「ごくろうさま」


そう言いスメラギはパネルに突っ伏して眠るクリスティナとフェルトにブランケットをかける。


「二人共、ありがとうね」


そう言い微笑んだスメラギ。
が、直ぐに表情を引き締めた。
ディスプレイにあるものが表示されたからだ。

STAND-ALONE OPERATION SYSTEM

別ウィンドウも高速で開き、敵機の位置が表示される。


「敵襲!?ここまでEセンサーに反応しないとなると・・・」


パネルを自らの手で操作するスメラギに気付き、クリスティナとフェルトが目を覚ました。
目を擦りながらクリスティナが「スメラギさん、」と言う。


「何が・・・?」

「二人共!ノーマルスーツに着替えて!」


スメラギはそう言いながら動き出す。
フェルトとクリスティナも頷き、直ぐに行動に移った。

ノーマルスーツに着替えた面々がブリッジの所定の位置につく。
先に来たラッセとリヒテンダールがパネルを操作する。

たちマイスターはそれぞれのガンダムに搭乗していた。


『総員、第1種戦闘準備!敵部隊は擬似太陽炉搭載型19機と断定!』

19機!?



刹那の驚きの声が通信越しに聞こえる。
はこくり、と喉を鳴らしてメットを被った。

薬は飲んだ。

今回はまだイエローハロのサポートはつかないが、きっと大丈夫。

そう思いながらレバーを握る。


『既に相手はこちらを捕捉しているわ!』

『こっちのお株を!』

『ガンダム五機はコンテナから緊急発進!フォーメーションS34で迎撃!』



スメラギの指示が通った後に、フェルトとクリスティナがブリッジに戻ったようだった。
其々ノーマルスーツに身をつつみ、所定の位置につく。


『敵部隊、0130まで接近!』

『不意を突いたつもりでしょうけど』

『コンテナハッチ、オープン』

『ガンダム、出撃します!』



フェルトとクリスティナの言葉と同時に、コンテナのハッチが開く。
其々のマイスターが発進する事を述べている。

も習い、ミカエルを発進させた。


『各機、フォーメーションS34!油断すんなよ!』


ロックオンから通信が入る。
彼の言葉に刹那、ティエリア、アレルヤ、が「了解」と返す。


フォーメーションを組み、前方から迫り来るGN−Xに構える。
は瞳を細めた。


「・・・同型機だろうが、何だろうが・・・!」


ぐ、とレバーを握る手に力を込める。
はそのまま前方へ出る。

フォーメーションS34はミカエルが前面に出るものだ。

GN−Xがビームライフルを放つ。
其れを避け、はビームサーベルを振るう。

GN−Xとのビームサーベル同士の鍔迫り合いが続く。
そこにミカエルを狙い、別のGN−Xからビーム攻撃が放たれる。
が、ヴァーチェが割って入り、GNフィールドでそれを防いだ。

が、二発目のビームがGNフィールドを破ってヴァーチェに襲い掛かる。


『フィールドを抜けてきた!?こちらの粒子圧縮率が読まれているのか!?』


ティエリアの焦りの声が響く。
狙われたヴァーチェは今度は敵の攻撃を回避した。

飛行型に変形したキュリオスがビームライフルを撃つ。
が、GN−Xは素早く身をかわした。


『は、速い!』

『狙い撃つぜ!』



デュナメスがGN−Xを狙撃するが、掠るだけだった。


『掠っただけかよ!?』


ロックオンが焦りの声を上げる。
GN−Xが横一列に隊列し、一斉に撃ってくる。

GN−Xが二機エクシアに突っ込んでいった。

素早い動きでビームライフルを放つGN−Xに、GNソードライフルとGNバルカンで応戦をする。
ビームサーベルを抜いて二機がまたエクシアに突撃する。
はミカエルを反転させ、一機をひきつけた。

