがそう問うと、スコールは少し間が空いた後、「あぁ、」とだけ返した。
セルフィがスコールの背を見つつ、「ねぇ、」と口を開く。
「は大丈夫かな?」
「・・・分からない。俺の次はだとサイファーは言っていたが・・・、あの部屋に戻ってきた形跡も無いしな。
何処かに捕まっているのかもしれない」
「・・・そ、っか〜・・・」
セルフィはそう言うと俯いた。
それとほぼ同時に、アームが下に下り切ったらしく、動きが止まった。
制御室から出ると奥に扉が見えた。
其の扉を見ているスコールに、キスティスが問いかける。
「ねぇ、これからどうするの?」
「取り敢えず、向こうに扉が見える」
「で?」
「・・・行ってみよう」
そう言い歩を進めるスコール。
扉を開ける瞬間、変に押される感覚に気付きスコールは扉を開けると同時に後ろへ下がる。
するとドザァ、という音と共に扉の奥から砂が大量になだれ込んできた。
「砂・・・?」とスコールが呟く。という事は此処は地下という事になる。
「どっちにしろ、此処からは出られないって事ね」とキスティスが呟くと同時に、耳にある音が入ってくる。
「何?」
「銃撃音?」
「随分、派手にやってるようだな」
セルフィ、キスティス、スコールがそう言い、暫くその銃撃音を聞いていた。
が、暫く経って三人はハッとし、足を動かした。
「「ゼル!!」」
キスティスとセルフィが同時にそう叫び、慌てて上へ行ける場所へ向かった。
こっそり、こっそーり・・・。
と心の中で思いはドアから顔だけを出した。
(・・・何か、魔法アンチフィールドが解除されたのは助かったんだけどさー・・・)
お陰で兵士全員伸す事が出来たし。と思いながらは捕まっていた部屋から出る。
このまま此処に居ても、魔女の言う生贄にされるだけだ、冗談ではなかった。
はそう思いつつ、取り合えずスコール達を探す事にした。
この脱走者騒ぎは恐らくというか、絶対彼らだろうから。
にしても此処、凄い上の方じゃない?とは思いつつ部屋にあったロープをフロアの端に縛る。
引っ張って大丈夫な事を確認し、下を覗き込むの目に、とんでもない光景が入った。
「・・・ゼル!」
ゼルが、兵士達に追いかけられていたのだ。しかも一人で。
逃げるゼルだが後ろから追いついて来た兵に銃で殴られて膝を着いてしまう。
其れを見た瞬間、はロープの端を掴み、飛び降りていた。
「ぐっ・・・!」
「手こずらせおって・・・死ね!!」
「おらおら退きなさーーいッ!!」
兵がゼルに向かい銃を突きつけた其の時、上からがロープを使い飛び降りてきた。
落ちる力を使い、ゼルに銃を向けていた男に飛び蹴りを喰らわし、綺麗に着地をする。
「!」
「ゼル、だいじょぶ?」
ゼルは安堵の息を吐き、お前こそ・・・と言おうとするが直ぐまた追ってが来て襲い掛かってきた。
は魔法を放って敵の行く手を阻む。
が、魔法の聞かない機械系の魔物がに襲い掛かった。
「きゃっ・・・!」
「! !」
先程連れて行かれた後も水攻めを受けていたは身体がまだ万全では無く、呆気なく尻餅をついてしまった。
其処に炎の壁を抜けてきたガルバディア兵が、剣を振りかざす。
「死ね!!」
「ーーー!!」
ゼルはそう叫び、ガルバディア兵との間に咄嗟に身を滑り込ませた。
「ゼル!」と背後でが叫ぶ声を聞きつつ、ゼルは歯を食いしばり、目を強く閉じた。
剣が振り下ろされそうになった其の時―――、
ガゥン!という銃撃音と共に切り裂く音が響いた。
其れと同時に倒れるガルバディア兵。
ゼルは恐る恐る目を開け、目の前に居る自分達を助けてくれた人物を見て、目を輝かせた。
「スコール!!」
「手加減したつもりだが・・・・・・」
「スコール!!ありがとう!!」
スコールが言葉を言い終わらない内にゼルがそう歓喜の声を上げてスコールの腰辺りにしがみ付く。
突然のゼルの行動にスコールはぎょっとして「な、何だ!」と言いゼルを放す為に身体を捻らせる。が、ゼルが離れる気配は無かった。
そんなゼルを見てもにこーっと笑みを浮かべ「スッコー!サンクスだよ〜!!」と言いふざけた様子でゼルとは反対側から抱きついた。
そんな二人にスコールは焦った様子を見せる。
「は、離せ・・・!離せって言ってるだろ!」
言ってるだろ!の所でスコールは持っていたガンブレードの柄をゼルの頭にゴッと落とす。
痛い!今のは絶対痛い!!とは思い自分にも来るんじゃないかと覚悟したが案外フェミニストなのか、にはそれは来なかった。
それでゼルは離れたが、は離れなかった(だって何もされてないし!?)
