シャワーを浴びた後、二人で爆睡した。

思い切り、爆睡だ。かなりの時間を眠っていた。

朝方に寝たはずなのに、起きたら外は真っ暗になっていた。

は起き上がり、髪を整えて「うへ、」と変な声を漏らす。


「寝すぎた・・・?」

「疲れてたからしょうがないよ」


ベッドで一緒に寝ていたリノアも起き上がり、「んんー」と言い伸びをする。
そして、「寝すぎて眠い」と言って笑った。
「そうだね」と言っても笑みを浮かべ、適当な上着を羽織って服の入った籠を手に持つ。


「じゃ、私ちょっとランドリー行って来るね。リノアは適当に寛いでていいよー」

「あ、待って。 私も行きたい!」


リノアはそう言いベッドから降りてを見る。
は「良いけど・・・」と言いクローゼットを指す。


「今もう日も暮れて寒いからね、上着着てからね!」

「うん、お借りしまーす!」


リノアはそう言い紺の上着をから借りて羽織る。
それを確認したはカードキーを手に取って外に出る。

海の上だからだろうか、何だか冷えた夜だった。

はリノアと一緒にランドリーに向かって歩く。
まだ1830時頃だからだろうか、人はまだガーデン内にちらほら居た。
食堂が混んでそうだな、と思いながらはランドリー室のドアを開ける。

適当なランドリーに服等を入れ、ボタンを押して籠を機械の上に置く。
そんなを見ながらリノアが「どれくらいかかる?」と問うた。
それには少し考え、「・・・三十分くらい?」と言う。
その言葉を聞いたリノアは「じゃあ、」と言い笑う。


「その時間、ちょっとガーデン案内してよ! 皆が勉強した所が見たいの」


リノアの要望に、は笑みを浮かべて「もちろん」と言った。


食堂、保健室、訓練施設、駐車場、色々見て回った。

食堂ではゼルが少し早い夕食を食べていた。
近付いて話してみると、彼もつい先程起きたようだった。
「起きぬけだから、腹へって」と言ってゼルは笑った。
後で来ようか、ととリノアは約束をして次に保健室へ行く。

保健室ではカドワキ先生が暇そうにしていた。
怪我人病人が居ない事は良い事なのだが、暇なのだそうだ。
保健室に来たにカドワキ先生は「おや、」と声を上げて珍しそうにを見る。


「珍しいね、今日はスコールと一緒じゃないのかい?」

「スッコーはきっと今頃お休みタイムですぜ!」

「そうだろうね、アンタ達は帰ってきて早々ゴタゴタに巻き込まれたからねえ」


カドワキ先生はそう言い、次にリノアを見る。
そして「の友達かい?」と問う。それにリノアは嬉しそうに「はい!」と答える。


「そうだよね、!」


にっこりと笑って言うリノアに、は少しだけ戸惑う。

自分にとってリノアはクライアントだ。
軽々しくそんな事を言って良い物だろうか、そもそも、どこからが友達なのだろうか?

がそう思い、悩んでいるとリノアが表情を曇らせた。


「・・・嫌?」

「えっ?」

「まだ、会ってそんなに日が経ってないけど・・・。
 私、凄くが優しくて可愛くて、大好きなんだもん! 私の事も凄く、見てくれてるし、守ってくれるし。
 ・・・友達で居たいの、と、友達になりたいの!」


