『残念だったなイオリア・シュヘンベルグ!
 世界を統合し、人類を新たな時代へと誘う、この私・・・今を生きる人間だ!』


高笑いをした後に言うアレハンドロ。
しかしそれも、飛んできたビーム攻撃により止まった。
強襲用コンテナも倒した、エクシアも倒した。
そう思っていたが、攻撃をしかけてきたそれは、


『なっ何!?あっ、あれは・・・エクシア!』


トランザムを発動したエクシアが、真っ直ぐに向かってきていた。
イオリアのシステムか!と言いアレハンドロは迎撃の態勢を取る。


「見つけた・・・」


この男が、今までの元凶、

何、とアレハンドロが言う。


「見つけたぞ、世界の歪みを!貴様が・・・お前がその元凶だ!!」


トリニティも、こいつが裏で手を回していた。
刹那は深紅色の目を細め、ビーム攻撃を放つ。


『再生は既に始まっている!まだ破壊を続けるか!』


無論だ!
そう答えながら刹那はアルヴァロンの攻撃を避ける。
巨大MAアルヴァトーレから出てきた金色のMS、アルヴァロン。

それはGNフィールドを展開し、攻撃を防ぐ。


「GNフィールド・・・!」


奥歯を噛んだ刹那。
その時、ある事が脳裏を過ぎる。





『刹那、何故エクシアに実体剣が装備されているか分かるか?』


あれはエクシアが自分の手に渡った時の事。


『GNフィールドに対抗するためだ。計画の中には、対ガンダム戦も入っているのさ』


一番最初に話をしてくれたのは、彼だった。


『もしものときはお前が切り札になる・・・任せたぜ、刹那』


そう言い、彼は刹那の肩を軽く叩いた。





分かっている、ロックオン・・・俺は戦うことしか出来ない破壊者だ


だから戦う!


