青のワンピースを上に着て、上も下も七部丈の物。

何時もと違う服を着るを初めて見たスコールは心の何処かに不思議な違和感を感じながら前を歩く少女の背を見詰めた。


スコールの前を歩いていたは「あっ!」と声を短く上げ、ガーデンの入り口に立っているキスティスに手を振って小走りに近付いていった。
「先生ー!」と呼びつつ近付いてくるに気付いたキスティスも、彼女の方を見て笑みを一つ零した。


「遅くなりました、ごめんなさい」


そう言いペコリと頭を下げるにキスティスは「良いのよ」と笑顔で返した後、スコールに視線を向けて彼が不機嫌なのに気付いて小首を傾げた。
パッと見では無表情なスコールだが、伊達に教師をやっていないキスティスは直ぐに其れを見抜き「スコール、何かあったの?」と問うた。
其れに応えたのは仏頂面のスコールではなく、だった。


「先生ースッコーは叱らないであげて下さいね? 私のせいでちょっと足止め喰らっちゃったんで」

「足止め? 何かトラブルでもあったの?」

「いいえ? 転校生にちょっとガーデンの説明をしていたんです」


がそう言うとキスティスは「ああ、」と納得した表情を作りを見た。


「トラビアから来た子ね? と同じ目的で来た子だから仲良くしてあげてね」


キスティスにそう言われは笑顔で「もちろん!」と返した。
そんなに笑みを一つ返した後、「そろそろ行きましょうか」とキスティスが言い歩を進める。
其れに習って彼女の後を着いていくとスコールにキスティスは「場所は覚えてる?」と言った。


「もっちろん! ね?スッコー?」

「・・・炎の洞窟はガーデンの東・・・だろ?」

「問題無いみたいね、じゃあ行くわよ」


キスティスが満足そうに頷き、そう言った―。





























途中、魔物と二、三回遭遇したが難無く倒し炎の洞窟へ無事に辿り着いた。
洞窟の前にはガーデンの教師が立っている。


いよいよ課題かー頑張ろうっと、


はそう思いスコールと共にガーデン教師の前へ出た。


「課題、ローレベルG.F.取得。サポートはSeeD資格を持つ者、用意は良いな?」


淡々とした口調でそう言ってくるガーデン教師の言葉には(あれ?先生じゃなかったっけ?あ、先生は皆SeeD資格持ってるからか・・・)と一人でシアンしつつ、スコールと共に敬礼をした。


「「よろしくお願いします」」

「私がサポートします。教員NO.14、キスティス・トゥリープです」


キスティスも敬礼をしてそう言うとガーデン教師は一度頷き、「制限時間を選びなさい」と言って来た。


どうしようかな


10分か20分か30分か40分・・・この内のどれかを選んでその時間内にG.F.を取得してくれば良いんだよね、
それだったらどれ位が打倒かな? と、が考えているとガーデン教師が「自分の能力に合った選択をしろ。怠けもせず、無理もせず・・・・・・だ」と釘を刺す様に言って来た。

はちらり、とスコールを見る。
彼の横顔は自身に満ちていてどの時間を選んでも難無くこなしそうだ。
は、だったら、と思い口を開いた。


「20分でお願いします」

「よろしい、では行きなさい」


ガーデン教師はそう言いストップウォッチを起動させた。
スコールを先頭に、、キスティスと続いて洞窟内へ入った―。



洞窟内に入った途端、物凄い熱気に襲われた。

暑い、と思い進みながら辺りを見渡すと、足場の両側を、真っ赤な色をした溶岩が流れていた。
熱気が洞窟内を満ちているせいで、前方を見ても揺れた景色しか目に入らなかった。

何処を見ても、赤ばっか。

はそう思いつつ、前方に現れた魔物を視界に留め、腰に下がっている双剣を抜いて構えた。


「私がサポートするのはバトルだけよ。この中での行動は貴方達がリードする事」

「了解」 「了解!」


鞭を構えつつそう言うキスティスにとスコールも各々武器を構えてそう応えた。

現れた敵は炎の塊の様な魔物、ボムと大きな羽根を三枚持っていて、真ん中に顔のある魔物、ブエルだった。

ボムは魔法に弱い、打撃攻撃をすると膨張して爆発してしまう。対してブエルは魔法防御が高い割には物理攻撃には弱い。

は魔物の特徴を思い浮かべ、バックステップを踏んで下がり、口を開いた。


「スコール、先生!ブエルお願いします!」


そう言い彼等が倒す前にブエルからブリザドを数個ドローしてストックに溜めた。
スコールは「了解した」と言いブエルにガンブレードの斬撃を見舞った。
其れに怯んで降下してきたブエルにキスティスが「良い判断ね」と言い鞭を振るった。

はボムに先程ブエルからドローした魔法、ブリザドを放った。
ボムは呆気無く地へと沈んでいった。

ブエルの方も難無く倒せた様だ。
其れをが確認しているとスコールがガンブレードを一振りして仕舞い、「行くぞ」と短く言い歩を進めた。



進む中、キスティスが口を開く。


「私と此処に来ると、何時もの実力を出せない生徒、多いのよね」


走りつつキスティスの言葉を聞いていたは素直に(何でだろ?)と思いチラリ、と後ろを走るキスティスを見やった。
直後、キスティスはにこり、と綺麗な笑みを浮かべてこう言った。


私の魅力ってやつかしら?

