イフリートにトンベリに・・・、あ、キャラカードまで持ってるよコノヤロウ。
そんな事を思いながらは自分の手の内にあるカードをじっと見詰めた。
自分の手持ちにも強めのカードは居るがどれも今のスコールの繰り出した陣からは勝利を見出せる事が出来ない。
終わったよこりゃ。と思いつつは最後のカードを出す。
「俺の勝ちだ」
「・・・ハイソーデスネースゴイツヨイデスネースコールクーン」
超棒読みでそう言いながらはアンティルールに基づきカードをスコールに渡す。
このカードをG.F.のアビリティによってアイテムとして使われている事は知っているし、自分はダブっているカードばかりを出していたので苦ではなかった。
ので、軽く「ほい、」と言って手渡す。
からカードを受け取ったスコールは瞳を細め、「何時だ」と呟く。
それにはぎくりと肩を跳ねさせて彼を見やる。
「何時になったらアンタのキーカードを出すんだ」
「出したら確実に持っていかれそうなので出したくないんだよこのカードキャプターが!!!」
「そんなのやってみなきゃ分からないだろ、ほら、出せ」
「否、奪う気満々の男が何を仰いますか」
出せ、と言い出してきた手をぺしんと叩きつつは言う。
朝は凄く可愛かったのに!何だこの我が儘なスッコーは!
はそう思いながらカード再戦の準備をしているスコールをジト目で見詰める。
そんなの視線に気付いたスコールは「何だ」と言い見てくる。
「別にー?」と言いはそっぽを向いて今朝の事を思い出す。
今自分が居るのはスコールの部屋だ。
其処で先程からカードをしているのだが、朝訪れた時、スコールは寝ぼけ状態だった。
聞いてみたらやはり報告書やらであまり眠れなかったらしい。
悪い事をしてしまったかと思いが帰ろうとした時、腕を捕まれて部屋に入れられてしまったのだ。
そして「少し待っていろ」と寝ぼけ状態のスコールに言われ、大人しく待っている事しか出来なかったのだ。
ウルトラレアなスコールの寝ぼけ姿だ・・・!と、最初こそ思っていたが顔を洗ってスッキリ覚醒した彼は唯のカードキャプターでした。
飲み物は冷蔵庫から適当に出してくれてカード勝負を開始した。
そんなこんなでかれこれもう一時間以上カードをしている。正直飽きてきた。
は飽き気味なのにスコールは彼女がキーカードを出してくるまでやるつもりらしい。
正直にとっては勘弁して欲しい話だ。
「ねースッコー。レアカード狩りしてないでそろそろ他の事しない?」
「・・・アンタ、何でそんなに出したがらないんだ」
「取られるって分かってて出す訳が無いじゃないですかいこらー!」
は両手を少しだけ振り回したてそう言った後、スコールに用意して貰った飲み物を飲んで彼を見やる。
そんなにスコールはカードを弄る手を止め、口を開く。
「・・・大事なカードなのか?」
「ん? あー、別に取られるなら取られるで良いんだけどさー・・・。 何か、やっぱ大事にしたいって言うか?」
はそう言い腰の辺りに置いてあったカードホルダーから一枚のカードを出す。
それは正面に居るスコールからは柄は見えないものであったが、の表情からしてそれがのレアなキーカードなのだと理解する。
「キスティのファンクラブはキスティの持ってたしね、リノアのお父さんはリノアのカード持ってるってリノアから聞いたし」
「カーウェイ大佐が・・・リノアのカードを・・・」
「(ゴメン大佐、逃げて、超逃げて)・・・シド学園長は、サイファーだったっけ? ・・・まぁいいや。
取り敢えず私はお兄ちゃんのカードを持ってる訳なんですぜ」
「・・・行方不明のか?」
「そうそう、確か名も無き王の墓で話したんだっけ? ・・・子供の頃のなんだけどね。
再会したら今のお兄ちゃんのカード作る気だから良いんだけどね!」
んで、確かお兄ちゃんは私のカード持ってたっけなー。と、はにこりと微笑みながら言った。
そんなを見ながらスコールはぼんやりとした様子で(のカード・・・)と考える。
考え事をしているスコールには「あ、」と言いカードをカードホルダーに仕舞う。
そしてスコールの前にある彼のカードもサッと素早く纏めて仕舞った。
それにスコールが「おい、」と言うがはにこりと微笑んでスコールの目の前に人差し指を立てた手を差し出してた。
スコールが瞳を丸くしていると、は更に笑みを深くして口を開いた。
「ね、どっか行かない?
