オートマトンが射出され、カタロンの基地へ向かう。
ソーマが「待って!」と言うがそれも間に合わず、逃げ惑う人々を無差別に攻撃する。
敵機体も全て旧式のもので、当然此方が優勢になる。
そこに、ガンダムが来た。
カタロンの救援にでも来たのか、ケルディムが先陣をきって狙撃をする。
『ピーリス機、先行するガンダムを迎撃しろ!』
命令を下され、ソーマは反射的に「りょ、了解」と返してアヘッドスマルトロンでケルディムを攻撃する。
が、素早い動きで避け、GNハンドガンで反撃をするケルディム。
『各機、ガンダムを迎撃する!』
『私は抜けさせてもらう』
『ミスター・ブシドー、何故!?』
『興が乗らん!!』
そんな声を通信で聞きながら、は与えられたGN−XVの中で体を震わせていた。
そのまま、ゆっくりとした動きでソーマのアヘッドスマルトロンを追う。
ケルディムを追って基地に近付いたソーマは、眼科で繰り広げられている殺戮に目を見張った。
逃げ惑う人々に、容赦なく銃弾を放つオートマトン。
「これが・・・こいつが!人間のやる事か!!」
そう言い、ロックオンは敵機には構わず、GNハンドガンでオートマトンを撃つ。
そんなケルディムにソーマは再度目を見張る。
「無人兵器による虐殺行為・・・!」
アリオスは空中で変形し、GNビームシールドをふたつに開く。
そのままGN−XVを挟み、破壊をする。
GNシールドニードルのようなそれで、次のGN−XVに攻撃をしかける。
「自ら引き金を引こうとしないなんて!罪の意識すら持つ気が無いのか!!」
セラヴィーもダブルバズーカでGN−XVを破壊する。
その中で、1機のGN−XVがアヘッドスマルトロンの真横へ来る。
「・・・!!」
のGN−XVはアヘッドスマルトロンの腕を掴み、ケルディムの攻撃から守る。
そのままGNランスに内臓されている小型の粒子ビーム砲を放つ。
それはケルディムには当たらず、背後にあったオートマトンを破壊した。
「「!?」」
ソーマとロックオンが同時刻に瞳を見開く。
そのままアヘッドスマルトロンを引いたまま撤退をする。
『初期目標は達成した!撤退する!』
通告通りにはソーマと共に撤退をする。
ソーマは撤退する機体の中で、瞳を震わせていた。
『中尉、養子になる気は無いか?』
いつだったか、セルゲイに言われた言葉。
『わ、私を養子に、ですか・・・?』
『無論、君が良ければの話だが』
わ、私は、と照れた様子を見せるソーマ。
彼女に、セルゲイは微笑んでみせる。
『流石に、ソーマ・スミルノフというのは語呂が悪いか』
セルゲイの言葉にソーマは「そんな事、」と返す。
『でも、ピーリスという名が無くなるのは少し寂しく思います』
『気に入っていたのかね?』
そう問うセルゲイ。
ソーマの脳裏に、4年前の最終決戦で彼に呼ばれた事が蘇る。
『その名で呼ばれた事を、忘れたくないのです』
そう言い、ソーマは柔らかく微笑んだ。
私は超兵1号。
大佐は私を一人の人間として扱ってくれた。
アロウズに召集され、あの家を出る時も大佐は心配をしてくれた。
『任務を終えたら、必ず帰ってきます!』
そう言いあの家を出た。
あの家に帰れると、疑いもしなかった。
帰る事が出来ると、信じていた。
オートマトンを見て、兵器である事を実感した。
超兵である私は戦う為の存在。
でも、大佐は人として扱ってくれただけではなく、
人として生きていけるように、ずっと守ってくれていた。
それを自らの手放したのは、自分自身。
ソーマはくしゃりと表情を歪ませた。
「私は超兵・・・!戦う為の存在・・・そんな私が、人並みの幸せを得ようとした・・・!」
これはその罰なのですか?大佐・・・!
