エスタに行く前に、という事でイデアの家に引き返した。
考えてみれば、イデアにも話をしておいた方が良かった。
慌ててセルフィとアーヴァインをラグナロクに残し、他の面々でイデアの家に戻った。
「の様子はどうですか?」
家の中に居るイデアに挨拶をすると、彼女はそう言ってきた。
「どんなに明るく振る舞っていても内心は不安でいっぱいのはずです」
「・・・・・・・」
イデアの言葉に、スコールは振り返り後ろに居るを見た。
それには安心させるように微笑み、前へと進んだ。
彼女の姿を目に留めたイデアが、「あなたが・・・」と呟く。
「あなたがですね。
ごめんなさい・・・あなたの人生に余計な荷物を・・・」
「仕方のない事だったと思います。魔女の力の伝承は、イデアさんの意思で行われた訳では無いんですし、
・・・それに、私、元からこの力があったみたいですし・・・」
はそう言い、己の腕に嵌めてあるバングルにそっと触れた。
その言葉にイデアは瞳を丸くしたが、直ぐに微笑んで「そう・・・」と言った。
「私も・・・そうでした。
あれは・・・そう、十三年ほど前でしょうか。私の物語が始まりました。
私は、子供の頃魔女になりました。そして十三年前、もう一度魔女になりました」
イデアはそう言い、家のドアを開けた。
そしてそのままゆっくりとした足取りで、玄関前の道で立ち止まる。
「あの日・・・この場所で、私はまさに力尽きようとしている魔女に出会いました。
私は、その魔女の力を自分の意志で受け継ぎました」
イデアはそう言い、振り返った。
真っ直ぐにとスコールを見た後、再度口を開く。
「その魔女は、私の小さな子供達に恐怖を与える存在でした。
だから放っておく訳にはいきませんでした。・・・でも、それが私の苦しみの物語の始まりでした・・・」
「ですが、」と言いイデアは話している間に下がり気味だった顔を上げた。
「今、私の苦しみの物語は終わりました。
どんなに辛い物語にも、終わりがある事を知りました。・・・だから、スコール?
あなたの戦いの物語を終わらせなさい!それが誰かの悲劇の幕開けだったとしても!」
スコールはイデアの言葉に大きく頷いた。
それには笑み、「イデアさん」と言った。
「・・・私の事は、大丈夫ですから。私も、スコールも、皆も責めたりしません。
だから・・・っていうのかな?・・・魔女の先輩としてのアドバイス、いっぱいいっぱい下さいね?」
が笑んで言うと、それにつられるようにイデアも微笑んだ。
「・・・ありがとう、。
魔女の力も、慣れてしまえば気にならなくなります。がそうなるまで、みんなで助けてあげてくださいね」
イデアの言葉にスコール達が頷く。
次に、シドが口を開く。
「はイデアの力を受け継ぎました。
イデアが知らない間の出来事ですが彼女はとても心を痛めています。
いやいや、これから本当に大変なのはもちろんの方なのですが・・・」
「あのね、。魔女である事の不安を取り除いてくれる方法を教えましょう」
「不安を取り除いてくれる、方法?」
イデアの言葉には期待の色を込めた瞳を向けた。
やはり、不安に思っているのだ。
半ば縋る様な瞳をしているを見、スコールは心を痛めた。
「それは・・・騎士を見つける事です」
イデアはの頬を優しく撫でながら、言った。
「いつでも貴女の側に居て、貴女を守ってくれる騎士。
古来、ほとんどの魔女は騎士と共にありました。
騎士が居ない魔女は多くの場合、力を悪しき道のために使ってしまうのです。
魔女アデルには騎士は居なかったと聞いています。恐らく未来の魔女アルティミシアにも騎士は居ないのでしょう」
「・・・イデアさんの騎士は?」
「もちろん、居ますよ。
今も一緒に居てくれて私を守ろうとしてくれています」
イデアはそう言い、微笑んでシドを見詰めた。
何も強さだけが騎士ではない。
魔女の心の支えとなり、共に歩んでくれる存在が、騎士なのだ。
「騎士は貴女に安らぎを与えます。
貴女の心を守ります。だから、貴女の心の騎士を見つけなさい」
「私の・・・騎士・・・」
はそう呟き、己の首にかけてあるリングに触れた。
それを横目で見ていたスコールは、何も言わずに彼女の肩を抱いた。
「世界中を敵に回しても大丈夫。
俺が・・・ずっと傍に居るから。誰が何と言おうとも、俺が・・・魔女の騎士になるから」
花畑で思っていた事を、今度は口に出して言う。
それには瞳を大きく見開き、みるみるうちに頬を紅潮させた。
彼女の可愛らしい様子にスコールは少しだけ微笑み、彼女の肩を抱く手に少しだけ力を込めた。
「そうそう!」と言い唐突には真横から誰かに抱きつかれ、更に驚く事になる。
「リ、リノア!」
「何も騎士は一人で、男じゃなきゃいけない訳じゃないでしょ?
