「ビンゴだとは思うけど、一体どうするのよ」
灰色の瞳を細め、彼女はそう言った。
未だ未定だ、と冷めた声色で答えた男に彼女は小さく息を吐いた。
「どーするの?あの娘、きっと今も記憶を弄られてるわよ?」
薬も大分投与されてるみたいだし。
そう言い自分の赤色の髪の毛先を弄くる。
そのまま彼を見詰め、今度は男の金の髪の毛先を弄くる。
「・・・友だちが守りたかった娘、なんでしょ?」
「ああ。お前の想い人が殺してしまった相手でもある」
男の一言に女はぐ、と唇を噛む。
表情ひとつ変えない男から女は視線を逸らした。
「元からアロウズに入った理由はそれって訳ね」
小さくそう呟いた。
彼女は肩を竦めて見せて、「仕方ないわね」と言う。
「ついてきちゃったんだから仕方ないわよね」
「恩に着る」
素直に礼を述べた男に、女は嫌そうに瞳を細めた。
「ちょっと、」と言い退室しようとした男を引き止めた。
「言っておくけど、尻拭いとかじゃないわよ。アンタに手を貸すだけなんだからね」
「そういう事にしておこうか」
あんた、意外とうざい。
そう言う女に、男は微かに口の端を上げた。
「連邦軍独立治安維持部隊より、ソーマ・ピーリス中尉をお迎えに参りました」
「第5モビルスーツ中隊所属、アンドレイ・スミルノフ少尉です!」
・ルーシェ少尉です。
表情ひとつ変えずにアンドレイに続いて言った。
アンドレイと共に、はスミルノフ邸に訪れていた。
理由はソーマを迎えに。
玄関のドアを開けたセルゲイは、息子の姿に驚き、瞳を見開く。
「ア、アンドレイ・・・!いつアロウズに?」
「あなたにお答えする義務はありません。父さん・・・否、セルゲイ・スミルノフ大佐」
父さん?
と、ソーマが呟いた。
訝しげなソーマと、の視線が合う。
そこで改めてか、ソーマは金の瞳を見開いた。
「・・・お前・・・!」
「? ・ルーシェ少尉、です」
小首を傾げた後、はまた敬礼をする。
そんな彼女に、ソーマは眉を潜めた。
「何か?」と小首を傾げる。
ソーマは何か違和感を感じながら、の手を引いた。
突然の彼女の行動に、全員が驚く。
「少し、話をさせて下さい」
アンドレイとセルゲイに言うソーマ。
了承を得てから、ソーマは礼を言うとは私室へ引き込んだ。
ドアに鍵をかけてから、の両肩を掴む。
「ずっと脳量子波を感じなかった・・・!一体今までどこで何をしていたんだ!」
「どこで、なに?」
瞳を丸くしていただったが、ソーマの一言でふっと表情を曇らせた。
どこで、と再度繰り返し、虚ろな視線を彷徨わせた。
の様子に酷く違和感を感じ、ソーマは彼女の両肩をゆすった。
「おい、まさか・・・何も覚えていないのか・・・!?」
4年前の事も、
そう言うソーマ。
「4年前、」
4年前は、確か、ソレスタルビーイングと、地球連合軍の、戦い、
私も、どこかで、戦っていた、
―――どこで?
『』
「!!!!!」
誰かに名を呼ばれた気がした。
でも、それが一体誰の声なのか、全然分からない。
突然頭を抑えて膝をついたに、ソーマが驚く。
「どうした!?!!」
「うあ、あ、頭が・・・!痛いっ・・・!」
唇を噛んで耐えるの背を、ソーマが擦る。
おもむろにはポケットから薬のケースを取り出すと、それを口に含む。
種類がひとつではないそれにソーマは金の瞳を細めながら、水を手渡した。
は水を飲み、そのまま背を丸めた。
「・・・大丈夫か、・・・」
「・・・レルヤ・・・、」
「!」
ぽつりとはそう呟いて、体を傾かせた。
ソーマが慌てて彼女を支える。
は空色の瞳を苦しげに細め、呼吸を整えようとしていた。
「・・・う、」
は、忘れているのだろうか。
ソレスタルビーイングに所属し、ガンダムに乗っていた事を。
そう思いながらソーマはの短くなった髪を撫でた。
幾分か落ち着いたのか、呼吸が安定してきた。
「・・・また、戦わされているのか・・・お前は・・・」
今度は、アロウズに?
