おかしい、何かがおかしい。
スメラギの予測では敵は此方に目もくれずにトレミーへ向かうはずだった。
なのに、今目の前には人革連の敵機が迫ってきている。
機雷群も蒔かれていたし、きっと誘い出されたのだろう。
トレミーはきっと刹那とロックオンががんばっている。
「なら・・・私たちはすぐにこっちの敵を倒してトレミーの援護に戻らないと!」
機雷郡の中を突き進む。
ガタガタと揺れる機体の中で、はアレルヤを追う。
『この程度でキュリオスが!』
機雷郡の中をそのまま進むキュリオス。
アレルヤの後に続きつつ、機雷郡を破壊する。
その時に、
『うっ!』
アレルヤが苦しげに声をあげた。
どうしたのかと思いキュリオスに接近をする。
「アレルヤ?どうしたの?」
『な、何だこの頭を刺すような痛みは・・・?
お、同じだ、あの時と同じ痛み・・・な、何が・・・一体何が・・・!』
そう言うアレルヤの声。
どうしたのかと思いながら辺りを見渡す。
そこで理由が分かった。
「あの機体は・・・?」
『知っている・・・知っているぞ・・・!』
ティエレンの部隊が此方に向かってきている。
その中に桃色の機体がひとつ。
『知っている・・・!僕はあの機体を知っている!』
「アレルヤ!!」
眼前のティエレンからカーボンネットが放たれた。
きっとソーマの脳量子波の影響で頭痛に苦しんでいるのだろう、
動かないキュリオスに代わり、其れを破壊する。
桃色のティエレンが突っ込んできた。
きっと、ソーマ!
「アレルヤはやらせないから!」
桃色のティエレンの手にある武器が振り下ろされる。
ミカエルのソードでそれを受け止めつつ、はアレルヤに呼びかける。
「アレルヤ!アレルヤってば!!」
『う、ううっ・・・!』
駄目か。
そう思いながら一旦ティエレンを弾いて背後のキュリオスを守るように構える。
「せめてティエリアが来るまで・・・!私がなんとかしないと!」
何せ相手はソーマだ。
機体のハンデはあるけれどやりにくい相手になる。
そう考えていると、双方から別のティエレンが迫ってきた。
またカーボンネットが放たれる。
今避けたらキュリオスがやられてしまう!
でも、
「・・・っく!」
は、ティエレンを蹴散らしてカーボンネットを避けるしかなかった。
キュリオスに其れは絡み付いて、アレルヤの動きを封じた。
「・・・アレルヤ!」
ミカエルまで動けなくなってしまったら本末転倒だ。
すぐにアレルヤを助けに行こうとするが、ティエレン部隊に邪魔をされる。
その間にも、ソーマの機体がアレルヤに近付く。
『来るな・・・!来るな!来ないでくれぇ!!』
アレルヤの叫びも虚しく、桃色のタオツーが両手でキュリオスを掴む。
その直後、アレルヤが苦しさから悲鳴を上げた。
ずっと悲鳴を上げ続けるアレルヤにたまらなくなって、左右のティエレンを蹴散らして其方へ飛ぶ。
このままだと、アレルヤが捕まって、敵に捕まってしまう!
「やあああああっ!」
変形して近くに居たティエレンを足場にして飛んだ。
そのまま桃色のティエレンへ攻撃をしかけようとしたが、背後から撃たれた。
「っく・・・!邪魔だああっ!」
ビーム砲を撃つと背後のティエレンが大破した。
そのままアレルヤに向かおうとするが、段々彼は遠ざかっていく。
いやだ、連れて行かないで!
ただそれだけを思い、ミカエルをまた変形させて飛び込む。
「やああっ!」
ビームサーベルを振るって次々と邪魔なティエレンを切り倒していく。
アレルヤからの反応を感じない、気絶してしまったのだろうか。
ずっと心の中でアレルヤに呼びかけているのに。
(嫌・・・嫌・・・!私・・・!)