真っ直ぐに瞳を向けられ、真っ直ぐな想いを向けられて、は瞳を丸くした。

友達に、なりたい、 そんなこと―――、


「・・・そんな事・・・初めて言われた・・・」

「え・・・!?」

「私なんか、友達で良いの?」


瞳を丸くしたままそう言うに、リノアは驚きの声を上げたが直ぐに笑顔になって大きく頷く。
それには嬉しそうに笑みを浮かべ、「ありがとう」と言う。


「じゃあ、リノア。これからもよろしくお願いします!」

「あ、改めてそう言われると・・・て、照れるぜ」


リノアははにかんでそう言い、を見た。
はにっこりと微笑み、「一緒にお昼寝もしたもんね」と言う。

そんな二人を見ていたカドワキ先生は「良い友達を持ったね」と言って微笑む。
が、直ぐにある事を思い出したのか「そうだ、」と言い言葉を続けた。


「アンタ達、シド学園長が何処にいるか知らないかい?
 あの人、働き過ぎなんだよ。何処かで会ったらね、保健室に来るように言っとくれ」

「あ、了解です!」


学園長室に居ないのかな?あ、でもあそこもう使えないんだっけ。

そう思いながらはそう答えた。














其の後、訓練施設の案内説明をした後、図書室へ向かった。

図書室へ行くと、リノアは「わぁ!」と感嘆の声を上げて辺りを見渡す。


「ねぇ!凄いね! 私、ちょっと見てきていい?」


どうやらリノアは本が好きみたいだ。
子供みたいにはしゃぐリノアには笑顔で了承を返す。
「ありがとう!」と言ってリノアは奥に進んで行った。

もリノアの後を追おうかとしたのだが、壁沿いの机に見知った姿を見つけ、其方に足を向けた。

一人で悶々と報告書を書いているのは、彼だった。


「やあスココ君」

「(
何だよ、スココ君って・・・)・・・か」


背後で身を屈め、笑顔でそう言うをスコールは振り返る。
えへへ、と嬉しそうに微笑むにスコールは「何か用か」と問う。


「ううん、スッコーが居るのに気付いたから来てみたの。
 今洗濯が終わるまでリノアにガーデンを案内しててさ・・・・・・、そだ、はいーこれー」


はそう言い先程纏めておいた報告書をスコールに手渡す。
持ってきておいて良かった、と思いながらは其れを受け取ったスコールに口を開く。


「私的に簡単に纏めてみたんだ、良かったらこれ使って報告書仕上げちゃって」


その方が楽でしょ? そう言いは屈めていた身を伸ばす。
スコールはの書いた報告書に簡単に目を通した後、「使わせてもらう」と短く言って其れを脇に置いた。

それっきり黙ってしまったスコールを見ていたが小首を傾げ、「スッコー?」と言い彼を見る。


「何か、お疲れ? 休んだ?」

「あぁ・・・」

「じゃあ、考え事?」

「・・・・・・あぁ・・・」


どんな?と言いは手近にあった椅子を引き寄せてスコールの横に座った。
彼が話したくないなら無理に聞きたくはないが、彼の役に立てるなら立ちたかったからだ。

そう思い、は真っ直ぐにスコールを見た。

そんなにスコールは小さく息を吐き、口を開く。


「マスター派が解き放った訓練用の魔物やMD層に住み着いていた魔物は皆が退治してくれた」

「あ、うん。私達何も出来なくてちょっと申し訳無かったね」

「正直、する事が全然無いんだ」

「報告書」

「直ぐに終わる・・・こんなもの」


報告書をこんなもの扱いですかいスッコー!
と、思ったが口には出さないでおいた。


「シド学園長には色々聞きたい事がある・・・」

「そうだね。 ・・・ガーデンのコントロールについても悩みの種?」

「・・・あぁ。 ・・・有り余る時間は嫌いだ・・・、色んな考えが頭の中に次々と浮かんでくる」


スコールはそう言い、に視線を向けた。
そして、「セルフィ達、無事だろうか、」と言葉を零した。


「生きて、いるだろうか、 行かせて良かったのだろうか、」

「・・・スッコー・・・」

「キスティスとアーヴァインは、俺を恨んでないだろうか・・・」

「そんな訳無いよ、スッコーが信じてあっちに行かせたんだもん、分かってるよ」

「魔女についてもだ、あれは一体何なんだ、サイファーも、もう戻らないのか?」

「・・・・・・どうなんだろうね、取り敢えずサイファーには次会ったら仕返しすると良いよ」

「そのつもりだ」


そう言うスコールの手を、が両手で優しく包んだ。
きゅ、と力を込めて「スッコー、」と彼を呼ぶ。


