宇宙の、プトレマイオス2の中でイアンはデータ端末のパネルを操作していた。
横たえられたエクシアを見つつ、ティエリアに声をかける。


「よし、アジトへ戻る間にエクシアの太陽炉のマッチングテストを行う」

「シミュレートでは、エクシアはOガンダムの太陽炉と連動率が高かったはずだが・・・」

「実際に試してみなけりゃわからんさ」


イアンはそう言い肩を竦めてみせた。
ダブルオーガンダムに、デュナメスのも、キュリオスのも、ヴァーチェのものも太陽炉が同調しなかった。
兎に角、刹那が持っていたエクシアの太陽炉のマッチングテストを行わなければ、どうしようもない。


「トランザムと共にイオリア・シュヘンベルグから送られてきた新たなガンダムの主機関理論。
 机上の空論か、200年後の科学水準を見越しての予見か」

「ふたつの太陽炉を同調させ、粒子生産量を二乗化する・・・これが、ダブルオーのツインドライブシステム」










沙慈は独房の中で、一人膝を抱えて座っていた。
静かだった室内だが、ミレイナが食事を持って入室してきた。
オペレーターの彼女の後ろには、ラッセも居た。


「お食事持ってきたです!」


ミレイナはそう言い、食事の乗ったトレーを壁の方へ備え付ける。
その後、てきぱきとした動作で赤ハロも置いた。


「ここに置いておきますから、食べてください。あと、赤ハロも置いていくです!」

『ヨロシクネ!ヨロシクネ!』


赤ハロはそう言いながら、沙慈の方へと転がっていった。


「ミレイナたちに用があるときは、赤ハロに言って下さい」


データベースも閲覧できるです!
明るく言うミレイナと対照的に、沙慈は暗い表情のまま、顔を上げた。


「いつまで僕をこうしておくつもりですか?」


え、とミレイナは短く声を上げた。
そんな彼女の後ろから顔を出したラッセが口を開く。


「お前は、アロウズに目を付けられた」

「僕はカタロンなんかじゃない!」

「向こうもそう思ってくれればいいがな」


ラッセの言葉に沙慈は言葉を噤んだ。
自分がカタロンじゃない。
そう言っても相手は信じてくれないだろう。

またあの時の様に、無差別に捕らわれ、襲われる。


「・・・貴方たちは、また武力介入を行うつもりですか?」

「いいや、アロウズを叩く」


「連邦軍を?」と問うた沙慈にラッセは「すこし違うな」と言う。


「その、政府直轄の独立部隊だ。奴らは既に、14件もの鎮圧という名の虐殺を行った」


鎮圧という名の虐殺。
先日の件の事を思い出し、沙慈の肩が跳ねた。


「被害は数万人規模。この情報はすべてもみ消されている。お前も奴らのやり方を味わったはずだ」


重労働を強いられている人々。
投入されたオートマトンは、無差別に人を殺した。

一方的すぎるあれは、まるで虐殺だった。

その時の光景を思い出した沙慈は、それを振り払う様に頭を振った。


「だから何です!?連邦政府は、貴方たちの武力介入が元で出来たんじゃないですか!」

「だから、けじめをつけるのさ」

「戦えば、また罪のない人が傷付く!」

「戦わなくても人は死ぬ」


沙慈の言葉に間髪居れずにラッセは答えた。
双方正しい事を言っている。

遣り切れない思いから、沙慈は悔しげに瞳を細めた。

そんな気まずい空気の中、ちらりと時計を確認しつつミレイナが口を開いた。


「アイオンさん、そろそろテストが始まるです」


分かった。と言い先にミレイナを出して、自身も独房から出る。
ドアを閉めようとしたところで、沙慈が声を上げた。
「彼は!」と言う沙慈を、ラッセが見返す。


「・・・刹那はどうしてます?」

「人を迎えに行ったです!」

「俺らの仲間をな」


ミレイナとラッセはそう答え、ドアを閉めた。










刹那は未だに地上に居た。
そのまま、真っ直ぐにあるマンションに入る。
エレベーターを使用し、目的の部屋まで真っ直ぐに歩いていく。
呼び鈴を鳴らすと、中からその部屋の主の男と、久しぶりに出会う仲間であった戦術予報士に目を向けた。

