バラムの街を掠めて出て行ったっきりのガーデン。
それについての様子見も理由だが、バラムもF.H.と同じようにガルバディアの手が伸びているのではないかという事もあり、一度バラムの街へ向かってみる事となった。
同じ港町でもあるし、以前エルオーネが保護されていたガーデンがあった場所だ。
寧ろ、ガルバディアの手が伸びない方が可笑しい。

スコールからその話を聞き、同行を頼まれたは大きく頷いて了承を返した。


「OK!スッコーが行くなら私も当然行くんだから!!」

「あぁ・・・。身体は平気なのか?」


廊下に靴音が響く音を聞きながら、は頷いた。
アルケオダイノスにやられた傷は完治とまではいっていないが、大事無かった。

ちなみに、スコールはこの事を話すためにを探していたらしかった。
そんな中、彼女が保健室へ運び込まれたという事を聞いて飛んできたのだ。

本当に大事無くてよかった。

スコールはそう思いながら「そうか、」と返す。


「・・・後二人連れてこうと思っているだが、」

「・・・セフィ、休ませてあげてるんでしょ?」


がそう問うとスコールは頷いた。

セルフィは強がっているが、あれは精神的に参っている様だった。
D地区収容所を出て直ぐに、最初に目の前で発車されたミサイル。
あのミサイルはセルフィの母校、トラビアガーデンへ向けられたものだった。

バラムガーデンへのミサイルは何とか回避出来たが、トラビアガーデンは恐らく、悲惨な事になっただろう。
それを思うとやりきれない気持ちでいっぱいなのだろう。
今はアーヴァインが彼女に着いている様だが、も心配だった。


「アービンが着いてるから、平気だと思うんだけど・・・、」


彼、軽いけどセフィに対しては違うみたいだし。

はそう付け足すと、スコールを見上げた。


「リノアは連れてく訳にいかないからさ、キスティとゼルにしない?
 ゼルってバラムの街出身だし、やっぱこっちはこっちで街が心配だと思うよ」

ゼルか・・・。そういえばティンバー脱出後もバラムを気にかけていたな・・・


スコールはそう考えた後、ゼルとキスティスが適任と思い頷きを返した。


























































【気持ちがどよよ〜んの日】

『ちょっと落ち込んでるかも。トラビアガーデンの事を思うと。
 ・・・う〜ん。 行ってみたい。 行きたくない。』






学習用パネルからでも見られる日記ページ。
セルフィの日記を見ると色々とその日にあった事柄が書かれていた。
明るい文面の中、最新の記事にこのような文が載っていた。

アーヴァインは少しだけ瞳を細めて学習用パネルを閉じた。
のパネルを借りて、セルフィの日記を見てみたのだ。
直接口では言い辛い事でも、文面に表すとつい本音を零す。

セルフィの心境を少しでも理解したくて其れを見た後、アーヴァインは小さく息を吐いた。


・・・セルフィ、


机に肘を着いて、手の上に顎を乗せる。
また小さく息を吐いてから、D地区収容所を脱出した時の事を思い出す。








「・・・ごめんな、トラビアの皆・・・。あたし、何も出来へんかった・・・・・・せやけどみんな無事におってや。また会えるやんね」


そう言い、俯いて肩を震わせた彼女。
がっくりと膝を着いてしまった彼女に、が近付いて肩を抱いてやってた。
少し経つと、ゆるゆると顔を上げて彼女は困った様に笑った。


「今のミサイルは・・・ハズレだよね〜?」


そう言った彼女は車の上から飛び降りて僕らの前へ来た。
もそれに続き、此方を見ていた。


「スコールはんちょ、早くバラムに報告!報告班、誰を連れてく?」


スコールにそう問いながら、彼女は知らずの内か、拳を強く握っていた。
それも、手が白くなってしまうほどの強い力で。

スコールがを指名した後、セルフィに基地の潜入メンバーで良いのかと問う。
それに彼女は大きく頷いた。


「うん!ぜ〜ったい行くんだから!トラビアの仕返しなんだから!」


表面上はとても明るく言っているが、その瞳には強い決意が色濃く映っていた。








・・・僕が、もっと・・・、


其処まで考え、アーヴァインは首を振った。


・・・否、あの時、あれが僕らに出来る最善だったんだ。
 ミサイルのコントロールパネルも弄って誤差MAXにもした。
 ミサイル発射のスイッチも切った、でも予めセットされていたミサイルは発射されちゃったけど・・・、
 基地も跡形も無く爆破した。壊した。僕らは出来る限りをやったんだ



