ー!!」


飛空挺、ラグナロクに戻った瞬間、正面からセルフィ、真横からリノアとキスティスに飛びつかれた。
「ぎゃっ!」と短く声を上げるにお構いなしに、三人はぎゅうぎゅうと引っ付いてくる。


「もうっ!本当にバカなんだから!」

「ちょ、キスティ、待っ・・・!」

〜!あたしもう心配で心配で・・・!勝手に居なくならんといて〜!!」

「セ、セフィ・・・? あ、ちょ、」

「良かった、良かったよ!!が無事で!!」

「リノア待って待って、ちょ、ギブギブギブギブゥゥゥゥゥ!!!


戯れる女性陣にゼルが「やれやれだぜ」と言い足を組む。
ほんとだよね〜。と言うアーヴァインも、ゼルも、二人とも安心した様な表情で彼女達を見ていた。


スコールはといえば、


そろそろ大丈夫だから下ろして、と言ったを渋々下ろした所、女性陣がに飛びついてもみくちゃにし始めたのだ。

手持ち無沙汰になった彼は、むっすりとした表情で其処に立ち竦んでいた。
が、直ぐに何を思ったのか、彼女の後ろから近付いて、の脇下に手を入れてひょいと彼女を持ち上げた。
「わっ!」と声を上げる彼女を自分に寄り掛からせる様に肩を引き、スコールは彼女達を見下ろす。


「・・・兎に角、移動だ。頼むぞセルフィ」

「りょ〜かいりょ〜かい。 ごめんねぇ〜?取っちゃってて〜」


ニヤニヤと笑みを浮かべながらセルフィが操縦席へ着く。
動き出すラグナロク。

再び持ち上げられた状態になったは、擽ったそうに身を捩り、彼を振り返った。


「・・・あの、スコール、」


気まずそうに視線を彷徨わせた後、彼女は視線を落とす。
彼女の様子にスコールは小首を傾げ、「どうした?」と優しく彼女に問いかけた。
座席に座り、膝の上に彼女を横抱き状態に座らせて顔を覗き込むと、は眉を八の字に下げて彼を見た。


「・・・ほんとに、良かった?」


の言葉にその場に居た全員が彼女を見た。


「私は、アデルの封印も解いちゃったし、エスタに追われるだろうし、何より、魔女なんだよ?」

のせいじゃないでしょ!」


横の座席に腰を下ろしたリノアが身を乗り出してそう言うと、は小さく首を振った。


「・・・ううん、私、元からこの力、あったかもしれない」


そう言い、自分の腕に嵌められているオダインバンクルを見やる。
そんなの様子にゼルが「あっ」と声を漏らす。


「そういえば・・・ウィンヒルのの家に、あったよな、オダインバンクル・・・」

「どういう事?は元から魔女だったって事?」

「・・・・・・わかんないけど、」


そこまで言うと、は顔を俯かせてしまった。

今一番不安に思っているのは彼女なのだ。

スコールはそう思うと、優しく彼女の頭に手を置いた。
「大丈夫だ、」と繰り返し言い、そっと彼女を抱き寄せる。


「俺達は、魔女がどうとかよりもお前を必要としている気持ちの方が強いんだ」


スコールの言葉には瞳を大きく開く。
他の面々は頷き彼女を見詰めた。

照れた様に俯くに、セルフィが声をかける。


「嬉しいのはいいよね〜」

「そうだよ、恥ずかしがる事無いんだよ?」


セルフィとリノアに言われ、は「そうだよね、」と言い顔を上げた。
そして、はにかんで「みんな・・・ありがとう・・・!」と言った。
彼女の頭を優しく撫でながらアーヴァインが「やっと笑ってくれたね〜」と言う。


「やっぱには笑顔が一番だよね〜、うん」

「アービン・・・」


頭をわしゃわしゃと撫でられ、は自分の髪を手櫛で整える。
「もう大丈夫」と言いスコールの膝から下りたは改めて皆を見回す。


「・・・まだ言って無かったよね。 助けてくれて、ありがとう!」


何時もの様に、元気いっぱいに笑って言うに皆も笑顔で頷いた。


そのまま暫く飛んでいたが、ゼルの一言によって別の方向に意識が向かれた。


「スコール、さっきから黙ってるな。 何かあったのか?」

何かって・・・色々あるだろ?


