きらり、と指の間に挟まれた金のリングが月明かりを浴びて輝いた。

気紛れの我が儘で言った言葉を沙慈は覚えていてくれて、一生懸命アルバイトをして買ってくれた。

凄く、嬉しい。 凄く嬉しかった。

それはルイスの本心だった。

だが、スローネドライの襲撃の際に負った傷は、外面も内面もまだ癒えていなかった。
再生治療も、出来ないと言われた左腕。

肘から下が、無い。

パパとママも、居ない。

そう思うと、涙が流れた。

残っている右腕を動かし、シーツを握り締める。
嗚咽を殺して涙を流すルイスを照らす月明かりが、一瞬消えた。

それに反応して思わず其方を見ると、窓際にいつの間にか人影があった。
ルイスは一瞬肩を揺らし、「だ、誰?」と細い声を零す。

カーテンの間から現れたそれを、月明かりが照らした。

見えた姿に、ルイスは瞳を丸くする。


「あ、貴女・・・! !」


どうして此処に!?
そう問うルイスには苦笑を返した。


「沙慈君に、聞いて」

「沙慈に・・・」

「怪我して、入院してるって聞いて」


はルイスのベッドの端に腰を下ろした。
その際に、ふわりと金の髪が舞う。

それをぼんやりと見詰めながら、ルイスは口を開く。


「来てくれて、ありがとう・・・」

「うん、面会時間過ぎてて、窓から入っちゃったけどね」


ルイスの様子だけでも見たかったから。
そう言うの優しさに、ルイスはまた泣きたくなった。

ルイスの親族の半数以上は亡くなってしまったらしかった。
生き残った人も居るが、未だに意識不明の人も居たり、ルイスより重症な人も居た。
それに、ルイスの両親も、亡くなってしまったらしい。

は顔をあげ、天井を仰いだ。
その際にまた金の髪が重力に従って流れ落ちる。


「・・・これ、良い義手のセンセの連絡先」

「・・・義手?」


ルイスにメモの書かれた紙を手渡す。
それを受け取ったルイスは小首を傾げる。

再生治療が出来ない事は知ってる。

スローネの使用している擬似太陽炉には細胞障害を引き起こす粒子も含まれているらしい。
それのせいで、ルイスもルイスの親族も苦しんでいる事をは知っていた。

はルイスの右手をぎゅ、と握って、それに額をくっ付けた。
突然のの行動に、ルイスは不思議そうな表情をする。


「・・・?」

「・・・ごめんね、ルイス」

「え?」


どうしてが謝るの?
そう言い小首を傾げるルイス。

は何も言わずゆっくりと立ち上がり、再度窓へ向かう。


「・・・守れなくって、ごめんね。今度こそは私、ちゃんとやるから」

「・・・え?」

「行ってくるね」


はそう言い、月明かりに照らされる中、美しく微笑んだ。

そのまま窓から姿を消した――。










ミカエルに戻って、届いていたデータを見る。
ヨハンがこの前言っていた通り、ユニオンのアイリス社を襲撃したらしい。
その際に、800名以上が死亡したそうだった。

端末を見てみると、ヨハンから通信と、メールが入っていた。
メールにはアイリス社を襲撃した事。
フラッグにより負傷し、ビームサーベルを奪われた事。
そして、自分は民間人を殺さない様に極力努力をした事。

恐らくミハエルとネーナが民間人に構わず攻撃を繰り返したのだろう。

はそう思いながら、メールをヨハンに送った。


「・・・ごめんね、ヨハン」


ミカエルを機動させ、移動をする。


「私、どうしてもネーナ・トリニティを許す事が出来ないみたい」


民間人も巻き込んで、しかも今回は800名以上が死亡。
これでは無差別のテロそのものだった。

そうしていると、端末に通信が入った。
メールを見たせいか、ヨハンから直ぐに来たそれを、は受け答えた。


!どういう事だ!』

「言った通り。私は貴方を信頼できても、どうしても貴方の妹にそうする事が出来ないの」


それに、貴方たちの上に居る人物もね。
そう言い、は素早くミカエルを移動させる。


「貴方はこのままで良いの?」

『・・・私は・・・』

「私は許せない・・・そんなやり方、もっと戦いを広げてしまうだけ!」


いくら悪者ぶれたって、こんなやり方じゃ個人的に許せない!

