「はい、いっちょ上がり!!」
後ろに居た機械系の魔物に魔法攻撃をした後、双剣で接続部を切りつけると魔物は動かなくなった。
バックステップを踏んだは双剣をクルクルと手の内で回し、腰の鞘に収める。
階段の上で待っているスコールが「早く来い」と言うのでルナは「はいはい」と返事をして走る。
階段を上り終えると、何だか開けた所に出た。
先程スコールが捕まっていた場所に通じるフロアなのだが、知らないは辺りを見渡す。
そんなにリノアが「大丈夫、此処で合ってるよ」と言って進む。
リノアが進んだのでとスコールも後を追う。
其処にある階段を上って少し進むと、日の光が目に入った。
「やった、外だ!」とが言い前を見やる。
橋の様な渡り道が前に一直線に伸びていた。
其の先にある建物に繋がってるようだった。
と、前の建物の様子等を観察していると突然警報音が鳴り響いた。
『これより先の、囚人の侵入は許可されていません。強制排除します』
「来るぞ!」
警報の後に、目の前に行き成り青い機械が下りてきた。
スコールが口を開き、そう言いガンブレードを構える。
其れにも習って双剣を鞘から抜き、構えつつ彼を見やる。
「やっぱ簡単に出してはくれないねー」
「邪魔をするなた倒すだけだ」
スコールは短くそう言い、奥に居る兵士を見やる。
奥に居るガルバディア兵は「逃がさんぞ!」と言い銃を撃ってくる。
其れを達は避け、各々が反撃の準備をする。
「奥の敵は私に任せて!」
リノアがそう言いブラスターエッジを放つ。
弧を描いて飛んだ刃は見事にガルバディア兵に命中し、また弧を描いてリノアの腕に収まった。
よろけた敵の隙を見逃さず、が斬りかかる。
が、行き成り眼前に出てきた青い機械―GIM52Aが邪魔をしてきた。
は其の侭GIM52Aに攻撃し、硬い機体に乗ってそれを蹴って飛ぶ。
其の侭奥に居るガルバディア兵に真上から踵落としを喰らわせた。
倒れたガルバディア兵を見て、スコールが一歩後ろへ下がる。
「一気に片をつける、、リノア、敵の注意を引いてくれ」
「おっけースッコー!でっかいのよろしくね!」
はスコールにそう言い魔法、サンダーを放つ。
それはGIM52Aに命中し、パリパリと放電する。
放電しているGIM52Aの付け根部を狙い、リノアがブラスターエッジを放つ。
もう一体のGIM52Aが襲い掛かってくるが、は難なく避け、リノアの前へ立つ。
そろそろかな、とが思った瞬間、急に空に暗雲が立ち込めた―。
蛇の頭を持ち、美しく大きな翼を広げながら、雲の隙間からG.F.、ケツァクウァトルが現れた。
ケツァクウァトルは頭の先で放電を繰り返した後、巨大な落雷を二体のGIM52Aに落とした。
GIM52Aはバリバリと暫く放電した後、爆発した。
其れを見たとリノアは武器を仕舞う。
「結構楽勝だったね」とが言うとリノアは笑みを返した。
『お〜い、スコール聞こえるか〜?』
其処に、何処からかアーヴァインの声が響いてきた。
ガンブレードを仕舞ったスコールが少し辺りを見渡した後、無線に気付き其れに近付く。
『お〜い、お〜いってば〜』
『考えがあるって、もしかしてこれ〜?スコール達が先に行っちゃってたらどーすんの?』
アーヴァインの声に続いてセルフィの声が響く。
スコールは機械に近付いて「聞こえてるぞ」と言う。
『やりぃ〜 ほら大丈夫だったろ?スコール、アームの上昇許可をそこから出してくれよ』
「どうやって?」
『スコール、右上に黄色いボタンがあるだろ。それを押してくれ。』
ゼルの声に従いスコールが(これか?)と、思いつつ右上にある黄色のボタンを押す。
少ししてアームが動き出したのか、アーヴァインの『おっけー』という声が聞こえる。
『じゃあ、直ぐ行くから待っててねぇー』
『ん?随分ゆっくりね』
『ま、の〜んびり行きましょ』
キスティスとアーヴァイのやり取りを聞いたリノアが「ふふっ」と笑みを零す。
「あの調子じゃ大丈夫そうね」と言うリノアにも笑って「だね」と言う。
そんな二人を横目で見ながら歩を進めるスコール。
彼に気付いたが小首を傾げて「何処行くの?」と問う。
「少し奥の状況を確認したい」
「じゃ、私たちも行くよ。さっきみたいに敵が出たら大変だしょ?」
だしょって何だ、だしょって。とスコールは思いながらもの言っている事は尤もなので「あぁ、」とだけ言った。
