炎の洞窟への課題を受けに行く準備は整った。
勿論、課題で落ちる気なんて全く無いとスコールなのでSeeD実地試験に向けての準備も全て整えたせいで結構時間がかかってしまっていた。
SeeD実地試験は明日行われる。
明日の何時かは分からないが多分日没辺りだろう、今日出来なくても別に平気だが準備が出来たからには済ませてしまおう。
はそう意見をスコールに言い共に担任のキスティスの所へ行こうとしていた所で、サイファーと会った。
「よぉスコール。久々に訓練しようぜ」
己の武器であるガンブレードの先を真っ直ぐにスコールに向けてサイファーは口の端を吊り上げて言った。
眉を潜め、面倒そうにしているスコールの前にが立ってサイファーに細い指を向けた。
「ちょっとちょっと!私とスッコーはこれから課題受けに行くんですけどー?」
「あん? お前未だ炎の洞窟行ってなかったのか?」
「色々と下準備してたの。準備しないで行っちゃった誰かさんとは違ってねー!」
明らかに小馬鹿にした笑みを向けてくるサイファーに向けてべーっと舌を出して言うの肩に手を置いて彼女を自分の後ろへとスコールは下げた。
スコールの行動には瞳を丸くして彼を見上げた。
「スッコー?」
「訓練・・・するんだろ?」
断ると後々面倒だからな、と言いながらもやる気満々のスコールには肩を竦めた。
まぁ、明日もあるんだしね。
そう思いながらははぁ。と大きく溜め息を吐いた。
「どーぞどーぞ。 お好きに!」
はそう言った後先日訓練施設で会ったゼルとの会話を思い出して「あ、」と短く声を上げた。
(訓練という名だけの喧嘩・・・だっけ?)
お互いに怪我をしまくっている。とゼルは言っていたな。
と、は思い目に見えない火花を散らしている二人の間に再度入りはいはいと手を上げて自分を主張した。
二人が自分を見たのを確認するとは「私も着いてっていいー?」と尋ねた。
別に二人は気にしないらしくスコールは無言の肯定を、サイファーは「好きにしろよ」と言って来た。
ゼルの言っていた二人の訓練・・・もとい喧嘩とはどんな凄い物なのだろうか。
(ま、怪我した時も考えて着いてってあげなきゃ)
互いの怪我を治し合うだなんて絶対しなさそうな二人だから。
はそう思いながらも訓練所へ向かう二人の後を着いていった。
着いた場所は、岩場。
スコールとサイファーはぽっかりと円形状に空いているスペースで向かい合い互いに武器、ガンブレードを構えた。
はスコールのガンブレードは見慣れていたが、サイファーの物は見慣れていなかったのでまじまじと其れを見た。
スコールのは獅子の魔物の様な飾りが付いているがサイファーのは至ってシンプルな物。
色も銀とは対照的に暗めの色だった。
あっちもカッコイイな。とは思いながら剣と剣のぶつかり合う音を聞いていた。
それにしても、と思い改めて感心する。
ガンブレードとは其の名の通りブレードにガン機能が着いた武器の事だ。
刃を振り下ろした時にタイミング良くトリガーを引くと爆発的な威力を相手に与えられるらしい。
勿論、扱いはとても難しいのだが、眼前で刃を交える二人は難なく其れを扱っている―。
やっぱり凄いなぁ、とは思った。
――其の時、
「!!」
サイファーが炎の魔法、ファイアをスコールに放った。
真正面からサイファーに向かっていっていたスコールは其れを正面から喰らいバランスを崩して近くの岩場に背を預ける形となった。
瞳を細めながら少しだけ咳き込むスコールに、サイファーは容赦なく追撃の一撃を喰らわせた―。
ザシュ!!という刃が通った音が響く。
其れと同時に血が飛ぶ音。
サイファーの振り下ろした刃はスコールの額を切り裂いた。
其れには息を呑んだが、額の傷は大した深さは無さそうだったのでほっと息を吐いた。
大袈裟に見えるだけ。そう思っているが見ていて凄く痛そうに感じていた。
は「うわ、」と声を漏らしつつも岩から腰を上げて二人に一歩だけ近付いた。
―其の時、またザシュ!!という刃が通った音が響いた。
スコールが立ち上がり様にサイファーの額に自分がやられたように一撃をお見舞いしたのだ。
其の後、お互いに額から血を流しつつも一歩も引かない姿勢を取る二人に、はずかずかと大股で近付いていった。
二人が再度刃を交えようとした其の時――、
「ストップ!」
ガキィン!!