ショートブレイドを飛ばされ、エクシアが後退する。
そのままビームダガーを放つがGN−Xに切り払われる。


『やる! !』

「分かってる!」


刹那のフォローに回ろうとするが、真横から別のGN−Xが襲い掛かった。
ミカエルがビームライフルの攻撃をまともにくらい、体勢を崩す。


「きゃあっ!」




直ぐにアレルヤが援護に入った事もあり、ミカエルは直ぐに体制を立て直せた。

しかし直後、後方で隊列を組んだGN−X隊が一気に襲いかかってきた。
GNフルシールドを展開し、デュナメスは防御体勢をとった。


『カイヒポイントナシ!カイヒポイントナシ!』

『くっ・・・!』



ロックオンの苦しげな声が通信越しに聞こえた。
キュリオスもMS型に変形し、シールドで防御体勢に入る。


『僕らの滅びは計画に入っているというのか!?』

『そんな事が!』



アレルヤの言葉に反論したティエリアが、GNキャノンを放つ。
前に出ていたGN−Xの左腕と右足を其々破壊した。


『まだまだ!』


突撃してくるGN−X一機に次はGNバズーカを向ける。
も敵の攻撃が緩んだ隙を見逃さずに、アレルヤの前に出て敵を狙おうとした。

が、直後、一瞬にして機内が真っ暗になった。

機体制御を失い、ガンダムが動きを停止する。


「ヴェーダからのバックアップが!?」

『システムエラー!システムエラー!』

「嘘だろ!?」

『システムエラー!システムエラー!』


ティエリアとロックオンが各々の機体の中で焦りの声を上げる。


「やはり、僕らは・・・」

「どうしたんだ!?エクシア!!」


アレルヤは暗くなったキュリオスの中で声を震わせた。
刹那は何度もレバーを動かすが、エクシアは動かない。

動けない状態で、敵が放っておく筈が無い。


「ガンダム!!・・・ぐっ!」


エクシアにビームが直撃する。

ぐ、とは歯を食いしばった。
キュリオスの前に丁度出ていたミカエルも、輝きを失い、動く事が出来ずにいた。


「僕らは、裁きを受けようとしている・・・」

「冗談じゃねぇ!まだなにもしてねぇぞ!」


各々の機体の中で声をあげる。
真っ暗になったミカエルのコクピットの中で、サニアは脳量子波を通じてアレルヤの声を感じていた。


「・・・アレルヤの声が聞こえる」


各々が機体の中で声を発する中、は瞳を揺らがせた。


「裁きを受ける・・・?それは今じゃないはずだよ・・・!」

「・・・・・・?」


がちゃがちゃとレバーを動かしても、ミカエルは動かない。


「貴方はこんな所で死ぬべきじゃない!貴方は、まだ何も理解出来てない!!」


アレルヤを守りたい、みんなを守りたい!
その一心ではレバーをがむしゃらに動かし続けた。

GNバズーカを構えたまま、ヴァーチェは止まっていた。
その中ではティエリアが緋色の瞳を不安げに揺るがせていた。


「僕は、ヴェーダに見捨てられたのか・・・?」


エクシアの中では刹那が唖然としていた。


「同じだ・・・あの時と・・・!エクシアに乗っているのに、ガンダムにもなれず!俺は・・・!」


プトレマイオスブリッジではクリスティナが焦りの声をあげていた。


「ガンダム、システムダウン!ヴェーダからの介入です!」

「予定通り、こちらのシステムに変更!」

「了解!」


スメラギの指示に従い、フェルトとクリスティナがパネルを操作する。

動けないガンダムに、GN−Xが迫ってくる。


「ここまでなのか・・・? 俺の、命は・・・」





『もう、いいのよ、ソラン』





刹那の頭に、またマリナの言葉が蘇る。





『もう、いいのよ』





柔らかく微笑むマリナには、とても温かいものを感じた。
思わず縋りたくなるような彼女の慈愛に満ちた瞳に、刹那は心を揺らがせた。

もう、いい?


「違う・・・!」


刹那は顔をあげ、ぐ、と強くレバーを握った。


「違う!俺はまだ生きている!生きているんだ!!」


生きている!

まだ、ここに居る!!


動けエクシア!動いてくれぇ!ガンダアァァムッ!!


刹那がそう叫んだ時と同時に、システム変更が処理された。
ガンダムの瞳の部分が輝き、各機がシステムを取り戻す。


『システムが!』

『いけるぞ!』



アレルヤとロックオンの声が響く。
直ぐに動いたのは、ミカエルだった。

すぐさまキュリオスに向かっていたGN−Xへ体当たりをした後に蹴りを入れる。
!』とアレルヤの歓喜の声が響く。

そんな中、


っ・・・! ティエリア!


