「そんな無茶よ!」


スメラギの声が響く。
は予備のメットを手に持ち、小さく笑んだ。


「RUは、無事に送り届けなきゃいけないから」

「けど・・・ドライブ無しで射出するのよ!?」


眉を寄せるスメラギには笑みを返した。


「確実性は増した方がいいでしょ?」


悪戯っぽく笑う彼女の額には、包帯。
そしてパイロットスーツの下も、包帯や湿布等の治療の跡があるであろうに。
彼女は気丈にも笑んでみせている。

痛みを隠しながら。

スメラギは唇を噛み、俯いた。
今の彼女には、何を言っても無駄だろう。
怪我もしている彼女が心配だが、確かに確実性は増す。
それが分かっているからこそ、歯がゆさを感じる。


「・・・貴女に任せても、いいの?」

スメラギさん!


フェルトが声を張る。
気遣わしげな視線を受けながらは「もちろんです」と言い微笑む。


「残ってるマイスターは私だけですし、それに、刹那だけ戦わせるわけにはいかないから」


そう言いは片手をあげてブリッジの入り口へ向かう。
ドアがスライドして、振り返る。


「フェルト、ありがとう」


そう言いは微笑んでブリッジを後にした。
スメラギはイアンに通信で呼びかける。


「・・・イアン、聞いていたわね?」

『ああ・・・相変わらず無茶するお譲ちゃんだ・・・』

「・・・本当に。だから、刹那も彼女が・・・」


スメラギはそこまで言い、瞳を伏せた。

メディカルルームではカプセルに入れられたマリー、そしてレーゲン、ロックオンをアニューが看ていた。
そして今はアレルヤをカプセルに入れる用意をしている。
同型のリヴァイヴを倒したロックオン。
恋人の活躍に、半々な思いを抱きながらアニューは手を動かしていた。


「・・・ライル、」


そう呟き、医療カプセル起動のボタンを押そうとした瞬間、アレルヤが呻き声をもらした。
アニューが真紅の瞳を丸くした瞬間、アレルヤが金と銀の瞳をゆっくりと開いた。
呻き声を僅かにあげた後、彼ははっきりと瞳を開いて口を開く。


・・・は!?

「死んじゃいねぇよ」


アニューの横に居たジュビアが淡々と返す。
一気に安堵の息を吐いたアレルヤに、アニューは複雑な表情を返す。


「・・・さんは、刹那さんの下へ行きました」

「・・・刹那だと?」


どういう事だ。
ハレルヤが問う。
それにジュビアは面倒そうに頭をかくと息を吐いた。


「RUを届けるとか言って、機体に乗ってったよ」


僅かな粒子を貯蔵したタンクをつけた機体でな。
そう言うジュビアにハレルヤは瞳を鋭くさせる。
直後アレルヤに切り替わり、彼は「どうして、」と零す。


「どうして止めなかったんですか!だって怪我を!」

「みーんな止めてたぜ。それを押し切って行ったのはあいつだ」


文句ならあいつが戻ってから言えよ。
ジュビアはそう言い口の端を吊り上げた。
そしてレーゲンの眠るカプセルに近付きながら口を開く。


「絶対戻ってくるからよ。目的を吐き違えたリボンズに最早勝機はねぇよ」


な、レーゲン。
そう言いジュビアは愛しげにレーゲンの眠るガラスを撫ぜた。
アレルヤは視線を逸らし、愛する彼女を想う。
彼女が傍に居ないだけで、こんなにも心が揺らぐ。
それはハレルヤも同じだろう。


「・・・、」


どうか、無事で。
そう想い、アレルヤは祈るように胸に手を当てた。















リボーンズガンダムとダブルオーライザーが正面から切り結ぶ。


『君のその力・・・オリジナルのGNドライブの恩恵があればこそだ!』


ダブルオーライザーを蹴り、間合いを取る。
そのまま変形し、ビームを放つ。


返してもらうぞ!

誰が!


刹那もGNビームマシンガンで応戦をする。
射撃が続く中、リボンズはコクピット内で笑みを浮かべる。


『そうさ・・・そうでなければ僕が創られた意義が無い・・・存在する意味も!』

((違う!))


直後、頭に声が響く。
突然の事にリボンズは瞳を見開く。


ティエリア・アーデ!?ヴェーダを使って・・・!』


ヴェーダとリンクしているティエリアの精神が、リボンズに語りかける。


((人類を導くのではなく、人類と共に未来を創る・・・それが、僕たちイノベイドのあるべき道だ!))

