何でか、気付いたら全てを話していた。

行方不明の兄の事、そしてそれとスコールを重ねてしまった事。

暗黙のルールなんて、当に忘れて。

唯彼が自分の下から去る事が怖かった事も、話した。


ゼルは何時もの賑やかさを潜ませて、静かにの話を聞いてくれた。
時折優しく撫でてくれる手が、兄と重なった。



「お前ってさ、スコールの事好きなんだな」

「うん」


ゼルの問いに、は迷う事無く頷く。
あまりにもあっさりと認めたにゼルが呆気に取られた。


「・・・普通さ、もうちょっと恥ずかしがらねぇ?」

「アービンのせいかねー? ・・・まぁ、ほんとの事だし」


はそう言ってくすりと笑みを零す。
そして頬杖を付き、「私ね、」と言う。


「スッコーを諦めたかったの」

「どうして?」

「スッコーは、きっと私が居ると邪魔になるからって思って」


が瞳をゆっくりと伏せて言う。
そんな物憂げな様子のにゼルは「そんな・・・」と口を開くが、は笑みを浮かべて頷きを一つ返す。


「・・・でも、本当のスッコーは違った・・・何でかな、思いあがりとか、自惚れかもしんないけど、さ。
 スッコーは・・・私を必要としてくれてる気がするんだよね」


ほんのりと頬を朱に染めつつ、は続ける。


「友好的でも、好きって思ってくれてるなら・・・、傍にもっと居たいよ・・・。
 本当は・・・ずっと居たいんだけど・・・ね」


「こういうの、恥ずかしいね」と続けて言い頭を掻く
そんなの女の子らしい可愛らしさを感じたゼルは瞬きを数回繰り返した後、「よし!」と言って拳を握る。
そんなゼルを見たはにっこりと笑って「ゼル?」と彼を呼ぶ。


「言っておくけど、余計な事はしないでよねー?
 スッコーに何か言うとか、仲人をしようとしたりとか」

「ど、どうして!?」


正に今自分が考えていた事を見透かされてゼルは大きく仰け反って言う。
相変わらずオーバーなリアクションですこと。とは言って手を広げて溜め息交じりに言う。


「友達で良いの! それに、・・・今、私たちはそんな暇無いでしょ?」


そう言って顔を背ける

彼女の横顔を見ながらゼルはが関与して欲しくない事を理解し、「お、おう・・・」と返事をした。
ゼルの返事を聞いたは視線を彼に戻し、「よろしい!」と言ってにこりと笑った。


「・・・じゃ、取り合えずお話はおしまい!!
 私はもう部屋に戻って寝るとします!おやすみなさい!!」

早ッ!!


驚くゼルに構わず、はサンドイッチのゴミを手に素早く立ち上がる。
すぐさま立ち去ってしまうの背を、ゼルは呆気に取られたまま見ていた。

途中、が振り返って「ゼル!」と彼を呼んだ。
それにゼルが「お、おう!?」と慌てて反応をすると、彼女は柔らかく微笑んで、口を開いた。


「ありがとう」


そう、短く言って食堂から出て行った
そんなに再度ゼルは呆気に取られるが、直ぐに自分を取り戻してご機嫌な笑顔を浮かべた。











































自分の部屋に戻ったは着替えを纏めておいてから、シャワーを浴びる。
ふと、自分の部屋を使っているリノアの事を思い出す。
そういえば彼女は今何をしているのだろう?

そんな事を考えながらシャワー栓を捻る。

本当は寝たい気分だが、一応探しに行った方が良いかもしれないし、下手したら自分を探しているかもしれない。
はそんな事を思いながらタオルで簡単に身体を拭いて部屋着を身に纏う。
そこではた、とこんな格好では探しに行けない。と考えた時、

コンコン、とドアがノックされた。
次いで聞こえて来た声には少しだけ笑みを浮かべ、タオルを肩にかけてドアへ向かう。


「おーいー、居るー?」


カードキーでロックされているから入れないのだ。
リノアの声を聞きながらは室内からドアのロックを解除して開ける。
「おかえり、リノア」と言ってドアを開けると、嬉しそうなリノアの笑顔が視界に入った。
リノアは「ただいま!」と元気良く言うと部屋に入ってきた。

は再度ロックをかけて、髪を拭きながらリノアを見る。


「ご飯は食べた?」

「うん。此処の食堂のご飯って美味しいんだね〜」


ですよねー。と返しながらはドライヤーを手に取る。
そんなを見ていたリノアは「私もシャワー浴びちゃおうかな」と呟く。


「じゃあ着替えとか準備しとくから入ってきちゃいなよ」

「うん。 ・・・あ、ねぇ、

「ん?」


既にリノアの着替えを準備し始めていたはリノアに呼ばれて振り返る。
銀の髪から滴る透明な雫が、光に反射してきらりと光る。
相変わらずの髪は綺麗、と思いながらリノアは微笑む。


「スコールに会った?」

「スッコーに?」


恐らくエルオーネ捜索後の話だろうから、リノアの言葉には首を振る。
あの後会ったのはゼルのみだ。スコールには会っていない。

そんなにリノアは瞳を丸くして、「えっ、本当?」と聞いてくる。


「本当本当。私がリノアに嘘吐くと思う?」

「思わないけど・・・。 ・・・あー、きっとすれ違ったんだ、そうなんだ」

「??」


頭を抱えて呟くリノアにが小首を傾げていると、リノアは「ま、いっか」と自己完結をしてシャワー室へと入っていってしまった。
そんな彼女の背を見送りながらは唯首を傾げる事しか出来なかった。


・・・何だろ、スッコーが私に用があったって事かな?


何の?

リノアの着替えを準備しながらは考える。


・・・まさか、さっきの事?


髪留めが壊れた事に関して、心配してくれた彼。
でも、変に心配をかけてしまっては悪いと思って、つい強がってしまった。

其の後、スコールは機嫌が悪くなった。

マスタールームでの一件で人に頼られる事でスコールが傷付くなら、と考えていたがどうやら間違いだったようだ。

頼って欲しいのだろうか? 頼っても、良いのだろうか?


そんな事を考えながら、はリノアの着替えを膝の上で畳んだ。




実は両思い(実はって)