私もなる!の傍にずっと居る!それで、今度は私が守ってあげる!」
「・・・リノア・・・」
は嬉しそうにリノアの頬に自分の頬をぴったりとくっ付けた。
二人の様子を微笑ましげに見ていたイデアが、口を開く。
「SeeDである事と魔女の騎士である事。難しい事ですが、必ず道はありますからね」
「・・・何かの決断を下したら後は悔いの無いように力の限り行動するだけです。
しかし・・・、迷っている時は、とことん迷いなさい。何事も中途半端が一番いけませんよ」
イデアとシドの言葉にスコールは頷く。
「へぇ〜、じゃああたしたちもの騎士だね〜」
ラグナロクの操縦桿を握りながらセルフィが言った。
それにアーヴァインも「そうそう〜」と頷くが、直ぐに両手を上げてスコールを見た。
「そんな熱い目で見詰めないでくれよ〜、分かってるから、一番は君だって事は」
「・・・そうか」
スコールはそう言うと、シートに寄り掛かった。
は両手をシートに着いて、身を乗り出す体勢をとっていたが、彼がそうしたので習う様に寄り掛かる。
「ね、これからエスタ・エアステーションに行くんだよね?」
「そうだ。キロスからの連絡があった場所だ」
「・・・エルオーネさんの力で夢見た時に会った人、だっけ?」
そんな話、皆してるから。と、言う。
スコールが頷く中、ゼルが「あ」と零す。
「も、もしかしてよぉ・・・キロスが居るかもしれねぇって事は・・・」
「ラグナとウォード、そして・・・」
ゼルの言葉に続くキスティスだが、途中で言葉を切る。
それにが小首を傾げていると、アーヴァインが「黙ってても仕方ないだろ〜?」と言う。
セルフィが頷き、「会えたら良いね、」と言う。
「俺達が見た夢、もう一人出てきていた。
一度もそいつの中に入る事は無かったが、ずっとラグナ達を支えていた奴が居る」
「名前は、クロス。
クロス・リーディ。それでもそれはガルバディア軍の親戚の苗字。
本来の名はクロス・、そうじゃない?」
キスティスがそう言うと、は瞳を大きく見開いた。
「・・・お兄ちゃん、が?」
「ああ、夢に出て来てた、ラグナって奴等と一緒に」
「でも、それは過去の事よ。彼がまだガルバディアに所属していた頃の」
ゼルとキスティスが言う。
それに続いたのは、セルフィだった。
「でもでも〜、キロスさんから連絡来たって事は一緒に居る可能性だって高〜い!」
スコールがを見やると、彼女は口元に手を当てていた。
肩を微かに震わせる彼女に、「大丈夫か?」と問うと彼女は頷いた。
「・・・うん、大丈夫・・・。・・・お兄ちゃん、きっと色々あるんだよね、そっか、エスタ、だったら、見つからないはず・・・」
一度俯いた後、顔を上げ、は真っ直ぐに前を見た。
その瞳に、迷いの色は無い。
「・・・大丈夫、話してくれてありがとう」
は、頷いてそう言った。
騎士がいっぱい(^p^)←