「ありがとう」
そう言って微笑む彼女は酷く綺麗に見えた。
何時ものわざとらしい、元気な笑みでは無くて、心からの笑い。
前にも見た事があったが、其の時には思わなかった事を思うようになっていた。
を守ってやりたい。
危険から、それは当たり前だ。
唯、あの綺麗な笑みを普通に出せる様に、
恐れを、俺が薙ぎ払えたら、
そう、スコールは思った。
何時からか、彼女だからこそ、自分の領域に入ってこないで欲しいと思っていた。
だが今は逆に、彼女だからこそ、自分の領域に入って来て欲しいと思い始めている。
そんな自分も、彼女の中に入りたい。
彼女を、を理解したい。
この感情の名前を、スコールは未だ知らない。
収容所を出て、アーヴァイン達と合流する。
其の後、スコールが「兎に角此処を離れよう」と言いアーヴァイン達が用意した車を見る。
車は二台あった。
両方ガルバディア軍の車に変わりは無いが、片方は黄色い物、もう片方は以前ラグナ達が乗っていた深緑色の車だった。
セルフィは「あたしこっちの黄色いの乗る!」と言い直ぐに黄色い車に乗り込んで行ってしまった。
それを見たキスティスも「じゃあ、私もこっちに乗るわ」と言いセルフィに続く。
リノアは「う〜ん、」と言い少し悩んだ後、「じゃあ私も」と言いに近付く。
「、一緒に乗ろう?」
「あ、うん。良いよー」
そう言って二人も黄色の車に乗り込む。
それを見ていたアーヴァインが「あ、あれあれ?」と残念そうな声を出す。
そんなアーヴァインの肩にぽん、と手を置きゼルが「さ、俺達と行こうぜアーヴァイン」と言い深緑色の車に近付く。
ちなみにスコールはもう運転席に座っていた。
アーヴァインは「ちぇ、」と言い口を尖らせるとゼルに続いた。
彼が乗り込んだ後、両方の車は動き出した。
女性組が乗った車は、セルフィが運転していた。
助手席にはキスティスが座り、後部座席にはリノアとが並んで座っていた。
そんな中である疑問を持っていたが前に座るセルフィに少し近付き、「ねぇ、セルフィ」と声をかける。
「あんさ、何処向かってるの?」
「ん〜、わかんない」
オイ。とは心の中で突っ込んだ。
あっちの男性組はどう思っているのか分からないが、取り合えず前を走る此方の車に着いてきているようだ。
オイオイ、このままじゃ何処行くか分からないよ?着いてきちゃってるよ?
そんな事をが思っていると、助手席に座るキスティスが溜め息交じりに口を開く。
「・・・・・・取り合えずバラムガーデンに戻りましょう」
「・・・そだね、キスティの言う通りガーデンに戻るのが第一かもね」
がそう言うとキスティスが「あら、」と言って振り向く。
それにが小首を傾げているとキスティスは微笑んで言う。
「スコールはスッコー、アーヴァインはアービン。それで私はキスティなのね」
「あ、あだ名勝手につけちゃったんだけど・・・まずかったかな?」
「ううん、違うの、嬉しいのよ。 何だかと一歩近づけた気がして」
嬉しそうに微笑むキスティスにも笑みを返し、「そっか」と言う。
そんな二人の会話を聞いていたセルフィが「あ〜、なんかずるいよ」と言う。
「、私は?あだ名で呼んでくれないの?」
「うーん、セルフィは、セフィってのは?」
「セフィ・・・」
が指を立ててそう言うとセルフィはそう呟く。
其の後、少しだけ何処かぼんやりとした様子を見せる。
「・・・駄目だった?」
セルフィの様子にがそう問うと、セルフィはハッとして首を振った。
「う、ううん!全然駄目じゃないよ!」
「そっか、ならセフィって呼ぶね」
そう言って座席に寄り掛かる。
セルフィは(あれ?)と思いながらハンドルを無意識の内に強く握る。
