ふわふわとした感覚。
そう思いながら、は揺れる船上を爪先立ちで歩いていた。
とんとん、とリズムを取りながら、海を見詰めて進む彼女。
そんな彼女を少し離れた位置で、ブシドーは見ていた。
「・・・君は、変わらないな」
初めて出会った時も、彼女はあのように舞っていた。
そんな彼女を見詰めるブシドーの背後に、レイが近付いた。
「彼女の知り合いで?」と尋ねる彼に、ブシドーは口元に笑みを浮かべた。
「ああ。私の前に舞い降りた天使だ」
「・・・大切に、思っているのですね」
ブシドーの目を見てか、レイはそう言った。
「願わくば、ご協力願いたい」
そう言うレイを、ブシドーは見返した。
ふわり、ふわり、
両手を広げて舞う彼女は、空色の瞳を楽しげに細めた。
フレイは近場に腰を下ろして彼女を見守っていた。
(こんな娘が、あんなMAに乗せられるなんてね)
就いたのが、今回リント少佐。
フレイは大きく息を吐いた。
チャンスなんだか、不運なんだか。
そう思いながら、フレイは海面を見た。
「・・・海上戦、か」
どうなっちゃう事だか。
フレイは不安げに瞳を細めた。
「・・・生き残ってよね、」
『センサーに反応です!』
プトレマイオス2内に、ミレイナの声が響いた。
艦内放送を聞いたマイスターたちは、直ぐに各機体の下へ急ぐ。
『各マイスターは、所定のガンダムで待機して下さいです!』という声も続いて響く。
ブリッジでは「モニターに映します」とフェルトが声をあげ、映像を映す。
直ぐにスメラギがモニターを見て敵の姿を確認する。
「これは・・・?」
遠く離れた位置に空母。
そしてそこから発進されたであろうGN−XVとアヘッド。
そして、真ん中を進んできている赤と黒の物体。
漆黒のひし形の様な形態の其れは、真っ直ぐに進んできている。
「・・・ミレイナ、真ん中のあれは?」
「アンノウン・・・ドデカイMAみたいです!」
あれが、MA?
そう言いつつ、スメラギは瞳を細めた。
そして、すぐに格納庫に通信を繋げる。
「イアン、アリオスとダブルオーは?」
『応急修理は一応済ませた・・・なんとかいけるだろう』
だが、トランザムはまだ駄目だ。
そう言われ、スメラギは「十分よ」と言い機体で既に待機をしている刹那とアレルヤに通信を繋げた。
「刹那、アレルヤ。聞こえた?トランザムには注意をしてね」
『『了解』』
「特に刹那。ダブルオーは未だ安定がしてないんだから、気をつけてね」
オーバーロードも起こしたんだから。
そう言うスメラギに、刹那は再度「了解」と返した。
「各ガンダム、発進準備」
フェルトがパネルを操作しながら言う。
すぐに全機体を発進させ、スメラギはフォーメーションの指示をする。
敵が未知数な以上、うかつに戦術を練れない。
スメラギは真っ直ぐにモニターを見ながら、瞳を細めた。
『を中心に陣形を展開する。バレル小隊、攻撃をしかける』
レイの声を通信越しに聞きながら、は震える手でレバーを握っていた。
大きい機体だった。
私は今あの大きな機体に乗ってるんだ。
ビーム兵器を主体とした、ルットーレ。
ひし形の空中戦闘が主体の機体は、様々な兵器が機内に仕込まれている。
それに私が乗っている。
そう思うと、体が何故か震えた。
「・・・なんでだろ」
何故かは分からないが、恐怖を感じる。
なんでだろう、
そう思いながら、は機体を進ませた。
トリロバイトよりは小さいが、通常のMSの数倍の大きさはある。
飛行が出来るそれに乗りながら、彼女は眼前に現れた4機のガンダムを見やった。
直ぐにレイたちが攻撃をしかけている。
私も続かないと、とが思った時、通信モニターが展開された。
そこに出てきたのは、リントだった。
『ルーシェ中尉。そのルットーレでソレスタルビーイングを圧倒してしまいなさい』
了解、とが返すと、次にブシドーが通信を入れてきた。
其方を見ると、ブシドーは2個付きのガンダムは私が。と言って来た。
「・・・好きにしていい」
そう呟いた彼女に、ブシドーは何か言いたげに瞳を細めたが、何も言わずに通信を切った。