スメラギは大きく瞳を見開き、思わず一歩後ずさった。


「・・・せ、刹那・・・なの?」


震える声で言うスメラギに、刹那は頷いた。


「4年ぶりだな。スメラギ・李・ノリエガ」

「君、何を言ってるんだい?」


スメラギ・李・ノリエガ。
そう呼ばれたリーサ・クジョウである彼女を見た後、男、ビリー・カタギリは刹那を見た。


「彼女の名前は・・・、」

「コードネーム」


ビリーの言葉を遮り、刹那が言う。


「スメラギ・李・ノリエガ。ソレスタルビーイングの戦術予報士だ」


ソレスタルビーイングの、戦術予報士。
まさかの事実にビリーは瞳を大きく見開き、背後に居るリーサ・クジョウを見た。
彼女は瞳を揺らがせ、唇を噛むだけだった。


「これであんたの逃げ場は無くなった」


そう言い、スメラギに戻らなくてはならないリーサの腕を、刹那は引いた。










プトレマイオス2では、相変わらずダブルオーガンダムの太陽炉のマッチングをしていた。


「エクシアとOガンダムのマッチングは、今までで最高の同調指数を弾き出してはいるが、70%以上の数値が出ない」


安定領域まであと10%なんだが、
そう零し、頭をかくイアン。
顎に手を当てたティエリアが、口を開く。


「トランザムで強制的に起動をかければ・・・」

「馬鹿言うな!そんなことすれば、オーバーロードして最悪自爆だ!」

「ならばもう一度、システムの再点検を」


真紅の瞳を鋭くさせて言うティエリアに、イアンは「ええい」と言い頭をぐしゃぐしゃとかいた。


「勿論やるさ!」



独房では、食事を済ませた沙慈が、赤ハロに端末を繋いでパネルを操作していた。
データベースを見ている彼は、主にスペインでハレヴィ家を襲撃した其れに注目していた。


スペインでの民間人への攻撃は、ガンダムスローネによる攻撃と断定・・・?


画像が出てくる。
どうやらガンダムスローネドライという機体らしい。


攻撃理由、不明・・・スローネの機体は、本計画に入っていない・・・


不明、ともあるが別データにはパイロットによる勝手な行動、とも記されていた。


また、スローネは擬似GNドライブを搭載、放出される攻撃用粒子には、人体に影響を及ぼす可能性あり


そこまで呼んで沙慈は瞳を大きく見開く。


人体に影響!?


ルイスに、再生治療が出来なかった事を思い出す。
医者はガンダムのビーム兵器が原因かもしれない、と言っていたが・・・。


「ガンダムスローネ・・・この機体がルイスを・・・!」

『アイツラテキ!アイツラテキ!』


突然喋りだした赤ハロに思わず沙慈は瞳を丸くする。
「ええ?」と言う沙慈に赤ハロは繰り返す。


『アイツラテキ!アツラテキ!』

「それって、どういう?」

イジメタ!アイツラテキ!』

! だって!?


思いがけないところでの名が出て来て沙慈は瞳を大きくした。
確かに、初めて出会った時も刹那と一緒に居た彼女。
そうなると、彼女もソレスタルビーイングに関わっていた事は今考えると当然だった。