ゼルの言葉にスコールはそう思い額を手で押さえた。
そんな彼にキスティスが顎に手を当てて「スコール研究家の私の考えでは・・・」と続ける。


「これから俺達は何をすればいいんだろう? あれこれあれこれ・・・。
 色々先の事を思うと考えがどんどん悪い方へ行ってしまうのよね。スコール、もっと明るい未来を想像してみない?」

「・・・悪かったな」

「でも、マジでこっからどうするよ?
 ・・・よく分からねえけど、エスタに来たルナティック・パンドラを何とかしなくちゃ ならねえよな?
 あれはガルバディア軍が動かしてるんだ。って事は相変わらずサイファーがゴチャゴチャ動いてるんだろ?」


スコールはゼルの言葉で先ほど報告された内容をうっすらと思い出した。
大石柱がルナティック・パンドラにあり、それは魔物を呼び寄せる力があるという物。
月の涙の魔物も、アデルも全てルナティック・パンドラに落ちて行った、それの問題もある。

オダインの話ではガルバディアの目的は魔女アデル。
つまり、アデルの封印を解除した後、と同じようにアルティミシアをアデルの中に呼び込むつもりなのだろう。


「サイファーは・・・アルティミシアの言いなりだ」

「おお、そのアルティミシアだぜ! 未来の魔女が俺達の時代で悪い事すんのは許さねえよな!
 魔女に後悔させてやろうぜ! 俺達はSeeDだからよ!魔女をブッ倒すのが仕事だぜ!」

ゼル!!


あまりにも無神経なゼルの言葉にスコールが声を張り上げる。
あまりの剣幕に思わず肩を跳ねさせたゼルだが、直ぐにの事に気付き「あ、」と声を漏らす。


「す・・・すまねぇ・・・」


謝るゼルには曖昧に笑った。


「分かってる、私だってSeeDだもん」


の言葉で、スコールは彼女と一度別れた時の事を思い出した。
SeeDとして、その身を回収部隊に投じた彼女。
もうそんな事はさせない、と誓いながらスコールは拳を握った。

立ち上がった拍子に、ポケットから何かが零れ落ちた。
それを隣に座っていたリノアが「あ」と言い拾い上げる。

それはとの別れの際、「リノアに返しておいて」と言われていたネックレスだった。
リノアは瞳を丸くして、スコールを見た。


「どうして、スコールが持ってるの?」

「・・・それは・・・、」


スコールは気まずげにへと視線を移す。
それに彼女は小さく頷いて、「私が、」と言う。


「私がスコールにリノアに返して貰う様に頼んだんだ。もう、会えないと、思ってたから・・・」

・・・」


リノアはネックレスに通されている二つの内の一つの指輪を取ると、の右手の薬指に嵌めた。
それに瞳を丸くするに、リノアは微笑む。


「スコールのと違って、ちゃんと入るでしょ?」

「え、あ、うん?」


とりあえず返事をしつつ、自分の指に嵌められて指輪を見やる。
よくよく見ると、羽の模様が刻まれていて細く、女性らしい綺麗な指輪だった。
リノアのネックレスに通されている物と同じものだった。


「お揃い。ほんとは恋人とか出来たらあげようと思ってたんだけどね」

「え、じゃあこれ私じゃなくって・・・、」

にあげるの!」


リノアはそう言って真正面からに抱きついた。
突然の事に驚きつつも、おずおずと彼女の背に手を回し、は「リノア?」と彼女の名を呼んだ。


「宇宙ステーションでね、お守りみたいな意味で渡したんだから、もう外さないでよね?」

「・・・リノア、」


は嬉しそうに頬を染めながら、はにかんだ。
そして「ありがとう」と言って、きゅっとリノアに抱きついた。

そんな女の子同士の友情を横目で見つつ、アーヴァインがスコールに声をかける。


「ねえ、スコール。 何処行く?」


それに答えたのは、リノアから少し離れただった。


「あ、あのさ!トラビアガーデンで皆が話してた孤児院に行ってみたいな!!」

「でも、ボロボロよ」

「見てもつまらないかもよ〜?」


キスティスとセルフィにそう言われるが、はめげずに「行ってみたいの!」と言った。
ウィンヒルやガーデンは良いのか?と問うゼルには頷き、「孤児院が、いいな?」と言った。