((お前は・・・))
頭に直接声が響いてきた。
これは、
「・・・や、やなの・・・!連れて行っちゃ嫌なの!だから邪魔しないでぇ!」
((やはりか!))
ソーマの声が頭に響く。
それでもは剣を振るうことしかできない。
キュリオスは敵の輸送艦に収納されてしまったようだった。
ならば、あそこを攻撃してアレルヤを助けなければ。
機体を移動させようとすると、背後から止められた。
「・・・離して!私は、私は!!」
((お前も、連れて行く!))
「え?」
なにを、と思った瞬間左右からカーボンネットが放たれた。
ミカエルの動きが封じられても、はレバーを強く引く。
だが、レバーも重たく、ミカエルは身動きが取れなかった。
やだ、やだ、体が震える、
「・・・あ、い、いや・・・!」
私は、
「いや、いや、」
無意識に頬に手を当てようとして、バイザーに邪魔される。
このままじゃ、アレルヤを助けられない、わたしも、
捕まったら、どうなる、
また、体を――――、そして、みんなを、
ベルリンの、時、みたいに、
「! いやあああああああああああああ!!」
頭を刺すような痛みが襲った。
思わず頭を押さえてコクピット内で苦しみの声を上げる。
直後、目の前にあったティエレンが消えた。
ビーム攻撃にやられたようだ、どうやらティエリアが来てくれたらしい。
『別働隊がいたとは・・・』
ティエリアの声が通信を通して聞こえてくる。
『・ルーシェ、無事か』と彼はそう言い此方を見た後、『ん?』と声をあげた。
『何・・・?敵輸送艦からキュリオスの反応?』
「・・・ぁ、」
『敵に鹵獲されただと!?』
キュリオスが人革連の輸送艦から反応された事から、ティエリアが驚きの声をあげる。
が、すぐに舌打ちをし、『何と・・・』と声を漏らす。
『何という失態だ!万死に値する!』
ティエリアはGNフィールドを展開し、GNドライブ直結バズーカを構える。
射撃体勢に入ったティエリアの狙う先は、アレルヤが捕まった敵輸送艦。
『アレルヤ・ハプティズム・・・君もガンダムマイスターに相応しい存在ではなかった』
そんな、
ティエリアの言動に一気に体温が下がった気がした。
「だ、だめ!あの中にはアレルヤがっ!!」
慌ててティエリアを止めようと動こうとしても、ミカエルは動かない。
がたがたと体が震える。
やめて・・・!
そう呟くことしかできなかった。
そこで、桃色のティエレンがヴァーチェを攻撃する。
『ティエレンとは違う・・・新型か!?』
ティエリアが放とうとした砲撃は別に向かった。
そのままフィールドを解除し、ランチャーで攻撃をする。
が、桃色のティエレンは素早い動きでそれを避けてみせる。
それにティエリアが驚きの声をあげる。
『二度も避けた!?』
そのまま桃色のティエレンとヴァーチェの戦闘が始まる。
動けないはなんとか逃げなければと思いガチャガチャとレバーを動かす。
「動いてミカエル・・・!こんなの、千切ってやる!!」
無理矢理変形をして、グリフォン2ビームブレイドでネットを切る。
だが、そこへ別のティエレン部隊が迫ってくる。
「・・・邪魔よ!あんたたち!!」
変形をしてビームサーベルを構えてティエレンを撃破していく。
『調子に乗るな!』
ティエリアの声が聞こえる。
どうやらGNキャノンを撃って桃色のティエレンの足を破壊したようだった。
それにソーマは酷く憤慨したようだった。
((よくも・・・!私のタオツーを!!))