でも、彼女の姿を見ない。

何故だろう。

そう思いながら沙慈は別のデータを閲覧した。










軌道エレベーターを走るリニアトレインの客室内に、刹那とスメラギは居た。
力なくシートに腰を下ろしているスメラギは、顔を俯かせたまま口を開いた。


「私を連れ戻してどうしようっていうの・・・?」


刹那は立ったまま、スメラギを見下ろす。


「連邦政府が出来ても、世界は何も変わらない・・・。
 あれだけの犠牲を払ったところで何ひとつ・・・イオリアの計画に、意味なんて無いのよ」


あれだけの犠牲。
スメラギの言葉から、失った仲間たちを思い出す。

亡くなったドクターモレノ、リヒテンダール、クリスティナ。
そして、ロックオン。

アレルヤとの姿も、今のソレスタルビーイングには無い。


「それが酒浸りの理由か?」


悪い?
そう言いスメラギは刹那を見上げた。
その瞳に、昔の力強さは無かった。


「私はもう嫌なの・・・やってられないのよ・・・!」

「俺は、俺たちは戦う!」


刹那は力強く言う。
しかし、スメラギは彼から視線を逸らすだけだった。


「世界に変革を齎した事が俺たちの罪ならば、その罪は再び世界を変える事でしか償えない」

「私には無理よ・・・!」

「逃げるのか?」

「良いじゃない逃避ぐらいしたって・・・」

私は、貴方ほど強くない。
そう言い、スメラギは瞳を揺らした。

宇宙に上がった後、刹那はスメラギの手を引きながら歩いていた。

気だるげな様子のスメラギは、刹那に連れられるままに歩いていたが、気まずげに視線を彷徨わせた後、口を開く。


「ねえ刹那、もう私の事は・・・、」

「新たなマイスターが来る」


刹那の言葉にスメラギは瞳を丸くした。
「新たな、マイスターって?」と問うが、刹那は答えない。

そういえば、先ほどから端末を使用していた気がする。
考えるスメラギの前に、ある人物が片手を上げて近付いてきた。


「よお!遅かったな」


そう言い軽く笑みをこちらに向けた人物は、地上で刹那が勧誘した男、ライルだった。
ライルの姿を見止めたスメラギは、驚愕から瞳を大きく見開いた。


ロックオン!?そんな・・・生きて・・・?」


驚いた様子のスメラギに、ライルは軽く肩を竦めてみせた。


「そんなに似てるかな?俺と兄さんは」

「お兄さん?」


瞳を丸くした後、スメラギは訳が分からない、というように訝しげに瞳を細めた。
そんな視線を向けられた刹那は、「紹介しよう」と言いライルへ視線を移した。


「彼はライル・ディランディ・・・」

「違うな」


刹那の言葉を、ライルが遮った。


「俺の名はロックオン・ストラトス。ソレスタルビーイングのガンダムマイスターだ」


ライルはそう言い、ガンダムマイスターになる事を改めて刹那に意思表示してみせた。










「お嬢様」


そう呼ぶ紅龍に、王留美は視線を向けた。
たった今、アロウズの上層部にプトレマイオス2の居場所の情報を流した彼女の行動が、紅龍には理解出来ないでいた。


「何故ソレスタルビーイングの情報を彼らに話したのですか?」


この4年間、何のために準備を。
そう言う紅龍に、王留美はくすりと微笑んでみせる。

「この程度の危機を乗り越えない様では、意味は無くてよ」

「お嬢様、貴女は世界の変革よりも戦いを求めている様に見受けられます」

「そう、戦いの果てにこそ世界の変革があるわ」


王留美は頷いた後、紅龍とは違う場所で待機していた、ネーナ・トリニティに視線を向けた。


「彼らに連絡を」

「わかりました。お嬢様」


ネーナはそう答え、直ぐにプトレマイオスへ連絡を入れた。





「緊急暗号通信、トレミーからか?」


小型艇に乗り、プトレマイオス2へ帰還する途中の刹那たち。
緊急暗号通信を、刹那が開く。


プトレマイオスでは、イアンがティエリアに情報を伝えていた。


「王留美からの情報だ。アロウズにこちらの位置を知られた」

「セラヴィーで出る。フェルトはイアンと共にマッチング作業を急いでくれ」


ティエリアに「了解」と返し、フェルトはセラヴィーに向かうティエリアの背を見送った。

独房内では、ネックレスに通した指輪を沙慈は見ていた。
ペアリングであるそれの対は、ルイスが持っているはず。