先頭をスコールが歩き、後ろを、リノアの順で歩く。
橋の様な渡り道を進んでいくと、眼下にあった光景に三人は息を飲んだ。
目に入った景色は、収容所の全景。
今自分達が出てきた建物と同じ形の建物が他に二つあり、三角形の形を作る様に立っている。
其れらを繋ぐのが今達が居る道だった。
建物は長い棒状の様なもので、地上から数十メートルの高さだ。
遥か下に、枯れた砂の大地が見えた。
がぽかんとした様子で「何ぞ・・・これ」と呟く。
リノアもこれには予想外だったようで「嘘・・・、」と言い顔色を青くした。
「さっき私が入ってきた時は、ちゃんと・・・」
「・・・取り敢えず向こうの建物に行こう」
スコールがそう言い前に進むので、とリノアも続く。
そうして前に進んで、もう少しで向こう側の建物に着く、と思ったときに足元がガクンと揺れた。
何だと思いが思わず立ち止まると、左右の手摺りだか壁だか分からない様な物が下に向けて畳まれる。
直後、向かおうとしていた方向の床から建物に仕舞われ始めた。
先に前に進んでいたリノアは突然の事にバランスを崩しながらも向こう側へと辿り着いた。
未だ進み切っていなかったスコールはあと少しの所で足場が消えた為、落ちそうになる。
そんなスコールにリノアは手を伸ばし、彼の片手を掴む。
普通だったら彼女に支えきれない事だろうが、スコールが咄嗟に空いた手で近くの畳まれた手摺りが収納された所を掴んだので大丈夫だった。
何とか上がりきったスコールは、ハッとして後ろを見やる。
リノアも焦った様子で其方を見やり、声を張る。
「!!」
叫んだのはどっちだったか、同時だったのかもしれない。
最後尾に居たは少し離れた位置で畳まれた手摺りが収納された所に両手で捕まっていた。
スコールは身体をギリギリまでに乗り出し、手を差し出す。
そんなスコールの後ろからリノアが「!こっちよ!!」と叫ぶ。
全体重を腕だけで支える事と、揺れる建物のせいでは顔を顰めつつ、リノアの声の方へ腕を動かして進んでいく。
そんなをスコールとリノアは息を呑んで見守っていた。
何せ、落ちたら命は無いのだろうから。
後少しで手が届く、という所まで進んできただが、砂の大地に沈んでいく建物が行き成りガタンと大きく揺れた。
「きゃ!」と短い悲鳴を上げたの片腕が離れる。
それを見たスコールは咄嗟に「!!」と声を張り、限界まで身体を乗り出し、腕を出来る限り伸ばした。
振動のせいで身体を揺らされ、はとうとう残っていた手も放してしまう。
ガリ、と爪が剥がれる感覚がした。
やばい!!と思い強く目を瞑った。
その宙を舞う手を、大きな手が乱暴に掴んだ―。
は、と思い上を見上げようとした瞬間、物凄い力で上に引き上げられた。
突然の事で頭が着いていかず、は訳が分からないままになっていた。
ぐい、と再度強く引っ張られ、その勢いで床に激突しそうになる。
「わ、わ!」と声を上げ、次に来る衝撃に耐えようと身体を硬くしたのだが、冷たい床の感覚は襲ってこなかった。
代わりに、何か温かい物に抱きとめられる感覚がした―。
恐る恐る、といった様子で瞳を開けるの視界に真っ先に入ってきたのは、獣を象ったシルバーネックレスだった。
また、は、として顔を上げると次には視界いっぱいにスコールの顔が広がった。
「ス、コール?」
思わず頭が真っ白になり、何時ものあだ名では無く彼の本来の名を呼ぶ。
きょとんとしているにスコールは瞳を安堵の色で潤わせ、の後ろ頭に手を回してぎゅ、とその華奢な身体を抱き締めた。
それに傍での身を案じていたリノアは「あ!」と短く声を上げ、己の両頬を両手で包んで身体を反転させる。
(見たいけど、邪魔はいけないのよね、うん!)と自己完結させ、リノアは頬を赤くした。
勿論、スコールの行動でも頬を朱に染めた。
「ス、スススススススッコー君!? なん、ななななななな何をばばばばばば」
「少し黙れ」
まるで落ち着け、とでも言われるかの様に後ろ頭に回された手で頭を撫でられてしまう。
落ち着けるか!!と思ったは咄嗟に離れようとするが腰の部分に回されたスコールの手が其れを許さなかった。
今の状況を千字以内で収め、作文として提出せよ。
はいセンセー、千字じゃ収まりません。
だってどういう事なのよこれ!!
