さっき、大きな衝撃が来た時。

ずっと温もりを感じていた―。

スコールが、私を抱き締めていてくれてた。

外の衝撃から守る様に、身を、硬くして、ぎゅって、


其の時の事を思い出しつつ、ははにかんだ。


やっぱ、好きなんだなぁ・・・


彼が近くに居ると、凄く安心する。

彼の偶に表面に出す優しさが、凄く温かい。


叶わぬ恋だろうけど、


なんて幸せな気持ちの片想いなんだろう


彼を見ているだけで、幸せです。































学園長室に行った後、エレベーターを使用して二階で降りる。

二階の廊下に居た生徒達に話を聞いてみたりして様子を伺う。
皆突然の事に驚いて混乱している様子もあったが、特に問題は無さそうだった。

話を聞いている中、一人の生徒が「奥凄いよぉー!」と言ってきた。
何だろう、と思い首を傾げるにリノアが「行ってみようよ!」と言う。
行っても問題は無いだろう、と思いスコールも「そうだな」と言う。

は奥に進み、避難口の隣にあるドアを開ける。

ドアを開けた瞬間、視界に入ってきたのは綺麗な青空だった。

直ぐに其の後に潮風が舞い、髪を揺らせる。

リノアはそれに「うわぁー!」と嬉しそうに声をあげ、デッキの奥へ進んで行く。
も嬉しそうに辺りを見渡しながら、奥へ進む。

途中、振り返ってスコールとゼルを見やる。


「二人もこっち来て見てみなよ!」


そう言って微笑むの髪が、風のせいでふわりと舞う。

その拍子に潮風に乗った香りがスコールの鼻につく。

くん、と嗅いだ後に瞬時に先程その香りを間近で感じていた事を思い出す。

そう、これは、


の・・・、香り・・・


そう思い、リノアの方を向いたの後姿を見やる。

抱き締めた時にも思ったが、その背中は酷く細い。
それでも、凄く、柔らかかった。

女性特有の柔らかさを思い出し、スコールは思わず自分の掌を見詰めた。

―その時、


「スコール! 学園長が呼んでるわ!大至急戻って!!」


そう言いシュウがデッキに飛び込んできた。
焦った様子の彼女に只事では無い事を感じ取り、スコールは「行くぞ」と皆に言い駆け出した。



急いで学園長室まで戻ってみると、操作盤の前に立っていたシドが振り返り「スコール!」と呼んだ。


「操作が効かない、と言うか分からないんですよ! このままでは、バラムの街に突っ込んでしまいます!」


焦った様子でそう言うシドに、リノアが「大変!」と声を上げる。
ゼルは自分の故郷である街にガーデンが突っ込むと聞いて「じょ、冗談じゃねぇぜ!!」と焦りの声を上げる。


「何とかならないの!?」

「と、取り合えず回避だよね!」


リノアの後にがそう言い、シドの横に立って操作盤を見やる。
が、当然何処を如何動かしていいのか、分かる筈が無かった。

操作盤の様子を見ながら困り果てているを見た後、シドはスコールを見る。


「スコール、な、何とか出来ませんか?」

それは、俺の台詞だ・・・・・・


知るわけが無い。

そう思ったスコールは取り合えずの後姿を見やる。
はどれがどんな操作を起こすのかを調べているようだった。
「こ、これはもう適当やるしか・・・」と危ない事を呟いている彼女に、スコールは思わず息を吐く。

そんなスコールの様子をどう取ったのか、リノアが「スコールお願い!」と声を上げる。
そうするとゼルも何でか「スコール!」と、彼を頼るような声色で声を上げる。


「(
何で俺が・・・ 出来る訳ないだろ・・・!) くそっ!!


