「ブリッジへ通じる隔壁が破られたです!」


プトレマイオス2の中へオートマトンが迫ってきていた。
スメラギは銃を手に取り、ドアへ向かう。
彼女を見てフェルトは小さく声をあげる。


「・・・スメラギさん・・・!」

「フェルト、ミレイナ、戦術通りに対応して」

「わかりました」

「はいです・・・!」

「何かあったら、頼むわね」


ジュビアを見てそう言ったスメラギに彼は小さく息を吐く。
片手をひらりと振り、彼はゆっくりとスメラギを見た。


「何かあったら、な」


そう言いスメラギはブリッジを出て行った。
フェルトはジュビアを横目で見た後、パネル操作を続けた。

守ってみせる、今度こそ。

そう思いスメラギは通路を歩く。
突き当たりの向こうから、オートマトンが現れる。
それを引き連れて現れた人物に、スメラギは瞳を見開いた。


「ビリー・・・!?」

「クジョウ・・・」


ビリー・カタギリは持っていた銃を、真っ直ぐにスメラギに向けた。
どうして貴方が、と口を開いたスメラギ。
そんな彼女の顔の横を、鉛球が飛んだ。
響いた銃声に思わず身を竦める。


「今度は・・・外さないよ?」

「・・・どうして・・・どうして貴方が此処に・・・?」


ビリーが片手をあげて合図を送る。
すると、背後に控えていたオートマトンが去っていく。


「武器を捨てて投降するんだ。悪いようにはしない」

「ビリー、どうして・・・」

「わからないのか?」


恒久和平を実現させるためさ。
ビリーはそう続ける。


「そして、その最大の障害になっているのは、君たちだ」

「イノベイターの支配を受けるというの?」

「より優れた存在によって統率されるのは、論理的に考えても正しい選択さ。
 それに、人類を導くために生み出された彼らは、我々に何の見返りも求めはしない・・・」


理想的な関係じゃないか。
表情を変えずにそう言うビリーに反して、スメラギは表情を歪める。


「それでは自由が失われるわ!」

「完全なる自由はモラルの放棄、その先には滅びしかかないよ。
 秩序ある社会構造の中、人々は限定された自由を満喫する・・・檻の中で守られた方が居心地がいい。それが平和ということだ」

「そんな!」

「戦争根絶を掲げ、その実、世界を乱しているのは君たちだ!」


ビリーは声を張り、銃を再度スメラギに突きつける。
彼を真っ直ぐに見据え、スメラギは瞳を細めた。


「今はイノベイターに世界を委ねることが、真の戦争根絶に繋がるとなぜ分からない!?
 有史以来、人々が求め続けた理想郷が実現しようとしているというのに!」

「・・・未来は、私たちで創り出さないと意味がないわ・・・。
 過去に犯した過ちを、自分たちで払拭しなくちゃ、本当の未来は訪れない」


だから、私は戦う・・・!
そう言いスメラギも、銃を構えた。










敵母艦、ソレスタルビーイング内で、ロックオンはアリー・アル・サーシェスと戦っていた。
通信を開いたままの機体同士がぶつかり合う。
大剣でGNライフルを吹き飛ばす。


『やっぱ戦争は白兵でねぇとな!』

「ほざけよ!」


GNビームピストルUを構えて撃つが、大剣を利用して勢いをつけて飛んだアルケーがケルディムに迫る。
GNバスターソードを振りおろされ、ケルディムはGNビームピストルUを交差させて受け止める。


『また殺してやるよ!ガンダムさんよおっ!』


通信越しに響いた愉悦を含んだ声色。
それを5年前の兄の事を重ねて言っている事を理解し、ロックオンは瞳を細めた。


・・・ぶっ潰す!


そう言いGNバスターソードを払いあげる。
しかしアルケーの足の先にあるビームサーベルが振るわれ、ケルディムの右足部分が切断される。
そしてGNバスターソードで胸部に追撃を行う。


「うぁっ!?」


爆発が起こり、ケルディムは体勢を崩した。
しかし、怯まずに再度GNビームピストルUを放つ。


『しぶてぇんだよおっ!ソレスタルなんたらっ!』


再度振り下ろされたGNバスターソードをGNビームピストルUで受け止める。
しかし、勢いに負けて吹き飛ばされる。


「くそったれが!」


怯まずにロックオンは攻撃を続けた。










プトレマイオス2の防衛に専念していたアリオスとGNアーチャー、Oガンダム。
しかし、長期戦が響いてか、GNアーチャーの粒子残量が少なくなってきていた。


『ええい、粒子残量が・・・!』

『マリー、ドッキングを!』


アレルヤがそう言い、GNアーチャーも動こうとした直後、ガガが突撃してきた。
GNアーチャーが迎撃し、GNビームライフルを放つが粒子残量が少ない為、威力が低く、破壊するまでには至らなかった。


『マリー!』


アレルヤが声を張り、GNツインビームライフルを放つ。
それによりGNアーチャーに向かっていたガガが撃破される。
しかし、後続機が迫る。


「ソーマ!!」


直後、OガンダムがGNアーチャーを突き飛ばす。
突撃してきたガガはOガンダムに組み付く。
次々と後続機が体当たりをし、一機に爆発をした。


レーゲン!!


