・ルーシェ。生体CPUである君はエクステンデットと称される強化人間らしいな』


ヨハン・トリニティが言った言葉が刹那の頭から離れなかった。


『常人が体内に持たない物質が採取されている事から様々な改良が君にはされていたのだろう・・・。
 精神状態も安定せず、感情の高ぶりもあるそうじゃないか。実際君は、戦闘時にはまるで、』

い、嫌!!違う!!



私は、戦いを楽しんでなんか無い!!
悲痛な叫びをはあげた。


『彼女は巨大MSに乗り、何の布告も無しに街を焼き払った』


まさか、と思った。
刹那の知っているは、戦いを恐れながらも皆を守る為に戦う、心優しい少女だ。
それなのに、宣戦布告も無しに巨大MSで街を焼き払ったとは、刹那には信じがたい話だった。



否、刹那のみではなくロックオンもティエリアも同意権だろう。



そんな事を考えながら、刹那は下にあった島へエクシアを着陸させた。
他にデュナメス、ミカエル、ナドレと続いて着陸をする。

ワイヤーを使用してエクシアから出る。
そのまま刹那はミカエルへと視線を移した。

ミカエルのハッチが開かれ、がのろのろとした動きで出てきた。
そのまま彼女もワイヤーを使用してミカエルから降り立つ。


「場所が何だ。話すならあっちに行こうぜ」


指で島の中の方を指しながら言ったロックオンに、刹那は頷いた。
歩き出したロックオンに続き、刹那が歩く。
その後ろではとティエリアが並んで歩いていた。


「・・・・ルーシェ。先ほどのヨハン・トリニティの話は真実か」


ティエリアの問いには小さく頷いただけだった。
不安げに空色の瞳は揺れていて、震える手には薄い青のハンカチが握られていた。


「君がそうするとは信じ難い話だな」

「・・・私は外見は皆と同じ」


でも、改造された人間だよ。
はそう言った。

人は見かけによらない、という事だろうか。
ティエリアはそう思いながら赤い瞳を細めた。

予めヴェーダにあるデータを閲覧していたティエリアはの事を知っていた。

別世界からの来訪者。

そして、改造された人間。

通常のエクステンデッドたちとは少し違い、ナノマシンや別の細胞等も投入されていたらしく、アレルヤたちと同じような脳量子波が使える。
普通の人間が体内に持たない物質を持っている為に、彼女の体を調べて、行き続けられるように王留美が生成させた薬を飲んでいることも。
精神操作等を中心として強化されたため、好戦的でありながら高い判断力と作戦遂行能力がある。
一度の戦闘の後はリラックスをする時間が必要ともあるが、とティエリアは考える。

先ほどトリニティと戦闘をした後だからか、は体を震わせているし、目もどこか虚ろだ。
ティエリアは一歩彼女に近付き、肩を貸してやることにした。


「おい、大丈夫か」

「・・・・・・」


ティエリアの言葉には小さく頷いた。
そんな彼女に、ティエリアは思わず瞳を少しだけ細めた。

普段の明るい様子がすっかり無くなってしまったに、刹那も視線をよこした。
どことなく顔色も酷く悪い気がする。

そんなを気にかけながらも、刹那は前に居るロックオンを見た。


「本当なのか・・・刹那」


川辺の横にある開けたところで、ロックオンがそう言い振り返った。
真っ直ぐに刹那を見詰める彼の瞳は、いつものものとは違い、冷めたものだった。


「お前はKPSAに所属していたのか?」


ロックオンの問いかけに、刹那は「ああ」と答えて頷いた。


「クルジスの出身か?」


刹那は再度「ああ」と言い頷く。
二人のやり取りを見つつ、ティエリアは近くにあった木にの背を預ける。
彼女を座らせつつ、ティエリアは考える。


(
・・・ゲリラの少年兵、)


KPSA・・・クルジス共和国反政府ゲリラ組織。
6年前のアザディスタンの侵攻によって壊滅したその組織は、AEUの機動エレベーター建設にも反対の姿勢を見せていた。
国外でも多くのテロ活動を行っていた。