世界は確かに、共通の敵を持つ事で手を取り合い、平和への道を進む。
けど、どうしてもは個人的にトリニティのやり方が気に入らなかった。

それに、このままではガンダムが世界を支配するべき物になってしまう。

意味を全く理解しないで戦う彼らも、は許せなかった。


「ガンダムは、ただの兵器ではないのよ」


俺がガンダムだ。
そう刹那は言った。
最初こそ意味が分からなかったけれど、今ならは理解が出来ていた。

無意味な殺戮を行う事は、ガンダムマイスターのする事ではない。

マイスターは、ガンダムを使用し、世界を変える為に動く者。

武力介入の意味も、全て理解して行ってこそ意味がある。

は前を真っ直ぐに見据えながら言う。
「貴方たちは、」と言い、視界に小さく見えてきたトリニティの機体を見据える。


ガンダムではない!


誰かの声と重なった。

ミカエルがビームライフルを放った逆の方向から、別の粒子ビームが同時にトリニティを襲った。
GNソード・ライフルモードで構えているエクシアが見えた。

それと同時にトリニティの三人の焦った声が聞こえる。


『ガンダム・・・ガンダムエクシア!』


ヨハンの声が響く。
海上すれすれを飛行していたエクシアはそのまま上昇し、GNソードでスローネドライに切りかかる。
が、それをスローネツヴァイが防いだ。


『てめぇ!何しやがる!?』


妹のネーナを庇ったスローネツヴァイからミハエルの声が響く。
エクシアの攻撃を受けながら、言う彼に、ネーナも続く。


『あたしら味方よ!』


ネーナの言葉に、刹那は「違う!」と即答をした。
え、と短い声を上げる彼らに、エクシアはGNソードを振るう。


『お前たちが・・・!』


ぶん、と振るわれたGNソードをスローネツヴァイが大きな剣、GNバスターソードでそれを受け止める。


『その機体が・・・!』


何度も何度も攻防を繰り返す中、刹那の声が響く。


『ガンダムで・・・あるものかっ!』

「・・・そう、彼の言う通り!」


がそう言い空中で唖然としていたスローネドライに切りかかる。
ビームサーベルを振るったミカエルの攻撃を受け止めたのは、スローネアインのビームサーベルだった。
火花が散る中、ネーナの「ヨハン兄!」という声が響く。


『くっ・・・!何故だ、!何故我々に攻撃をしかける!』

「さっきも言ったでしょ!私はネーナ・トリニティを許せないって!」


あたし・・・?
という細い声が響く。
は力強くレバーを握りながら、言葉を続ける。


「それにね、戦う意思も無い人間に、世界を変える事なんて出来ないのよ!」

『戦う・・・意思・・・!』


ヨハンがグレーの瞳を見開く。
彼は瞳を細めた後に、の名を呼んだ。


『我々は・・・戦争根絶の為に・・・!』

「それって何のために、誰のために? 自分の意思を持たないまま、戦うんじゃないわよ!」


私は違う!

私はみんなを守るために、みんなが笑って暮らせる世界を作るために戦う!


の心の中で、想いがはっきりとなった。

彼女の言葉にヨハンは動揺したのか、スローネアインが鍔迫り合いに押し負ける。
空中で体勢を崩したスローネアインを、ミカエルは蹴り飛ばす。


『ぐあっ!』

『ヨハン兄!』


「余所見とは、余裕ね!」


スローネアインを蹴った際にMA型に変形したミカエルのグリフォン2ビームブレイドで、スローネドライに襲い掛かる。
咄嗟に動いたのか、ドライは下降してそれをなんとかかわした。

反対では、エクシアとスローネツヴァイが戦闘を続行していた。
応戦するスローネツヴァイのGNファングを、エクシアはGNダガーで対応をする。
GNファングを破壊し、次々と襲い掛かるそれを今度はビームサーベルで落としていく。