肩を震わせ、ソーマはセルゲイに想いを馳せた。
日が沈む頃、プトレマイオス2が現場に到着した。
カタロンの惨状を見て、思わずフェルトが「ひどい、」と零す。
「これが、アロウズ・・・」
声を震わせるアレルヤに、ティエリアが「そうだ」と答える。
『あれが我々の敵だ!』
煙を上げる基地を見て、沙慈は瞳を奮わせた。
がくり、と力なく膝をつく。
「あ、ああ・・・!ぼ、僕が話したせいで・・・!」
連邦軍に捕らわれた時、全てを話してしまったから。
自分の存在が知られて、カタロンの基地が襲われた。
スミルノフ大佐は良くしてくれたけれど、やはり連邦軍は、
地面に両手をつき、項垂れる。
「そんな・・・そんな! ・・・うそだあああぁぁぁっ!!」
沙慈はただただ、慟哭した。
「貴様たちがここの情報を漏らしたのか!?」
憤るカタロンの兵士にアレルヤが対応をする。
「そんな事はしていない」
「貴様らのせいだ!貴様らが仲間を殺した!」
興奮しきった状態の男が、アレルヤに銃を向ける。
が、傍に居たロックオンがその手を取って「やめろって!」と声をかける。
「こいつらは何もしてねぇ!」
「分かるものか!」
「信じろよ!」
声を張るロックオン。
彼の言葉で冷静さを取り戻したのか、カタロンの男は肩を震わせた。
「けどよ!・・・仲間が、さっきまで笑ってた奴が・・・!」
声を震わせて瞳を伏せた男に、ロックオンは「分かってる」と静かに言う。
「仇は取る」
そう言い、ロックオンも瞳を怒りに染めた。
そんな彼らを見、アレルヤは眉を潜める。
「一体、誰がアロウズに・・・?」
そんな彼らとは違う場所から、沙慈が基地の中に入ってきた。
辺りの惨状に、思わず体を震わせる。
足元にある遺体に気付き、思わず目を背ける。
そのまま駆け出そうとした彼の肩を、ティエリアが掴んだ。
彼はそのまま沙慈を連れて行き、人気の無い通路でその手を放した。
「何をした?」
静かに問うティエリアに、沙慈は肩を跳ねさせた。
「ぼ、僕は!」と慌てた様子の彼にティエリアは真紅の瞳を鋭くした。
「したんだな?誰だ君は?、アロウズのスパイか?」
「ち、違う!僕は・・・!」
「訳を話してもらうぞ沙慈・クロスロード」
ティエリアはそう言い、沙慈の腕を再度掴み、睨みをきかせた。
プトレマイオス2の中では、基地内の惨状にクルーたちが心を痛めていた。
イアンが「こいつは・・・」と呟く。
「これが奴らのやり方か・・・!」
「・・・アロウズ!」
ラッセとレーゲンが苦々しげに言う。
フェルトはミレイナの背を押して、ドアへ向かう。
「ミレイナは見ちゃ駄目」
「は、はいです」
そのまま彼女たちは退室した。
倒れ付す人々。
仲間の死に嘆き悲しむ仲間。
そんな様子を、スメラギは瞳を震わせて見ていた。
『彼の為に生まれ、彼の為に死す・・・!』
「!!」
鎮魂の言葉を述べる男。
その言葉を聞き、スメラギの脳裏に過去の記憶が過ぎる。
ベッドに横たわっている愛しい彼の手を握るのは、AEUの軍服を身に纏った自分。
スメラギは瞳を震わせて、過去の事を思い出す。
『彼の為に生まれ』
《友軍の可能性があります》
『彼の為に死す』
瓦礫の中を走る。
艦内で気付いた時には遅かった。
敵じゃないと、もっと早く気付けばよかった。
『見えない道を旅し、行き着く先にあるものは、命の終えん・・・』
瓦礫の中に居た彼。
傷付いた彼の手を握り、彼の最期を看取った。
『それこそが、神の導き・・・』
エミリオ?
エミリオォォっ!
そう叫び、愛しい者の亡骸に縋りつく。
フラッシュバックに耐えられなかったスメラギは、そのままふらりと体を傾け、倒れた。
突然倒れた彼女に、すぐにレーゲンが駆け寄った。
「スメラギ!」
「どうした、スメラギさん!?」
彼女の頬に手を添え、レーゲンは状態を看た後に抱きかかえた。
メディカルルームへ連れて行く!
そう言う彼に、クルーたちは頷いた。
パァン!!!
話を聞いたティエリアが沙慈の頬を打った音が響いた。
「何という・・・!何という愚かな事を・・・!!」
怒りからか、ティエリアが声を震わせる。
沙慈は視線をそらしたまま、口を開く。
「こんな事になるなんて、思ってなかった・・・!僕は戦いから離れたかっただけで!」
こんな事に・・・!
そう言い沙慈は肩を震わせた。
そんな彼に、ティエリアは冷たい視線を向けた。
「彼らの命を奪ったのは君だ!」
ティエリアの言葉が、沙慈の胸に突き刺さる。
「君の愚かな振る舞いだ!
