宇宙のプトレマイオスにエクシアとデュナメスが降り立った。
これにより、五つあるコンテナが全て埋まった状態になった。

武力介入を開始してか4ヶ月の期間が過ぎようとしていた。
介入回数は60を越えているらしい。
ソレスタルビーイングを否定する者、肯定する者、どちらの気持ちも戦争を否定するという意味では一致していた。

誰も戦いたくなんてないから。

地球にある3つの国家群の内、ユニオンとAEUは、同盟国領内での紛争、事変のみ、ソレスタルビーイングに対して防衛行動を行うと発表した。
モラリア紛争以来、大規模戦闘は一度も行われていなかった。
世界中で行われている紛争は縮小を続けていたが、武力による抑圧に対する反発は消えることはなかった。


エクシアとデュナメスの整備をするために、イアンとハロが協力をして動いている。
ブリッジではアレルヤがスメラギに声をかけていた。


「スメラギさん、オーバーホール中にもし敵に襲われたら?」

「神を恨むわ」

「戦術予報士の台詞ですか、それ・・・」

「まあ、警戒を怠らなければ大丈夫でしょ」


彼の隣に居るがそう言って笑ってみせると、アレルヤの気持ちが少しは落ち着いたようだった。
アレルヤはそうだね、と言って微笑んだ。
がそんな彼を見上げていると、「あら」という声があがった。


「地上でもにわざわざ会いにいっちゃうし、アレルヤもほんとお熱ねぇ」

「えっ」


スメラギの言葉にアレルヤが頬を赤くする。
それに反応したのはクリスティナだった。
彼女は「ええっ!?」と短く声をあげるとそのまま顔をこちらに向けてきた。


「ちょっと!二人ってやっぱりそういう関係なの!?」

「ち、違うよ!ぼ、僕たちは・・・!」

「僕たちは?」


アレルヤ、顔真っ赤。なんか茹で蛸みたい。
はそう思いながら彼を見上げると、彼は更に顔を赤くして、「ううう」と頼りなさげな声をあげた。
クリスティナは「やっぱり・・・」と言って肩を落としているしスメラギは楽しそうに笑っている。

なんなんだか。

はそう思いながら「とりあえず」と言って両手を打つ。


「ゆっくりしようよ、アレルヤ」

「え、あ、うん・・・」


ブリッジから出ると、アレルヤも続いてきた。
食事はアレルヤと一緒に既に先ほど済ませてしまった。
となると・・・、


「何しよっか?一緒に訓練でもする?」

「・・・い、いや、訓練は今はいいや」


密着するし。
ぽつりとアレルヤは呟いた。

そんなのいつもの事なのに。
はそう思いながらも次の案を考える。


「・・・そう?じゃあ、一緒にお話でもする?」

「・・・そうだね、そうしよう」


アレルヤは嬉しそうに微笑んで移動用のレバーを握った。
はアレルヤの腕に触れて、一緒に移動をする。


「・・・ね、アレルヤ。ハレルヤは元気?」

「え?いつも元気だけど?」

「・・・聞くだけ野暮だった?」


思わず笑って言うとアレルヤは困ったように笑った。
「だめだよ、ハレルヤ」なんて言ってるあたり何かハレルヤが文句を言っているのかもしれない。


「・・・ねぇ、

「ん?」


これ、と言ってアレルヤが手を伸ばしてきた。
そのまま彼を見上げていると、首の後ろがすっきりした感覚がした。

アレルヤの手が回ったようだった。

微重力の中で舞う髪に、何か着けたようだ。

アレルヤは満足そうに「よしっ」と言って嬉しそうに笑った。


「やっぱり、似合う」

「え?」


なにが、と思うと宇宙が見える窓の方へと手を引かれた。
「きれいだよ」と言って目元を赤く染めるアレルヤに導かれて窓の前に立つと、


「・・・わぁ」


思わず感嘆の声が漏れた。

髪に綺麗な橙色や黄色の飾りがついた髪飾りが留められていたから。

二匹の蝶がまるで此処に留まっているようだった。

嬉しくなって、窓硝子に映る自分をじっと見る。

そして両手を広げてくるりと回ってみる。

私が動くと其れもついてきて、何だかもっと嬉しくなった。


「すっごく綺麗・・・ありがとうアレルヤ、ハレルヤ!」


振り返って言うと、アレルヤは口元を手で覆っていて、頬を真っ赤に染めていた。
どうしたんだろうと思いつつ彼を見上げる。


「・・・甘い蜜に誘われた蝶だね、」

「ん?」

の髪、はちみつみたいだもんね」


ふふ、と笑うアレルヤ。
よく分からなかったけれど、アレルヤも嬉しそうだ。
それにしても、


「なんで急にこれを・・・?」

「・・・これも、お守りにしてくれたら嬉しいな、なんて」

「お守り?」


そう言って小首を傾げるとアレルヤは頷いた。
もしかしなくても前にユニオンの隠れ家に来た時のことを気にしていたのだろうか。
がそう思いながらアレルヤを見上げると、彼は困ったように笑った。