まだあるんだよォ!と言い、スローネツヴァイから二基GNファングが放たれる。
が、それはエクシアに届く前に高濃度圧縮粒子により砕け散った。

今の砲撃は、

ネーナの機体にGNビームライフルで追撃をかけながら、が反応をする。
『援軍!?』という焦ったヨハンの声も響いた。

そこに現れた機体は、ガンダムヴァーチェ。

ティエリアが援軍に来たのだ。

刹那が「ティエリア・アーデ・・・?」と彼の名を呼ぶ。
通信の繋がっているヴァーチェは、真っ直ぐに此方へ向かってくる。


『ヴァーチェ、目標を破壊する!』










「エクシアとミカエルがスローネと戦っている!?」


宇宙にあるプトレマイオスのブリッジに、スメラギの声が響いた。
クリスティナがパネルを操作しながら口を開く。


「たった今、ヴァーチェも交戦に加わった模様」

「ティエリアまで・・・」


クリスティナの言葉にスメラギが驚きの声を漏らす。
壁に寄りかかっていたイアンは腕を組み、「しかしな、」と言う。


「ガンダム同士で戦うだなんて、下手すりゃ共倒れだぞ」

「良いじゃねぇか、おやっさん」


そうッスよ。
と、ラッセに同意の声をあげた者はリヒテンダールだった。


「トリニティのやり方、ムカつきますよ」


それにラッセも頷く。
イアンも頭をかきながら、それ以上は何も言わなかった。

クリスティナはポケットから端末を取り出し、以前ヨハンと撮った写真データを開く。
そして、直ぐにそれを削除する操作を手早くして、溜め息を零した。


「良い男だったのに・・・」


再度ふぅ、と溜め息を零すクリスティナ。
次に口を開いたのは、アレルヤだった。


「しかし、彼らの行動が計画の一部である可能性も・・・」

「私たちがこうして動く事も、計画に入っているかもしれないわ」


ふ、と口の端を少しだけ上げて言うスメラギにアレルヤは小さく息を吐いた。
「スメラギさん・・・」と彼女の名を呼んだ時、フェルトが声をあげた。


「ロックオン・ストラトスから緊急暗号通信。指示を求めています」

「出来る事なら戦いを止めてと伝えて。ただし、現場の状況によっては自身の判断を尊重すると」


スメラギの指示にフェルトは返事をし、手早く通信を送る。
その指示に、全員が肩を落として思わず笑みを零した。

まったく、と言ってリヒテンダールが続けた。


「実質、好きにしろって事じゃないですか」

「戦術予報士の名が泣くぜ?」

「・・・ホント、そうよね」


目をゆっくりと閉じてスメラギはそう言った。
その後に、クリスティナが「アレルヤは?」と言いアレルヤを見やる。

出撃する?
そう問う彼女は、の事も案じているようだった。
気付いたアレルヤは小さく首を振った。


「・・・此処でプトレマイオスを守るよ」


こうなった以上、此処も安全じゃない。
そう言うアレルヤにクリスティナは「でも、」と言い淀む。


が心配じゃないの?」

「刹那もティエリアも居るんだから、大丈夫さ」


アレルヤはそう言って苦笑をした。
と、言っても。と、彼は続ける。


「出て行きたい気持ちは燻ぶっているけどね」


ね、ハレルヤ。
そうアレルヤは心の中で呟いた。










『フォーメーションS32』


ティエリアの言葉に刹那が短く、了解と返す。
ヴァーチェがエクシアの前に出て、GNフィールドを展開する。
スローネ三機はビーム攻撃をしかけてくるが、GNフィールドがそれを弾く。


『GNフィールドか!』


ヨハンの焦り声が響く。
ヴァーチェとエクシアに気を取られている内に、ミカエルのビームライフルで狙い撃つ。
スローネドライに当たり、バランスを崩したところにエクシアがGNソードで斬りかかる。

寸での所でスローネドライはそれを避け、スローネツヴァイがフォローに入る。
スローネツヴァイのGNバスターソードを軽やかに避けたエクシア。
そこでヴァーチェのGNバズーカが放たれる。

スローネツヴァイはそれを避けるが、ティエリアは余裕な笑みを浮かべていた。


『まさか君と共に、フォーメーションを使う日が来ようとは思ってもみなかった』

『俺もだ』



次はフォーメーションD07だ。
ティエリアの冷静な声が響く。

エクシアとヴァーチェのフォーメーションを進んで使う二人。
はそんな彼らを横目で見つつ、GNビームサーベルを抜いてスローネドライに襲い掛かる。

スローネアインとスローネドライがドッキングをしようと動く。
それにいち早く対応したのは、サポートに回っていたミカエルだった。


「甘いわよ!」

『そんな時間が、与えてもらえると思っているのか!』


ヴァーチェも動いてGNビームサーベルで二機に襲い掛かる。
ドッキングが出来なかった二機はそのまま其々に応戦をする。


『その機動性では!』


スローネアインがヴァーチェに襲い掛かる。
素早い動きで襲い掛かるが、ヴァーチェにはまだ手があった。


ナドレ!