「争いを生むものを倒す為に!この歪みを破壊する!」


刹那はそう言いながら、下から回り込む。
正面からGNブレイドで攻撃をすると、GNフィールドとぶつかり合う。

GNフィールドを付き抜け、アルヴァロンの左腕に突き刺さる。


「武力による戦争根絶!」


ビームサーベルを振るおうとするアルヴァロン。
が、GNショートブレイドを肩に突き刺したままにし、GNロングブレイドを抜く勢いでそれを防いだ。


「それこそがソレスタルビーイング!」


その際、GNロングブレイドがアルヴァロンの背後の羽の部分に命中する。
GNフィールド展開の役目を担っていたそれが破損した事により、GNフィールドが消えうせた。

右腕に突き刺さったままのGNロングブレイドをそのままにし、素早くビームダガーを投げる。
放った二つは、アルヴァロンの胸部に突き刺さった。


「ガンダムがそれを成す!」


更にまたGNダガーを突き刺す。


「俺と、共に!」


そうだ!
そう言い刹那はGNソードを構える。


「俺が!!」


そのまま上部から一気にGNソードを振り下ろした。


「俺たちが、ガンダムだ!!」


最後に一撃を与えた後、GNソードを収容したエクシア。

アルヴァロンが大爆発を起こした直後、トランザム限界時間がきた。
高機動な戦闘により、肩で息をする刹那。

が、息を吐く暇も無く、敵機の反応を探知した。


「まだ居るのか!?」


それとほぼ同時に、後方から味方機を知らせる反応も起こる。
刹那はモニターに映し出された其々に瞳を大きくした。


「フラッグ!擬似太陽炉を!?」


映った一方は、擬似太陽炉を搭載したGNフラッグ。
もう一つは、同じソレスタルビーイングのガンダム。


「ミカエルだと!?・・・この損傷は・・・!」


右側の脚部と左腕が無い。
それに、コクピット付近も酷い損傷だった。

も怪我をしているかもしれない、と彼女を案じた瞬間。
フラッグが肩部に擬似太陽炉が装着され、抜き出したそれで斬りかかって来た。

咄嗟に刹那はGNソードで其れを受け止める。


「ビームサーベル!?」

『ハワードとダリルの敵、討たせてもらうぞ!このGNフラッグで!』


通信を?
刹那がそう言った瞬間、目の前のモニターに映像通信が出てきた。
そこに映った人物に見覚えがあり、刹那は瞳を大きくした。


「貴様は!」


アザディスタンで一度会った事があった。
相手も気付いたのか、若草色の瞳を大きくする。


『何と、あのときの少年か!?
 やはり私と君は、運命の赤い糸で結ばれていたようだ』



突然何を、と思う刹那だったが、眼前の男は「そうだ、」と言い瞳を鋭くさせた。


『戦う運命にあった!!』


勢いのままに振るわれたビームサーベルにより、エクシアの左腕が飛ぶ。
トランザム後のせいで出力が落ちているエクシアが吹き飛ばされる。
その真横を、半壊したミカエルが通る。


 ミカエルが!」


ミカエルはそのまま振り下ろされたフラッグのビームサーベルを受け止める。
突然の介入に男は驚いたのか、声を上げる。
が、すぐにそれは歓喜のものとなった。


『見目麗しい獣姿には、今日はならないのかな!?』

『っう!』



刹那の耳にの短い声が聞こえた。
やはり、彼女はどこかを怪我している。
それに、そんな機体状況で勝てる相手では無いだろう。

それを悟った刹那はフラッグに押されつつもビームサーベルで応戦するミカエルの援護に入る。

GNソードで斬りかかると、フラッグは直ぐに刹那の方へ向かってきた。


『ようやく理解した。君の圧倒的な性能に私は心奪われた・・・』


ガンダムの性能に、心を奪われた者。


『この気持ち・・・正しく愛だ!!


「愛!?」と思わず刹那が返す。
男の言っている意味が分からない刹那は眉を潜める。


『だが、愛を超越すれば、それは憎しみとなる!行き過ぎた信仰が内紛を誘発するように!』

「それが分かっていながら、何故戦う!?」


刹那の脳裏に、今の世界の情勢が浮かぶ。
声を荒げ、一度ビームサーベルを薙ぎ払った後に機体を回転させ、勢いのままにGNソードを振るった。
それはフラッグの右足を切断したが、相手は怯まずに向かってくる。


『軍人に戦いの意味を問うとは!ナンセンスだな!』


咄嗟に防ごうとするが、フラッグのビームサーベルがエクシアの頭部に突き刺さった。
そのままエクシアの頭部ユニットが、吹き飛んだ。


「貴様は歪んでいる!」


仕返しとばかりにエクシアのGNソードがフラッグの頭部を切断する。


『そうしたのは君だ!』


フラッグが拳を握り、思い切りそれをエクシアのコクピットのある腹部に当てる。
物凄い衝撃に刹那が苦しげなこえを上げる。


『ガンダムという存在だ!』


殴った後に次は蹴りを回す。
吹き飛ばされつつも、エクシアはGNバルカンを放つが、フラッグは其れを避けつつ接近してくる。



『だから私は君を倒す!・・・世界等どうでも良い・・・己の意思で!

貴様だって、世界の一部だろうに!


刹那が叫ぶ。





エクシアに押しやられたミカエルの中で、は瞳を震わせていた。

聞き覚えのある声。

それのせいで酷く心が揺らぎ動揺もしたが、何時までもこうして唖然としている訳にはいかない。


はぐ、と強くレバーを握ると、ずっと黙っていたイエローハロをちらりと見た。


『ならばそれは、世界の声だ!』

『違う!貴様は自分のエゴを押し通しているだけだ! 貴様のその歪み、この俺が断ち切る!』



エクシアもGNソードを構え、真っ直ぐにフラッグに向かう。


『よく言ったガンダム!』


互いに一歩も譲らない。
そんな二人に、は表情を歪ませた。

ぐ、レバーを握り、居ても立っても居られずにミカエルを動かした。


「刹那・・・!グラハム・・・!」


直後、エクシアとフラッグのビームサーベルとGNソードが其々の胸部に突き刺さる。
接近したはミカエルで直ぐに双方を突き放した。
エクシアに体当たりをして、片手で押す。
スパークする二機に挟まれ、フラッグの方へ体が回る。