改めて、眼前の敵を見やった。
ルットーレはガンダムを相手にしなくてもいい。
兎に角、敵の母艦を狙えばいい。
リントにそう指示された通りに、は動く事にした。
『、君は無茶はするな』
レイに言われたが、はルットーレを前に進めた。
フレイが「ちょっと!」と焦りの声をかけるが、レイに諌められていた。
『ワンマンアーミーだ。自由に動かせろ』
いざとなったら俺がどうにかする。
そう言いレイのアヘッドが前進した。
フレイは「もう、」と言いながらそのままGN−XVを進めた。
レイの部隊のGN−XVはフレイを含めて3機。
ルットーレのチェック、それが理由で小隊でしか編成をしていない。
空母は遥か後方に居る。それも何時でも撤退出来る様にだ。
は自分を狙ってくるビーム兵器に構わず、そのまま直進した。
それにケルディムに乗るロックオンが焦りの声をあげた。
『な・・・!怯まねぇのかこいつ!』
ロックオンの声が響く。
刹那は迫り来るGN−XVをGNソードで切り伏せた後、其方を見やった。
巨大MAが逆にビーム攻撃をしかけてくる。
大きい体は丸い形をしている。
左右から鋏の様な形のアームが飛び出し、そこからビームを繰り出した。
真っ赤な粒子を放っている辺りから、太陽炉を搭載している事が予想出来る。
セラヴィーはアヘッドとGN−XVを相手にしている。
ケルディムがGNスナイパーライフルを構え、MAに攻撃をしかける。
確実に当たってはいるが、怯む様子が全く無い。
刹那も攻撃をしかけようとするが、先の戦闘でも交戦したアヘッドがビームサーベルで攻撃を仕掛けてきた。
真っ直ぐ進むMAに立ちはだかったのは、アリオスだった。
トランザムは使えないが、足止めは出来る。
アレルヤはGNツインビームライフルで、近距離からMAを狙い撃った。
機体が揺れる。
は突然の揺れにビクリと肩を跳ねさせた。
視界に入ったのは、橙色のガンダム。
それを見ては舌打ちをする。
「・・・私の・・・邪魔をするなあああああああぁぁぁぁ!!!!!!」
アームを出し、伸ばしてアリオスを捕まえようとするが、素早いそれはつかめずに、アームは空を切った。
が、そのまま搭載されているバルカンを放つ。
追うが、当たらない。
そこにGN−XVが割って入った。
『!あんたの狙いは母艦でしょ!!』
フレイの声が響く。
彼女がアリオスの相手をしている内に、は再度プトレマイオス2の方へ向かった。
プトレマイオス2を狙うMAに、ソレスタルビーイング側の人間が焦る。
『狙いはトレミーか!』
『くっそ!!やらせるかよ!』
ティエリアとロックオンの焦りの声が響く。
ロックオンがGNビームピストルを使いレイのアヘッドと距離をとる。
ティエリアが直ぐにセラヴィーを動かし、ルットーレにGNキャノンを放つ。
流石に足を止めたが、ルットーレはビーム攻撃を放つ動きを見せる。
体制を崩したが、ビーム砲撃がプトレマイオス2に放たれた。
『GNフィールド、最大展開!!』
『こなくそぉ!』
ラッセが操縦したのか、プトレマイオス2はビーム砲撃の直撃は避けた。
それにマイスターたちは安堵の息を零す。
刹那は深紅色の瞳を細め、目の前のアヘッドをGNソードで弾き飛ばす。
そのままダブルオーは、ルットーレの方へ進もうとしたが、
『逃げるか、ガンダム!』
「・・・しつこい!!」
迫るアヘッドと、再度刃を交えた。
セラヴィーは再度、ルットーレの背後からGNキャノンを放った。
それはGNフィールドを展開する前にルットーレに命中し、それは大きくバランスを崩した。
「きゃああああああああああああああ!!!!!!!!」
『! !』
の悲鳴に、フレイが焦りの声を上げる。
GN−XVでセラヴィーに切りかかるが、ビームサーベルで応戦される。
『こ、この!あんた、何すんのよ!』
思い切り攻撃を仕掛ける。
GN−XVを横目で見ながら刹那は、深紅色の瞳を細めた。
(・・・あのGN−XV・・・前に交戦した奴じゃないのか・・・?)