ソーマはそう思いながら、の肩を強く抱いた。
「何故刹那を撃たなかった?」
メディカルルームで落ち着いた後、沙慈は一室を与えられていた。
照明もつけずに、膝を抱える沙慈の下へ来た人物は、ティエリアだった。
問うたティエリアに、沙慈は視線を合わせずに言う。
「人を殺せば、君たちと同じになる。そんなのはごめんだ」
沙慈の言葉にティエリアは真紅の瞳を微かに細めた。
そして「刹那に感謝するといい」と言い、言葉を続けた。
「彼が君をここに連れてこなければ、君は反連邦勢力・・・カタロンとして処刑されていた」
「そんなこと!!」
「君は現実を知らな過ぎる。自分の居る世界ぐらい、自分の目で見たらどうだ?」
ティエリアにそう言われ、沙慈は思わず口を噤んだ。
そのまま視線を逸らし、先ほどレーゲンに言われた言葉を思い出していた。
あなたたちは何を考えているんですか!
と、言う沙慈を諌めたレーゲンは沙慈を嗜めると柔らかい笑みを向けた。
『君は、地球が好きか?』
自分の暮らしていた、あの星が。
地球が好きか、なんて聞かれた事が無かった。
急に言われたので、沙慈は思わずたじろいだ。
そんな反応が普通か。
そう言いレーゲンは笑い、考えておいてくれと言って沙慈の肩を軽く叩いた。
刹那は地球へ降下していた。
相手は既に呼び出しに応じているはずだ。
そう思いながら刹那は歩を進めた。
(世界は、未だに変わっていない)
争いが、また広がろうとしている。
ずっと昔、幼い頃に戦っていた頃から、何一つ変わっていない。
ソレスタルビーイングで再度戦う理由を見つけた刹那は、ある人物の下へ向かい歩いていた。
歩く道中で、先ほどティエリアから聞いた現状を思い出す。
『他のマイスターは?』
そう問うた刹那に、ティエリアは真紅の瞳を逸らした。
気まずげな彼の様子に、刹那は嫌な予感を覚えた。
『僕と君だけだ』
アレルヤとは、行方不明だ。
そう、ティエリアは沈んだ声色で言った。
先の戦いの後、最後にを見たのは刹那だと聞いた。
そんな彼もの行方を知らないと言う。
ティエリアはそれにも落胆の色を見せていた。
『・・・新たなマイスターになりうる人材に心当たりがある』
『・・・それは?』
ロックオンの抜けた穴を埋めるというのか。
半ば複雑な心境になりながらも、ティエリアは刹那を見た。
迎えに行くと言う刹那に、彼は「頼む」と力ない声色で言った。
曇り空の下、直ぐに呼び出した相手の姿を見つけ、深紅色の瞳を細めた。
近付いて来た刹那に気付いたらしい彼は、「ん」と言い火のついた煙草を指の先で揺らした。
「あんたか、俺を呼び出したのは」
緑色の瞳を向け、言う彼。
少々癖のある茶色の髪は、今は亡き彼を思い出させた。
彼と同じ顔つきの男を見返し、刹那は口を開いた。
「カタロン構成員、ライル・ディランディ・・・」
「! 保安局か!?」
警戒の色を見せた男、ライル・ディランディに刹那はまた一歩近付いた。
「お前を迎えに来た」
俺の名は、刹那・F・セイエイ。
名乗り上げ、真っ直ぐに彼を見詰める。
「ソレスタルビーイングのガンダムマイスターだ」
「・・・ソレスタルビーイング!?」
「そしてお前も、ガンダムマイスターとなる」
突然言われた言葉に動揺を隠せないライル。
だが、刹那は言葉を止めない。
「ライル・ディランディ・・・否、ロックオン・ストラトス」
刹那の言葉に、暫くライルは唖然としていたが、直ぐに「何なんだお前」と言葉を返した。