・・・と、言ってもガーデンは海上走行中だから街とかには行けないけど・・・。デッキに行って海とかも見れるし!」
ね?と、小首を傾げて言ってくるにスコールは少しだけ考えた後、溜め息交じりに「分かった」と言った。
どうもどうもー、と言いは立ち上がる。
そんなを見て、スコールも立ちながら「どうせカードから逃げたかっただけなんだろ」と呟く。
「・・・それもあるんだけどね」
「?」
「ううん、何でもない。じゃあデッキ行ってみようよ、きっと海が綺麗だよ!」
笑みを浮かべ、誤魔化している事はスコールには理解出来たが余り深刻な事ではないようなのであえて黙っている事にした。
カードキーを手にして、ジャケットを羽織り外へ出る。
スコールはドアがロックされた事を確認してと共に二階にあるデッキを目指す事にした。
エレベーター前に来た時、図書室へ通じる渡り廊下を目にしてふ、とスコールはある事を思い出す。
昨日、達が来た後に一人の女性が来たのだ。
短めの茶の髪は彼女が歩く度にふわりと揺れていた。
水色のシャツに真っ白なスカートを身に纏った女性は、スコールと目が合うと微笑んで「こんにちは」と言った。
スコールは彼女と会ったのがこれが初めてではなかった。
SeeD実地試験当日に会ったのだ。
サイファーとの訓練中に追った怪我の為、保健室で一泊した時にだ。
其の時は身を屈めた彼女が「また会ったね」と言って微笑んだだけだった。
二回目に会ったのは夜中の訓練施設。
SeeD就任パーティの後、ベランダでと居たらキスティスに彼女の最後の任務と言われて呼び出された。
訓練施設にある通称秘密の場所でキスティスの話を聞いた後に、大型の蜂の魔物に襲われていた所を助けた。
其の時に自分だけではなくキスティスの名も呼んでいた気がするが、あれは一体誰なのだろう。と、スコールは考える。
図書室で会った時、良く分からない会話をしたのだ。
「こんにちは」
そう言って女性は微笑んだ。
「・・・保健室で会った」
「魔物から助けてもらった」
二人でほぼ同時にそう言い、少しの間沈黙が降りる。
彼女は絶えず笑みを浮かべているのみだった。
スコールはそんな女性をじ、っと見たが、覚えなんて全くなかった。
「誰だ?」と、問うと女性は「思い出して」とだけ言った。
「思い出す? 俺が?」
「私、忘れられたままじゃ寂しいもの」
(・・・思い出す? ・・・俺がこの女子を知ってる?)