違和感を感じた相手。
だが、似たような動きではあるが、あれは違う。
直感的に刹那はそう感じていた。
『余所見とは・・・余裕だなガンダム!!』
切りかかってくるアヘッドに刹那は思わず舌打ちをした。
あんな巨大なMAがあるなんて。
そう思いながらアレルヤは迫り来るGN−XVを振り抜く。
その相手を、ロックオンがGNビームライフルで打ち抜いた。
「いい命中率だね、ロックオン!」
『もう慣れてきたぜ』
ロックオンと通信で会話をしながら、アレルヤはビームサーベルを抜きながらルットーレに突っ込む。
体制を崩したルットーレの眼前に、アリオスが現れる。
「!!!!!」
は大きく肩を震わせた。
迫り来る敵機。
あれは、ガンダム!!
の脳裏に、迫り来る翼を持ったガンダムが重なる。
「・・・あ、」
あのガンダムが来た後、一体どうなった?
「い、いや・・・!」
私は、私は、
「ッ―――!」
そこで、の記憶が全てまた蘇ると同時に、アリオスのビームサーベルがルットーレを切り裂いた。
物凄い衝撃が機体全体を襲い、コクピット内も大きく揺れる。
あまりの衝撃に、体がコクピット内の壁に打ち付けられる。
悲鳴を上げるに、フレイの焦りの声が響く。
「・・・う、」
痛む体を起こして、前を見る。
霞んだ視界に映ったのは、再度ビームサーベルを振り下ろそうとするアリオス。
それに、の体が大きく震える。
「い、いやああああああああ!!」
あれは、私を殺しに来る。
怖い、怖い、怖い、怖い!!
ころしに、くる、
わたしを、
いや、と思わずは声を漏らす。
肩を震わせ、来ないで!と叫んでも、相手が止まるはずもなく、
再度、ルットーレは切りつけられた。
防御をする様子も無く、切りつけられたルットーレはまたもバランスを崩す。
それに、刹那は違和感を覚えた。
コクピット内で、は自分を抱き締めるように腕を回していた。
『怖い敵が来て、俺もステラもみんな殺されちまう』
「だ、駄目なの・・・!それは駄目!!」
頭に過ぎった声。
それは絶対にいけない。
ネオもステラも死ぬのは、だめ!!!