「人を呼び出しておいて、いきなりソレスタルビーイングだと?」
馬鹿馬鹿しい、とでも言いたげにライルは視線を逸らす。
煙草を口に銜える彼に、刹那は再度言葉を投げた。
「ニール・ディランディは、ガンダムマイスターだった」
お前の兄の、ニール・ディランディが。
そう心の中で刹那は呟いた。
ロックオン・ストラトスこと、ニール・ディランディの双子の弟であるライル・ディランディ。
彼は瞳を細め、「・・・兄さんが?」と訝しげに言う。
「・・・ガンダムマイスター?」
「そうだ。彼はガンダムに乗っていた」
「乗っていた?」
緑の瞳が微かに揺らぐ。
「・・・まさか、兄さんは死んだのか?」
少々声を震わせて言うライルに、刹那は頷いた。
「4年前の戦いで」とだけ呟いた刹那に、ライルは何も言わなかった。
暫く、沈黙が流れる。
そんな中、「俺に、」とライルがぽつりと呟いた。
「俺に・・・兄の遺志を継げと言うのか」
その瞳は鋭さを含んでいた。
刹那は首を振り、「そうは言わない」と言った。
「だが、お前もニール・ディランディと同じ様に、この世界を変えたいと思っているなら・・・。
そのために、戦う覚悟があるなら」
そう言い、刹那はメモリースティックを差し出した。
反射的に受け取ったライルは、それをまじまじと見詰めた。
ライルが受け取った事を確認すると、刹那は背を向けた。
「ここに俺たちの情報が入っている」
「良いのかい?これを俺が保安局に渡したら・・・、」
「保安局は、まもなくヨーロッパ中のカタロンのアジトに鎮圧作戦を行う」
ライルの言葉を遮って刹那が言う。
カタロンの構成員の一員であるライルは、当然その言葉に驚きを見せた。
「何だと!?」
「奴らは本気だ」
刹那はそう言い、歩を進めた。
地球連邦軍本部。
その中の一室で、一人の眼鏡をかけた女性が敬礼をしていた。
「カティ・マネキン大佐であります。唯今、着任致しました」
敬礼をした彼女に、前の席に腰を下ろしていたアロウズの司令官、ホーマー・カタギリは頷いた。
「よく来てくれた、大佐」
そう言い、敬礼を解くように片手を振る。
「ハッ」と言い両手を揃えたカティは真っ直ぐにホーマーを見返す。
「君も知っての通り、我が独立治安維持部隊アロウズは、反連邦勢力を一掃すべく創設された連邦政府直属の部隊だ。
攻撃対象は、軍事力を保持する非連邦参加国、カタロンと名乗る非政府組織・・・。
そして、更にまたひとつ対象が加わった」
「ガンダム、ですね」
そう答えたカティに、ホーマーは頷く。
「彼らが再び武力介入を行うのであれば、我が部隊はそれに対抗せねばならない。
世論も我々の行動を支持している・・・そして、何よりわたしは、ガンダムとの戦闘経験を持つ君の手腕を高く評価している」
アロウズで存分に腕を振るってくれたまえ!
最後にそう言うホーマーに、カティは再度敬礼をしてみせた。
、と名を呼ばれてそちらを向いた。
そこにはアロウズの軍服に身を包んだソーマが居て、紙コップを差し出してきていた。
その中には、温かい飲み物が入っている。
ありがとう、と言いそれを受け取ったは両手でそれを包む。
「・・・着替えてきたんだ・・・」
「ああ」
ソーマはそう言いうなづいた。
休憩室の壁に二人で寄りかかる。
ソーマはちらりとを見やった。
(・・・4年前、ソレスタルビーイングに所属していた事は記憶に無いのか・・・?)