苛立ちを表面に現し、スコールはの横に立って操作盤に手を置く。
操作盤を見ても分かる筈も無く、スコールは一瞬止まったが、自棄になったのか適当に操作盤を弄り始めた。
「ちょ!」と隣からの声がするが、スコールは構わず操作盤を適当に弄り続けた。
その様子を見ていたも「こうなりゃ自棄だよね!」と言い近くにあったレバーをぐい、と引いた。


―その瞬間、


ガグン!!!と、ガーデンが再度大きく揺れた。


「こ、今度は何だ!?」と、ゼルが騒ぐ横で、シドが外の様子を確認して、歓喜の声を上げる。


「やりました!ガーデンが曲がっています!」


段々と前方にあったバラムの街が視界から消えて行く。
リノアが「かわした!」と喜びの声を上げるが、ゼルが次に視界に広がった物に気付き驚きの声を上げる。


「ゲッ!今度は海だぜ!」

「う、海!? 沈んだりしない!?」

「皆さん、何かに掴まって下さい!!」


段々と海に向けて傾いていっているガーデン。
シドは直ぐにそう言い近くにあった手摺りに捕まる。
はリノアに手を伸ばし、それと同時に一緒にしゃがみ込む。

バラムガーデンは、バラムの港付近から海に思い切り落ちた。
衝撃が来るが、下に沈んでいく感覚は一切しなかった。

ガーデンは上手く波に乗り、真っ直ぐに海面上を走行し始めた。

穏やかに海上を走るガーデンに、全員が安堵の息を漏らす。


「ふう・・・・・・。皆さん、ご苦労様でした。これで私達は助かったと解釈してもいいでしょう」


シドの言葉に其々が頷く。
そんな中、スコールがポツリと言葉を零す。


「・・・ガーデンは何処に向かうんだろう」

「操縦の仕方を理解出来ないうちは波任せ風任せ・・・、ですか。
 さて、何だか時間だけはたっぷりありそうです。今後の事、ゆっくり考えましょうか。
 ・・・あははは。 私の部屋、なくなっちゃいましたね」

「あ、そういえば。学園長室の真上ですからねー、此処」


がくすりと笑ってそう言うとつられたようにリノアとゼルも笑い出す。
皆が笑みを零している中、スコールは大きく息を吐いてエレベーターへ向かう。
そんなスコールにが気付き、「スッコー」と呼びかけて近付く。


「・・・お疲れ様だね」

「あぁ・・・疲れた・・・」

「ほんっと、疲れきった顔してるもん。
 学園長は時間だけはたっぷりあるって言ってたし、各々自由行動にしようか。
 取り合えず、休ませて頂きたいしねー!」


がそう言うと皆異議は無いのか、黙って聞いていた。
そんな周りの様子には頷くと、大きく伸びをする。

そして、欠伸を小さく零した。


「・・・じゃ、私休ませて貰うね。何か色々疲れちゃったし」

「あ、待って


そう言いエレベーターに乗ろうとしたを、リノアが呼び止める。
それには小首を傾げて「ん?」と言う。
リノアは小走りに近付き、の横に並んだ。


「一緒に行って良い? 私、此処のガーデン初めてだから・・・」

「あ、そっか! ごめんね配慮が足りなくって・・・!
 ・・・じゃあリノアは私の部屋で一緒に休もっか!」

「うん! の部屋、見てみたいな」


嬉しそうに微笑んで言うリノアには苦笑して「何も無いんだけどねー」と言う。

転校してきて、SeeDになるための試験勉強をして、SeeD試験に合格して、初任務。
正直言って物を増やす時間が無かったのだ。

暇が出来たら買いに行くのもいいかも、とは思いスコールとゼルに「じゃ!」と言うとリノアと一緒にエレベーターで下に下りた。












「・・・本当に何も無いね」

「・・・まぁ、転校してきて、日も浅いしこの部屋になっても日が浅いしね」


個別寮のの部屋に着いた時、リノアの一言。
それには簡潔に返しながら上に羽織っていたジャケットを脱ぐ。


「取り合えずシャワー浴びちゃおうか。砂漠も通ったし、何か二日位お風呂入れてないしね」

「そうだね、何かこっちに戻って来て、色々あって、もう二日間経っちゃったしね」


何か、凄く長く感じた。

リノアはそう言い自分の身体を見やる。
汚れやら臭いを気にしているリノアには笑みを浮かべ、クローゼットからタオルと着替えを出してリノアに渡す。


「先にシャワー入って良いよ。私ちょっとやる事あるから」

「あ、なんかごめんね?」


タオルと着替えを受け取り、申し訳無さそうに言うリノアにはゆるゆると首を振る。

シャワー室に入っていったリノアを見送った後、は自分のタオルと着替えを用意してジャケット等、洗濯が必要な物を籠に入れる。
後でリノアの服も入れて、ランドリーに行かなきゃ。と思いつつそれを其処に放置し、は机に向かった。
簡単に日記を書き、報告書も同時に書く。