思い出す、という事は以前彼女に自分は会っているという事。
そして彼女を忘れている事はきっと彼女の口ぶりからして明らかなようだった。
悩んでいるスコールに、女性は小さく息を吐いて本を手に立ち去っていく。
「色々思い出したら、お話ししたいね」
そう言い、女性は図書室から姿を消した―。
あれは一体誰だったのか。
そう思いスコールは小さく息を吐いた。
最近は良く分からない事だらけだ、 何だか嫌になる。
そう思っていると、真横から「スッコー?」という声が聞こえた。
名を呼ばれたので其方に視線を向けると大きな瞳を丸くして、が自分を見上げていた。
「如何したの?」と言ってくるにスコールは「別に・・・考え事だ」と言いエレベーターを降りる。
気付いたらもう二階だったのか。と、スコールが考えていると前方からガーデン教師が真っ直ぐと此方へ向かって来ているのが見えた。
ガーデン教師はスコールとの前で止まると、「生徒No.41269、スコールか?」と問うてきた。
それにスコールが「はい」とだけ答えると「マスター様がお呼びだ」とガーデン教師は言った。
「至急マスタールームまで来なさい」
「マスタールーム?何処ですか?」
聞きなれない単語にスコールが眉を寄せつつ問うとガーデン教師はエレベーターを指した。
「そこのエレベーターで下に降りろ。許可は出してある」
それだけを言うと、ガーデン教師は去って行った。
それを見送っていたスコールだが、の事を思い出して彼女を見下ろす。
「すまないが、海は見れなくなった」
「ううん、いいよ。また今度海見に行こう?」
何処か申し訳無さそうに言うスコールを珍しく思いながらは首を振ってそう言う。
次に「それより、」と言い腕を組んで小首を傾げる。
「マスタールームって、その、マスターが居る所だよね?やっぱ。
ガーデン内争いの時のマスター派のマスターでしょ?何の用だろうね?」
「・・・行ってみないと分からない」
「そりゃそうですねー。 スッコー一人だと大変そうだから、私も着いて行って良い?」
がそう言うとスコールは「好きにすればいい」と短く言いエレベーターのボタンを押した。
そうして下に下りるボタンを押すと、何故か一階で止まった。
誰かが使うのかな?と、思っていると其処に居たのはゼルとリノアだった。
と直ぐに目が合ったリノアは「あ、!」と言いエレベーター内に入ってきた。
それにゼルもつられた様に入ってくる。
リノアはスコールとを交互に見た後、何故かこそこそした様子での耳元で囁いた。
「スコールと二人で何してたの?」
「? ちょっと海でも見にデッキに行こうかと」
「海・・・。 良いんじゃない?ロマンティックで!」
ロマンティック言うと誰かさん思い出すな、ほら、あの「ロ〜〜〜〜マンティック」の人。
と、は思いながらもリノアに「違う違う」と言って笑う。
「気分転換だよ。ずっと部屋でカードやってたから外の空気吸いに行こうみたいな」
「・・・部屋に居て、カードなんだ・・・」
の言葉にリノアは何故かがっくりと項垂れた。
それに疑問を持ちつつも、は「リノアは?」と問い返す。
「私も海見たくって、此処でエレベーター待ってたの。そしたらゼルが丁度来てね」
「俺はちょっと教室にでも行こうかとしてたんだけどよ。ほら、久々にパネル弄ろうかと・・・」
二人の言葉には「へぇー」と返しながらスコールを見てエレベーターの閉まるボタンを押す。
そのまま下に下りていくエレベーターに、ゼルが「・・・で?」と言う。
「何処行くんだ?お前等は」
「マスターに呼ばれて、マスタールームにちょっくら」
「マスター? マスターってあの、マスター派の頭か?」
ゼルの言葉にスコールが「多分な」とだけ返す。
そうしていると、チン。という音と共にエレベーターが止まった。
先頭に居たが最初に外に出ると、其処は何処か幻想的な場所だった。
広い空間の中、達は居た。
床は機械的な模様で、青白い光を放っていた。
壁にはガーデンの模様が描かれていて、いかにも上級者の部屋、という場所だった。
「此処が、マスタールーム?」
がそう呟いた時、奥から声が聞こえた。
四人が小首を傾げ、耳も其方へ傾けてみると段々声が近付いて来た。
「くっ、離せ! まだ話は終わってない!」
どっかで聞いた事ある声。と、は思い近付いてくる人影に目を向けた。
青白い光の中、ぼんやりと見えた姿は何とシド学園長の物だった。
ガーデン教師に捕まれているシドはその手を振り払おうと身を捩らせながらも声を発する。
「金の亡者のクソッタレの大馬鹿野郎! アンタに相談したのが間違いだった!
