【スコールが指揮官になった日】
『スコールがガーデンの指揮官に!!
ねえねえ、彼って、元々このガーデンの有名人なんだねえ。
ふ〜ん、そっかあ、そうなんだ。
うん、スコールなら大丈夫です。だからみんなで応援しよう!
スコールは、無愛想で、ちょっと怖いと思われてるみたいだけどそんな事ないと思うんだ。
色々考えてるんだけどそれを説明するのが嫌いみたい。
いやいや、私の観察によると嫌いと言うよりは苦手なんだよ、きっと。
そういう事慣れてないんだ。あ、それプラス、他人に干渉されるのもするのも嫌いって事かな〜。
あれ〜? 此処はスコール分析コーナーじゃないんだよ〜!
とにかく、みんなでバックアップしよう!』
はセルフィの日記を教室にあるパネルを使って見ていた。
前の日記から色々見ていて、今日のつい先程更新されたこの日記を見て思わずクスリと笑みが零れた。
やっぱり皆スッコーの事、ちゃんと見てるじゃん。
そう思って椅子の背凭れに思いっきり寄り掛かる。
頭の後ろで腕を組んで、は宙を見詰めて思案に耽った。
(スッコーがガーデンの指揮官、かー。
凄く嫌々って感じだったけど、スッコーの事だからやるからにはとことんやるんだろうなー。
そんでもってやっぱり一人で抱え込んじゃうんだろうなー。
指揮官だから、って)
其処まで考えては今度は頬杖をつく。
(・・・何か私に出来る事、無いかな?)
髪飾りのお礼だってしたいし、
そう思いは溜め息を吐いた。
丁度その時、教室のドアが開いてセルフィが入ってきた。
「居た居た!〜!」と言いながら彼女が近付いて来る。
そしてパネルを覗き込んで「あー!読んでくれてるんだ!!」と言って嬉しそうに笑った。
「じゃ、丁度良いや! ね、ね、スコールって指揮官になったじゃん?
それのお祝いみたいなのを皆でしようと思ってるんだけども協力してくれない〜?」
「お祝い?」
が小首を傾げて問うとセルフィは頷いての手を引いた。
ついでにパネルの電源を落とす事も忘れずに。
「流石に特急だからさ〜学園祭のステージを直すのじゃ間に合わないよね。
だからF.H.の場所を借りてコンサートを開きましょうかと!!」
「コンサートか・・・面白そうだね!」
「でしょ? 皆もう集まってるからも来て一緒に計画立てよう!!」
セルフィに手を引かれるまま、は足を進めた。
皆も、と言ったからキスティスやらリノアも居るのだろう。
(やっぱ、スッコーって想われてるなぁ)
はそう思いながら、セルフィに手を引かれるままにガーデンを出た。
着いた場所は、駅長の家の近くにある広い場所だった。
もう既にステージの下組みやらが始まっていては感嘆の声を漏らした。
スコールを除いた何時もの皆が集まり、コンサートの計画を立てる事になった。
セルフィとアーヴァインが皆の前に立つ。この二人が主催者の様なものだからだ。
「どもども、皆さん。此方がプロデューサーのセルフィ」
「えっへん、よろしく」
アーヴァインに紹介されたセルフィは腰に手を当ててそう言う。
そんな可愛らしい動作に和みながらも、は説明に耳を傾けた。
「今回のコンサートはスコールの指揮官就任祝いも兼ねまして、
友達として、今回の演奏を彼にプレゼントしたいと思っています!」
セルフィの言葉にキスティスが「楽しそうね」と言って笑う。
ゼルもそれに頷いたが、訝しげに「・・・で、演奏者は誰だ?」と問うた。
そういえば、コンサートといえば演奏者も当然必要だ。
もそう思い、小首を傾げて隣のリノアを見る。
リノアも「そういえば、」と言い小首を傾げた。
そんな皆の反応にアーヴァインは笑みを深くして口を開く。
「居るでしょ、此処に」
「どこどこ?」
「もしかして・・・・・・私達?」
ゼルの後にキスティスが呟くように言う。
それにアーヴァインとセルフィは頷きを返してきた。
驚きの反応を見せるゼルと。
キスティスは額を手で押さえ、不安げに口を開く。
「・・・出来るかしら?」
「やってみないと分からないよ」
キスティスとは反面、リノアが楽しそうに言う。
まぁ、リノアの言う通りやってみないと分からないか、とも思い開き直る事にした。
「ま、とにかく楽器と譜面用意したから五人でメンバー組んでみよう!」
「おっもしろそ〜!」
「リノア、ノリノリだね」
「私、こういうの好きなんだよね」
が横を見て言うとリノアは嬉しそうに笑いながら言った。
そして、「、一緒に頑張ろうよ!」と言いの肩に触れた。
それにが頷こうとした瞬間、セルフィが「あ、ごめん。、メンバーじゃないの」と言った。
「え? 私ハブ?」
もしかしなくても省かれた?