『下等な人類などと一緒に!』


ティエリアの言葉にリボンズがそう声をあげた瞬間、ダブルオーライザーがリボーンズガンダムに蹴りを入れた。
そして間近で射撃を繰り出し、リボーンズガンダムの右足を破壊する。


((そうやって人を見下し続けるから、解り合えない!))

『その気はないよ!』


トランザムを発動させ、ダブルオーライザーに迫る。
それを見た刹那も、トランザムを発動させる。
リボーンズガンダムからフィンファングが放たれるのを、ダブルオーライザーが応戦する。
迫るフィンファングをGNビームマシンガンで破壊し、別の方向から迫るそれも切り落とす。
しかし、他方向から迫るフィンファングがダブルオーライザーの頭部に直撃する。
隙を見逃さず、リボーンズガンダムが迫る。


・・・させるかぁ!!!


フィンファングが、ダブルオーライザーをすり抜ける。
ダブルオーライザーは一瞬にして粒子となり、宇宙空間に舞う。


『量子化しただと!?』


突然の量子化による移動にリボンズが戸惑いの声をあげる。
リボーンズガンダムの間近で実体化したダブルオーライザーがGNソードVを振るう。


はあああああああっ!!


瞳を金色に輝かせた刹那が渾身の一撃を繰り出す。
リボーンズガンダムの背後を切る。
しかし、振り向きざまに下段から一気にビームサーベルを振り上げられ、ダブルオーライザーも左腕を切り落とされる。
二機が同時にトランザムを終了した瞬間、大きな爆発が起こった。





爆発を見ていたは、小さく息を吐く。
身体中が痛む。僅かに息苦しさも感じる。
けれども、このRUを刹那に届けなければ。
彼の想いもたくさん詰まった、この機体を。
そう思いながら、機体を動かす。

粒子貯蔵タンクに入っている残存粒子は残りわずか。
せめて彼を迎え入れるところまでは。
ダブルオーに取り付けられている、この機体のGNドライブさえあれば、大丈夫なのだから。
そう思いながらは爆風に乗って離れる二機の片方に迫った。

機体の体半分をほとんど失ったダブルオーライザー。
静かに近付き、コクピットハッチを開く。
そのままダブルオーライザーにバックパックを使用して近付くと、ゆっくりとハッチが開いた。


・・・!?

「刹那、」


驚いた様子の刹那がの腕を引く。
その際に傷口に触れ、僅かに彼女が表情を歪める。


「怪我をしているのか・・・!?」

「・・・うん、アリオスも、壊れちゃったしね・・・」


浅い呼吸を繰り返しながら、は刹那を見上げる。
彼の瞳は、不安げに揺れている。
恐らく心配をしているのだろう。
彼の不安を取り除こうと、は微笑んでみせた。


「・・・それよりも、これ、」


次はが刹那の腕を引く。
バックパックを使用し、機体に近付く。
簡単な操作をし、粒子貯蔵タンクを取り外す。
そして、刹那を真っ直ぐに見詰めた。


「届けに、来ました・・・刹那に」


貴方の、ガンダムを。

の言葉に刹那は瞳を大きくする。
刹那が見上げた機体。
それは、エクシアのリペアだった。


「ダブルオーの太陽炉を使えば、稼動するよ・・・もう一つは、きっと相手が持っていっちゃったみたいだけど、きっと大丈夫」


早く取り付けないとね。
そう言い作業に移ろうとした彼女の腕を、刹那が引く。
瞳を丸くして振り返ると、そこには真剣な瞳を向ける刹那がいた。


「・・・刹那?」

「・・・ありがとう。が来てくれて、助かった」


刹那の礼には微笑み「仲間だもんね」と言った。
そこから直ぐにエクシアRUにGNドライブを取り付ける。
エクシアRUのコクピットに入った刹那を見ていると、彼に「」と名を呼ばれた。


「お前も来い。激しい戦闘になるかもしれないが、傍に居てくれると心強い」

「え・・・?」


刹那の言葉にが空色を丸くする。
早くしろ、と言う彼には慌てる。


「わ、私が一緒に行っても足手まといになるだけで・・・!」

「怪我もあるが・・・俺は一緒に戦って欲しい訳ではない」


え、とが声をあげる。
刹那は柔らかい笑みを浮かべ、コクピットハッチから身を乗り出す。
そのまま彼女の手を取ると、優しく引いた。


「ただ、傍に居て欲しいだけなんだ」


お前が居れば、心が安らぐ。
刹那はそう言いを乗せ、コクピットハッチを閉めた。
起動するエクシアRUには刹那を見上げる。
刹那は表情を引き締めると、彼女をシートの後ろへとやった。