今のは不安定だ。

アデルは封印中であるし、下手をしたらまた未来からの介入が彼女に降りかかるかもしれない。
それを危惧して人の少ない所に行きたいのだろう。

それを理解したスコールは「行ってくれ」と操縦席に座るセルフィに言う。


「イデアの家へ頼む」

「りょ〜かい!」


セルフィも何かを察したのか、深く聞いてくる事はしないで進行方向を変えた。






















































イデアの孤児院に着いたのはそれから暫くたってからだった。
セントラ大陸にある其処の脇にラグナロクを停めて、皆で降りる。

がキスティスとセルフィに孤児院を案内されている間、スコールは適当に歩いていた。

適当に歩いていると、庭の花畑に来ていた。
改めてみると、様々な花が綺麗に咲き誇っていて、見事な物だった。
「そういえば、あったな」と言うゼルにスコールは頷く。


「ああ、こう見ると見事な物だな」

「・・・ああ・・・わりいわりい」


唐突に言うゼルにスコールが「何が?」と問う。


「いやいや、気が利かなくて済まねえ。いや〜でもスコールがねえ、ふ〜ん」


顎に手をあて、にやにやとするゼルにリノアが声をかけた。


「ゼルはどうなの? あの図書館の女の子」

え!? 何だそれ」

「ガーデンの女子はほとんど知ってるし私だって、すぐに気付いたもの」

「お、俺の事はいいじゃねっかよ!」


誤魔化した、と言って笑うアーヴァイン。
ゼルは「兎に角!」と言うとスコールに片手を上げて歩き出した。


呼んでくるから此処で待ってろよ!」


話もいっぱいあるんだろ?
そう言い走っていくゼルにアーヴァインも「じゃ、僕も呼んでくるよ」と言って歩き出した。

リノアは残り、スコールをじっと見上げた。
そんな彼女にスコールは「・・・何を話せば良いんだろうな」と言う。


「気にしてるから、魔女の話はしない方がいいよな。
 魔女でもいいのにな。リノアも気にしないだろ?だよな」

「うん、私もそう思う。
 スコールが思ってる事をありのまま伝えれば大丈夫だと思うよ」


リノアはそう言って微笑んだ。
が、次にちょっと悪戯っぽく笑うと自分の首に下がっているネックレスを弄った。
正確には、ネックレスに通されている指輪を、だが。


の右手の薬指は頂いちゃったからねー、これ、ライバル宣言だから」

「・・・あんた、良い性格してるな・・・」


スコールがそう言うと、別に褒めた訳でも無いのにリノアは嬉しそうに笑った。
丁度その時、ゼルがを連れてきた。
全員が集合し、花畑を見渡す。
「そういえば、此処もあったわね、すっかり忘れていたけれど、」と言いキスティスはを見やる。


「スコールが自分の回りに張り巡らせている壁を物ともせずぐいぐい中に入っていく
 には敵いません、と思ったわ。後はスコールが100%保証付きの場所を良しとするかが問題だったけど・・・。
 意外とあっさり降伏したわね」

「え、私そんなぐいぐい入っていってた?」

「だって、転校してきてからずっとスコールの隣に居たじゃない」


キスティスはくすくす笑って言う。
は頭をかきながら「席が隣だったから・・・」等とごにょごにょ呟いている。


は自然に接していたかもしれないけれど、スコールにとって初めてのタイプだったもの。
 そりゃあ、スコールも最初こそ戸惑ってたみたいだけれど、直ぐに内に入れちゃうんだもの」