焦ったようなロックオンの声が響いた。
其方を見ると、停止したままのヴァーチェが見えた。

他の四機はシステムの入れ替えが出来たというのに。


『スメラギさん!ヴァーチェのシステム変更にエラーが!』


どうして!?
と、焦ったクリスティナの声が響く。


『お願い、間に合って!』


GNソードでGN−Xを迎撃するエクシア。
キュリオスとデュナメスは動けないヴァーチェを守るように前に出た。


『どうした、ティエリア!?』


ロックオンがティエリアに呼びかけるが、彼からの応答は無かった。
ヴァーチェの異変に気付いた様子のGN−Xが攻撃をしかける。
ロックオンがそれに対応する為に動き出す。
デュナメスの放ったミサイルはGN−Xに命中したが、左手を破壊したのみだった。

次にGNスナイパーライフルを構えるが、相手の放ったビームライフルによって砲身を破壊されてしまう。

エクシアは別のGN−X部隊に応戦している。
キュリオスも別方向からヴァーチェを狙うGN−Xで手一杯だった。

は舌打ちを一つし、GNビームライフルを放つ。


「手強い奴ばかり!」


デュナメスを狙うGN−Xにも撃ち、相手の気を此方にひきつける。
GNビームピストルを出したデュナメスも応戦するが、キュリオスと共にGN−Xからの集中攻撃をくらっている。
避け、防御する事でヴァーチェに気が回らなくなっている。

はアレルヤ、ティエリア、ロックオンの事を想いながら思い切りレバーを倒した。

獣型にミカエルを変形させ、傍に居たGN−Xを踏み倒す。
そのままグリフォン2ビームブレイドを広げ、突撃砲を放ちながらヴァーチェを狙うGN−Xを倒していく。

が、物凄い速さでヴァーチェに向かうGN−Xが一機。

ビームサーベルを抜いたそれは、無抵抗のヴァーチェに容赦なく迫る。

デュナメスの攻撃も気にせず突撃するそれに舌打ちをし、ロックオンは機体を動かした。
援護に動いたデュナメスにアレルヤが「ロックオン!?」と声を上げるが、キュリオスが今度は被弾をする。

この距離ではデュナメスとヴァーチェの援護に入れない。

瞬時にそう悟ったはそのまま砲撃を放ち、アレルヤを狙うGN−Xに斬りかかった。


「アレルヤから・・・離れろぉ!」


MA状態のまま体当たりをし、砲撃を零距離で当てる。
半壊したGN−Xにとどめを刺そうとした瞬間、


ティエリア!!

!!


ロックオンの叫び。
ティエリアに何が、と考え思わず其方を見てしまう。

目に入ったものは、ヴァーチェを守るように、間に割って入ってGNフルシールドを展開するデュナメス。

GN−Xの突き出したビームサーベルは、デュナメスのGNフルシールドを突き破った。
その光景と、次に響いたロックオンの悲鳴には一気に冷水をかけられたような感覚に陥った。


ぐあああああああああああっ!!!

ロックオン!!


GN−Xが腕を振るい、デュナメスを切り払う。
払われたデュナメスの目の部位には輝きは無く、無重力に流されるままだった。


『ロックオン!』


それを見てか、ティエリアの悲痛な叫びが響く。
アレルヤも『ロックオン!』と彼を案じる声をあげる。

ティエリアが動揺の声をあげている。

そんな彼に追い討ちをかけるように、GN−Xがまたビームサーベルを振るう。
いけない!
咄嗟にそう思ったはビームライフルを連射した。
それはGN−Xのビームサーベルに命中し、破壊する事に成功した。

が、先ほどがとどめを刺し損ねたGN−Xが背後からミカエルに迫った。


!!

!! あ、」


短い声をあげる事しか出来なかった。
GN−Xのビームライフルをまともにくらい、ミカエルの手からGNビームライフルが離れた。
そこを狙うかのように、ビームサーベルが振り下ろされる。

やられる!