・・・・・・

・・・なんて教師だ


思わずスピードが緩まった二人に、キスティスが声を上げて笑い、「いやね、冗談よ!」と言った。

いやいやいや、下手したら冗談で済まされませんよ先生!?

はそう思いつつもあえて口に出さない事にした。
何せ洞窟内は熱気が満ちていて喉が酷く熱いのだ。
あまり喋ると痛ませるかもしれないし、火傷してしまうかもしれない。

キスティスは「リラックスして貰おうと思ったの」と言いニコリ、と綺麗な笑みを浮かべた。

そんな彼女の笑みを見ては(やっぱ、)と思う。


綺麗だよね・・・キスティス先生って・・・、


美しく、長いプラチナブロンドの髪。

宝石みたいな綺麗な青の瞳―。

スラリとしたスタイル。


正に女性のアコガレだね


そう思いつつは思わず、自分は・・・、と考えてしまい全然駄目な自分を考えハァ、と深い自己嫌悪の溜め息を吐いた。









奥へ奥へと真っ直ぐ進んでいくと、結構アッサリと最深部へ着いた。

ぽっかりとした広い場所を見つけ、は瞳を細めた。
スコールは慎重な足取りで一歩一歩進んでいく。

すると眼前の溶岩の中から、何かが飛び出してきた―。

突然飛び出してきた其れに、三人は各々の武器を構えて戦闘体制を取る。

眼前に大きな音を立てて降りて来たのは、大きな角を生やし、獣の様な顔を持つ巨体のG.F.――、イフリートだった。


まぁ炎の洞窟だし、イフリートって予想してたけど・・・


大当たりだわこれ。とは思い先ずはイフリートの体力を減らす事が先決だと思い意識を集中させた。
スコールはガンブレードを構え、イフリートに斬りかかる。そんな彼をキスティスがサポートをする。

スコールには攻撃面では氷属性の魔法を、防御面では炎属性の魔法をジャンクションさせていたせいか、結構余裕みたいだ。
はそんな事を考えつつ、魔力を高め、双剣をクロスさせて一気に前へ突き出した。


「行っけー!! シヴァ!」


パァっと広がった光と共に、暑くて堪らなかった洞窟内に冷やりとした冷気が肌に触れた。

の目の前に行き成り地から生えて来る様にして現れた氷柱が砕け、中からシヴァが姿を現した。
シヴァはゆっくりとした動作で両の手をイフリートへと向ける。
その白く美しい指先から冷気の塊を力にして一気に放出した。

真正面からG.F.のシヴァのダイヤモンドダストを喰らい、イフリートは苦しんだ。
苦手属性だもんね、とは思い、時間削減の為に魔法で後は済まそうか、と考えた。

シヴァの攻撃で怯んだイフリートの隙を見逃さず、スコールがガンブレードを振り下ろすと同時にトリガーを引いた。
洞窟内に爆発音が響く中、はブリザドをイフリートに放つ。


『こやつ、シヴァを従えておるのか!?』


洞窟内に響いた野太い声―。

そう言ったイフリートは明らかに焦りの色を見せていた。
そして、苦手な氷属性ばかり放ってくるに狙いを定めたらしく、彼女へファイアを放った。

魔法を放たれたは慌てて避けるが、突進して来たイフリートの蹴りを喰らい、吹き飛んで岩に背を打ちつけた。

その光景にスコールは息を呑み暑い洞窟の中だというのに、身体が芯から冷える感覚に見舞われた。

が、げほげほと咳をして地に手を付いているを見ると其れは直ぐに収まった。
彼女咄嗟に双剣でなんとか防いだらしい、外傷は見当たらないが背を強く打ったせいで呼吸が上手く出来なかったのだろう。

スコールは其れを理解し、キスティスに「を回復してやってくれ」と言いイフリートに斬りかかった。


其の一撃が、バトルに幕を下ろした――。












「先生、ありがとうございます」


キスティスにケアルをかけて貰ったは直ぐに立ち上がり何処か恥ずかしそうに笑った。
そんなにスコールとキスティスが小首を傾げていると、は「えへへ、」と笑いながらこう言った。


「いや、あのですねい、ちょっとカッコ悪い所見せちゃったかなーって・・・思った訳ですよ」

「そんな事無いわよ。蹴りは防げていたじゃない、上出来よ」


キスティスがそう言うがは苦笑を返すだけだった。
そんなにキスティスは再度口を開き、「あんなので吹き飛ばない人は居ないわよ」と言った。

スコールはすれ違い様に苦笑しているの肩をポン、と叩いて「制限時間もある、戻るぞ」と短く言って歩を進めた。

はきょとんとした様子でスコールの背を、じ、と見詰めていたが直ぐににぱりと笑みを浮かべると彼の後に続いた。




スッコーに情けないとかだらしないとか言われないでよかった!