崩れた体制のまま、ビーム砲撃を放つ。
しかし、それはアリオスに当たらずに終わる。
「こいつ・・・!」
レバーを振るってアームを動かすが、アリオスのビームサーベルに切り裂かれた。
うう、と声を漏らしながら震える体を叱咤し、そのまま滅茶苦茶にロックオンもせずにビームを放つ。
「どれでもいいから・・・当たれええええええええぇぇぇぇ!!!!!!!」
砲門全てからビームを放つ。
流石にそれに焦りを抱いたアレルヤはアリオスを飛行形態にして避ける。
それはセラヴィーと交戦しているアヘッドの間も通り抜けた。
何だ!?とティエリアは声をあげ、レイは直ぐにの様子を確認する。
『もう無差別じゃねぇか!』
ロックオンがそう声を上げつつ、ビーム攻撃を避ける。
刹那もブシドーから離れ、其方を気にかける。
端から見るとアレルヤが押しているように見えるが、何か違和感を刹那は感じていた。
アリオスのビームサーベルで損傷しながらも、何故か真っ直ぐにプトレマイオス2を目指す巨大MA。
あの違和感を感じたGN−XVの姿も無い。
(何だ・・・この違和感は・・・)
ぐ、と強くレバーを握る。
アヘッドサキガケが切りかかってきたので、刹那は応戦する。
が、先ほどからこれの繰り返しだ。
このままでは、巨大MAの方へ行けない・・・!
違和感を打破する為に、あれに近付かなければいけない。
刹那は瞳を細め、口を開いた。
「トランザムを使う・・・!」
『はぁ!?お、おい!刹那!!!』
あれほど使うなって!
というイアンの声が通信越しに響く。
が、刹那はそれを聞き流し、トランザムを起動させた。
そのままアヘッドサキガケを押し流し、巨大MAへ高速接近をする。
近付くダブルオーに気付いたが瞳を驚愕に見開く。
ルットーレは既に片方のアームが落ち、機体の内臓がむき出しの部分もある。
コクピット付近も攻撃を受けた様で、微かな日の光が差し込んできている。
そんなルットーレに、近付く青と白が基準の機体、
フリーダムやインパルスと、同じ色合い。
は体を大きく震わせた。
目を閉じると瞼の裏にロドニアのラボで自分を襲った機体が浮かぶ。
真っ直ぐにコクピットに振り下ろされた剣。
「あ、や・・・!」
体を震わせるが、どうしようも無い。
記憶の中のビームサーベルを振り降ろすインパルス。
ビームサーベルを突き立ててくるフリーダム。
全く同じような動きで、ダブルオーが眼前に迫り―――――。
「きゃああああああああああああ!!!!!!」
物凄い衝撃が、コクピット内に響いた。
目を開けば、青空が見える。
が、同時にコクピット内で小爆発が起きて、また目を閉じる事になった。
顔の前を手で覆い、衝撃から庇うようにする。
痛い、
身体中が痛い、
「う・・・!」
くしゃりと思わず表情を歪ませる。
怖い、それしか思えない。
うう、と声を漏らしながら、両手でレバーを再度握る。
「お前らなんか・・・!!」
ビーム砲に、光を収束させる。
『そうだな。が守ってくれないと、怖い敵がきて俺もステラも、みんな殺されちまう』
声が頭に響く。
そう、私が守らないとステラもネオも殺されてしまう。
そんなのは、だめ。
『そうだ。だから、は怖い敵を倒さないといけない』
怖い、敵。
それは今私の前に居る、こいつらだ!!
「お前らなんかあああああぁっ!!!」
そうは強く思い、射線上に居るダブルオーとアリオス、プトレマイオス2を狙う。
思い切りレバーを強く引けば、ビームが出る。
あの艦を、落とさなければ、落とさなければ!
私を、みんなを殺しにくる、敵が!!
恐怖状態に陥ったには、最早敵味方の判別もついていなかった。
ただ目の前に居るのが敵。
自分を傷つけるものが、敵。
そう強く思いながら、強くレバーを引こうとした。
瞬間、
『させない!!』
アリオスが、GNツインビームライフルを放った。
それは真っ直ぐにビーム砲口に命中し、集結していたビームを微かに拡散させた。
機体の揺れにが小さく悲鳴を上げる。
直後、アリオスが振るったビームサーベルがそこを真横に斬る。
爆発が起こり、完全にルットーレは体制を崩した。
機体のあちこちで、爆発が起こる。
コクピット内も爆発を起こし、も悲鳴を上げる。
同じだった。
デストロイの胸部の砲撃口に、ビームの光を集結させている時に、フリーダムに攻撃された。
穴を塞がれ、当然有り余った力は暴発をする。
デストロイの内部から爆発が起こり、それはコックピット内にまで及んだ。
「いやぁっ・・・!」
あの時、物凄い衝撃を感じる中、耳に響いたのは、愛しい人の声だった。
コクピット内部の爆発が多くなる。
破片が肩や腕に突き刺さる。
外部も爆発し、残りのアームも落ちた。
このまま、落ちるのかな、
このまま、死ぬの?