ティエレン・タオツーという機体らしい。
タオツーの素早い動きにヴァーチェは翻弄されているらしい。
助けにいかなければ、と思い方向を変える。
周囲のティエレンがクロー付きワイヤーを発射した。
それはヴァーチェの四肢を捕らえ、GNフィールドも、キャノンも撃てないようにしている。
まずい。そう思い攻撃をしかけようとするが、タオツーに邪魔をされる。
「邪魔しないで! ・・・ティエリア!」
『・・・くっ!だとしても!』
GNドライブの機動力を全開にする。
ヴァーチェの四肢が微かだが動き、押さえる六機のティエレンを引きずるようにする。
このままなら、と思っていると背後から別のティエレンが迫ってきた。
アラームが鳴り響くけれど、ティエリアを放っておく事なんてできなかった。
「っく!」
またネットがミカエルに絡みつく。
それと同時に、クロー付きのワイヤーがミカエルに絡みついた。
追撃の砲撃までされて、最早されるがままだ。
そして、襲い掛かる頭痛。
「い、痛い・・・!」
このままではミカエルも捕まってしまう。そう思っているとコクピットに衝撃が来た。
思わずビクリと体を震わせる。
「な、なに・・・?」
((!!))
「ソ、ソーマ!?」
何してるの!?
そう思っていると、タオツーの腕の武器がコクピットを攻撃しているらしかった。
なんでそんな事を、なんて思うとまた頭に声が響く。
((出て来い!私と共に来い!!))
「! や、やだ!出ない!ここから出ない!」
((何故だ!お前は・・・))
「やだ!そっちに行けばまた体をいじられる、色々改造される!!」
もう嫌なの!
そう叫ぶ様に言うとソーマの動きがやんだ。
((・・・私は、諦めない。ソレスタルビーイングに居るべき者じゃないんだ、お前は))
そう言いタオツーはヴァーチェへ向かった。
ああ、あのままではティエリアがやられてしまう。
タオツーの手によってヴァーチェが撃墜される、と思った瞬間、
ヴァーチェの装甲がパージされて、新たな機体が現れた。
二周りほど小さい其れは、宙に浮いているGNキャノンを掴む。
『ガンダム・ナドレ・・・目標を消滅させる!!』
ナドレ。
あの機体はナドレというらしい。
ナドレは周りの自分を捕らえていた六機を一瞬にして破壊した。
『あああぁぁあああっ!』
ダンッという音と共にティエリアの声が響く。
『何という失態だっ!こんな早期に、ナドレの機体を晒してしまうなんて!』
ティエレン部隊は撤退を開始したらしく、ナドレを無視して進む。
まだナドレの周辺に残っていた敵機は撃墜されていく。
ミカエルは、タオツーの手によって引かれていた。
ナドレの損傷も激しい。
きっと人革連の狙いはガンダムの鹵獲。
だったらもうミカエルだけでも鹵獲できればと思っているのだろう。
『計画を歪めてしまった・・・ヴェーダ・・・!』
悲しげなティエリアの声は、そこまで聞こえた。
通信が切断された。
は、自分はこれからどうなってしまうのかと考えた。
どうなるかなんて、分かりきっている。
「・・・い、いや・・・」
人革連に行ってもまたやっぱり改造されるんだ。
そんなの嫌だ、戦う理由が、アレルヤを、守って、守られて、
なのに、いじられたら、全部無くなってしまう、
「シン・・・シン・・・!」
思わずハンカチを握り締める。
守るって言ってくれた彼、シン、シン、シン、
「い、痛いの・・・怖いの・・・!助けて・・・!」
連れてって、欲しかった。
でも、シンは今居ないの、仕方ないの、
でも、助けてほしくて、
誰か、誰か、
「ア、アレルヤ・・・ハレルヤぁ・・・!」
銀と金の対の瞳を持つ彼ら。
私にお守りをくれた、彼ら。
アレルヤ、ハレルヤ、
が再度そう呟いた瞬間、
((やぁっと呼んだ))
遅ぇんだよ。
その言葉には思わずはっと瞳を見開く。
今の声はハレルヤ。
一体何処から。
そう思っているとミカエルを掴んでいるソーマが通信を入れてきた。
『・・・、ガンダムに乗っていたのは、やはりなんだな』
「・・・ソーマ・・・」
『私と来い。お前はソレスタルビーイングで戦う事を望んでいるようには見えない』
「・・・嫌だ、そっちは怖いから、嫌・・・」
やだ。
そう呟いて両腕を回す。
だって、そっちは本当に嫌な感じしかしないから。
それでもソーマに捕まっているので、強制的に連れて行かれるしかない。
そんなの、いやだ、
「・・・もう、やだ、怖いのに・・・私・・・」
『・・・戦う事を恐れているのに、奴等はお前を戦場に出しているじゃないか!』
「だって!私は戦わないと!なんの為に此処に居るのか分からないんだもん!!」
もうやだ、はなして、はなして!