私たちと戦った事も、
そう思いながら、ふぅと息を吹きかけてから神コップに口をつけるを見る。
「・・・は、何故、アロウズに・・・?」
「なぜ?」
空色の瞳が丸くなる。
ソーマを見返す際、短くなった金の髪が微かに揺れた。
「・・・なぜかな?」
軽く小首を傾げ、は再度神コップに口をつけた。
「分かんない、私、ずっと此処に居たのかな」
「・・・ずっと?」
「・・・誰かが、私を、助けてくれた。その人、多分アロウズの人。だから、私は此処に居る?」
多分、うん。
そう呟いて、は紙コップの中身をじっと見詰めた。
ソーマは瞳を細め、「そうか」とだけ返した。
は記憶を失っている。
ソレスタルビーイングで戦っていた事も、私との出会いの事も。
真っ白な状態のまま、彼女はまた戦いに身を置こうとしている。
外見よりも幼い言動を見せる。
記憶が無い事も関連しているのだろう、とソーマは考えた。
分からない事はまだまだ多くある。
アロウズについても、についても。
けれど、はっきりしている事もあった。
「私の気持ちは、変わっていない」
「ん、」
小首を傾げるを真っ直ぐ見詰め、ソーマは目元を和らげた。
「私が、を守る」
支えたい。
心からそう思った。
戦場で会う度に彼女を引き込もうとした。
それは、争いを好まない彼女に戦って欲しくなかったからなのか。
それとも、気付いたら心を許せる所まで来ていた、彼女に純粋に傍に居て欲しかったのか。
多分、両方。
が、大切なんだ、ただ純粋に。
そう思いながら、ソーマは柔らかく微笑んで、を見詰めた。
「・・・まも、る?」
まもる。
いつだったか、誰かにも言われた気がする。
4年前?ううん、それはもっと前・・・。
いつだったっけ。
そう思いながらぼんやりとしているの下に、足音が近付いてきた。
「少尉、中尉と一緒に居たのか」
アンドレイが近付いてきたが、はそれに気付いた様子は無かった。
瞬きもせず、ただ紙コップの中身をぼんやりと見詰めているに、アンドレイは瞳を丸くした。
「・・・少尉?」
「ぁ、」
ふらりとよろけた。
手から持っていた紙カップが離れ、重力に従い落ちる。
突然のの急変に、いち早く反応したのはソーマだった。
彼女の名を呼んで肩を支えるが、は空色の瞳を奮わせるだけだった。
『僕じゃ、だめかな』『僕が、君を守るよ』
『お前も俺の傍に居ろ』『俺が、守ってやるから』
『私を変えてくれた君を・・・初めてこんなにも愛しいと感じた君を、守りたかった・・・!』
『俺が、お前を守ってやる』
一気に頭に言葉が入ってきた。
突然の事には思わず肩を震わせた。
『!大丈夫だ!俺たちも、お前も!』
『!大丈夫だ!ステラもネオも無事だから!』
「・・・ぁ、や、」
「!」
『お前は皆を守れ。その背は、俺とエクシアが守ってやる』
『約束しただろ・・・みんなを守るを、俺が守るって!!』
「な、なにこれ!頭に!!」
『ガンダムで、お前を守る』
『俺が君を守るから!!』
嫌!!!!!!
は強く思い、耳を塞いだ。
そのまま首を大きく振り、「嫌、嫌!」と声を上げる。
「うるさい!うるさい!うるさい!!」
私の中に、入ってこないで!!