SeeDはなあ、未来の為に蒔かれた種だ!その未来が今なんだよ!それはあんただって解ってるだろうが!!」
ガーデン教師に掴みかかりながらも奥に向かって叫び続けるシドに、達は目を丸くした。
自分達が知っているのは、とても温厚な人柄のシドだ。
そのシドが今、大声で、怒りに任せて怒鳴り続けている。
ガーデン教師に突き飛ばされ、尻餅をついたシドが「クッソ・・・!」と言う。
「過去へ戻れるなら十何年か前の自分に伝えてやりたい。
ノーグを信じちゃいけない! ノーグは金の事しか考えないってな!」
シドの言葉を聞かずに戻っていくガーデン教師。
それにシドは座り込んだまま項垂れた。
肩を落としているシドには慌てて駆け寄った。
「が、学園長!」
「!?」
屈みこんで「大丈夫ですか?」と恐る恐る問うてみると、驚いた表情だったシドは何時もの笑みを浮かべてを見た。
照れくさそうに、「今の、見ていましたか?」と言ってくるシドには素直に頷いた。
の手を借りて立ち上がったシドは、寂しそうな笑みを浮かべ、口を開いた。
「大人だからって何でも我慢出来るって訳じゃありません。 ・・・さあ、戻りましょう」
そう言い一人エレベーターに向かって歩き出すシドに、スコールはある事を思い出す。
「(あっ・・・) 学園長、報告があります。どさくさに紛れて遅くなりました」
「では、後で学園長室に来てください。」
「あっ・・・あの!」
シドがスコールに簡単にそう返すと、次はリノアが口を開く。
何だろうと思い彼女を見ていると、リノアは「あの・・・白衣を着た先生が・・・」と言い、言葉を濁す。
そして、縋る様にを見る。
それには小首を傾げたが、白衣の先生、という言葉で昨日の保健室での言葉を思い出した。
「カドワキ先生が保健室に来てください、と言っていました。 働きすぎだって、怒ってたみたいですよ?」
「アハハ・・・怒ってましたか・・・」
シドは乾いた笑みを零した後に、「ありがとう、後で行きます」と言ってエレベーターへ乗って行った。
そんなシドを見送っていたら、背後からコツコツという靴音が聞こえてきた。
振り返ってみると、ガーデン教師が其処に立っていた。
「お前達はガルバディアから帰ってきたSeeDだな?」
ガーデン教師の言葉に、スコールが「・・・そうです」と答える。
視線はガーデン教師に向いているが、内心シドの事を気にしている様子だった。
それに気付いたは(仕方ないよね)と思いつつも、自分もシドを心配していた。
「やっと来たか。マスター"ノーグ様"がお呼びだ。来るが良い・・・」
ガーデン教師はうんざりした様子でそう言い、歩を進めた。
シドの事も気になるが、今はマスターと会う事が先だ。と、全員が思いガーデン教師の後を追う。
ノーグ、それがマスターの名前らしかった。
一体どんな人なんだろう、とは思いながら奥へ奥へと進んで行く。
更に奥へ続く場所があったが、ガーデン教師が突然立ち止まって振り返る。
「この先にノーグ様がお待ちだ」と言い、彼は「いいか?」と言ってきた。
「ノーグ様がお呼びの時は3秒以内に来るように」
そう言われ、奥へ進むよう促される。
進もうとした達だが、奥から突然聞こえてきた「フシュルルル・・・」という濁ったような、息を吐いたような音に足を止める。
それと同時に、とても濁ったような、擦れたような低い声が響いた。
「フシュルルル・・・三秒、までなーい」
それを聞いたは、横に立っているスコールを見上げる。
丁度スコールもを見た瞬間だったようで、視線がかち合う。
お互いの目には、不安の色が宿っていた。
三秒くらい待てよ←
そういえばカードってスコール居なくても出来ますよね、ミサイル爆破チームでも大佐からリノアのカードを頂けるんですよねー。
何だか前半がカードキャプタースコールになってしまっている・・・!!