(セフィ・・・。何やろ、誰かに前そう呼ばれとった気が・・・、)
セルフィがそう思っていると、キスティスが「リノアは良いの?」とリノアに問う。
それにリノアは「うーん、」と言いを見やる。
「私は何かに名前で呼ばれるの気に入ってるから良いんだけど・・・。 ・・・・・・」
「・・・? どうしたの、リノア」
考え込む様に自分の膝を見詰めるリノアにが横から声をかける。
そんなにリノアが「あのね、」と言う。
「アーヴァインから聞いたんだけど、魔女がガーデンにミサイル飛ばすんだって」
「えっ!?」
リノアの言葉に短い声を上げたのはキスティス。
セルフィは怖怖と言った様子で、「・・・バラムだけ?」と問うた。
それにリノアはゆるゆると首を振り、口を開く。
「バラムガーデンも入ってるけど、トラビアガーデンも、ってアーヴァインは言ってた・・・」
「!!」
セルフィはリノアの言葉を聞いた途端、ブレーキを強く踏んだ。
急に止まった車の振動に、達は車内でよろけるが、セルフィは直ぐにドアを開けて外に飛び出した。
そんなセルフィに、達も追うように外へ出る。
砂漠の中に放棄された錆びれた車の上にセルフィが乗って、此方の車が止まった事により停車したスコール達の車を見やる。
スコール達も車から降り、セルフィ達を見やる。
「何だよ」
「魔女がガーデンをミサイルで攻撃するんですって!?」
「アーヴァインが言ってたってリノアが言ってたよ!」
スコールにキスティスとセルフィが慌てた様子で言う。
そんな二人に反して冷静なスコールは腕を組み、口を開く。
「俺達に出来る事は可能な限り早くガーデンに戻って危険を知らせる事だけだ。さあ、車に戻れ」
「攻撃目標はバラムとトラビアのガーデンなんだよ〜! ミサイル発射妨害!ミサイル発射阻止!」
そう言い手をぶん、と振るセルフィ。
そんなセルフィに各々が其々の反応をする。
「俺はスコールの決定に従うからな!」
「セルフィの気持ちはと〜っても良くわかるけど・・・・・・・」
「うん・・・・・・、」
「セルフィだけの問題じゃないわね」
「ミサイルを何とかするぞ作戦実行? セルフィと作戦会議?」
ゼル、アーヴァイン、、キスティス、リノアの順に其々が思っている事を口にする。
黙るスコールを見つつ、セルフィは再度口を開く。
「あたし、トラビアから転校してきたばっかりなんだよ!
だからトラビアガーデンがピンチだって聞いて黙ってる訳にはいかないのよ! だから、はんちょ、お願い!
ガルバディアミサイル基地潜入作戦メンバー決めて〜!」
(簡単に言うなよ・・・メンバー選んで、もしもの事があったら俺は・・・、)
セルフィにそう言われ、スコールが額に手を当ててそう考えていると、リノアが手を上げて口を開く。
「決を採りま〜す!
スコールがメンバーを決める。スコールは班長だからバラムへ戻る。この考えに反対の人は手を挙げましょう!」
リノアの言葉に、誰も手を上げなかった。
異議は無いという事だ。それを確認したリノアはスコールを見、「私も、どっちチームでも文句言わないからね」と言う。
(・・・出来ればと一緒が良いんだけど)
(あんたは部外者だろ?)
リノアとスコール、其々の事を思いながら考える。
腕を組んで大きく息を吐くスコールに、キスティスが一歩近付いて言う。
「スコール、班長なんだからメンバーを決めて」
(班長なんだから? 俺が頼んでなった訳じゃないぞ)
(・・・苛々してるよ、スッコー・・・。キスティ、言い方考えようぜい・・・)
じゃないとスッコー機嫌悪くなる・・・!
それって結構怖いよ・・・!?