「お前の今の役目はエクシアを俺に届ける事だ。ここからは、俺の役目だ」


そう言い機体を動かす刹那に、は瞳を細めた。
正直、体がもう痛みで限界だった。
頭に巻かれた包帯も、既に赤く滲んでいる。
息も絶え絶えとなってきたは、シートにもたれかかる。


「・・・うん、そうだね・・・刹那・・・」


刹那の優しさを感じながら、は少しだけ瞳を伏せた。
彼女の様子を確認した後に、刹那は眼前に居る機体を捕捉する。

Oガンダム。

かつてクルジスで戦っていた自分を救ったガンダム。
あの時と同じガンダムに、同じ人物が今、乗っている。


「ガンダムエクシア・・・刹那・F・セイエイ、未来を切り開く!」


GNソードを引き抜き、一気にOガンダムに振り下ろす。
寸でのところでそれを避けたOガンダムは、ビームライフルを放つ。
それを避け、エクシアも突っ込む。


人間風情がぁ!

うおおおおおおおおおお!!!



二機が切り結ぶ。
離れた直後、エクシアRUの射撃がOガンダムのビームライフルを破壊する。
シールドで爆風を防いだ後、OガンダムがエクシアRUの頭部を殴る。
数発喰らうも、そのまま腕を取り地面へと叩きつける。
エクシアRUがビームサーベルを抜き、Oガンダムへ攻撃を仕掛けるが、避けられる。
Oガンダムもビームサーベルを引き抜き、攻撃を仕掛ける。
双方のコクピットハッチの前が切れ、中身がむき出しとなる。


「・・・刹那、」


Oガンダムがシールドを捨て、ビームサーベルを両手で構える。
瞬間、ビームサーベルの威力が上がる。
決定打にするつもりだ。
刹那もそれを感じたようで、GNソードを突き出す形で構える。
GNドライブの出力もあげ、駆け出す。
Oガンダムもビームサーベルを動かす。

二機がぶつかり合う瞬間、光が辺りを包んだ。

胸部を貫かれ、Oガンダムの光が失われた。
直後、大きな爆発が起こった。

吹き飛ぶエクシア。
攻撃により、むき出しとなったコクピットから、花が零れ落ちる。





《この手紙を貴方が読む事がなくても・・・それでも、貴方への思いを綴らせてください。
 クルジスの少年兵として戦いを強要され、戦場の中でしか生きることができなくなった貴方。
 平和を求める気持ちは、私も貴方も同じなのに、解り合っているのに。
 どうして、私と貴方の道は、交わらないのでしょうか?》





刹那が送ったメール。
5年経った今、返事をマリナが綴った。





《貴方が武力を行使して、世界から争いを無くそうとしている。
 もしそれが実現できたとしても、貴方の幸せはどこにあるのでしょう?
 罪を背負い、傷付いて、それでも戦い続ける。
 そんな貴方の生き方が、どうしようもなく、悲しく思えるのです》





武力による解決ではなく、話し合いから、解り合う事から解決していきたいと刹那に言った彼女。
望む道は同じでも、進む道は違った。





《自分の中にある幸せを他者と共有し、その輪を広げていく事が、本当の平和に繋がると、私は考えています》





Oガンダムの爆発の衝撃により、刹那は気を失っていた。
彼の傍らで戦いを見守っていた、も共に。





《だから、どうか貴方も、貴方の幸せを掴んでください。刹那、貴方に幸せが訪れる事を、私は祈っています》





マリナは心を込めて、祈るように星を見つめた。
今もきっと戦っている刹那。
そんな彼に、些細なことでもいい、幸せが訪れるように。
心の安らぎが訪れるようにと、願い続けた。


アザディスタン王宮内で、マリナは筆を置いた。
直後、ノックの音が響き、扉が開く。


「マリナ様、お時間でございます」

「わかりました。さあみんな、行きましょう」


マリナが声を掛けると子どもたちが「はーい!」と元気に返事をする。
王宮前の広場には、民衆が大勢集まっていた。
前に立つマリナの背後には、子どもたちが座っている。


「我がアザディスタンは、地球連邦政府の支援を受け、再建を果たす事ができました。
 私はこの支援を、中東のすべての国々に広げる為に、努力していこうと思います」


マリナの言葉に歓声が沸き起こる。
民衆の賛同を得たマリナは、柔らかい笑みを零す。


刹那、私はこの小さな幸せを広げていくわ。物語が語り継がれるように、歌が人の心に染み入るように・・・


マリナはそう思い、晴れ晴れとした気持ちで空を仰いだ。





病室の窓から、沙慈は空を見上げていた。


ルイスの体を蝕んでいた細胞異常は、その進行を完全に止めた。
 それも、刹那が放ったあの光のおかげなんだろうか?
 真実は、その理由はわからなくても、でも、彼女は、ここに居る