ルイスの事を想っている沙慈だったが、突然赤ハロが声を発する事でそれも中断した。


『テキブタイセッキン!テキブタイセッキン!』


え、と言う沙慈。
赤ハロは直も言葉を続けた。


『セントウジュンビ!セントウジュンビ! テキブタイセッキン!テキブタイセッキン!』

「そんな・・・戦うのか?」


この艦が、
そう呟き、沙慈は不安げに瞳を揺らした。





『第2デッキ、ハッチオープンです!』


ミレイナがそう言い、パネルを操作する。
プトレマイオス2の右舷のハッチが開き、カタパルトが展開された。


『セラヴィー、カタパルトデッキへ。 リニアカタパルトボルテージ、230から520へ上昇』


セラヴィーがカタパルトデッキへ移動する。
機体をフィールドに固定、というミレイナの声が響く。


『射出タイミングをセラヴィーに譲渡するてす!』


了解。
そう返し、ティエリアはレバーを握る。


「セラヴィー、ティエリア・アーデ、行きます!」





小型艇の上方に、赤いGN粒子の光が見えた。
刹那は6つあるそれらを見た後、「敵の編隊」と呟いた。


「アロウズのモビルスーツか」


ロックオンが確認をした後に言う。
スメラギは「刹那」と言い彼の名を呼ぶ。


「こっちの戦力は?」

「ティエリアの機体だけだ。だが、ロールアウト間近の新型がある」

「2機だけ・・・」

「随分と寂しい組織なんだな」


考えるスメラギの横で、ロックオンが肩を竦めてみせた。
からかうようにそう言った彼に見向きもせず、スメラギは身を乗り出してコンソールに手を伸ばした。

プトレマイオス2のブリッジでは、ミレイナが「あっ」と声をあげた。


「アイオンさん!ノリエガさんから緊急暗号通信が来たです!」

「ノリエガ!?スメラギさんからか!?」


驚きの表情を見せるラッセ。
ミレイナは「はいです」と答えた後、パネルを操作する。


「戦術プランです!開始予定まで0032!」

「そいつは無茶だぜ!刹那の奴、本当に連れてきやがった!」


ラッセはそう言いながらも嬉しそうに笑った。


スメラギのプラン通り、プトレマイオス2が大量のGNミサイルを発射した。
それらは敵部隊の直前で炸裂をし、機雷を撒いた。
センサーに障害を起こすであろうそれのせいで、敵は迂回をしてくるだろう。
敵機も爆発させ、数を減らした。


「ST27のルートを通って」


小型艇の中で指示を出すスメラギに、刹那は「了解」と返す。
成り行きを見ていたロックオンは「なるほど」と言い口の端を上げた。


「そういう事か」


敵の移動妨害と 小型艇の帰艦ルートの確保を兼ねたプランを直ぐに考案したスメラギ。
そんな彼女の手際に関心したように、ロックオンは軽く口笛を吹いた。


ティエリアはセラヴィーでGNバズーカを放つ。


『セラヴィー、目標を迎撃する』


そう言った時、セラヴィーの背にあるガンダムフェイスが開かれる。
GN粒子が舞う中、ティエリアはGNバズーカを構える。


『高濃度圧縮粒子充填・・・GNバズーカ、圧縮粒子、開放!』


放たれた高濃度のビームは、前方の機雷を爆発させた。
そしてそのままGN−XVを1機破壊した。
爆発の中を突っ切ってきたアヘッドが、セラヴィーに突撃する。

小型艇では刹那がイアンに通信を入れていた。


「イアン、ダブルオーを出す」

『ちょ、ちょっと待て刹那!こっちはまだ・・・!』


慌てるイアンの声に「時間が無い」とだけ刹那は返した。
そのまま助手席に座るロックオンに「操縦を頼む」と言い体を動かした。


「な、何だって!?」


ロックオンの慌てる声を無視し、刹那は小型艇から出る用意をする。


『小型艇着艦準備、及びダブルオー発進シークエンスに入るです!』


第1デッキ、ハッチオープンです。
ミレイナの言葉と共に、プトレマイオス2の左舷カタパルトデッキが開く。

それを見てロックオンが操縦桿を握りながら呟く。


「あれがソレスタルビーイングの・・・」

『ダブルオー、カタパルトデッキに搬送です!』


エクシアとOガンダムの太陽炉を搭載したダブルオーガンダムがカタパルトデッキに搬送される。

小型艇の背後にはアヘッドとGN−XVがとりついていて、ビームライフルを放ってくる。
「ったく、何なんだ!」と言いつつも、ライルは小型艇を操縦し、ビームをかわした。