そう思っているとセルフィは「違う違う」と言って手を振った。
「ううん。にはもっと大事な役やってもらうから」
「大事な役?」
「うん、すっご〜〜〜〜く大事な役!」
「・・・???」
・・・何か凄く意味深なんですけど。
そう思いながら首を捻る。
これは深く考えない方が良いのか?と思っていると皆は楽器を弄りだしてしまった。
何だか弾いたりタップを踏んだり、吹いてみたりと色々やっている。
皆の様子を見ながらは一人伸びをしていた。
少し経ったら楽器分担は決定したようだった。
セルフィとリノアがフルート。キスティスがバイオリン。ゼルがギターでアーヴァインがタップを踏むようだった。
そういえばアービン、タップ上手かったよね。とが思っていると皆が近付いて来た。
「お疲れー」
「まだ本番じゃないんだけどね」
リノアが笑いながらそう言う。
は其の後に「で、私は?」と問うとセルフィが口を開いた。
「ははんちょを元気付けてあげて欲しいんだよね〜」
「スッコーを?私が?何で?」
「スコールの事、一番分かってるのってやっぱだろ?」
ゼルにきっぱりとそう言われは首を捻る。
「私が?」と言うと皆に頷かれた。
「キスティじゃなくて?」
「私は全然よ。スコールの思ってる事とかは大体予想つくけれど、やっぱりメンタル面で一番近いのは貴女でしょ?」
「そう、かなぁ?」
がそう言うとリノアが「そうなの!」と言う。
それに全員が再度頷く。 まぁ、皆から見てそうなのなら、そうなのだろう。
「はんちょ、きっとガーデンの指揮執る事ムス〜って考え込んじゃってると思うんだよね〜」
「あ、分かる分かる! こうでしょ?」
リノアがそう言い腕を組んでスコールが良くする動作の真似をする。
それに全員が真似て同じ動作をし、最終的には額を手で覆った。
終わったと同時に、全員が噴出して笑い出す。
「皆真似上手すぎ!」
「だってスコール、何時もこうしてるからよ!」
「っていうか同時にやるとかなりのシュールさだねこれ!」
「皆スコールの事分かってるんだよね〜!」
アハハ、と笑い声を上げながら全員で楽しげに笑う。
きっとこんな様子を見ても、スコールは先程皆がやった動作をするのだろう。
笑いに一区切りついた時、ゼルがに言う。
「取り合えずよ、アイツってやっぱ一人で悩みこむからさ、から言ってやってくれよ」
「私たちだって、役に立てるんだからね。って」
キスティスにも言われ、は頷く。
「うん。出来る限りスッコーに伝えておくね」
ニコリ、と笑ってそう答えた途端、両側からぐい、とリノアとキスティスに引っ張られた。
突然の事に「え?」と短く声を上げては両側の二人を見た後また声を出す。
「え? な、なになに?」
「という訳で、次の準備ね〜」
「え、だから何?」
リノアとセルフィに両側から掴まれて、立たされて。
気付けばガーデンの方へと引っ張られていく。
後ろからはキスティスが着いてきているが、アーヴァインとゼルはその場に残って色々準備をするようだった。
は前を歩くリノアとセルフィに「ね、」と声をかける。
「何処行くの?」
「ちょ〜っとね〜」
「の準備をするところ!」
「???」
二人にそう言われて考えている間に気付けばガーデン。
寮のセルフィの部屋に連れて行かれて、は終始小首を傾げていた。
部屋の中でセルフィが「さて、」と言いキスティスを見る。
キスティスは頷きを一つ返してある箱を出した。
それは酷く見覚えのある、箱―。
「ちょおおおい!!?待って待って超待って!私それに超見覚えがある!!!」
「だってこれのだもん」
「ですよね!ですよね! でも何で今其れを此処で出すの!?」
は嫌な予感を感じ、後ずさりながらそう言う。
だって話すだけなら普通の服で良いじゃん!!!