びっくりしたわよ、ダンスだって一緒に踊ってるんだもの。
キスティスはそう言ってを真っ直ぐに見た。


「・・・就任試験の?」

「ええ」

「・・・でも、キスティ、あの頃私は、」


の言葉を遮り、キスティスは「良いのよ」と言って手を振った。


「敵いませんって言ったでしょ?
 ・・・スコール変わったわ。頭の中はでいっぱいって感じ。試験前じゃなくて良かったわね」


キスティスはそう言うと、「じゃ、ごゆっくり」と言い歩いていった。
そんな彼女の背を見送った後、セルフィが「う〜ん」と声を上げた。


「わかんないもんだよね〜」


そう言うセルフィにスコールが「何が?」と問うと彼女は答えた。


「あたしの予想では、悪いけど二人はくっつかないはずだったんだ〜。
 君は〜、好き好きって言われたらささっと逃げ出すタイプだよね〜?
 それにも押せ押せな感じじゃないし〜、好きな人は作りたくないタイプだって思ってたし〜」

「セフィ・・・、私達は別に・・・!」


慌てて手を振るに「今更だな」と言ったのはスコールだった。
思わぬ彼の言葉には顔を真っ赤にするしかなかった。


、逃げ気味だったけど逆にスコールが押せ押せになってるし〜。
 なんかもう、途中からすっごい応援したくなったもん!
 あたしの予想。外れて良かったね〜」

「そ、そう言うセフィはどうなの?」


誤魔化す様にが言うと、自分の事は振られると思っていなかったのかセルフィが瞳を丸くした。
「あ、あたし?」と言いセルフィは慌てた様に両手を振った。


「あたしは、大勢でワイワイしてるのがいいなあ〜?」


そう言いセルフィも「ごゆっくり〜!」と言い走っていった。
完璧に逃げたセルフィの背をずっと見詰めた後、アーヴァインがに近付いて彼女の頭に手を置いた。


「それにしても、良かった良かった〜」

「アービン?」

「僕だってずっと心配してたんだからね〜。
 の事も勿論だけど、二人の恋路だって〜」


アーヴァインはわしゃわしゃにの頭を撫で、言葉を続けた。


「もうスコールの傍から離れちゃ駄目だからな? 、一人だと直ぐに無茶するんだから〜」

「アービン!!」


声を張るにアーヴァインは片手をひらひらと振って「じゃ、ごゆっくり〜」と言って去っていった。
それに続くようにリノアとゼルも「ごゆっくり」と言って去っていく。


二人だけになって、少しの間沈黙。

はスコールを見上げ、「えーっと、」と零す。


「どうなっちゃうんだろうねー?私って」

「・・・気にするな。
 昔から良い魔女はたくさん居た。イデアもそうだった。もそうなればいい」

「でも、イデアさんは・・・。
 私だってアルティミシアが中に入ってきたらどうなるか分からない。
 宇宙では操られてアデルの封印を解いちゃったし・・・今度は・・・・・・、」


そこで一度言葉を区切ってから、は曖昧に微笑んで腰を下ろした。


「どうなるんだろうね。今度は・・・何をしちゃうんだろうね。
 世界中を敵に回して・・・戦うのかな・・・? それは、嫌だなー・・・恐いな・・・」


しゃがむの横に同じようにスコールもしゃがむ。
彼女の横顔を見詰めながら、スコールは思う。


・・・世界中を敵に回しても大丈夫。
 俺が・・・ずっと傍に居るから。誰が何と言おうとも、俺が・・・、俺は・・・そう、魔女の騎士になるから


「私がアルティミシアに操られて暴れたら、よろしくね」


そんな事を考えていたら、唐突にがそう言った。


「だって私を倒しに来るでしょ?
 SeeDのリーダーはスコールだから。皆と一緒に来て、スコールの剣が私の胸を・・・、
 スコールならいいから。うん、スコール以外ならやだな。ね、スコール。もし、そうなった時はちゃんと私を・・・、」