幸いまだレバーがある。
操作が出来る、
そう思いながらはガクガクと震える手でレバーのボタンを思い切り押した。
「うああああ!!」
バルカンを放つ。
小さな抵抗だったけれど、今のにはそれが精一杯だった。
が、それを難なくアリオスが避ける。
ダブルオーがとうとう目の前にまで迫った。
ひゅ、との喉が鳴った。
ああ、ここで、わたしは、
また、死ぬの?
そう思った直後、
「・・・え?」
トランザムをしたままのダブルオーが手を上げたので、そのままGNソードで斬られると思った。
が、思いのほか爆発を繰り返す半壊のルットーレに掴みかかった。
突然の彼の行動に、マイスターたちは驚きから彼の名を呼ぶ。
『何をしている!?』
『その機体は爆発する!早く離れた方が・・・!』
ティエリアとアレルヤの声が響く。
が、それも聞き流し、刹那は焦りの表情のままコクピットハッチと思われるであろう場所にダブルオーの指先を差し込んだ。
頭上に突然巨大な指が差し込まれ、は悲鳴を上げて体を丸くした。
そんなダブルオーの様子を、レイは見守っていた。
彼のみではなく、ブシドーとフレイも黙って見守っていた。
「や、やだ・・・!なに、なんなのよ!?」
背を丸める。
腕やら足やらに爆発した機内の破片が突き刺さっている。
今は恐怖の方が勝っていて、痛みも感じない。
兎に角、怖い。
殺すなら一思いに殺して欲しい。
でも、死にたくない、死ぬのは怖い!!!
は恐怖状態に陥りながら、頭を抱えて「やだ、やだ!」と首を振った。
バキン、と大きな音を立ててハッチの入り口がもぎ取られた。
トランザム状態のダブルオーの力のお陰か、さほど時間もかからずに取れたそれを、投げ捨てる。
刹那はハッチ内へ目を凝らし、パイロットの姿を目に留めた。
「! や、やはり・・・!」
感じていた違和感。
見覚えのある動き。
共に戦っていた仲間のものだったから、今考えると当然の事だったのに!
刹那はそう思いながら、ルットーレを引いて、ダブルオーに近づける。
ダブルオーのコクピットハッチも開き、ルットーレのハッチ内のコクピットの方へ手を差し出した。
刹那の突拍子も無い行動に、全員が焦る。
『刹那!?』
『何してんだ!?』
『それは爆発する!早く離れるんだ!!』
スメラギやロックオン、ラッセの焦り声が響く。
セイエイさん!刹那!と、ミレイナとフェルトの声もほぼ同時に響く。
爆発、
そんな事してしまったら、パイロットも無事ではすまない。
刹那は焦りを感じ、震える彼女に声を張った。
『早く来い!!』
通信をオープンにして声を張る。
刹那の行動に他の面々は驚くだけだった。
「・・・あ、や、やだ・・・!」
しかしは体を震わせ、両手で頭を押さえる。
恐怖状態に陥っているのか、
思わず刹那が呟く。
こうなったら仕方が無い。
ハッチから身を乗り出し、刹那はそのままダブルオーの手を伝い、ルットーレに移る。
小爆発を再度起こし始めるそれは、限界を示していた。
焦りを抱きながら、ルットーレのコクピットに刹那は飛び込んだ。
「!!」
「!!!!!!!」
突然名を呼ばれ驚いたのか、彼女が肩を震わせる。
相手が刹那という事も分からない状態なのか、彼女は「嫌!」と言い離れようとする。