自分は違う、自分には関係ない、違う世界の出来事だ。
そいう現実から目をそむける行為が無自覚な悪意となり、このような結果を招く!」
「僕は・・・僕はそんなつもりじゃ・・・!」
沙慈は膝を震わせ、その場に膝をついた。
両手も床につき、慟哭した。
そんな彼を冷めた瞳で見ていたティエリアは、向こうから歩いてくる人物を目に留めた。
アザディスタンにマリナを送った後、戻ってきたのであろう刹那が居た。
彼はこの惨状を見てか、深紅色の瞳を鋭くさせた。
「どいう事だ、あれは」
「アロウズの仕業だ。そして、その原因は彼にある」
直ぐにティエリアはす答え、沙慈を再度見下ろした。
思いも寄らない一言に、刹那は沙慈を驚いた表情で見下ろす。
戻ったマリナを出迎えたのは、シーリンだった。
「アザディスタンには戻らなかったの?」
そう言うシーリンの姿を目に留めた瞬間、マリナは彼女の名を呼び駆け寄った。
瞳を揺らすマリナを受け止め、動揺した様子の彼女の背を撫でる。
「アザディスタンが・・・私たちの故国が・・・!」
「アザディスタンが・・・!?」
カタロンの基地で救援作業を手伝った後、小型艇に刹那とティエリアが乗り込んでいた。
そこで現状の情報交換をする。
「アザディスタンが攻撃を受けただと?」
連邦の仕業か?
そう問うティエリアに、刹那は「分からない」と返す。
マリナを送り届ける為に赴いたアザディスタン。
そこが、燃えていたのだ。
「だが、攻撃に加わっていたMSの中にガンダムがいた」
「ガンダムが?」
「恐らく、あの機体は・・・、」
刹那がそう言いかけたところで、アレルヤから通信が入った。
何事かとモニターを見る二人に、彼は複雑そうな表情を見せる。
『・・・スメラギさんが倒れたらしい』
思いも寄らなかったアレルヤの一言に刹那が「何!?」と声をあげる。
何があった、と言うティエリアに彼は首を振るだけだった。
『分からない、トレミーへの帰投命令が出ている』
「わかった。戻ろう」
そう言い通信を切った刹那。
「君も来い」と言いティエリアは後ろに居た沙慈に目をやる。
「ここに居たら、何をされるか分からないからな」
ティエリアの言葉に反発せず、沙慈は大人しく従った。
カタロンのアジト内で、シーリンはマリナと一室に居た。
「都市部の主要施設は、そのほとんどが破壊されていたわ」
警察も、軍も、機能していなかった。
そう言いマリナは瞳を悲しげに揺らした。
「それでも・・・私はあの国に・・・!ラサーに託された国を・・・!」
「よく、戻ってきたわね」
そう言うシーリンに、マリナは視線をそらす。
「刹那が、強引に・・・、」
マリナがそう言うと、シーリンは安堵の息を吐いた。
彼に感謝しなきゃね。そう言う彼女にマリナは「何を!」と返す。
「私は死んでもよかった!アザディスタンの為なら・・・私は・・・!」
そう言い涙の溜まった瞳を揺らした。
そんな彼女の傍に寄り、シーリンは彼女の体を抱き締めた。
「・・・マリナ、」
マリナは肩を震わせ、シーリンに縋るように腕を回した。
ソーマは与えられた自分の部屋で、金の瞳を震わせていた。
瞬きをする度に、瞼の裏にカタロン掃討の光景が浮かぶ。
「あれが・・・否、あれこそが本当の戦場」
オートマトンによる殺戮。
あれが、兵器。
そう思うソーマの傍らにあった端末が、音を立てた。
パネルを操作してモニターを展開する。
「大佐からの暗号文?どうして頂武のみで使用されていた物で・・・」
そう言いつつ、文面に目を通す。
《手の込んだ連絡をしてすまない。アロウズに気付かれたくなかったのでな。
中尉がカタロン殲滅作戦に参加した事を聞いた。その事で、私は君に謝罪しなければならない》
「謝罪?」
ソーマはそう呟き、続きを読む。
そこから、金の瞳を揺らした。
「大佐が入手した情報であの掃討作戦が実行された・・・!?
そんな・・・大佐自身も辛いはずなのに、私をこれほどまでに気遣って・・・!!」
セルゲイの優しさを感じ、ソーマは体を震わせた。
いつだってそうだった。
彼も、も自身が辛い問題に直面していても、私を気にかけてくれていた。
目の奥が熱くなり、ソーマはそれを抑える事もせずに姿勢を正した。
「ありがとうございます、大佐。
大佐のおかげで私は、自分が超人特務機関の超兵1号である事を再認識しました!」
オートマトンと一緒。
超兵は、兵器なんだ。
「私は兵器です。人を殺すための道具です。幸せを、手に入れようなど・・・!」
そこまで言いソーマは、堪えきれずに嗚咽を漏らした。
ソーマ(´;ω;`)