そう叫ぶにソーマは黙りこんだ。
何かを考えているのかもしれない。が、は頭を振ってそう言うことしかできなかった。
レバーを再度がちゃがちゃといじってみる。
ミカエルの両腕が微かだが動く。
急に暴れだしたに焦ったのか、他のティエレンが動く。
「嫌だ、やだ!」
牽制のためか、銃口が向けられる。
それに思わず肩が跳ねる。
恐怖で体が震える、いやだ、やだ、アレルヤ、ハレルヤ!!
『だから遅ぇっつーんだよ!!』
おらよぉ!
という勢いの良い声と共に現れたのは、キュリオス。
タオツーと私の間を物凄い速さで通り、ミカエルを救出してくれた。
眼前にあるオレンジの機体に、は安心したような、嬉しいような笑みをこぼした。
「・・・ハレルヤ!」
『よぉ、無事か?』
「それは、私の言葉だよ・・・!」
良かった、アレルヤもハレルヤも無事みたい。
そう思った途端、バイザーの中で涙が舞う。
気付いたら涙を流していたらしい。
繋がれた通信モニターでハレルヤは金の瞳を鋭くさせた。
『・・・見つけたぜ!ティエレンの高機動超兵仕様・・・あぁ、間違いねぇ』
キュリオスは変形をして、ミカエルのネットをビームサーベルで切ってくれた。
自由になったミカエルの前に出、キュリオスはビームライフルを構える。
『さんざんっぱら俺の脳量子波に干渉してきやがって!てめぇは同類なんだろ!?』
同類、彼とソーマが?
そう思っているとハレルヤは『そうさ、』と言葉を続けた。
『俺と同じ・・・体をあちこち強化され、脳を弄くり回されて出来た化け物なんだよぉっ!』
強化されて、改造されてできた、化け物。
私も、
と、は思い肩を揺らした。
それによ、とハレルヤは続ける。
『よくもこいつを泣かしてくれやがったな・・・!』
「・・・ハレルヤ・・・?」
『お前は休憩してな。おねむなんだろ?ちゃんよ』
こいつらは俺が遊んでやるから。
優しい言葉で、「寝ろ」と言われてたら、本当に眠りたくなる。
きっと精神的にも疲弊したを気遣って言ってくれているんだろう。
けど、
「寝るのは、一緒がいい」
『は?』
「帰ったら一緒に寝よう、ハレルヤ、アレルヤ」
そう言うとモニター越しのハレルヤは鼻で笑った。
「仕方ねぇな」と言って金の瞳を細める。
そうしているとタオツーが此方に向かってきた。
片足も無いのに、引く素振りも見せずに。
((の心を縛るな!ガンダムッ!))
『いい度胸だなぁ!女っ!!』
ハレルヤとソーマの声がには同時に聞こえた。
ソーマはを引き抜きたいと思っている。
恐らく、ソレスタルビーイングはの力を利用し、使っていると考えているのだろう。
あながち間違いでもない。
は王留美の導きで、ソレスタルビーイングに流れるまま参加している。
スメラギたちにそんなつもりは無いかもしれないが、上層部の人間からしたら丁度良い駒なんだろう。
タオツーはキュリオスのビームライフルを避けるが、次には当てられた。
だがハレルヤは急所は狙わずに撃ち続ける。
((何・・・?遊んでるの・・・?))