そう思った直後、目の前のGN−Xはどこかからか放たれたビームによって破壊された。


「援軍!?」


思わずそう言いビームが飛んできた方角を見る。
其方から来たものは、青いMAだった。


『残量粒子は少ないが、いけよ!』

「ラッセさん!」


声を聞いて思わず笑みを零した。
GNアームズで援護にきてくれたラッセ。
彼はそのまま別のGN−Xを一機撃破した。

直後、打ち上げられた信号弾。
撤退の信号であろうそれに従い、GN−X部隊が下がっていく。

追う事はせず、は直ぐにデュナメスの方に移動をする。
もし、コクピットにまでビームサーベルが届いていたら、
万一の事を考えるとぞっとする。


『全員、無事か?』

『デュナメス、ソンショウ!デュナメス、ソンショウ!』



ラッセの言葉に答えたものはハロだった。
『何!?』と驚きの声をあげるラッセにまたハロが答える。


『ロックオン、フショウ!ロックオン、フショウ!』


ロックオンが!?
と、刹那が焦る声も響く。

ミカエルがデュナメスに寄り添うようになり、プトレマイオスへ向かいゆっくりと移動をする。
負傷、とハロは言っていたのなら、生きているはずだ。
出来る限り急いであげたい気持ちもあったが、無理に動かす事もできない。
コンテナが開いた事を確認し、デュナメスを収容させる。


『そんな・・・!?僕を庇って・・・!』


ロックオン・ストラトス・・・!!
ティエリアの悲痛な叫びが、響いた。










ヴァーチェはエクシアとキュリオスが運んでてくれた様だった。
GNアームズは強襲用コンテナとドッキングを済ませた様で、ラッセもプトレマイオスへ乗り込む。

はデュナメスを運び、収容した後、ミカエルも収容し、飛び降りた。
直ぐにデュナメスに取り付いてロックオンの救助作業に加勢をする。

カッターを使う!
と、イアンが言いデュナメスのGNフルシールドの穴の開いた部分を広げる。
中々上手く進まないそれに焦れたが「どいてください!」とイアンを押しのける。

邪魔なメットを取り払い、はそのまま穴の開いた部分に体をすべり込ませた。
突然の彼女の行動にイアンは「お、おい!」と慌てた声をあげる。
入り口の方では駆けつけたドクター・モレノと他のマイスターたちがいた。

は亀裂に手を差し入れ、力を込めて広げる。


「・・・こ、のぉ!!」


ガコン!という大きな音と共にコクピットに繋がる邪魔な壁が外れた。

半重力の中、舞っていたものは赤、

は瞳を震わせ、「ロックオン!」と思わず叫んだ。


『ロックオン、ロックオン』


手を伸ばし、ロックオンの体に負担がかからないように脇の下に手を入れる。
そのまま、座席を蹴ってロックオンを先に外へ出す。


「早くメディカルルームへ!」

「よくやった!」


ドクター・モレノが受け取り、担架にロックオンの体を横たわらせる。
そのまま誰かと一緒に運んでいった。

はハロを取り上げ、そのまま外へ向けて投げた。
ハロもロックオンが心配なのか、そのまま格納庫から出て行った。

思わず大きく息を吐いた。

自分もデュナメスのコクピットから出ようとしたが、上手く力が入らなかった。
あれ、と思いは自分の掌を見下ろす。

かたかたと震えるそれは、赤で染まっていた。


「・・・あ、」


ロックオンの、血、

コクピット内を漂うそれはの頬やパイロットスーツにもついていた。

彼が大きな怪我を負った証拠でもあるそれは、


「あ、ああ・・・!」


コクピット、血、迫る刃、

そう、自分はコクピットを攻撃されて死んだ。

ロックオンは?

ロックオンも、まさか―――、


!」


真上から手が伸びてきて、の手を掴んだ。
そのまま引き上げられた彼女の目の前には、アレルヤが立っていた。

彼は安堵の息を吐くと、の腕を引いた。


「ロックオンは、きっと大丈夫だよ。ドクター・モレノも居るんだし、再生治療器具も此処には揃ってる」

「・・・あ、う、うん・・・」


そうだよね、きっと、大丈夫。
そう自分に言い聞かせるようにアレルヤは言った。

アレルヤはそのままを見下ろし、苦笑をした。


「シャワー浴びて、着替えた頃には、丁度良く治療も終わると思う」


だから、少し落ち着いて。
そう言われ、はくしゃりと自分の前髪を握った。
もう片方の手は頬に当てられ、真っ赤な指の跡を頬に残す。


「・・・血、血が、いっぱいだった・・・!」

「・・・、」

「私、コクピットの中は逃げ場が無いって知ってる・・・!」


きっと、ロックオン、怖かったと思うのに、
ふるり、と肩を震わせた
アレルヤはそんな彼女の肩を抱き、地を蹴った。




私のトラウマ回。