混乱している為訳の分からない事を思い浮かべるは唯慌てる事しか出来なかった。
心臓が先程とは違う意味でバクバク五月蝿い。
何ていったって好きな人に抱き締められているのだ、落ち着いていられる訳が無い。
取り合えずは深呼吸だ、スーハー。と思いが浅く呼吸を繰り返していると、苦しんでいるのと勘違いしたスコールがの身体を離す。
それに安心しつつも、何処か残念な気持ちを抱きつつ、はスコールの足の間に居る自分に気付いた。
「あ、スッコーが助けて受け止めてくれたんだね!」
ありがとう!!と言いはニッコリと笑った。
兎に角誤魔化したかった、自分の真っ赤な頬も、先程の温もりの心地よさも、全部。
そんなにスコールは「否・・・、」と言うと真っ直ぐに彼女を見た。
真正面からじ、とガン見されているは少々(どころではないが)居心地が悪く、上目使いにスコールを見る。
「・・・あの〜・・・? スッコー?何ざんしょか・・・?」
落ち着かないんだけど、とが言うとスコールは少し悩んだ後、ポツリと呟く。
「・・・また、死んでいたかもしれない」
「あ、そ、そうですね、毎度ご迷惑おかけしましてー・・・」
たはは、と笑みを零しながらは頭をかく。
何だかいっぱい助けられてるな、とは思いスコールを見やる。
「また心配させちゃったね」
「・・・全くだ・・・」
スコールはそう言い、の手を取った。
それにが「ん?」と言い小首を傾げる。
「・・・治療だ」
「あ、」
先程、爪が剥がれたんだった。とは思い出しスコールの治療を受ける。
淡い光が手を包み、傷を癒していく。
「ありがとう」と言い微笑むと、スコールは「否・・・、」と言いの手を放さず、それをじっと見やる。
それにが小首を傾げると、「傷は、」とスコールが呟く。
「・・・治ったか」
「え? あ、うん?」
今スッコーが治してくれたじゃん。とは思ったがある考えが浮かび「あー」と声を漏らす。
魔女の攻撃、スコールの目の前で防いだ時、手に傷が出来た。
「あれなら何でか治ってたんだ、スッコーもでしょ?」
の言葉に頷くと、彼女は「良かった」と言ってまた笑った。
そんなを見、スコールは何故か眉を潜める。
それに小首を傾げると、彼の手に前髪を掻き揚げられた。
突然のスコールの行動にが瞳を瞬かせていると、パチンと音が鳴った後、スコールの手が離れて行った。
其処に手を当てて、は「あ!」と声を漏らす。
どこかに落とした、と思っていた髪飾りを今スコールに着けられたのだ。
「スッコーが持ってたんだ!!ありがとう!」
良かった、見つかって。と言って笑うにスコールは「否、」と呟く。
そんなスコールには「私と話すときは『否』ばっかだね、スッコー」と言って笑った後、髪飾りを弄りながら言う。
「これ、大事な物だったんだ、ほんとにありがと!」
嬉しそうに、心から微笑むにスコールは少しだけ瞳を丸くした後、「あぁ、」と言い頷く。
彼女の飾らない、心からの笑みを見るのはこれで何度目だろうか、
兎に角、とても少ない回数だった気がする。と、思いながらスコールは床に着いている手をぎゅ、と握る。
こんな彼女を守ってあげたい、何時しかスコールはそう思い始めていた。
→←スコールな図。何かやっとスコール夢っぽいかもしれない(遅)
しかし未だ無自覚なスコール、初めての感情!(黙れ)