そんなの肩にぽんと手を置いてキスティスは微笑んだ。
「大丈夫よ、任務だと思えば」
「任務でもこういう格好はしたくないです」
「大丈夫!可愛いから!」
誰が如何可愛いの!?
そう言おうとしたがは横ではキスティスとリノア。
そして真正面からセルフィに迫られて思わず口を閉じてしまった。
そんなの両肩に手を置いたセルフィが「じゃ、」と言ってにっこりと可愛らしく笑った。
「お着替え、しようか〜!」
「待ってえええええええええええええ!!!!!」
努力、虚しく。
は心の中でそう思いながら廊下の壁に寄り掛かって蹲っていた。
そんなにリノアとキスティスが覗き込む様に声をかける。
「おーい、ー?」
「・・・・・・」
「駄目ね、返事が無いわ」
「・・・・・・・・・」
辺りはもうすっかり真っ暗になっている。
時刻的にはもう直ぐで2100時頃になるのではないだろうか。
正直、部屋に戻ってシャワーを浴びて眠りにつきたいです。
ってかそうさせて下さい。
そう思いながら蹲るの頭上で「あ」という声が響く。
それとほぼ同時に、向こうから聞こえてくる靴音。
優しげに肩に手が置かれ、キスティスに「来たわよ」と言われる。
もうこうなったら腹を括るしかない。
はそう思いゆるゆると顔を上げた。
キスティスの向こう側に見えるのは、スコール。
態々寮に続く廊下で彼を待っていたのだが、はどうしても嫌だった。
リノアがスコールに近付き「じゃ、ヨロシクね!」と言い走って行く。
キスティスも「変な事言ったら承知しないわよ」と言ってリノアに続いて行った。
訝しげな顔をしているスコールに、はゆっくりとした動作で立ち上がって彼に近付く。
コツリ、コツリ、とヒールの音が静かな廊下に反響する。
「こ、こんばんはー・・・スッコー・・・」
取り合えず、何時ものノリで片手を上げて挨拶をしてみる。
笑顔は絶対引きつっているであろうが。
暗闇から出てきたの姿を目に留めた瞬間、スコールは瞳を見開いた。
は何時もとは違い、深い青の色の綺麗なドレスを身に纏っていたからである。
「えっと、」と言い辛そうに声を漏らす。
彼女が少し俯きがちになるとスコールがプレゼントした髪飾りで止められていない位置の髪がさらりと重力に従い落ちる。
何時もの短パンとは違い、今日は裾が長いドレスを着ているが、スリットからは健康的な太股が覗いている。
気付けば視線が其処に釘付けになっていた自分を叱咤し、スコールはを見た。
平静を装って、「何だ」と言うとはおずおず、といった様子でスコールを見上げた。
彼女自身、このような慣れない格好をする事に羞恥の念を感じているのだろう。
頬を赤らめながら、上目使いにスコールを見た。
「あの、さ。 ・・・コンサート、一緒に行かない?」
そう問うた瞬間に、恥ずかしいのか、パッと視線を逸らす。
そして暗闇でも分かるくらい頬を真っ赤に染めた。
そんな彼女を見ていると、気分は乗らないのに断る気が起きなくて、
スコールは気付けば「・・・行っても良い」と言っていた。
セルフィ日記。私は毎回チェックしていた!!(笑)
さて次回はコンサートです。