「スッコー、どうもありがとう!」
「・・・いいから、アンタも離れろ」
「感謝の気持ちをハグで表してみましたー(・・・目がマジだよスッコーさん)」
が笑ってそう言い、スコールから離れると「スコール!ゼル!」という声と共にキスティスとセルフィが階段から下りてきた。
傍まで来てが居る事に気付き、キスティスとセルフィは安堵の表情をする。
「無事だったのね」
「もう、スコール、一人でタッタと行っちゃうんだから。そんなに、ゼルが大事?」
セルフィがそう言うとゼルがいやいや〜と、嬉しそうに笑いながら頭をかく。
そんなゼルを見てスコールは頭を抱えて重い溜め息を吐いた。
「違うわよセルフィ。が見えたから、でしょ? スコール」
「あ、そっか〜」
キスティスの言葉に手をポンと打って納得するセルフィにが反論をする。
両拳を握り締め、「ちっがう!!」と言いスコールを見上げる。
が、直ぐにセルフィ達に向き直り首を振る。
「スコールとゼルの熱い友情でしょ!此処は!!」
仄かに頬を朱に染めてそう言うにキスティスとセルフィは「おや?」と思いお互いが顔を見合わせる。
はそんな二人を気にせず、そうだ。と言いスコールを見上げる。
「スッコー、さっき大丈夫だった?」
「・・・俺は平気だ。アンタは?」
暗にあの後、何かされなかったかと聞いているのだろう。
は曖昧な笑みを浮かべ、頭をかいた。
「ちょっと、逃げるのに手間取っちゃって・・・。でも大丈夫、何も情報は零してないよ!」
ていうか、イマイチ意味分かんなかったんだけどね。と付け足しては笑った。
そんなにスコールは「そうか、」と返すと掌をに翳し、ケアルをかけた。
先程より楽になった身体には「ありがと」と言いスコールを見上げた。
それと、と言いスコールがポケットに仕舞っておいたの髪飾りを返そうとした時、発砲音が響いた。
スコール達は咄嗟に身を屈め、銃撃を避ける。
セルフィとキスティスが身を屈めながら近付いてきて、「どうする?」と声をかけてくる。
「どうするっつったって・・・!こ、これじゃ身動き取れねぇぜ!?」
ゼルがそう言ったその時―、向けられている銃声とは違う音が数発響いた。
その直後、「ぎゃっ!」等という複数の悲鳴と共に銃声が止んだ。
が其方の方向を見やると、銃をクルクルと回して腰に下げて階段を下りてくる男が視界に入った。
テンガンハットを指でクイッと上げ、格好つけて階段を下りる彼は、
「アービン!!」
が歓喜の声を上げると彼はに笑みを向けてきた。
「やっぱカッコイイよーアービンー」とが言うと気を良くしたのかまたポーズを取ろうとした。
が、直後。
「何、カッコ付けてん・・・・・・のよっ!」
と、言い後ろからリノアがアーヴァインの背を蹴り付けた。
アーヴァインはごろごろと階段を転がって落ちて行き、床に無様に倒れる。
それこそ痛い、マジで今のは痛いって!とレイナは思い床に倒れたままのアーヴァインを心の中で心配する。
階段の上からリノアは腰に手を当て、下りてくる。
「まったく、アーヴァインがもうちょっと早く納得すれば此処まで面倒になってないんだよ!」
そう言いリノアは階段を下りる。
その途中で「リノア!!」と言い近付いて来たを見、リノアは表情を明るくした。
「!!」
「リノア!姿が見えないから心配してたんだ、怪我とか、無い?」