そこに刹那が居た。

ティエリアは二人をじっと見据えた。


「ロックオン、トリニティが言っていた事は?」

「事実だよ。俺の両親と妹は、KPSAの自爆テロに巻き込まれて死亡した」


刹那の問いかけにロックオンは冷め切った声色でそう答えた。
そのまま、彼は続ける。


「全ての始まりは、太陽光発電計画に伴う世界規模での石油輸出規制が始まってからだ」


化石燃料に頼って生きるのはもうやめにしようってな。
そう言い、ロックオンは言葉を続ける。


「だが、一番割を食うのは中東諸国だ」


中東諸国、
そう思いながら、は虚ろな目を彼らに向けた。


「輸出規制で国が傾き、国民は貧困に喘ぐ・・・。 貧しき者は神に縋り、神の代弁者の言葉に耳を傾ける
 富や権力を求める浅ましい人間の声をな!」


苦しさから、頼るものを求める。
縋る対象は人それぞれ。

神に縋る。祈る。
だが、神の代弁者を名乗る人物は、その背後に必ず誰かが居る。

貧困に喘ぐ者たちの事は気にせず、自分の富や権力を求める上に立つ人間。

は瞳をうっすらと細め、小さく息を吐いた。


「そんでもって、20年以上にも及ぶ太陽光発電紛争の出来上がりってわけだ」


ロックオンはそう言い、呆れたように息を吐いた。


「神の土地に住む者たちの聖戦・・・自分勝手な理屈だ。 もちろん一方的に輸出規制を決議した国連もそうだ」


だが、神や宗教が悪いわけじゃない。

太陽光発電システムだってそう。
ロックオンはそう言った。

頭では全てを理解している。
心から神を信じている人々も居る。
太陽光発電のシステムが出来たからこそ、幸せになった人も居る。

だが、良い事尽くめという訳ではない。

全てを理解しているからこそ、ロックオンは苦しんでいるのだろう。

ロックオンは苦々しげに瞳を細め、「けどな、」と言った。


「どうしてもその中で世界は歪む・・・それくらい分かってる・・・」


分かっている。
ロックオンは緑の瞳を揺らしながら、刹那を再度見据えた。


「お前がKPSAに利用されていた事も、望まない戦いを続けていた事もな」


何が正しいのか、分からないままに戦い続けてきた刹那。
6年前といったら、刹那はまだ10歳を過ぎた頃だったはずだ。
そんなに小さい頃から、武器を持ち、戦わされてきた。


「だが、その歪みに巻き込まれ、俺は家族を失った!!」


失ったんだよ・・・!
悲しげな、声色でロックオンはそうぽつりと零した。


「だからマイスターになることを受け入れたのか?」


ティエリアの問いかけにロックオンは「ああ、そうだ」と答えた。


「矛盾している事も分かっている。
 俺がしている事はテロと同じだ。暴力の連鎖を断ち切らず、戦う方を選んだ」


やったらやり返す。
それにまたやり返す。

止まらない連鎖を、どうやって断ち切るべきか。

誰かが受け止めないといけないのか。
強い心を持つ、誰かが。

どうやって?

は荒い呼吸を繰り返しながら、震える手を合わせ、ゆっくりと瞳を閉じた。


「だがそれは、あんな悲劇を二度と起こさない為にも、この世界を根本的に変える必要があるからだ。
 世界の抑止力となり得る圧倒的な力があれば・・・」


圧倒的な力。
ティエリアが「ガンダム、」と呟いた。
それにロックオンは小さく頷き、瞳を閉じた。


「人を殺め続けた罰は、世界を変えてから受けるさ。 だが、その前にやる事がある」


そう言い、開かれた瞳は憎悪の色に染まっていた。
ロックオンはその手に銃を持ち、ゆっくりとそれをあげた。

銃口は、真っ直ぐに刹那に向けられている。

突然のロックオンの行動に、ティエリアが焦った声をあげる。


「ロックオン!」

「刹那、俺は今、無性にお前を狙い撃ちたい。 家族の敵を討たせろ。恨みを晴らさせろ」


今までに無いほどの殺気。
ロックオンがそんな瞳で刹那を見る事も、今までに無かった。

の脳裏に、刹那とロックオンの普段の会話が浮かんだ。
聞かん坊め、と言って刹那の頭を撫でくりまわすロックオンの表情は、酷く穏やかなものだった。
刹那も、触るなと言って彼の手を振り払っていたが、そこまで拒絶をしている様子も無かった。