『ほらさぁ!同類だからさぁ!分かるんだよぉ!』
ハレルヤが楽しそうな声を出す。
言う通り、ソーマが避ける方向へ直ぐに追撃をしかけている。
彼は戦いを心底楽しんでいるらしい。
まるで、新しい玩具を始めて使う子どもみたいだった。
(・・・ソーマ、退いて)
((! 、何を言っている!お前も分かっているだろう!))
(でも、きっとソーマについてっても私はただの実験道具にされるだけだよ、そんなの、嫌だよ・・・)
((・・・私が、))
ソーマの声がそこまで響いた時、別のティエレンが飛び込んできた。
キュリオスの背後から接近し、取り付く。
ソーマの機体は別のティエレンが引いていく。
『邪魔すんなよ!一般兵!命あってのものだねだろうがぁ!』
とっさに振り払い、シールドを変形させる。
左右にぱっくり割れたシールドで相手を捕らえた。
シールドの先がティエレンに突き刺さっていく。
見ていると、ソーマたちは撤退したようだった。
((ミン中尉・・・。・・・、私はお前を諦められない・・・!))
(・・・ソーマ・・・)
『何だ?』
ハレルヤがそう呟く。
『仲間見捨てて行っちまうのか?』
やることが変わらねぇよな、人革さんはよ。
と、どこか呆れた声色で言う。
きっと過去の事を思い出しているんだろう。
過去の事はアレルヤが話してくれたから知っている。
ハレルヤがいつ誕生したのかも聞いた。
でも、ハレルヤの気持ちは・・・、
『いつか・・・』
『あ?』
『いつかお前たちは報いを受けるときがくる!我々が築き上げてきた国を、秩序を乱した罰を!』
ティエレンとキュリオスが近付いているせいか、通信が聞こえてくる。
それにしても、自分たちの国を乱した罰だなんて。
「・・・戦いの事ばかり考えてる国がよく言うわね」
気付いた時には、は冷め切った声色でそう言っていた。
『そんな大層なもんじゃねぇだろ?人を改造して兵士にするような社会にどんな秩序があるってんだ?』
世界から裁きはきっと受けるだろう。
それを覚悟で、ソレスタルビーイングは活動しているんだと思う。
『そんでもって、俺はあの女に逃げられて少々ご立腹だ・・・だからさぁ、楽には殺さねぇぞ!!』
そう叫びハレルヤはシールドの中央からニードルを出した。
そのままゆっくりとティエレンのコクピットに近づける。
確か名前はGNシールドニードル。
シールドに隠された武器だけれど、今使って良いのだろうか。
『どーよ?一方的な暴力に、為す術もなく命をすり減らしていく気分は!?』
きっともうティエレンのコックピットに到達しているだろう。
相手のパイロットが恐怖に狂う声が聞こえる。
『うわあぁぁ!やめてくれ!やめてくれええぇっ!!』
『そいつは命乞いってやつだな』
気分が良さそうにハレルヤが言う。
はそのままミカエルをゆっくりと動かす。
『最後はなんだ?ママか?恋人か?今ごろ走馬灯で子どもの頃からやり直しの最中か!?』
((やめろ・・・ハレルヤ・・・))
アレルヤの声が響いた。
きっと自分の鏡となるハレルヤの行動に耐え切れずに声を出したのだろう。
アレルヤは優しいから。
だが、ハレルヤは『あ?』と声をあげて、おいおい、と続けた。
『待てよアレルヤ、今良いところなんだから』
((やめてくれ・・・!))
『何言ってんだよ、お前ができないから俺がやってやってんだろう?』
((やめるんだ・・・!!))
アレルヤは必死にハレルヤに訴える。
((も、見ているんだ・・・!))
『んなの関係無ぇだろ』
((ハレルヤ!!))