ちゃんと、私を、

その次に続くであろう言葉が聞きたくなくて、スコールは「止めろ!」と吼える様に言った。


「俺はそんな事しない!俺が倒す魔女はじゃない。を怯えさせる未来の魔女アルティミシアだ!」

「アルティミシアは未来の世界に居て、私に入ってくる。
 未来からの介入で、私の身体がアルティミシアに使われるんだよ?」


打開策なんて、無いよ。

の瞳がそう訴えてきていて、スコールは眉を潜めた。
どうするかなんて、とスコールは呟く。


「・・・考える。 方法は・・・きっと見つかるはずだ」


スコールがそう言うと、はくすりと笑みを零した。


「考える、なんて。スコールらしくないね」

「・・・これが、今の俺だ。 俺を変えたのはあんただ、そのあんたが消えるなんて、俺は認めない」

「頑固者ー」


は笑ってそう言うと、ゆっくりと立ち上がった。

そして、石段を軽い動作で降りて、花畑へと身を躍らせた。
スコールも立ち上がり、彼女を見やる。

花に囲まれて此方を見て笑う彼女は、魔女には到底見えなかった。


「スコールが諦め無いんだもん、私が諦めちゃ駄目だよね!」

「当たり前だ」

「・・・信じる。どうにかなる方法を、一緒に、皆で考える!」


は嬉しそうに笑った後、花畑の中心でくるりと一回転した。
まるで全身で喜びを表現するかの様に踊るに、スコールは近付く。


「でも、私それまでやっぱ魔女記念館に居た方が良いんじゃないかな?」

「それは無駄だ」


近くまで来ていたスコールは、軽い動作で飛んで移動する彼女を背から抱き締めた。
柔らかな身体に腕を絡ませ、彼女の首筋に顔を埋めた。


「また俺がを取り戻しに行く。は・・・俺の側から離れるな」


耳元で囁かれ、は鼓動が跳ねるのを感じた。


「スコー・・・っ、」




優しく名を呼ばれ、優しく、抱き締められる。

胸の内が酷く温かくて、熱くて、

もうこの想いを止める理性は残っていなかった。


スコールはを抱き締めたまま、想いを言葉にした。


「好きだ、 、愛してる」


そう囁くと、彼女が身体を固くした。
彼女からの答えは分かりきっている、気持ちは、既に通じ合っているから。

スコールはの顎に手をかけると、自分の方を向かせた。

頬を赤くし、戸惑いの色を見せる彼女の唇を塞ぐ。
柔らかな唇に、全てを奪いつくす様に口付ける。

舌を差し入れてみると、彼女は驚きのせいか肩を少し震わせて瞳を丸くした。
たどたどしい動きの彼女のそれに吸い付いて、抱き締める腕に力を強めた。


「ん・・・、」


唇を離した時に、彼女から小さな声が漏れた。

頬を真っ赤にし、瞳を微かに潤ませ、はスコールを見上げた。
彼女の様子に胸の内がまた熱くなるのを感じた彼は、思いのままにまた首筋に顔を埋めた。


「ス、スコール?」


何時の間にか身体を反転させられていた彼女は慌ててスコールの肩に手を置く。
少しだけ背を丸めている彼を押そうとする手だが、何時の間にか腰と背に回された手のせいでそれも無駄に終わった。

どうしよう、と考えるだったが首筋にぬめりとした感覚が襲い、肩を跳ねさせた。


「っちょ、スコール!?」

「あんたが焦らすからだ」


スコールはそう言い見上げてきた。

熱を孕んだ色の瞳に真っ直ぐ見詰められ、思わずはその身を硬くした。


「スコール・・・」

「ずっとずっと、あんたに触れたくて仕方なかった」


スコールはそう言い、自分のグローブを噛んで外す。
そして、のむき出しの腰にゆっくりと手を這わした。

それに擽ったそうに身を捩りながら、は彼を見下ろす。


「ま、待ってってスコール! わ、私・・・!」

「分かってる。俺も、」


スコールはまた軽くキスをして、を抱き締めた。

彼女の髪にも、わざとらしくリップ音を立てて口付け、彼は言う。


「少し、苛めてみたかっただけだ」

・・・意外と鬼畜なスコールさん・・・!?