「なんか、ごめんね、勝手に・・・」

「ううん!嬉しい!ありがとう二人とも!」


私も何かお守りをあげたいな、とは思いながらポケットを漁る。

記憶ではここにはあれが入っていたはずだから。

指先に何かがあたった感覚がした。


紐に通した紅色の貝。


前に街で会ったシンから貰ったそれならば。
そう思って取り出した。


「・・・これ、ずっと私を守ってくれてたお守り」

「え」


短く声をあげ、アレルヤが銀の瞳を丸くする。
すぐに、大事な物なんじゃないの?と慌てて言うアレルヤには笑みを返す。


「だってアレルヤがくれたお守りがあるもん」


はにっこりと微笑んでそう言った。

まだハンカチがあるから。
はそう思いながら、シンから貰った紅色の貝はアレルヤに手渡す事にした。
シンの真っ直ぐな想いが、アレルヤも一緒に守ってくれれば。

そう思い、は「だから、」と続ける。


「今度はこの子にはアレルヤを守ってもらいたいな」

「・・・・・・」

「何があっても、アレルヤもハレルヤも無事でありますようにって」


きゅ、と両手で其れを一度握ってから、アレルヤに手渡す。
それを受け取ったアレルヤは「綺麗な貝だね」と言って微笑んだ。


「ありがとう、でも本当にいいの?僕が持ってても・・・」

「いいんだってば!アレルヤに持ってて欲しいの」


そう言って彼の手に握らせる。
アレルヤはもう一度「ありがとう」と言うと微笑んでくれた。

そのまま二人で館内を歩いていると、展望室に着いた。
大きい窓ガラスから外の宇宙空間が見渡せる広い部屋で、休息の時とかによく使われているところだ。
何気なくそこへ行ってみると、そこには先客が居た。

ロックオンとフェルトが居たのだが、


「あ、し、失礼!」


フェルトはロックオンに寄り添い、ロックオンはフェルトの肩に手を回していた。
思わず顔を背けてそう言ったアレルヤにロックオンが「誤解するな!」と慌てた声をあげる。
一歩下がったアレルヤにつられて思わずはドアを閉めた。


「あ」

「お、思わず・・・」


瞳を丸くしたアレルヤにそう返す。
だって何かいい雰囲気に見えたから。

なんて思っていると艦内にスメラギの声が響いた。


『敵にトレミーの位置がばれたわ。トレミーを軌道変更。最異端距離でオービタルリングへ向かって』

「・・・敵?」

『各マイスターは、ガンダムで待機を』


何でばれたんだろうか。
なんて思いつつアレルヤとすぐに行動に移る。

デュナメスとエクシアは先ほど整備していた。
ならば、動かせる機体はキュリオス、ヴァーチェ、ミカエルだろう。

すぐにアレルヤとパイロットスーツに着替えて格納庫へ向かう。
それぞれのガンダムに向かう時、アレルヤが「!」と声を張った。


「無理しないで」

「・・・それ、アレルヤもだから」


そう言いながらミカエルに向かって飛んだ。
その際にティエリアとすれ違う。
紫色のパイロットスーツを纏った彼は、赤い瞳を細めていた。


「ティエリアも、あんま無茶しないでね」

「ミッションプランに従うまでだ」


ティエリアはそう言うとヴァーチェへ向かっていった。


『イアン、ガンダムの整備状況は?』

『エクシアは終わってる。だが、デュナメスは脚部ジェネレーターが使えん。装甲も外したままだ』

『欲しい機体が・・・!ミカエル、キュリオス、ヴァーチェを先行発進させて!』


スメラギとイアンの会話が聞こえる。


『トレミー、カタパルトモードに移行します』

『数十万もの通信装置をバラまいて、GN粒子の通信遮断領域を特定してくるなんて・・・。
 こんな物量作戦が行えるのは、恐らく・・・人革!』


人類革新連合、となると、


「・・・アレルヤ」


ちらり、とキュリオスを見やる。
人革連が相手となると相手にあの超兵、ソーマも居るはずだ。
脳量子波の影響はきっとまた出てくる。
その時はアレルヤは大丈夫だろうか。


『アイハブコントロール。キュリオス、アレルヤ・ハプティズム、迎撃行動に向かう!』


アレルヤは一番最初に発進したらしい。
次にヴァーチェがカタパルトデッキに移っているようだ。
そこではスメラギに通信を開く。


「スメラギさん、相手が人革連って事はアレルヤがまた調子が悪くなるかもしれません。
 私は彼の援護に回ってもいいですか?」

『・・・そうね、ミカエルはキュリオスの援護を。その後にヴァーチェと合流してちょうだい』

「りょーかいしました!」


焦りを含む表情なスメラギを安心させるようにはわざと明るく言ってみせた。
腕も動かして、了解のポーズを取ってみると彼女は少しだけ笑ってくれた。

ヴァーチェも発進したようで、次はミカエルの番になった。


『ミカエル、カタパルトデッキへ移動。射出準備完了・・・タイミングをミカエルに譲渡』

「ありがとうフェルト。ミカエル、・ルーシェ、行ってきます!」


フェルトの発進シークエンスを受けてミカエルを発進させる。
少し距離を取ってキュリオスを追う事にした。

トレミーはエクシアが守ってくれている。
片足が無いながらもデュナメスもスナイパーライフルを構えている。

きっと大丈夫。
そう思いながらは飛んだ。




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