サイファーのガンブレードを剣で受け止めては大きな溜め息を吐いた。
突然のの介入にスコールとサイファーは瞳を細めて見てくる、が、はそんな事気にせずサイファーのガンブレードを押し返すと「今日はおしまい」と静かに言った。
「!邪魔すんじゃねぇ!」
「あのねぇ!此の儘続けても貧血でぶっ倒れるだけだからね!?
SeeD実地試験当日ベッドで過ごしてますになっても良いなら続ければいいわよ!!」
抗議の声を上げるサイファーをキッと睨み上げるとは口早にそう言った。
其れにサイファーは言葉に詰まり、何も言い返せなくなった。
は振り返ってスコールを見、「でしょ? 訓練はまた今度続きをしてね」と言いそっと手を翳した。
パァ、と眩い光が舞いスコールの傷を癒していく―。
「・・・絶対コレ痕残るって・・・。 ハイ。止血完了!次サイファー!」
はそう言いサイファーの額に手を翳し先程スコールにした様にケアルをかける。
そんなの後姿をスコールは唯見上げていた、
確かに彼女の言う通り、此の儘続けていたら課題にも行けず実地試験にも行けなかっただろう。
なので、彼女を攻めるつもりは毛頭無い。 のだが、
(・・・モヤモヤする)
熱くなってきた所を止められ、心は晴れなかった。
スコールはそう思ったその瞬間、意識を手放した――。
「・・・・・・あーあー。 血流しすぎたのかな?」
瞳を閉じたスコールの顔を覗き込みながらが言う。
その後、彼女は二本のガンブレードを「よいしょ」と言い手に持って歩き出した。
「じゃ、帰ろうか。保健室行こう?」
「オイ待て。コイツどうするんだよ」
「か弱い女の子に異性を運べる訳無いでしょー?」
「剣四本持ってる奴がよく言う・・・!」
の武器の双剣で二本、サイファーとスコールのガンブレードで二本を運んでも顔色一つ変えない彼女にサイファーは苦々しげにそう吐き捨てた。
が、当然聞こえていたの蹴りを喰らい、渋々ながらスコールを運ぶ事にした。
「痛ェよ」
「いいじゃん。脛の方が良かった?脛脛」
「お前って結構容赦無ェな・・・!」
苛々した様子で言い返してくるサイファーにはくすりと笑みを返した。
「それにしてもサイファーのもスッコーと同じ武器だけど・・・やっぱ型って結構違うね?」
「あ?」
「色も違うしね。 サイファーのってシンプルだよね」
「余計なモン着いてたら邪魔だろうが」
サイファーはそう言いにちらりと視線をよこした。
の腰に下がっている双剣はよくよく見ると蝶の柄が入っていた。
刻まれている様で、くっきりと蝶の所が盛り上がっている其れを見、サイファーは目を細めた。
「お前のも余計な装飾は無ェが・・・派手じゃねぇか?」
「全然? まぁ良いじゃん。蝶綺麗だし?」
そう言うの髪飾りにも蝶の模様がある。
どんだけ蝶好きなんだ、コイツ。と思いながらも口にすると五月蝿そうなのでサイファーはあえて黙っておいた。
はスコールのガンブレードを見た後、スコール自身に視線を向けた。
(この獅子の飾り・・・首飾りにも着いてる。 あ、指輪にも着いてたっけ?)
一杯着いてるなぁ、どんだけ獅子が好きなのさ、スッコーって。とは思った。
人の事言えないっていうね(笑)
本当は当日の早朝なんですが・・・ちょい都合上変えています(はは)