そう思いながら振り返ると、ルイスの姿が目に入る。
彼女はベッドの上で座り、携帯端末を見ていた。


「見て、新しい連邦大統領よ」


沙慈はルイスの横に座り、画面に視線を移す。
そこには、カタロンの見知った人物の姿もあった。


『虐殺行為を繰り返し、その事実を情報操作で隠ぺいしていた独立治安維持部隊は解体。地球連邦軍の再編に、着手いたします』


携帯端末から、新たな連邦大統領が言葉を紡ぐ。


『また、非連邦参加国への援助、連邦への参加を推進し、真の連邦樹立に向けて、努力していくことをここに宣言します!』


連邦大統領の言葉に拍手、歓声が起こる。


『真の地球連邦樹立、そのために私たちは、新たな3つの政策を設定し、推進していきます』

「ねぇ沙慈、これから・・・どうなるのかな?」

「正直、僕にも分からない。でも、無自覚ではいられないと思う」


かつて世間に興味を持たなかった自分たち。
自分には関係の無い事だと、他人事だと思っていた。
けれど、これからはそれではいけないのだ。
幾多の争い、戦場、人々の思惑、悲しみを見てきた沙慈とルイスは、もう無自覚ではいられない。

平和の中にいた僕らは、現実を知り、戦いを知り、その大切さを知った。
沙慈はそう思いながらルイスの肩を抱いた。


「・・・考える必要があるんだ。本当に、平和を求めるなら、世界について考える事が」

「うん・・・」


ルイスは沙慈に寄り添い、瞳を伏せた。





アンドレイ・スミルノフは地球連邦の軍服を身に纏っていた。
携帯端末でカティ・マネキン准将と通信で会話をする。


「准将、司令部はソレスタルビーイングの処遇を何と?」

『奴らは、腐敗したアロウズを叩いた功労者ではある。だが、武力放棄をしない限り、現政権を脅かす危険な存在である事に変わりはない』


奴らに動きがあれば、我々も即動くぞ。
そう言うカティに敬礼をし、アンドレイは通信を切った。
携帯端末を仕舞うアンドレイの背後から近付いてきた人物が、彼の背を叩く。


「ちょっと、折角カティさんの晴れの日なんだからこんな事で通信するなんて野暮なんじゃない?」


アンドレイが振り返った先には、同じく地球連邦の軍服を身に纏うフレイ・アルスターが居た。
「アルスター大尉」と名を呼ぶアンドレイに彼女は明るく笑う。


「フレイで良いってば。レイもそう言ってたでしょ」

「・・・バレル少佐・・・」

「レイ」

「・・・レイは、今日は一緒じゃないのか?」


よくできました、と言わんばかりに笑むフレイ。
腰に手をあて、彼女は口を開く。


「ちょっと里帰りみたいなものよ。私も少し休み貰って行くけどね」

「・・・里帰り・・・?」

「私たちは拾われ者だからね。・・・良かったらアンタも今度来る?」


歓迎するわよ、みんな。
そう言って微笑むフレイにアンドレイも笑みを浮かべた。
兎に角今は色々片付けちゃいましょ、と言い前に進むフレイ。


私は軍人として生きる・・・市民を守り、平和を脅かすものと戦う。父と母が目指した軍人に・・・!


この、仲間と共に。
アンドレイはそう思い、歩を進めた。





ロックオンはアニューと共にアイルランドを訪れていた。
ディランディ家の墓の前へ、ロックオンは花を添える。


「父さん、母さん、エイミー・・・兄さん。俺は、カタロンから離れてガンダムマイスターとして生きる。
 ロックオン・ストラトスとしてこの世界と向き合う。たとえ世界から疎まれようと、その罰が下されるまで戦い続ける・・・!」

「・・・ライル」


ロックオンの言葉にアニューが彼の名を呟く。
彼は墓を真っ直ぐに見詰めながら、少しばかり表情を柔らかくする。


「此処に居る大切な女と、仲間と一緒にな」


だから、そっちへ行くのは、もう少し先だ。
そう言いロックオンは瞳を伏せた。
彼を見上げ、アニューも少しだけ笑んだ。

彼女も、この男と共に歩んでいく決意をしたから。
例えどんな違いが起ころうとも、心は通じ合えた。
ソレスタルビーイングの仲間として、ライル・ディランディの恋人として、彼を支えていくと。