じ、と上から下までリノアの身体の様子をチェックするにリノアは嬉しそうに顔を綻ばせ、階段を一気に下りてに抱きついた。
そんなリノアの行動に「ん?」と言いながらもはリノアを受け止めた。
「(生きてた! やっぱり、やっぱりは大丈夫だったよ!) うん!」
「? 兎に角だいじょぶなんだね?」
が小首を傾げてそう問うと、「ん、んんっ・・・」と言いアーヴァインが身体を起こした。
そして「そりゃそうさ」と言うと両手を広げてを見やる。
「だって僕が連れ出したんだからね」
「どういう事だ?」
スコールの問いにアーヴァインが「それは・・・」と言い説明しようとするが、から離れたリノアが口を挟んだ。
「私の父が、ガルバディア軍を通じてした事なの。・・・私だけここから連れ出すようにって命令したらしいの」
「それで・・・、「それで、この男。命令通りに私だけ連れだしたのよ。達が捕まってるの知ってて」
アーヴァインの言葉を遮ってそう言い、じろり、とアーヴァインを見る。
そんなリノアにアーヴァインは少したじろぎつつ口を開く。
「いや、それは・・・、「ねぇ、酷いと思うでしょ?」
「ああ!! もう、悪かったって! だからこうして助けに来たじゃないか」
「私が散々、引っ掻いた後にね」
冷ややかな目でアーヴァインを見つつ言うリノアに、アーヴァインが「うっ・・・・・・」と言葉に詰まる。
やっぱり、カッコ悪いかもしれない。とが思っていると誤魔化すようにアーヴァインが「と、兎に角!」と言う。
「逃げ出すなら今の内だ」
「駄目だ、地下の扉は砂で埋まってた」
スコールの言葉にアーヴァインは頷き、「そりゃ、そうさ」と言い説明をする。
「この刑務所は今は潜ってるからね」
「潜って?」
「そっ、この刑務所は・・・」
「いたぞ!! 脱走者だ!!」
アーヴァインが本格的な説明をしようとした其の時、其の声と共に銃撃される。
何かアービンさっきから言葉遮られてばっかだなー、と思いながらはリノアを引っ張って身を屈めさせる。
他の皆も各々身を屈める。
アーヴァインだけは立って銃で相手を迎え撃つ。
的確に相手を倒しつつ、アーヴァインは口を開く。
「スコール! 君は二人選んで、上に先行してくれ。此処は僕が中心で引き止める!」
「上?」
どういう事だ?とでも言いたげにスコールはアーヴァインを見上げる。
問うて来たスコールにアーヴァインは眉を下げ、口を開く。
「詳しい説明をしてる時間はないんだよ〜!出口は上だから、信じてくれよ〜」
「・・・・・・分かった、、行くぞ」
迷わずにそう言いスコールはを見やる。
は頷き、「りょーかい!」と言いゼルから双剣を受け取る。
の隣に居たリノアが、「私も行かせて!案内出来ると思う!」と言う。
それにスコールが頷き、上に行く三人は決定した。
「ここからが、僕の出番だ」
スコール達が上に行った事を確認した後、アーヴァインはそう呟き、引き金を引いた―。
これは誰夢だ・・・リノアか!?(また/笑)
毎回思うんだけど此処のゼルは可愛い、そして焦るスコールも可愛い。
転がり落ちるアーヴァインが可愛い、無謀な事言うセルフィが可愛い、それに釘をさすキスティも可愛い、
蹴り落とすリノアが可愛い、ムンバ可愛いいいいいいいいい!
・・・結局は皆可愛い(笑)