そう叫び膝をついたに、アンドレイも駆け寄った。
「少尉!」と言い彼女の肩に手を添える。
荒い呼吸を繰り返す彼女に、アンドレイは瞳を細めた。
焦るソーマとアンドレイの背後に、ゆっくりとある人物が近付いてきていた。
「任せて貰おう」
「「!!!」」
突然の言葉に二人が驚いている間に、男は膝をついて震えるの肩に手を置く。
毛先に癖のある金髪。
先日エレベーターで一緒になったその男を、思わずアンドレイはまじまじと見た。
男はの耳元で何事かを呟くと、震える彼女の肩に手を回して支えた。
男の影になって、ソーマや他のその場に居た人物も見えなかったが、アンドレイには何をしているのかが理解できた。
(・・・例の薬か・・・)
少しの間、彼女の様子を見る際に注意された事の中にあった。
情緒が不安定。
記憶障害。
PTSDの症状も見られる。
薬の副作用等もあるが、超兵の能力をも超える可能性を持つ彼女の力。
それの為には致し方ない事だとは聞いていたが。
アンドレイは薬を服用したのか、落ち着きを見せ始めたに瞳を細めた。
(・・・痛々しい)
そうとしか思えなかった。
男が落ち着いたの背を軽く叩くと、彼女はゆっくりと瞳を開いた。
ぼんやりとしている様子の彼女に、男は「大丈夫か」と言う。
「自分の名前が言えるな」
「・・・・・・・ルーシェ」
「そうだ。お前は・ルーシェだ」
忘れるな、とでも言うように彼はそう言った。
立ち上がったに、気遣うようにソーマが寄り添う。
「・・・あまり無理はするな」
「・・・ありがと、ソーマ」
雰囲気は柔らかかったが、は無表情だった。
感情が乏しくなった。
そう思いながらも、が無事でよかった事に安堵の息を零した。
が落ち着いた後、零してしまったカップを片付けた。
場も落ち着いたところに、ある人物が休憩室に入ってきた。
その人物を見止めたソーマがすぐに近付いた。
その際に一言告げる事も忘れずに。
(独立治安維持部隊アロウズ・・・連邦の忠実なる番犬、か)
ホーマーと話した後に、カティは休憩室へ来ていた。
そんな彼女の下へ、ソーマが近付いた。
「よろしいですか、大佐」
ん、と言い振り返ったカティは、ソーマの姿を認めると瞳を微かに丸くした。
「ピーリス中尉、貴官もアロウズに?」
「はい。招集がかかり、昨日着任しました」
「スミルノフ大佐がよく許したものだ」
そう言い苦笑するカティに、「上層部の命令は絶対です」とアンドレイが口を挟んだ。
そんな彼に気付いたカティが「貴官は?」と問う。
アンドレイは直ぐに敬礼をし、名乗った。
「アンドレイ・スミルノフ、階級は少尉です」
「スミルノフ・・・もしやスミルノフ大佐の?」
「はい。息子です」
直ぐにそう返したアンドレイ。
大分親しい間柄となったセルゲイとの関連が深い人物がアロウズに居るなんて。
そう思いながらカティは瞳を細くした。
そして次に、カティは少し離れた位置で自分を見つめているを見た。
幼さが微かに残る顔立ち。
こんな若い女性まで、と思いながら彼女たちにも声をかけた。
「・・・貴官は?」
「・ルーシェ、少尉・・・です」
ぴ、とすぐに敬礼をしてみせた彼女にカティは「そうか」と返した。
そしての隣に未だに居た男に視線を向ける。
男はと同じように敬礼をし、口を開いた。
「レイ・ザ・バレル、大尉です」
よろしくお願いします。
そう言い、レイと名乗った男は青空色の瞳を微かに細めた。
(AEUの作戦指揮官に、人革連の超兵まで招集か・・・さすがはカタギリ司令、対応が早い)
休憩室内の自動販売機の陰に隠れながら、話を聞いていた男が居た。
陣羽織をアロウズの軍服の上に羽織り、素顔を隠す仮面をつけていた。
しかし、と思い男は真っ直ぐにを見詰めた。
(よもやこのような所に居ようとは)
AEUの作戦指揮官。
人革連の超兵。
そして、元ソレスタルビーイングのガンダムのパイロット。
4年前、自分を助けてくれたが故に上層部の人間に捕らわれたのだろう。
記憶を無くしている様子のに、男、グラハムは仮面の奥の若草色の瞳を細めた。
(これも運命か・・・)
そう思いながら、彼女を見詰めた。
色々な人と再会。