アニューも墓を見つめ、柔らかく笑みを浮かべた。


「・・・私もついています。だから、安心して見守っていて下さい」


そう言い二人は、穏やかな心でディランディ家の墓を見つめた。





アレルヤは晴れた空を見上げていた。
澄んだ空気、あの頃の戦場とは、かけ離れたもの。


世界は再び変わろうとしている。けれど、その為に僕が犯してきた罪は、人の命を奪ってきた罪は、決して・・・


イノベイターの支配から逃れ、自分自身の道を進んでいく世界。
しかしそんな世界へ至るまでに、様々な事がありすぎた。
同胞を殺め、戦い続けてきた自分自身の罪は消えない。


この世界は矛盾に満ちていて、僕自身も矛盾していて・・・でも、それを変えていかなくちゃいけない。
 見つけるんだ。僕たちが生きる意味を、その答えを



戦う以外にも、自分たちに出来る事は必ずあるはず。
今までは戦い以外では自分の役割を見出せなかったアレルヤとマリー。
戦いのない世界で自分達が生きる意味を見出せた時、迷いもなく、ソレスタルビーイングの戦いに戻ることが出来る。
そう思いながら、アレルヤはマリーと共に歩を進めた。

愛しい人とは、離れているが、心は繋がっている。


もう、前とは違うんだ。僕たちとの想いは、変わらない

((ああ、その通りだ。ちゃーんと定期連絡も取ってるしな))

もう、ハレルヤ、君って人は・・・


アレルヤはそう思いながら小さく笑んだ。





レーゲンは端末を二つ同時操作をしていた。
プトレマイオス2から降りている今は、此方の事に専念しておきたかった。
背後ではレイが他の奴らに出来事を話している。
加わりつつ、自身の紹介もしているジュビア。
それに耳を傾けながら、レーゲンは三人の生体データを見、異常が無いかを確認していた。
レーゲン、と高い声が上からおりる。


「・・・ねぇ、仕事ばっかりなんじゃない?ちょっとは休んだら?」

「スターの君も休暇に態々こんなところまで戻って来ているんだ。俺だけ休んでられないさ」


もう、と言い彼女は頬を膨らます。
星の髪飾りがきらりと光を反射するのに、レーゲンは眩しそうに瞳を細めた。


「ソレスタルビーイングは、貴方の居場所になれた?」

「ああ・・・十分すぎるくらいにね」


いつか、君達も一緒に行こう。
そう言いレーゲンは柔らかく微笑んだ。





プトレマイオス2は、地上を移動していた。
対衛星光学迷彩を展開し、仲間を迎えに行く。
ロックオンとアニューを乗せた後は、宇宙へ上がる準備をする。

艦内で、刹那はと一緒に展望室に居た。
地上の景色を眺めているに、刹那は視線を移す。


「・・・本当に良かったのか?」

「私は、まだ此処で戦っていたいから」


そう言いは刹那を見上げた。
彼女もアレルヤと共に自分の道を探しにいっても良かったはずだ。
それなのに、彼女はアレルヤとマリーを見送り、プトレマイオス2へ残った。
はにこりと微笑むと刹那の肩を軽く叩いた。


「きっと私の未来はアレルヤと一緒だから。だから、今はアレルヤに任せちゃうの」

「・・・だが、共に探した方が・・・」

「それでもね、私は此処に残って、刹那と一緒に世界を見ていきたいの」


純粋種として覚醒した、刹那と。
そうは言わずには笑みを浮かべる。
自身も、人の手が加えられたとしても、イノベイターとして覚醒しつつある。
否、それとも覚醒しているのか。
確かに感じた脳量子波。そして、刹那の想い。
それを感じたからこそ、は此処に残る決意をした。


「・・・俺の傍に、居てくれるのか?」

「勿論」


の答えに刹那は嬉しそうに笑んだ。


「行こう、俺たちにはまだ、やる事がある」

「うん。そうだね」


ブリッジに向かう刹那に、も続く。


俺たちはソレスタルビーイング。戦争根絶を目指す者・・・。
 世界から見放されようとも、俺たちは世界と対峙し続ける。武力を行使してでも、世界の抑止力となって生きる



通路を移動する中で、を見る。
空色の瞳を向けてくる彼女は、柔らかく微笑む。


だから俺たちは、存在し続けなければならない・・・未来の為に・・・!


刹那はそう思い、前へ進んだ。




2ndおしまいでございます!!

次回からは映画までの閑話がはいります。