はそう言いつつも、恥ずかしかったのか、彼の背に両腕を回して強く抱きついた。
「おい、苦しい」と言うスコールに「うっしゃい」と言い、は彼の胸に顔を埋めた。


「・・・夢だとね」


唐突に、が呟く。
スコールは言葉を促すように、優しく彼女の頭をなでてやり、「うん?」と言う。
それに甘えるようにが擦り寄ってきて、再度口を開く。


「・・・私、ずっとずっと迷子だった。
 何かはわかんないけど、兎に角スコールと待ち合わせしててね、うきうきしてた」


スコールと、一緒だから、


「でも、でもね、私、何でかな? 待ち合わせ場所、一番肝心な所を忘れちゃってて、
 ずっとずっと探し回ってた。キスティにもアービンにも、セフィにもゼルにもリノアにも聞いてもスコールは居なくて、
 色んな場所も行ったんだけど、どこも待ち合わせ場所じゃなくって、スコールが居なくって、」


走って走って、探し回ってもスコールが見つからなくって、


「スコール!・・・って、叫んだ自分の声で起きたんだ。
 一緒に居たリノアもビックリしちゃって、怖い夢見たの?って、撫でてくれて・・・」


暗闇に落ちて、ずっとスコールだけを探し続けた夢。


「・・・夢って人に話すと本当にならないって言うじゃん?ごめんね、唐突にさ」

「約束、」


スコールがぽつりと呟いた。


「会えなかったのは・・・が待ち合わせの場所わからなかったのは・・・、ちゃんと約束しなかったからだ」

「うん・・・そーかもね」


はそう言ってスコールを見上げる。
その瞳には、何処か期待の色が伺えた。


「此処にしよう」


スコールはそう言い、花畑を見渡した。


「俺・・・此処に居るから」

「居るから、何?」

「俺は此処で待ってるから・・・」

「誰を待つの?」


意地悪く質問ばかりしてくるにスコールが少しだけ眉を寄せる。
が、さっきの仕返しとばかりに悪戯っぽく笑うを見ていると苛立ちも一瞬にして消えうせた。


「俺、此処でを待ってるから・・・来てくれ」

「了解!
 私も此処に来る。これで今度は会えるね、絶対に!」


はそう言って嬉しそうに笑った。

待ち合わせ場所。


「此処が、私とスコールの、待ち合わせ場所!」


はそう言うと元気良く笑顔をみせた。
何時も通りの彼女の笑顔に、スコールも笑みを返す。


丁度其処に、「大変だ!」と言いゼルが駆け込んできた。
が、二人の雰囲気を察してか「うお!?」と声を上げるとそのまま後ろを向いた。


「す、すまない! でも、緊急事態なんだ!!」


ゼルがそう言うと、はスコールから離れて「何かあったの?」と少々不安げに聞いた。


「飛空艇に無線が入った。エスタの大統領官邸からだ。
 魔女アルティミシアを倒す作戦がある。実行部隊としてSeeDを雇いたいって」

「・・・を取り戻すための罠かもしれない」

「それが・・・無線で話した男の名前がキロスってんだ。キロスって、もしかしたらあのキロスじゃねえのか?」

「エスタの大統領官邸にキロス?俺達を雇いたいだって?・・・行ってみるか?」


スコールはにそう問うた。
は「うん、」と言い頷くと、「私はスコールに着いていくから」と言って笑った。


飛空挺に戻ると、セルフィが操縦席へ座ってさっそく進路をエスタに向ける。


「エスタってあれだけの凄〜い国でしょ?きっともの凄い作戦があるんだよ!」

「・・・どんな作戦なのかな?私も行っていいのかな?」


セルフィの言葉にが思わずそう呟くとアーヴァインが「大丈夫でしょ」と言って笑う。


「エスタには昔の支配者、魔女アデルが帰って来たんだよな?
 これ、アデルの罠じゃないよな?・・・何か、俺びびってるな。やっぱ、これじゃチキンだぜ」

「魔女イデアは力を継承してリノアが魔女になった。魔女アデルは宇宙から地上に帰ってきた。
 これが現在の魔女状況って感じかな? そして未来ではアルティミシアが待機中でこの時代の魔女を狙ってる、と。
 リノアじゃない事を願ってるわ。」


ゼルとキスティスも其々に言葉を口にする。

エスタ大統領、キロス、気になる単語が並ぶ。
一体どうなるのだろう、作戦とはどのようなものだろう、は大丈夫なんだろうか、

スコールはそんな事を考えながら、隣のシートに腰を下ろしたを横目で見詰めた。




スコールは獣並み。
きっと今も焦れているので本当に安らげる時間が来たら凄くなるでしょう(何の話)