シドに渡す報告書は班長であるスコールが書かなければならない。
が、手伝いなら出来る。彼が文章を纏めやすいようにはスコールに提出する報告書を書く。


色々あったなー。ティンバーに行って、電車ジャックしたり、放送局行ったり、


何だか、懐かしく感じる。

そう思いながらはふ、と日記に目をやる。
ずっと仕様しているそれは表紙の部分が剥げていたりもする。
ぱらり、と最初の方のページを捲ってみると酷く古い日付から始まる。

これはガルバディアガーデンに居た頃の日記だ。

一番古いのは、八歳くらいの物だろうか。

そう思いながら、一番古い日記を取り出す。

書き始めの最初の文は、子供特有のよれた字で、見難いものだったが文字は読める。



*9月25日
 今日からにっきをつけ始めることにした。
 おにいちゃんがかえって来たときにいつでもおにいちゃんがいなかったときのおはなしをできるように。
 これから毎日がんばって書いていきたいです。




最初の日記はまるで決意表明。
何か笑えてくるかもしれない。はそう思い、日記を閉じる。

日記の冒頭の文に書いてあった通り、日記は元々連絡が取れなくなった兄に、自分の事を知って欲しくて書き始めたものだ。

兄と過ごせなかった間、自分はこうしていた。

この時は、この人と居て、こんな時を過ごしたと、知って欲しかったからだ。


何年分も溜まってしまったけど。


そう思い、は最近の日記を開く。
色々あって、濃い一日だったのは初任務の日。

朝方ガーデンを発ち、ティンバーで大統領車両を誘拐した。
が、それは偽の大統領が乗っていた車両で作戦は失敗。
其の後、昼頃の時間帯に放送局へ乗り込んで、魔女と邂逅した。
其の後、リノアを連れて最寄のガーデン、ガルバディアガーデンへと行った。
これが夕方頃の話。

其の後ガルバディアガーデンの学園長のドドンナから任務を受け、アーヴァインと共にデリングシティへ魔女暗殺作戦をしに行った。
其処に着いた頃は、夜。
カーウェイ大佐に名も無き王の墓に行く様に言われ、戻ってきて、やっと邸に入れて貰い任務説明を受けた。

そういえばこの時年甲斐も無く走り回ってたな・・・大佐。

・・・其の後、裏口から大統領官邸に入ろうとしていたがリノアと会う。
此処でリノアの護衛を優先して、魔女とまた会って、捕まって・・・、
スコールに、助けてもらった。


は一気にそこまで考え、(ほんと、なんて濃い一日)と思い嘆息する。


其の後、D地区収容所へ入れられた。
外に出た時は既に昼頃。そして、セルフィ達と別れてガーデンに戻ってきたのだ。
ガーデンに戻ってきたのは夕方頃。夜通しでMD層に居たらしく、外は明るかった。

そんな事を思い返していると、シャワーを終えたリノアが戻ってきた。


、服ありがとう」


シャワーも、と言いリノアはすっきりした様子で笑みを浮かべる。
も笑みを返すと、自分もシャワーを浴びようと立ち上がる。


「じゃ、次は私が入るね。ドライヤーとかあるかた勝手に使っちゃってねー」

「ありがとう。 あ、、私が着てた服ってどうしたらいい?」


お、忘れてた。とは言い床に置いてある籠を指す。
「其処に入れといて、後でランドリーに持ってくからー」と言いはシャワー室に入った。




ランドリーとか、シラネ(爆)
でも部屋に冷蔵庫はあっても洗濯機は無いだろうと思ったりしてみた。