背にあるバックパックの噴射機を展開し、刹那は小型艇を飛び出してプトレマイオス2へ向かった。
その際、ビーム攻撃に当たらないように動きながらも、開かれたカタパルトデッキにそのまま向かう。


ダブルオー・・・Oガンダムとエクシアの太陽炉を載せた機体・・・


カタパルトデッキに完全に搬送されたダブルオーが、刹那の眼前にある。
無重力の中でバックパックの噴射機を巧みに使い、減速をして改めてダブルオーガンダムを見やる。


俺のガンダム・・・!


首元のコクピットハッチが開く。
導かれるように、刹那はそこに身を滑らせた。

シートに座り、すぐに操作に移る。


「ツインドライブシステム、行けるか?」

『刹那、ダブルオーはまだ・・・!』


通信のモニターにイアンが映りだす。
彼が何か言うよりも先に、刹那は口を開く。


「トランザムを使う」

『無茶だ! 刹那、止せ!』


オーバーロードの危険性もあり、下手をしたら爆発してしまう。
慌ててイアンが止めに入るが、既に刹那はトランザムシステム起動の操作をしていた。
目元に赤いライトが通り、パイロットを認証する。


「トランザム、始動!」


ダブルオーの体が、赤く輝く。
それにイアンが「やりやがった」と少々焦りの声を出す。
フェルトも緊迫した顔もちでそれを見ていたが、警報音に反応してモニターに目を移す。


『駄目です!粒子融合率、73%で停滞・・・!』

『トランザムでも駄目か!』

『敵モビルスーツ2機、急速接近中です!』



ミレイナの声を聞きながら、刹那はダブルオーのコクピットで黙っていた。

セラヴィーがアヘッドに接近され、蹴りをくらう。
コクピットにまで衝撃が響き、ティエリアが苦しげな声を漏らす。


『く・・・! ダブルオーは!?』


アヘッドがセラヴィーを抑えている隙に、別のアヘッドとGN−XVがプトレマイオス2へ向かう。
トランザムをしたままのダブルオーのコクピットの中で、刹那はレバーを強く握った。


「目覚めてくれ、ダブルオー」


静かに語りかけるように、刹那は言う。


「ここには!Oガンダムと!エクシアと!」


左右の肩についている太陽炉が粒子を放つ。
音を立てて回り、光を増す。

カタパルトデッキの入り口にまで接近したアヘッドが、ダブルオーに向けてビームライフルを向けた。

直後、


俺が居る!!


思い切り、レバーを押した。

その瞬間、ダブルオーが、更に強く輝いた。
アヘッドがビームライフルを放つが、ダブルオーの両肩の部分が前に移動し、GNドライブから放出される粒子がビームを打ち消した。
粒子の光がバリアとなって、ダブルオーを守った。


『き、起動した!二乗化のタイムラグか!』

『ツインドライブ、安定領域に達しています!』



トランザムをした事により、ドライブ間で粒子融合が起こった。
それまで少々時間がかかっただけの様子だった。
イアンは安堵の表情をした後、モニターを改めてみた。

87%。
そう表示されたモニターは、ダブルオーのツインドライブシステムが安定領域に達した事を知らせていた。

ダブルオーの放つGN粒子は美しく、宇宙に一線を描いた。


「ダブルオーガンダム、刹那・F・セイエイ、出る!」


両肩のGNドライブが背面に回り、高速に回転をした。
直後、爆発的な衝撃が起こり、ダブルオーはカタパルトデッキから出撃した。

迫るアヘッドが、ビームライフルを放つ。
ダブルオーはそれを素早く避けつつ、GNソードライフルで狙いを定める。


「ダブルオー、目標を駆逐する!」


刹那の放った一撃は、アヘッドのシールドをも通り抜けた。
爆発するアヘッドの次に、GN−XVが迫る。
GN−XVのビームライフルを、前面に回されたGNドライブが防いだ。

GN−XVが投げたハンドグレネードが爆発し、空間上にビーム撹乱幕が張られる。
ダブルオーのビームを防ぐそれに、刹那は軽く眉を寄せた。
そのまま接近戦に持ち込もうとGN−XVに向けて突っ込む。

GN−XVも素早くランスを構えて突っ込んできたが、GNソードへ切り替え、それを薙ぐ。


これが、俺たちの!ガンダムだ!!