ソーマが叫んだ直後、GNフィールドを展開していた事により大した被害が無かったのか、Oガンダムの姿が爆煙の中から現れる。
一機に接近したGNアーチャーに向け、咄嗟にハッチを空けたレーゲンが躍り出る。
それを見たソーマは慌ててGNアーチャーのハッチを開き、レーゲンを受け入れた。


「馬鹿、お前・・・!」

「悪い、Oガンダムの武装、無くなっちまったから」


そう言いレーゲンはGNアーチャーの操縦桿を握る。
機体を動かし、特攻してきたガガを攻撃する。
しかし、やはり粒子残量が少ない為に威力が出ない。
ガガの体当たりを受け、片腕が破壊される。
突然の衝撃に、ソーマとレーゲンの悲鳴が響く。


『マリー!レーゲン!!』


レーゲンは舌打ちをし、「アレルヤ!ドッキングを!」と声を張る。
しかし、移動しようとしていたGNアーチャーの中で、特攻するガガを目視する。
ビームサーベルを投げるが、突き刺さっただけで破壊には至らない。
迫る機体に、舌打ちをする。


「くそっ・・・!ソーマ!

!!!


咄嗟にレーゲンは腕を伸ばした。
自身の腕に彼女を抱きこみ、衝撃に耐える体勢をとる。

直後、ガガがGNアーチャーに突撃し、自爆した。


マリー!レーゲン!!


アレルヤがそちらに気を取られたすきに、攻撃を受ける。
その衝撃で、ビームランチャーを取り落とす。


『GNアーチャーが!』

『くそったれ・・・! お、おいアレルヤ!カマエルが!!』


リンダとイアンからの通信が入る。
告げられた言葉に、アレルヤは瞳を見開いた。










放たれたビームを、ダブルオーライザーはかわす。
アヘッドの攻撃も避け、GNビームマシンガンを放つ。
アヘッドは右足を破壊され、体勢を崩す。


『うわあっ!この強さは!』


アンドレイの乗ったアヘッドを通り越し、レグナントが迫る。


『行けっ!ファングゥ!


レグナントの両手の先の爪が放たれる。
しかしダブルオーライザーはGNビームマシンガン、GNソードUを駆使して撃破する。


『お前たちは・・・世界を乱す悪だ!』


翼部の対艦用GNソードを振り下ろしてくるレグナント。
それを受け止め、ダブルオーライザーが耐える。


『お前たちさえいなくなれば・・・!』

『幸せになれるの!?』

『・・・沙慈!?』


突如響いた声にルイスは瞳を見開く。
オーライザーのコクピットから、沙慈はルイスに呼びかけ続ける。


『戦いで勝ち取る未来なんて・・・本当の未来じゃないよ!』


沙慈の言葉を、刹那は黙って聞いていた。


『僕たちはわかり合う事で、未来を築くんだ!』


そうだろう、ルイス!
沙慈が彼女に呼びかける。
しかし、


『その未来を奪ったのは・・・ソレスタルビーイングだ!!』


レグナントはダブルオーライザーを突き飛ばす。
そしてMA形状へ変形し、距離をとる。


『戦争を仕掛けたのも!世界を歪めたのも!』


片腕からGNマイクロミサイルが発射される。
それを迎撃し、残った数発は避けていく。
アヘッドからビーム攻撃が放たれるが、それも避けてGNビームマシンガンを構える。
アヘッドを撃破している隙に、レグナントから電磁アンカーが放たれる。
ダブルオーライザーに絡んだエグナーウィップは、電流を放つ。


うわあああ!!!

ああああああっ!!


刹那と沙慈の悲鳴が響く。
ルイスはそのままGNキャノンを放つ。


『よくも中尉を!死ねぇぇぇっ!


刹那は咄嗟に両肩のバインダーを前面へ移動させ、それを防ぐ。
直後、ガガ部隊が接近してきた。


「特攻兵器!?」


このままでは避けようが無い。
刹那がそう思った直後、電撃を放ったままのレグナントがダブルオーライザーを抱え込んだ。


『もう逃げられないぞ!ガンダム!』

『やめるんだ!このままじゃルイスも!』

『それがどうした!!』


ルイスの言葉に沙慈が瞳を見開く。


『貴様たちを・・・倒すためなら!!』


迫るガガ部隊。
このままでは、ルイスも一緒に爆発に巻き込まれて・・・、


・・・駄目だああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!


そう叫び、沙慈は引き金を引いた。
ダブルオーライザーの肩の部分から、GNミサイルが発射され、ガガを破壊した。
しかし1機残り、突撃してくる。
それはダブルオーライザーに直撃し、自爆をした。










、』


ぼんやりとする意識の中、名前を呼ばれる。


、』

「・・・う、」


体中が痛む。
声に反応し、目を開けてみると、イエローハロがそこにいた。


「・・・ハロ?」

、オキタネ、オキタネ』

「・・・私、どうなったの・・・?」


ガガが突撃してきて、どうなった?
そう思い辺りを見渡す。
半壊状態のコクピット内。
最早武装もついているだけのGNメガランチャーとファングだけで、胴体部分のみとなったカマエルの中にはいた。
どうやら未だに戦闘中のようで、遠くでは閃光が舞っている。
少し離れたところではガガ部隊と戦うアレルヤたちが見える。
イエローハロがつれてきてくれたのか、ここはドッグの近くのようだった。
は瞳を細め、プトレマイオス2の方へ向け、カマエルを動かした。

半分以上損傷し、スパークを起こすカマエル。
GNドライヴはまだ生きている。

はそう思い、痛む体を叱咤して機体を動かした。




今回は色々な視点でした。