今度は自らの手でヴァーチェの装甲をパージし、ガンダムナドレの姿になる。
パージされた装甲が、そのままスローネアイン、スローネドライの二機に当たる。

そのままナドレが輝きを放つ。


『何だ?機体の制御が・・・!』

『システムダウン!?』



驚くヨハンとネーナの声が響く。
制御を失った二機はそのまま真下にあった島へ落ちて行った。


『ヴェーダとリンクする機体を全て制御下に置く』


ティエリアの声が響く。
通信モニターに映るティエリアの瞳は、眩い金色の光を放っていた。


『これがガンダムナドレの真の能力。
 ティエリア・アーデにのみ与えられたガンダムマイスターへのトライアルシステム!』


「トライアル・・・システム・・・」


ヴェーダとリンクしている機体を制御下に置く。
つまりは対ガンダム戦の為に作られた、ナドレのシステム。

ヨハンとネーナは物凄い衝撃を受けただろうが、きっと生きてはいる。
あの機体にも、ショックアブソーバーがコクピット周辺に着いているだろうから。


『兄貴!ネーナ!』


ミハエルが奥で焦りの声を上げるが、エクシアとの戦いに手が取られている。
ナドレはGNビームサーベルを抜き、真っ直ぐに二機を見下ろした。


『君たちはガンダムマイスターに相応しくない』


そうとも。
そう言いティエリアはGNビームサーベルを振りかぶり、身動きの取れない二機に斬りかかった。


万死に値する!!