ランスを破壊した後、GNソードはGN−XVを真っ二つにした。
爆発するGN−XVを背に、ダブルオーは腕を下ろした。


「あれが、ガンダムの力か・・・」

「刹那・・・」


小型艇ではロックオンとスメラギがそう呟いていた。
プトレマイオス2のブリッジでは、ミレイナが確認をし、歓喜の声を上げる。


「敵モビルスーツ、撤退して行くです!」


ミレイナの言葉に、全員が安堵の表情をし、息を吐いた。

独房で、端末を使用して戦闘映像を見ていた沙慈は、瞳を細めた。


「ガンダム・・・!」





落ち着いてから、小型艇を収容した。
ダブルオーも収容し、刹那たちをプトレマイオスのクルーが歓迎した。
刹那の後に、スメラギが入る。

彼女の姿を目に留めた瞬間、フェルトが嬉しそうに微笑んだ。


「スメラギさん、おかえりなさい!」

「お久しぶりです!ノリエガさん!」


4年前、共に戦った仲間として。
ミレイナは、以前から面識があったのか、スメラギにそう言い笑顔を見せる。


「相変わらず無茶な戦術だ」


そう言い微笑むラッセ。
自分を歓迎する彼らに、スメラギは反対に表情を曇らせた。


「わ、私は・・・」


言いよどむスメラギの背後から、ロックオンも入ってきた。
彼の姿を見た瞬間、プトレマイオスのクルーが一斉に驚きの表情を見せる。

フェルトは瞳を大きく見開き、イアンも「ああ!」と声を上げた。


ロックオン!?


ラッセが思わずそう声を上げる。
一緒にスメラギたちを歓迎していたオレンジハロが、嬉しさを表現するように耳を開け閉めさせ、無重力の中を移動する。


『ロックオン、イキテタ!ロックオン、イキテタ!』


そのまま前まで飛んできたオレンジハロを、ロックオンは反射的に両手で受け止めた。
そして、ふ、と笑うとロックオンは少しだけ肩を竦めた。


「熱烈な歓迎だな」


そう言うロックオン。
彼の違和感に気付いたのか、ラッセがスメラギに近付いて彼女に尋ねた。


「どういう事だよ?」

「・・・弟さんなんですって・・・」

「ロックオン・ストラトス・・・!?」


フェルトは瞳を見開き、動揺をいつまでも落ち着かせられないでいた。

ティエリアはスメラギの姿を見止めた後、直ぐにその場を離れていた。
ロックオンの姿は見たが、彼を見た瞬間ティエリアは踵を返してしまっていた。


違う、あの男は彼じゃない


それだけを思いながら、ティエリアは廊下の移動用レバーを使用していた。
刹那が連れて来た、ロックオンと瓜二つの男。
違う、と直感でティエリアは感じていた。










「収監施設?」


アンドレイに言われ、は瞳を丸くした。
彼は頷き、「少尉も、私とピーリス中尉に同行して貰う」と言った。


「そこには、4年間拘束されているガンダムのパイロットが居る」

「ガンダムの、パイロット」


4年間。
そう呟いたに、アンドレイは頷く。


「聞いた所では、中尉と同じ超兵らしい」


同じ超人機関出身だと聞いている。
ぼんやりとしたに気付いた様子は無く、アンドレイは続ける。


「ピーリス中尉が、そのガンダムパイロットと話をする。その護衛に、我々が就く」


4年前、ガンダムパイロット。
ぼんやりとしながら、ただ考える。

の頭の中では、その単語がぐるぐると回っていた。




4年間拘束されてるパイロットに会いに行こう。