「疲れてると、考えが段々下り坂なんだよねー?」

「・・・アンタはどうなんだ?」

「・・・・・・私?」


はスコールにそう聞かれ、瞳を瞬かせる。

確かに、セルフィ達は心配だ。
けど、きっと上手くやってくれているだろう。
ガーデンにミサイルが飛んできたが、セルフィ達なら絶対無事な筈だ。

魔女については、分からない事だらけだから、保留。
サイファーは、殴ってでも止める。気付いたら自分の中で決定していた事項だ。


・・・スッコーほど、重傷では無いかも。

そう思い、はへらりと笑った。


「確かに、セフィ達は心配だけど絶対大丈夫!信じてるから!」


そう言って笑うの手の上に、スコールが空いている手を乗せた。
突然のスコールの行動には思わず瞳を丸くし、頬を仄かに朱に染めた。


「アンタは・・・変わったな。 最初の頃のオーラが嘘みたいだ」

「お、おーら?」

「最初、誰も踏み込ませ無い雰囲気だった。表面だけ付き合って、深くまでは入れない。
 でもアンタは、変わったんだな・・・」

「・・・リノアや、皆に感化されちゃったのかもね」

「・・・かもな」

「言っとくけど、スッコーもなんだからね」


ズビシ、と言うにスコールな内心苦笑する。

自分も変われているかなんて分からないが、と居ると温かい気持ちになる。

これが、変わるって事なのかもな。

スコールはそう思い、グローブを外している手での手を包む力を軽く込めた。


「スッコー、明日一緒に過ごそうか?」

「明日?」


の言葉に俯き気味だった顔を上げるスコール。
意外に近い距離に彼の整った顔があり、は思わずドキリとしたが誤魔化すかのように「そ、そう!」と言う。


「一人で居るから色々グダグダ考えちゃうんだよ。ネガティブ一直線だよスッコー!」

「・・・悪かったな」

「そこで! ・・・ええと、誰かと一緒に居たりすると結構気が紛れるんじゃないかと思ったりしてみたんだよ!!」


また言葉が可笑しくなってるぞ。と、スコールは思い自分の正面で何だか頑張って喋っているを見やる。
は「・・・どうでしょうかいスッコーさん?」と問うた。

それにスコールは少し考える素振りを見せ、頷く。


「・・・良いの?」

「あぁ・・・」

「邪魔じゃない?」

「・・・あぁ・・・」

「・・・あ、ありがとう!! じゃあ明日スッコーの部屋に迎えに・・・」

「否、俺が行く」


嬉しそうに言うの言葉を遮ってスコールはそう言う。
それにはきょとんとしたが、直ぐに頷きを返し「分かった、じゃあ朝待ってる」と言った。


「800時くらいでいいか?」

「うん、じゃあ一緒にご飯食べようか。 ご飯と言えば、スッコー夕食は?」

「否、未だだが・・・」

「じゃあリノアと三人で食べない?」


がそう誘いをかけてくる。
スコールはそれに少しだけ考えたが、女二人、話したい事だってあるだろうと思い首を振った。
リノアはに酷く懐いているようだったし、

首を振って、「悪いが・・・」と言ったスコールには眉を下げた。
そして残念そうに「そっかぁ・・・」と言いスコールを見る。


「ごめんね、忙しいもんね?」

「否・・・すまない」


何だか罪悪感が沸いてきて思わず謝ってしまったが自分が何故罪悪感を感じているのだろう、とスコールは考える。

何でだ?と思い心の中で首を傾げる。

そうしていると、はスコールから手を離し、椅子を元あった位置に戻す。
そして片手を上げて「じゃ、明日ね」と言うとは丁度此方に向かってきていたリノアの方に向かって行った。

が、途中でくるりと振り返り、「スッコー」とスコールを呼ぶ。

何だとスコールが思っているとはニコーと何やら企み顔の笑みを浮かべ、口を開く。


「明日、カードもしよっか」


気分転換には良いしね。と言う
その言葉を聞いたスコールはが冗談、やら訂正を入れる前に「本当だな」と言う。


「(
食いついて来たよ・・・) う、うん・・・好い加減伸ばし伸ばしじゃ悪いかなーって思って。
 あ!!でもレアは出してあげないからね!!」

「なんだと」

「(
怒った・・・!) じ、じゃあ気が向いたら出すから!んじゃ!!」


はそう口早に言うと、小走りで図書館を出て行った。
それを見送り、スコールは報告書に向き直る。


珍しく、明日が何だか、楽しみな気がした。




カードキャプター始動(こら)
案内イベの保健室でのリノアは可愛い!本気の冗談だっておま、私は本気の本気ですが?←