そんな二人が、

そう思いながら、は瞳を細めた。


「・・・ロックオン・・・、」


引き金が、引かれる。

銃声が静かな森の中に響いた。
その音に驚き、鳥たちが飛び立っていく。

は瞳を閉じる事無く、真っ直ぐに彼らを見据えていた。

はらり、と刹那の漆黒の髪が地面へ落ちる。
ロックオンの放った銃弾は、刹那の髪を掠っただけだった。

閉じていた瞳を開き、刹那は地面を見ていた。


「俺は、神を信じていた」


信じ込まされていた。
そう言う刹那にロックオンは銃口を向けながら言う。


「だから俺は悪くないってか?」


苛立ちを含んだ声に、刹那は答えずに顔をあげ、ロックオンを見据えた。


「この世界に、神は居ない」


刹那の脳裏に、自らの手で殺めた母親が浮かぶ。
やめて、ソラン!
そう言う母親に、無情にも引き金を引いたのは自分自身だ。

そうするように、言われたから。


「・・・この世界に神は居ない」

「答えになってねぇぞ!」

「神を信じ、神が居ない事を知った・・・あの男がそうした」


刹那の言葉に苛立ち、銃を強く握っていたロックオンが彼の言葉に反応する。
「あの男・・・?」そう零すロックオンに、刹那は頷いた。


「KPSAのリーダー、アリー・アル・サーシェス」

「アリー・アル・・・」

「サーシェス?」


ティエリアとロックオンが続けて言う。
刹那は深紅色の瞳を細めた。


「奴はモラリアでPMCに所属していた」

「民間軍事会社に?」

「ゲリラの次は傭兵か!ただの戦争中毒じゃねぇか!」

「モラリアの戦場で、俺は奴とと出会った」


モラリア、とはぼんやりする頭で考えた。
刹那が急にエクシアのコクピットから降りた時だ。

ティエリアが赤い瞳を大きく開き、「そうか!」と言う。


「あのときコクピットから降りたのは・・・!」

「奴の存在を確かめたかった」


だから、お互いに降りたんだ。
はそう思い、ゆっくりと瞳を伏せた。


「奴の神がどこに居るか知りたかった・・・! もし、奴の中に神が居ないとしたら・・・俺は、今まで・・・!」

「刹那・・・」


のか細い声が響く。
ロックオンは少しだけに視線をやった後、また刹那を見据えた。


「刹那!これだけは聞かせろ。お前はエクシアで何をする?」

「戦争の根絶!」

「俺が撃てば出来なくなるぞ」


ロックオンがそう言い、照準を合わせる。
刹那は顔を逸らさず、真っ直ぐにロックオンを見据える。


「構わない。代わりにお前がやってくれれば」


この歪んだ世界を変えてくれ。
刹那は心からそう思っているようだった。


「だが、生きているなら俺は戦う。
 ソラン・イブラヒムとしてではなく、ソレスタルビーイングのガンダムマイスター、刹那・F・セイエイとして!」

「ガンダムに乗ってか?」

「そうだ」


ロックオンの問いかけに刹那が頷いた。
深紅色の瞳で真っ直ぐにロックオンを見詰め、はっきりとそう言った。


「俺が・・・ガンダムだ!」


刹那の言葉に、辺りに静寂が響いた。
ロックオンは瞳を閉じ、「ハッ」と鼻で笑った。


「アホらしくて撃つ気にもなんねぇよ」


そう言い銃を降ろした。

きっと一度抱いた念は消える事は無い。
ロックオンが刹那に抱いた憎悪は。

刹那の意思で無いにしろ、例え刹那がした事では無いにしろ、KPSAに居たという事はロックオンにとっては大きな事だろう。
しかし、組織の一員として、今までの刹那も傍でずっと見てきた彼だからこそ、持っている感情もあるはずだ。
は安堵の息を吐きながら、瞳を細めた。