が、それを刹那が許さずに腕を掴んだ。
「、アレルヤも待ってる!」
安心すると思い、気を引く為にアレルヤの名を出す。
が、それを聞いた瞬間は瞳を見開き、体を大きく震わせた。
そのまま「い、いや・・・!」と言い出来うる限り離れていこうとする。
「アレルヤ、だめ・・・、だめ・・・!」
アレルヤは、だめ。
彼女はそう言う。
何故、と思った刹那だったが、瞬時に彼女が今と同じように4年前、恐怖状態に陥った時の事を思い出す。
『アレルヤ、だめ・・・私は代わり・・・だから、だめ・・・!』
代わり、彼女は、まさか、
マリー・パーファシーを知っていたのか。
刹那はそう思いながら、逃げようとするの両肩を掴み、自分の方へ引き寄せた。
そのまま彼女の腰に片腕を回し、残りの片手で壁伝いにコクピットから出ようとする。
「や、やだ!離して!!」
怖い!!!
そう叫ぶ彼女に、刹那は「俺が!」と声を張った。
「俺が、お前を守ってやる!!」
「・・・え」
爆発が起こる。
段々と降下を始めているルットーレだが、ダブルオーが両手で支えているお陰か、未だに落ちない。
真剣な瞳で、を真っ直ぐに見詰める。
深紅色の瞳に見つめられ、は体を硬くした。
『お前は皆を守れ。その背は、俺とエクシアが守ってやる』
『約束しただろ・・・みんなを守るを、俺が守るって!!』
の空色の瞳が、みるみる大きく開かれていく。
『ガンダムで、お前を守る』
『俺が君を守るから!!』
『俺が、お前を守ってやる!!』
「・・・・・・ぁ、」
「いいんだ。もう、無理して戦わないで」
刹那はそう言い、唖然とした様子のを抱きかかえた。
そのままなんとかコクピットハッチをあがり、ダブルオーの手を伝う。
直後、ルットーレの表面で大きい爆発が起きた。
爆発により、刹那の体が吹き飛ぶ。
運良くダブルオーの腕の上に倒れたお陰で、今は平気だったが、このままでは本当に危ない。
そう思い、刹那は力を振り絞ってを抱いたまま、ダブルオーのコクピットハッチに向けて飛んだ。
なんとか乗り込み、を膝の上で抱えたままパネルを操作し、レバーを引く。
ダブルオーをルットーレから離そうとした瞬間、ルットーレが大爆発をした。
間近で爆発した影響で、ダブルオーが爆風により吹き飛ぶ。
「うっ!」と声を漏らしながらも、片手でレバーを握り、残りの手でを抱き締め、刹那は耐えた。
吹き飛ばされたダブルオーを、セラヴィーとケルディムが支えた。
前方からは、アリオスが寄ってくる。
肩を少々打ったが、彼女が無事ならばそれで良い。
そう思いながら、腕の中に居るであろう彼女を見下ろす。
は肩を震わせたまま、俯いていた。
どうしても確認がしたくて、刹那は「、」と彼女の名を呟いてアロウズのパイロットスーツに触れる。
そのまま、メットを取ると、短くなった懐かしい金色が視界に入った。
「・・・・・・!」
「・・・・・・せ、つな・・・?」
涙の溜まった空色の瞳が、刹那を映す。
刹那は頷き、自身もメットを外した。
久しぶりに見た、金色。
刹那は嬉しさから、柔らかく微笑んだ。
「・・・、」
そのまま、彼女の体を抱き締めた。
温かい。
生きている、温もりを感じる。
「・・・刹那・・・!」
ぎゅう、とも刹那の背に腕を回し、強く彼に抱きついた。
おかえり。