彼がそう考えていると、教室のドアがプシュ、という音を立てて開いた。
そして、セルフィが入ってきた。


「あ〜!アーヴァインだ! 何してたの?」

「ん?ちょっとの借りて色々弄ってみてたのさ。復習もしなきゃいけないしね」


僕は君達と違ってSeeDじゃないんだから。

そう付け足して、アーヴァインは笑みを零す。
それにつられた様にセルフィも笑みを浮かべ、「そっか」と言い、彼の隣に座った。


「何かね、バラムに向かうみたいだよ」

「バラム? ・・・あぁ、あそこも港町だし、ガーデンがあった場所だからね」


アーヴァインがそう言うとセルフィは頷き、「で、いいんちょはとゼルを連れてくんだって」と言う。
またか。スコールはにべったりだな、とアーヴァインは思いつつセルフィを見る。
セルフィは少々不満そうに頬を膨らませていたが、何処か嬉しそうだった。


「あたしを連れてってくれないなんて〜。 ・・・でも、それっていいんちょの気遣いなんだよね、きっと」


に言われたからかもしれないけどー。

セルフィはそう言いながらも嬉しそうに、でも、少し困った様に笑った。
そんな彼女を見、アーヴァインは何か言おうとして口を開こうとしたが、止めた。

今彼女に何を言っても唯の同情から来る慰めとしか取ってもらえない。
彼女はその様な事はきっと嫌がるだろう。
それに、今自分が口を開いたら自分達への言い訳しか出てこないと思ったからだ。

アーヴァインも、眉を下げ、困った様な笑みを浮かべてセルフィを見た。
それに気付いたセルフィは少しだけ瞳を丸くした後、笑みを浮かべた。


「どしたの?」

「いいや? 何でもないさ」


ドント・ウォーリーだよ。
そう言いアーヴァインは席を立った。
そんな彼を見上げるセルフィに、彼は柔らかな笑みを浮かべて手を差し出した。


「せっかく休みを頂いたんだ、食堂とか行って美味しい物でも食べないかい?」


遊びに行こう。

暗に、そのような事を言っているアーヴァインにセルフィは微笑み、「うん!」と返事をして彼の手をぎゅっと握った。

じゃれ合いながら廊下を歩く。

そんな中、セルフィの笑顔を見ながらアーヴァインは、


今度は、僕が君を遊びに誘うよ


そう思い、笑みを返した―。

























































「これは・・・・・・ガルバディアか?」


離れた所にガーデンを停めて、バラムの街へ近付く中、ある物が見えた。
バラムガーデンの様に飛行可能になっているガルバディアガーデンだ。
それを訝しみながら街へと入ると、何時もと雰囲気がやはり違った。

スコールがそう呟いた後に、ゼルが「何だぁこりゃ?」と言い辺りを見渡す。


「どーなってんだぁ!? おいおい!中はどうなってんだよ!」

「現在、この街は魔女イデア様の名のもとに制圧されている!
 制圧されている間は街の出入りは禁止だ!期間は数日間だ!
 街の取り調べが終わったら次はお前達だからな。大人しく、そこで待っていろ!」


ゼル街を封鎖しているガルバディア兵に近付き問うとその様な返事が帰って来た。

魔女イデア。
ガルバディアガーデンを拠点として各地をこうやって回るのだろう。

はそう思いつつ、一歩前へ出てガルバディア兵に向かい、言う。


「ガルバディアがこの街に何の用なの?」

「何だ、お前達は? この街の住人か?」

「そうだ!俺は此処の住人だ!入れてくれたって良いだろ?」

「出入り禁止だ! 出入り禁止とは、出るのも入るのも禁止という意味だ。分かるか?」

「んだと!?馬鹿にしてんのか!?」


あしらわれているゼルの肩に手を置き、彼の前へとスコールが出た。
スコールは何時もの表情を浮かべたまま、「さっき出入り禁止だと言ったな」と問いかける。
それにガルバディア兵が頷く。