「まったく、お前ぇはとんでもねぇガンダム馬鹿だな」

「ありがとう」

「お?」


褒めた訳でも無いのに刹那にそう言われ、ロックオンは瞳を丸くする。


「最高の褒め言葉だ」


微笑んで言う刹那に、ロックオンとティエリアは呆気に取られた様子を見せ、黙りこくった。
が、すぐにロックオンが声をあげて笑い出した。


「これが・・・人間か」


ティエリアはそう言い、少しだけ微笑んだ。
それを間近で見ていたも、力ないながらも笑みを零す。

とうとう腹に手を当ててまで笑うロックオンは、笑いのせいか、目の端に涙を溜めていた。

良かった。
はそう思いながら体の力を抜いた。

その瞬間、バランスが崩れて彼女の体は地面に倒れた。
直ぐに三人は気付き、「!」と言いティエリアが抱き起こした。

刹那とロックオンも近付いてきて、膝を折って彼女の様子を伺う。

浅く呼吸を繰り返す彼女の顔色は、酷く悪かった。
ティエリアが彼女の頬に手を当て、名を呼ぶ間、ロックオンは先ほどの言葉を思い出していた。





『君の嫌う無差別大量殺人をした人物がそこに居る』





無差別大量殺人。
無差別テロと変わらないそれを、こんなに儚げな少女が?





・ルーシェ。生体CPUである君はエクステンデッドと称される強化人間らしいな。
 常人間が体内に持たない物質が採取されている事から様々な改良が君にはされていたのだろう・・・』






生体CPU。
エクステンデッド。
分からない言葉ばかりだったが、ロックオンはただ一つだけを理解した。





『彼女は巨大MSに乗り、何の布告も無しに街を焼き払った』





ぐったりとしている、この少女が、





『・・・戦いは、いつだって怖い』

『・・・やだ、ついてく。ロックオンたちと、一緒がいい』





あんなに戦いを恐れていた少女が、無差別大量殺戮を行った事。

ロックオンは眉を潜め、手を伸ばした。
そっと彼女の頬に触れると、うっすらと開いていた瞳がロックオンに向けられた。


、」

「・・・ロ、ックオン・・・」

「分かってるよ、俺は」


分かってる。の事を。
そう言いながらロックオンは優しい笑みを浮かべた。

そんな彼にも力ない笑みを返した。

刹那がそこで口を開く。


「・・・、調子が悪いのか・・・?」

「・・・く、薬があれば・・・大丈夫・・・」

「薬?」


刹那が眉を潜めた。
のデータを見て知っていたティエリアが直ぐに動き出した。


「精神安定剤か?」

「なんか、色々入ってるやつ・・・」


分かった。と、ティエリアは言って刹那にを預けて立ち上がった。
そのままミカエルに向かって駆けていく。

を任された刹那は、彼女を抱え直し、見下ろした。

酷く顔色が悪い。
体も微かに震えている。

は震える両手で、自身の顔を覆った。


「・・・や、見たくない・・・見たくないの・・・!」

・・・?」


急に首を振って動揺した様子を見せるに、思わず刹那がそう声をかける。
が、既にには聞こえていないようで、彼女はそのままくしゃりと自身の髪も握った。


「やだ・・・捨てないで・・・!私、ちゃんとやるから・・・!」

「お、おい!!」

「いやだぁ!」


急に顔を覆っていた手を振り回した。
それは彼女を抱き上げていた刹那の頬に当たり、思わず彼もバランスを崩した。
その際に刹那の手から離れた彼女は、地面に肘をついていた。