繋がれたままの通信モニターに刹那の顔が映る。
がん、だむ、と呟いた刹那は瞳をうっすらと開いた。

モニター越しに、真っ直ぐに此方に手を伸ばしてくる。


・・・、』


そこで、通信はぷつりと途切れた。
エクシアは小爆発を繰り返しながら、宇宙空間を流れていく。

残されたミカエルは、もう既に動ける状況では無かった。
先ほどからスパークをしたままのミカエル。
は痛む体を叱咤し、意識を保つ。

そうしていると、同じようにスパークをするフラッグから、驚きの声が聞こえてきた。


『き、君は・・・、』

「・・・グラ、ハム・・・」


ノイズ交じりの通信から聞こえるグラハムの声。
は小さく笑うと、モニターに手をついて立ち上がった。
突然の彼女の行動にイエローハロが『、』と名を呼ぶ。


「ハロ、太陽炉を、トレミーに戻しておいて」


気丈にも微笑んでみせながら、はイエローハロの頭を撫でた。


「大丈夫、私は絶対戻るから」

、ロックオン』

「大丈夫だってば」


私は死なないから。
そう言いながらは宇宙空間へ体を出す。

イエローハロに手を振りながら、は背にあるバックパックの噴射機を展開させる。
そのまま、スパークを起こしているフラッグへ向かう。


「私は、絶対に死なないで戻ってくる。約束・・・したから」


だから、またね。

はそう言い目を点滅させるイエローハロに手を振った。

とん、と体がフラッグの体にぶつかる。
傷付いているコクピット付近になんとか取り付いて、隙間に体を滑らせる。
破損した部分が腕や足を傷つけるが、は気にせずに手を伸ばした。


「グラ、ハム・・・!」

「う・・・、ほ、本当に、君なのか・・・?」


、とグラハムの唇が動いた。
そんな彼には手を伸ばし、彼の手を握った。


「・・・ずっと、探していたのに、」


まさか宇宙に居たなんて、
そう言うグラハムは、両手を伸ばしてを抱き締めた。


「ああ、君だ・・・君なんだな・・・」


ぎゅう、と抱き締めてくるグラハム。
はそのまま彼に腕を回したまま、宇宙空間へ再度出ようとする。

意識が既になくなってきているのか、グラハムは何事かを呟いている。


「ハワード・・・ダリル・・・仇は・・・、」

「・・・グラハム、」


兎に角、今にも爆発しそうなフラッグから離れなければ。
そう思いながらフラッグを蹴った瞬間、小爆発が起こった。

まずい!

と、思った時には遅く、フラッグは大きく爆発を起こした。


「グラハム!!」


はグラハムを庇おうとしたが、逆に強く抱え込まれた。
思わず声を上げるが、どうする事も出来なかった。




















強襲用コンテナでは、ナドレからGNドライブが飛ばされている事を確認していた。
フェルトがそう告げると、スメラギが「ティエリア、」と彼の名を呟く。


「位置を割り出して・・・回収に向かいます」


スメラギの言葉にフェルトとイアンは「了解」と返した。










マリナ・・・イスマイール


刹那はエクシアの中で完全に意識を失っていた。
端末を使用して送っていたメール。

刹那が唯一手紙を残した相手、アザディスタン王国の皇女、マリナ・イスマイールは王宮の自室で其れを読んでいた。


《貴女がこれを読んでいる時、俺はもうこの世には・・・。
 武力による戦争の根絶。
 ソレスタルビーイングが、戦う事しか出来ない俺に、戦う意味を教えてくれた。
 あの時のガンダムのように》


刹那が街中で偶然にも出会った人物。

武力による解決ではなく、話し合いから、分かり合う事から解決していきたいと刹那に言った彼女。


《俺は知りたかった。
 何故、世界はこうもゆ歪んでいるのか。
 その歪みは、どこから来ているのか》


世界で人々は今も動いている。

怪我をした人物に寄り添ったり、これからの世界についてを考えたり、一時の休息に身を委ねたり。


《人には何故、無意識の悪意というものがあるのか。
 何故、その悪意に気付こうとしないのか。
 何故、人生すら狂わせる存在があるのか。
 何故、人は支配し、支配されるのか。
 何故、傷つけ合うのか。
 なのに何故、人はこうも・・・生きようとするのか》