スコールは淡々と言葉を続けた。


「それは情報の出入りも禁止という訳か。
 ・・・残念だな。 エルオーネという有益な情報も・・・・・・、」

「何? エル・・・・・・、ちょっと待て! その話、今すぐ詳しく聞かせるんだ!それが誰だか知っているのか?」


喰らい付いて来た。

はそう思いスコールの影に隠れ、見えない状態なのを良い事にほくそ笑む。
ガルバディア兵の言葉にスコールはわざとらしく肩を竦めて見せる。


「まだ確かじゃない。この街で確かめたい事がある。 だから、街に入れてくれ」

「・・・少しでも何か分かったならホテルに滞在中の司令官様に会え!
 たんまり礼を、弾んでくれるはずだ」


少し考えた後、そう言い道を開けたガルバディア兵。
それにスコールは頷きを返し、街へと足を踏み入れる。
とゼル、キスティスも彼に続き、街中へ入った。


「上手く行ったわね」

「あっさり過ぎるくらいにな」


キスティスにそう返すと、スコールは辺りを見渡した。

街の中は、街の人がちらほら居る程度だった。
入り口やら、ホテル付近やら、駅付近にはガルバディア兵が居た。

街中に入れたは良いが、何処かでどうするかを話す必要がある。
それにゼルが「俺の家に来いよ」と言い先頭を歩き出す。
スコールと、キスティスは彼の後に着いて行き、彼の家へとお邪魔する事にした。


家に入った途端、ゼルが「ただいま!」と言い家族の無事を確認する。
が、家には誰も居らず、ゼルは「あれ?」と言い小首を傾げる。
丁度その時、奥の部屋からゼルの母親が出てきて「ゼル!」と言い近付いて来た。


「どうやって街に入ったの!?」

「そりゃあ、頭の使いようさ。エルオーネの情報を持ってるって言ったら何の確認もなしにパスさ」


それってスッコーの機転じゃあ、とは思ったが敢えて口には出さないでおいた。
ゼルの言葉を聞いて、ゼルの母親はホッと安堵の息を吐く。


「良かったわ。
 また私は、貴方が考えなしに兵士をぶん殴ってしまったのかと思ったわ。
 もし騒ぎが起きたら魔女がこの街を一瞬で焼き尽くすってあの兵士達は、言っているから」

「魔女イデア? 此処に来ているんですか?」


流石お母さん。ゼルの事を良く分かってらっしゃる。と、思いながらが問うとゼルの母親は「どうかしら・・・」と零す。


「ガルバディア軍の中に、女性が居るのは見たわ。灰色の髪をして、片目を隠した・・・・・・、」


灰色、と言って浮かぶのは自分の髪色。
は灰色か銀色、と思い思考を巡らせようとしたが、直ぐに特定の人物が脳内に思い浮かび、眉を潜めた。

まさか、とが思っているとスコールが口を開いた。


「風神だな。となると雷神も一緒か。 ・・・あいつらが来ているのか」

「まっかしとけ! 俺が奴らを、追っ払ってやるぜ!」


ゼルが胸を叩き、そう言うと彼の母親は「気をつけてね」と言う。
そんな親子を横目で見つつ、風神雷神が居るのなら、とスコールは考える。


・・・サイファーも来ているのか?


サイファー派だと言っていた二人がガルバディア側に居るという事は、サイファーも当然魔女の下に付いているはずだ。
今、この街にサイファーは来ているのだろうか?
そんな疑問を抱きつつ、スコールは額を抑えた。


「数日間で解放すると言っているけどそれは本当なのかしら?
 街全体がピリピリしているの。街の人も、兵士達も・・・。
 気を引き締めていきなさい、ゼル。暴れればどうにかなる喧嘩じゃないんだからね」