ロックオンが慌てて「刹那!」と彼を気遣う。


「問題無い・・・それより、は・・・」


刹那とロックオンがを見る。
彼女は地面に膝を着いて、両手で顔を覆っていた。





『そうだな。が守ってくれないと、怖い敵が来て、俺もステラもみんな殺されちまう』





頭にネオの言葉が響く。


「わ、私がやらないと・・・私がやらないと・・・!」





『だから、は怖い敵を倒さないといけない』





「だ、だから、私、やったのに・・・!」


そこまで言った所で、は頭を抑えた。
酷く頭痛がする。

痛い、痛い!

はその場で思わず悲鳴を上げた。


いやあああああああ!!!

「おい、!」


ロックオンがの肩を思わず掴む。





『気を付けろ!!そいつはフリーダムだ!手強いぞ!』





の頭にはベルリン市街での戦闘の思い出が蘇る。
翼を持つガンダム、フリーダムが向かってくる。


あのガンダムは、私を―――、


や、いやあああ!来る、敵が来る!!

「落ち着けって!此処には敵は居ない!」

いや!!



腕を振り回してロックオンを振り払い、頭を抑えてその場に蹲った。
刹那は立ち上がり、に駆け寄る。

丁度そこに、ティエリアがミカエルから薬を持って帰ってきた。


「何があったんです!?」

「分からねぇ、急にこうなっちまって・・・」


ロックオンに問いかけたが、彼も分からない状態だった。
ティエリアは赤い瞳を揺らし、を見た。

刹那が蹲るの前に回り、両肩に手を置く。


、大丈夫だ」

「や・・・来る・・・敵が・・・みんなを殺しに・・・!」

「・・・!」

「私も・・・!」


フリーダムのビームサーベルが、デストロイに突き刺さって、

私も・・・!

そう思いは瞳を大きく見開く。
刹那は強くの肩を掴み、再度呼びかけた。


!大丈夫だ!俺たちも、お前も!」
!大丈夫だ!ステラもネオも無事だから!』

「・・・え?」


刹那の言葉がの耳に届く。
ふっと体の力を抜いて、怖々といった様子では顔を上げた。

そして、真っ直ぐに刹那の深紅の瞳を見た。


「・・・死なない?」


舌足らずな喋り方ではそう言った。
刹那は強く頷き、「大丈夫だ」と返す。


「お前には俺たちが居る。アレルヤだって居るじゃないか」


その名を出した途端、の表情が再度曇った。


「いや・・・アレルヤは、だめ・・・いやなの・・・」

「え?」


思わずティエリアとロックオンが声をあげる。
普段からずっと一緒に居る二人。
とアレルヤはお互いを想い合っているものだと思っていた彼らにとって、その一言は意外なものだった。


「アレルヤ、だめ・・・私は代わり・・・だから、だめ・・・!」

「代わり・・・?」

「だから、だめなの・・・!!」


「だったら、」と言い刹那はの髪をぎこちない動きで撫でた。
ロックオンがよくしている行為。
これをすると、落ち着くはずだ。そう思って故の行動だった。


「俺が、お前を守ってやる」

「・・・え」


刹那は頷いた。


「お前は皆を守れ。その背は、俺とエクシアが守ってやる」
『約束しただろ・・・みんなを守るを、俺が守るって!!』


の空色の瞳が、みるみる大きく開かれていく。


「ガンダムで、お前を守る」
『俺が君を守るから!!』


は大きく瞳を見開いた。
そしてそのまま、表情をくしゃりと歪ませると、崩れるように刹那に抱きついた。
突然の事にバランスを崩した刹那は、そのまま尻餅をつく。

そのまま、どうしていいかが分からずに両手を地面につけたまま困惑する刹那に、ロックオンが笑みを零した。


「背でも撫でてやれって」

「あ、ああ」


ロックオンに言われたまま、恐る恐るといった様子での背を撫でる。
落ち着いた様子のに、ティエリアは安堵の息を吐いた。




重なる深紅。