がそう思っていると奥の基地から白煙が上がった。
そして、場所の関係で少し遅れてミサイルの発射音が響いてくる。
真っ直ぐに伸びていくミサイルを、達は唯見ている事しか出来なかった。
沈黙が落ちる中、アーヴァインがポツリと呟く。
「あのさ・・・、ターゲットは最初がトラビアで次がバラムって聞いたよ・・・」
「本気かよ、魔女のガルバディアはよ!」
アーヴァインの言葉にゼルが握り拳を作り、そう言う。
そんな会話など、耳に入っていない様子のセルフィが、ガクリと膝をつく。
それにが駆け寄って、セルフィの肩に、そ、と手を置く。
「・・・ごめんな、トラビアの皆・・・。あたし、何も出来へんかった・・・・・・せやけどみんな無事におってや。また会えるやんね」
「セフィ・・・」
肩を震わせ、俯いてそう言うセルフィにはかける言葉が見つからなかった。
唯黙ってセルフィの肩を抱いてあげる事しか、には出来なかった。
少し経って、セルフィはゆるゆると顔を上げ、と一緒に立ち上がる。
「今のミサイルは・・・ハズレだよね〜?」
そう言ったセルフィは車の上から飛び降りて皆の前へ行く。
も車から降りてスコール達の横に行く。
「スコールはんちょ、早くバラムに報告!報告班、誰を連れてく?」
そう言ったセルフィの後に、
「スコール、頼むぜ!」と、ゼルが言い、「スコール、決断よ!」と、キスティスが言い、「スコール、よく考えてね!」と、最後にリノアが言った。
重大な決断を迫られたスコールは腰に手を当てて、大きく息を吐いた。
(班長なんて・・・こりごりだ。 分かったよ、選べばいいんだろ?)
スコールはそう思い直ぐにを見た。
この中でのみ、スコールを案じている視線を投げてきている。
自分の思考を恐らく分かっているであろうに、スコールは少しだけ胸のつっかえが取れた気がした。
「、お前は俺と一緒に来てくれ」
「ん、了解ですぜ」
頷いて自分の傍に寄るを見た後、スコールはセルフィを見る。
「セルフィは、基地に潜入のチームで良いんだろ?」
「うん!ぜ〜ったい行くんだから!トラビアの仕返しなんだから!」
そう言うセルフィにスコールは頷き、アーヴァインを見る。
アーヴァインはスコールの視線に気付かず、セルフィを見ていた。
其の後にスコールはアーヴァインの隣に居るリノアに視線をやる。
リノアはを見ていたが、スコールの視線に気付くと「ん?」と小首を傾げた。
次にゼルとキスティスを見やると、二人はスコールを見ていた。
自分の決断を待っているようだ。
一通り仲間を見た後、スコールは考える。
(アーヴァインは、セルフィの方で決まりだな。リノアは、ガーデン側か。
ゼルとキスティスは・・・、)
其処まで考え、潜入に向いている方を選ぶ事にした。
スコールは大きく息を吐いた後、口を開く。
「アーヴァイン、キスティスはセルフィと行ってくれ。ゼルとリノアは俺とと来てくれ」
スコールが言うと全員が頷く。
其々がチームのリーダーの方へ近付いて行く中、スコールは考える。
そして其の後、口を開いた。
「(今のメンバーがバラム行きだ。残りは・・・ミサイル基地潜入チーム。この決定でいいのか・・・)
これは今までの任務とは違う。誰の命令でも依頼でもない。セルフィ、何か作戦があるのか?」
スコールがそう言いセルフィを見やると、彼女は「うーん、」と少し考えた後、口を開く。
「このガルバディア軍の車で行けば何とか基地には入れると思うんだ。
でも、その後は全然わかんないから基地の中で考えるよ。それでいいかな?
ごめんね・・・、ううん、ありがとう。 きっと時間、あんまりないよ〜! 早くバラムガーデンへ!」
「あぁ、バラムガーデンで会おう」
スコールがそう言うとセルフィはSeeDの敬礼を取った。
それに習いキスティスとアーヴァインもスコールを見る。
「じゃあ、バラムガーデンでね」
「、そっちも頑張れよ?」
アーヴァインの言葉には頷き、「分かってるって!」と言いアーヴァインを見返す。
そして少しだけ黙った後、心配気な瞳で彼らを見、「・・・気を付けてね」と言う。
それに大きく頷いたアーヴァイン、キスティスが黄色のガルバディアの車へと乗る。
リノアとゼルも深緑色のガルバディアの車へと乗り込む。
スコールとセルフィ、二人を残しても深緑色の車へと乗った。
残った二人は少しの間お互いを見合い、無言の約束をする。
セルフィはにこっと笑みを浮かべ、「スコールはんちょいっそげ〜!!」と言い黄色の車へ駆けていった。
小さな後姿を、スコールは最後まで見送った後、自分も深緑色の車へ乗り込んだ。
バラムガーデンで会おう、
その約束を信じて、スコール達はセルフィ達と別れた。
ついつい女性三人に惹かれる選択(オイ)
しかし文月は何時もイベントの為にリノアとゼルはガーデン組に入れてます、ムービーだってある!