「そうよ、ゼル」


彼の母親が言った後、後ろから他の女性が出てきた。
「あ、近所の、」とゼルが零すと女性は「こんな大変な時にお邪魔しててごめんなさいね」と言う。


「街の皆は貴方に期待していると思うけれど、あんまり無理をしちゃ駄目よ?
 でも、無理しない程度にガツンと一発、食らわせてあげなさい!」

「お、おいおい!俺の事が心配なんじゃないのかよ!?」


ご尤も。
はそう思いながらくすりと笑みを零す。

ゼルは「まぁ良いか」と言い握り拳を作る。


「ま、見てなって!ドカバスーン!と食らわせてやるぜ!」

ドカバスーン! ・・・って、どんなだし」


がそう言うとゼルは「兎に角、凄いのだ」と言い笑った。
そんなゼルには「はいはい・・・」と零すとゼルの母親に向き直った。


「バラム解放の為に、少し話し合いをしたいのですが・・・、」

「あぁ、この家なら遠慮なく使っちゃってね。
 二階にゼルの部屋があるから其処で話をすると良いわ」

「ありがとうございます」


は笑み、礼をする。
そんなにゼルの母親は「良いのよ」と言って何処か嬉しそうに笑った。


「ま、待てよ!他の部屋で良いじゃねぇかよ!!」

「? 部屋汚いの?」

「そういう訳じゃねぇけど・・・、」

「二階、だったよね? お邪魔しまーす!!」

「あ、おい!!!」


「行こっかキスティ!」と言い二人で階段を上がっていってしまった女性陣にゼルが手を伸ばす。
が、その手は空を切って終わった。
がっくりと項垂れるゼルに、彼の母親が笑いながら声をかける。


「ほら、女の子は待たすもんじゃないよ!あんた達も早く行きな!」


ゼルの母親に背を押された二人は、取り合えず階段を上がった。
とキスティスは部屋には入らず、ドアに寄り掛かりながら待っていた。

ゼルが仕方なし、と、といった様子でドアを開けるとは「お邪魔します!」と言い室内へ足を踏み入れた。

ゼルの部屋は意外にも綺麗だった。
トレーニング道具があったり、写真が飾られてたり、綺麗な部屋だ。

スコールも部屋に入り、辺りを見渡す。


「此処、ゼルの部屋なのか」

「良いか、少しは遠慮しろよ!俺はこう見えても、綺麗好きなん・・・、
ベッド発見!・・・っておい!


ゼルが喋っている間にはベッドに背から沈む。
そしてベッドの上で転がる。

そんなにゼルは「飛び乗るなよ・・・!」と注意するが彼女は「良いじゃないの」と言う。


「セフィだってきっとこうするよ?んで、きっとこう言うよ?
 『可愛い女の子が、君のベッドに座ってあげてるんだから感謝して欲しいくらい〜』って」

「お前・・・」

「・・・まぁ、確かに私は残念系かもしれないけどー・・・、」


が枕を弄りながらそう言うと、スコールはゼルを見た。
じ、と見られたゼルは「な、何だよ・・・」と少したじろぐ。

そんなゼルに、キスティスが溜め息交じりに言う。


「・・・女の子にそういう事考えさせるのは男の子として減点対象よ。ゼル」

「・・・べ、別にが残念って思ってる訳じゃなくて!!」

「そうよね、彼女可愛いものね」


くすくす、と笑みを零して言うキスティス。
つい頷いてしまったスコールにゼルが目を真ん丸にして「お、お前・・・!!」と言う。

つい、といえど頷いてしまったスコールは内心焦ったが、直ぐに「女心、ってやつだ」とゼルに言った。
そんなスコールの台詞を聞いたがブッと噴出す。

そして、ベッドの上で丸くなって肩を震わせた。

笑っているのを堪えているのか隠そうとしているのか、どちらにしろばればれだった。

スコールは額を手で押さえ、「・・・、」と彼女を呼ぶ。
それには笑みを零しながら「だって、」と言う。


「スッコーの口から女心だって!! 悪いけど凄く有り得なくって凄く笑えて・・・!!」


ひーっ、と笑いながら枕をバシバシ叩く。
そんなにゼルが「おい、枕・・・!」と見当違いな事を言うが、スコールは構ってられなかった。
「悪かったな・・・」とスコールが零すとキスティスが「拗ねない拗ねない」と言う。
そんな彼女の顔も、笑っているのだが。


・・・もう好きにしてくれ・・・


大きく息を吐いて、スコールはそう思った。




話が進まない(笑)