真っ直ぐスローネアインに向けて振り下ろされる。

決まった。

そう誰もが思った瞬間、ナドレから輝きが失われた。
トライアルシステムが解除されたようだった。


『トライアルシステムが強制解除された!?一体何が・・・っ!』


ティエリアの不安げな声が響いた。
彼はそこまで言い、ネーナがヴェーダのターミナルユニットに侵入していた事を思い出す。


『やはりヴェーダは・・・!』


制御を取り戻したスローネアインはそのまま横へ飛んでナドレの攻撃をかわした。
そのまま空中へスローネドライ、アインは飛び上がるが、そこでミカエルが追撃をかける。


「ヨハンッ!」

『くっ! か!』


ビームサーベル同士がぶつかり合い、火花を散らす。
通信モニターに、ヨハンの焦った表情が映った。


『君には戦う意思があるというのか!』


造られた存在である君が!
そう言うヨハンには少しだけ瞳を細めた。


「私は人の温もりを知った。そして自分が人であって良いと思えた!」

『人の、温もり・・・』

「それを教えてくれた人たちのために・・・新しくできた大切な人を守るために!
 みんなが笑って暮らせる世界を作るために戦う!」


の言葉にヨハンが瞳を見開いた。
直後、ネーナの声が響いた。


『ヨハン兄!』

「・・・ネーナ・トリニティ・・・!」


ミカエルの背後からGNハンドガンを放つスローネドライ。
は舌打ちを一つするとそれをかわした。

追撃しようとしたスローネドライとミカエルの間に粒子ビームが放たれた。


『またガンダム!?』

『デュナメスか・・・!』



距離を置いたスローネ二機から声が漏れる。
遠距離からGNスナイパーライフルを構えている緑の機体が近付いてきた。


『これで4対3だ。さて、どうする?』


ミカエルの背後で再度それを構えて、ロックオンが口を開く。
それにミハエルが「やってやんよ!」といきり立つが、ヨハンがそれを諌めた。


『ミハエル、ネーナ。後退するぞ』

『そりゃねぇぜ兄貴!』



どうして?とネーナもミハエルに続く。
不満げに言うミハエルとネーナに、ヨハンは答える。


『ガンダム同士で潰し合えば計画に支障が出る』

『ちぇっ、わかったよ』



スローネツヴァイとエクシアが距離を取ってそれぞれの味方の方へ戻る。
デュナメスの銃口を彼らに向けながらロックオンが、逃げんのかい?と言う。


『君は私たちより先に戦うべき相手が居る』


そうだろう?
そう言いヨハンはデュナメスを見据えた。


『ロックオン・ストラトス・・・否、ニール・ディランディ』

!! 貴様!俺のデータを!!』



ロックオンが銃口をスローネアインに真っ直ぐに向けた。
刹那がヨハンが言った言葉に反応し、声を漏らす。


『ニール・・・ディランディ・・・?』

『ヴェーダを通じて閲覧させて貰った』



冷め切った声色でヨハンは言った。
先ほどの感情的なものとは違い、それは冷たいものだった。

レベル7の情報を!と、ティエリアが苦々しげに零した。


『ロックオン。君がガンダムマイスターになってまで復讐を遂げたい者の一人は、君のすぐ傍に居るぞ』


ロックオンがガンダムマイスターになった理由は、復讐のため?
はそう思いながら、彼らの話に耳を傾けた。

何だと!?と驚きの声をロックオンはあげた。


『クルジス共和国の反政府ゲリラ組織KPSA。その構成員の中に、ソラン・イブラヒムが居た』

『誰だよそいつは!?』

『ソラン・イブラヒム・・・コードネームは刹那・F・セイエイ』



刹那だと!?
ロックオンが驚きの声を上げて刹那を見やる。
刹那も瞳を大きく見開いていて、驚いているようだった。


『そうだ。彼は君の両親と妹を殺した組織の一員・・・君の敵というべき存在だ』


ヨハンの言葉に刹那は何も反論をしなかった。
そして、とヨハンは言葉を続けた。


『君の嫌う無差別大量殺人をした人物がそこに居る』


無差別大量殺人。
無差別テロと変わらないそれにロックオンはまた反応する。

その単語にはびくりと体を震わせた。


「・・・ぁ、」


脳裏に浮かんだものは、燃えるベルリンの市街の風景。


・ルーシェ。生体CPUである君はエクステンデッドと称される強化人間らしいな』


私のデータまで、
はそう思いながら、瞳を揺らした。


『常人間が体内に持たない物質が採取されている事から様々な改良が君にはされていたのだろう・・・』

「・・・あ・・・、」

『精神状態も安定せず、感情の高ぶりもあるそうじゃないか。実際君は、戦闘時にはまるで』

い、嫌!!違う!!


私は、戦いを楽しんでなんか無い!!
はそう言い思わず首を振る。

が、ヨハンの言葉は止まらなかった。


『彼女は巨大MSに乗り、何の布告も無しに街を焼き払った』

『な、なんだって・・・!?』



ロックオンの声が聞こえた。
は目を強く閉じて、コクピットの中で自分を抱き締めるように腕を回していた。

体はガタガタと震えている。


、私と共に行こう。彼らではやはり君と対等にはなれない』

「・・・や、嫌・・・私、私・・・!」


スローネアインが手を差し伸べる。
それは真っ直ぐにミカエルに向けられていた。


『君を受け入れない者が居るというのに、それでも彼らを守ると言うのか君は!』

「・・・ヨハン・・・!あなたは、自分が戦う意味を・・・!」

『分かってきた気がする・・・』


まだ、靄がかかっていて酷く曖昧だが。
ヨハンはそう言い、己の拳を握り締めた。

真っ直ぐに通信モニターに映るを見詰める。


『まだ、分からないが・・・、君が居れば分かりそうな気がする・・・!』


だから私と共に来い!
ヨハンはそう言った。

彼が自分の気持ちを真っ直ぐに口にした瞬間だった。

は瞳を細め、小さく首を振った。


「・・・出来ないよ・・・、私たちと貴方たちのやり方は、違うんだから・・・」

『・・・・・・』


ヨハンが悲しげに瞳を細めた。

そこで、ネーナが声をあげる。


『ヨハン兄!』

『・・・仕方ない・・・撤退だ・・・』



スローネツヴァイ、ドライ、アインの順で飛び立っていく。

それを見送りながら、はヨハンから貰った端末を胸に抱いた。


「ごめんね・・・ヨハン・・・私・・・私っ・・・!!」


そのまま膝を折り、はそこに顔を埋めた。




爆弾落として去っていくトリニティ。