マリナは端末を動かして、刹那のメールを真剣に読んでいた。


《俺は、求めていた。
 貴女に会えば、答えてくれると考えた。
 俺と同じ道で、俺と違うものを求める貴女なら。
 人と人がわかり合える道を。
 その答えを…》



最後まで読んで、マリナは端末を胸に抱いた。


「・・・刹那、」


彼を想い、マリナはその頬を濡らした。


《お俺は、求め続けていたんだ。ガンダムと共に》




















4年の歳月が流れ、A.D.2312となった。


《ルイス、久しぶりにメールを出します。
 君から返事が来なくなって、もう2年が経ちました。
 でも、どうしても伝えたい事があったから 、
 僕、今年から宇宙で働くことになったんだ 。
 悲しい事がたくさんあったけど 、でも、小さな夢を、ひとつだけ叶えたよ。
 だから、もうひとつの夢をかなえさせて欲しい。
 待ってるよ、ルイス。
 宇宙で待ってるから 》


沙慈・クロスロードは、4年前に別れたきりとなってしまったルイス・ハレヴィへメールを出していた。
コロニー表面で作業をしながら、宇宙から彼女が居るであろう地球を見詰めていた時、


「あっ、あれは」


沙慈はそう言い、ある物に気付いて声を上げた。
それに気付いた同僚たちが沙慈に続く。


「ありゃあ、GN粒子の光か?どこの機体だ?」

「あれは、連邦のものじゃない・・・」


そう言う沙慈に同僚の男が「え」と声を上げる。


「粒子の色が違うよ」


連邦のGN粒子の光は、赤色だから。
そう言う沙慈に同僚の男はまじまじと光を見詰め、「確かに・・・」と言う。


あの光・・・そう、あの光はガンダム・・・!


沙慈はそう思いながら瞳を細めた。





連邦議会の、連邦事務総長の演説が、テレビ報道されていた。


『国際連合が、地球連邦に改名して1年。
 我々は、連邦参加国全328カ国の賛同を得て、各国の軍隊を解体、一元化し、地球連邦平和維持軍として発足することをここに宣言します!!』


その言葉の直後に、拍手が沸く。
敬礼をする上級階級であろう人物の背後には、赤色が目立つようになったGN−X。


『すべての国の軍が無くなり、我が平和維持軍が世界唯一の軍隊となったと時、世界は真の統一を果たすことになるでしょう。
 その道標となるべく、我々はまい進していく所存です』





資源衛星基地では、イアンが王留美を迎え入れていた。


「ご足労だったなお嬢様」

「状況はいかがですか?」


ノーマルスーツを着た三人。
紅龍もイアンに導かれるままに進んだ。


「1機目はロールアウトした。今は実戦に向けてのテストに出払っている」

「他の機体は?」

「予定通り、順次ロールアウトする予定だ」

「よかったら見せて下さらない?第1世代の機体を」


「了解」と言いイアンがパネルを操作する。
すると、正面の隔壁が上昇し、ガンダムが現れた。
それを見て王留美は瞳を揺らがせた。


「これが、Oガンダム・・・!」


第1世代のガンダム。
名前はOガンダム。
初めて太陽炉を積んで稼動した機体である。


「太陽炉は取り外して、既に機体に装着してある。
 だが、こいつを使ってもマッチしなかった・・・」


エクシアの太陽炉でもうまくいくかどうか・・・。
イアンはそう言い頭をかいた。
そのまま王留美を誘導し、次の隔壁へ移る。

隔壁には、GN00 00GUNDAMと書かれていた。


「世界を変える機体・・・ダブルオーガンダム」


王留美はそう言い、嬉しそうに口の端を上げた。




1st終わりです。
次からは2ndの話になります。