ゆっくりとミカエルで近付きながら、二人の話を聞く。
あまりにも何度も訴えてくるアレルヤに折れたのか、ハレルヤが『ああ、そうかい』と声をあげる。
『わかったよアレルヤ・・・。まったく、お前にゃ叶わねぇよ』
そうハレルヤが言った瞬間、アレルヤの気配が和らいだ気がした。
直後、
『・・・なんてな!』
ズブリ、とニードルがティエレンのコクピットを貫いた。
アレルヤの気配が一気に硬くなった気がした。
そんな彼とは対照的に、ハハハッ!と嬉しそうにハレルヤが笑う。
『楽しいよな!アレルヤ!アレルヤァ!!』
大破したティエレンは爆発を起こして消え去った。
キュリオスに十分接近してから、ミカエルのコクピットを開ける。
はそのままミカエルを蹴って、宇宙へ出てキュリオスへ向かって飛ぶ。
キュリオスのコクピットに取り付いて、そのまま体をくっつけた。
キュリオスに寄り添いながら「アレルヤ、ハレルヤ」と彼らの名を呼ぶ。
そうすると、コクピットがゆっくりと開いた。
体を動かしてキュリオスのコクピットへ入ると、そこにはハレルヤが居た。
彼は上機嫌な様子で「よぉ」と言って片手を上げた。
「結構なショーだっただろ?」
「ハレルヤ、」
そのままコクピットに座るハレルヤの首に両手を回す。
ぎゅう、と彼を抱き締める。
「・・・何だよ、怖かったのか?」
そういやお前捕まりそうになってたんだったな。
なんてどうでも良さそうに言う。
・・・けれど、私の背に片手を回してくれて、優しく叩いてくれる。
「・・・私の為に怒ってくれたの?」
「・・・途中からちょっと忘れてた気もするけどな」
金の瞳を少し彷徨わせながら言うハレルヤに、思わず笑みがこぼれる。
「アレルヤも聞いて。大丈夫だから」
((・・・・・・))
アレルヤの声が響いてくる。
((何故だ・・・何故なんだ、ハレルヤ・・・どうしてそんなに人を殺したがる・・・?
それが僕の本質だとでも言うのか・・・もしそうなら、僕は・・・人でなしだ・・・!!))
「アレルヤも、ハレルヤも、根本は一緒かもね」
そう言うと、両肩を掴まれてばっと離された。
顔を見てみると、悲しげに細められた銀の瞳が見えた。
ああ、アレルヤだ。
「・・・僕も、本当は殺したいのかもしれない・・・」
「ううん、分かるよ。アレルヤは人を殺したくなんてない」
今度は私がアレルヤの背を軽く叩いてあげる。
「ハレルヤだってきっとそう」
ハレルヤも本当は優しいから。
素直じゃないだけ。
「理由がある。ハレルヤは、人を殺す理由が」
「・・・理由があれば、殺していいのか・・・」
そう言うアレルヤに、は小さく微笑んだ。
「きっと初めてガンダムを操縦したから嬉しくってはしゃいじゃったんだよ」
「そんな・・・」
「ハレルヤ、無邪気だから」
見てて分かるよ。なんて言うと頭に不服そうな声が響いた。
((良い度胸じゃねぇか))
「本当の事だもん。・・・アレルヤ、だから大丈夫。ハレルヤは私の為に戦ってくれただけなんだから」
ちょっとやりすぎちゃっただけ。
アレルヤとを苦しめた相手に苛立って、殺したいほどに思ってくれたんだ。
だから、
「アレルヤ、大丈夫、」
「・・・うっ・・・、・・・!!」
ぎゅうぎゅうとに抱きついてきて、アレルヤは泣いた。
書けなかったけど「声が聞こえる、そうだ、この声は・・・」ってアレルヤがマリー思い出しかけたところで
そうさせないために出てきたハレルヤさん。伏線すぎたんだよ気付くかバーロ(笑)
スペエディは分かってて殺す気満々なハレルヤに噴いた。